上 下
56 / 56
復讐編

第53話 復讐編 『獅子の穴・襲撃』

しおりを挟む

 プロレスラー養成所『獅子の穴』はトウキョウエリアのアダチエリアにあった。

 ここにライオンマスクが門下生50名以上を抱え、日々、格闘の訓練を行っていた。

 が、今はそのライオンマスクその人、ナオト・デイトがその両腕を怪我で失い、引退したため、その弟子の育成に余念がなかった。



 ナオトの弟子の中で、もっとも有望なのは、ミギトの移動の際、運転手をしてくれていたカーネ・ダショータと、シーマ・テツオウだ。

 この二人は、異常なくらいナオトを崇拝している上に、実力もあるのでナオトも期待しているようだった。

 カーネは磁気バイクレースの元プロ選手だったので、バイクのテクニックがすごい。もうそこらのプロバイクレーサーでもまだカーネには敵わないくらいだ。




 カーネのレスラー名は、バイクスターだ。


 もうひとりのシーマはメカニックとしても、すごく才能がある人で、ナオトの車『ヴェネツィアの翼』や、磁気バイクの整備を担当している。
もちろん、運転もそこらの一般人には決して負けはしない。


 シーマのレスラー名は、スティールダストだ。




 そんなナオトの養成所『獅子の穴』で有望株の二人をナオトが直々に鍛えていた訓練が終わり、通いの練習生は帰ってしまった夜の出来事だった。

 三名の暗殺者が『獅子の穴』を急襲したのだ。




 「……ん? 今、なにか怪訝な音がしませんでしたか?」

 「え? そうっすか? オレは何も聞こえませんでしたけど?」

 カーネとシーマがそんなやりとりをしたその様子をじっと見ていたナオトは厳しい顔をした。



 「カーネ。シーマ。奥のトレーニングルームに行っていろ。」

 ナオトが二人に向かってそんなことを言った。

 二人は顔を見合わせ、ナオトにこう言った。



 「ナオトさん! オレたちを信用してくださんせ! 」

 「賊っすよね!? オレもやったりますよ! ナオトさん! あなたもそんな身体じゃないッスか!?」

 「おまえたち……。」




 ガッシャーーーン!!


 何か窓が割れた音だ!

 賊が侵入してきたらしい。




 ガッシャーーーン!

 さらに違う方向からも窓が割れた音がする。

 賊は二手に分かれて侵入してきたようだ。



 「侵入者です! 侵入者です! 警戒してください!」

 シルフ系のセキュリティA・Iが警告してくる。


 ナオトたちがいる食堂にいち早くやってきたのは、豺狼と不死鬼の二人だった。

 やはりペアで動くのがこの二人のスタイルなのだろう。



 「これはこれは……。ライオンマスクさんですか? 怪我して再起不能というのは本当だったのですねぇ……。」

 「ぐが!」

 豺狼がそう言って、ナオトのほうをじろじろと見る。



 「なんだ……!? 貴様ら、牢屋に入ってたのではないのか?」


 ナオトは二人の顔を見て思わずそう言った。

 二人のことはナオトがミギトたちを助けに行ったときに見ていて知っていたからだ。

 だが、この二人の方からすると、あの時は気絶していたため、ライオンマスクの正体は知らなかったのだ。



 ニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、豺狼が言う。

 「くっくっく……。言質を取りましたよ? わしらの顔を知っているのは、警察関係者以外は、あの小僧たちの仲間しかいない!」

 「ぐが?」

 「ああ。不死鬼よ。わからんか? つまり、あやつこそ本物のライオンマスクであると同時に、シシオウ様を襲ったライオンマスクその本人であったということじゃ!」



 「ちっ……。口を滑らせたようだな……。」

 ナオトも自分のミスに気づいたが、もはや後の祭りだった。


 「まあ、ここで、お前らをもう一度牢屋にぶち込めば……。なんの問題もないだろ?」



 ナオトは車椅子に乗ったままそう言って、豺狼と不死鬼を睨んだ。

 その言葉を聞いて、豺狼は怪訝な顔をした。


 「ふん……。貴様はそんな身体でわしらに敵うと思っておるのか!?」



 「貴様らぁ! 何者だ!? ここがレスラー道場『獅子の穴』と知っての狼藉か?」

 「シーマ……。おめぇはセリフが時代劇みたいなんスよ! まあコイツラが狼藉者だっつーのは、オレも同意見だがなっ!!」

 「おまえら……。この爺さんは危険だ。うかつに近づくなよ?」

 ナオトはシーマとカーネの二人に注意をする。



 ナオトは弟子たちに注意をして、車椅子で少し後ろに下がった。

 果たして、車椅子のナオトに十魔剣の二人を相手にできるのか……?



 「やれぃ!! 不死鬼よ!!」

 「うがぁーーーっ!!」

 豺狼と不死鬼の二人が襲ってきた。

 巨体の化け物の肩の上に小柄の爺さんが乗っかっていて、見る見る顔つきが狼のそれに変わっていく。

 そう、今宵はちょうど満月……。

 豺狼の能力『窒息しそうなスリルな瞬間・SOUL』の最大能力を発揮できるのだ。

 月明かりで能力が上がり、肉体強化をするのだ。

 そして……。



 その遠吠えで一瞬で周りの空気を吹き飛ばし消すことができる。

 月明かりの当たっている部分の空気を意図的に消し飛ばすことができるのだ。

 「わぉおおーーーーんっ!!」



 「ぐぅ……!?」

 「う……、ああっ!!」

 「むぅ……!?」

 ナオトたちは一瞬で息ができなくなってしまった。



 「はーっはっはっはっ!! バカなやつらめ……。わしらに逆らうとこうなるのじゃ!」

 豺狼が勢いづいて攻め立てる……。



 ……が、次の瞬間―。


 ドカッ……!!


 「ぬおお!?」

 「ぐが?」

 豺狼と不死鬼があっという間に、逆に吹き飛ばされていた。



 「ぐ……、はぁ。はぁ。助かった。」

 「しかし……、いったい誰が……助けてくれたんだ?」

 シーマとカーネは何が起きたのかわからなかった様子だ。



 「ふふ……。来てくれたか……。我が親友……。」

 ナオトがそう声をかけた方向に一人の男が立っていた。



 「当たり前さ!? 親友のピンチには地球の裏側にいたって……、駆けつけるさ!?」

 そう答えたのはムツク・モジ-ザ。

 各地を放浪している無敵の格闘家であり、ナオトの親友。無敵の武闘家『クラウド』の異名を持つその男だった。

 格闘家ランキング世界ナンバー1、武力ランキング(個人)でも世界ランキング3位、そして生命力ランキングでも世界3位という脅威の肉体力の男であった。



 「おめぇさんは……。有名人じゃのぉ? しかし、その男に手を貸すというのなら……、その生命、無いものと思え?」

 「ぐがっ!」

 豺狼が起き上がり、ムツクに向かってそう言った。



 すると、ムツクの身体がものすごいチャクラを噴出しだしたのだ……。

 シュゥゥウウウウウウゥウ……

 見ている周りのものがその勢いで思わず、目を凝らしてしまうほどの……。


 「おまえら……。そのセリフはそっくり返してやるぜ? よくも、オレの親友にひどい仕打ちをしてくれたな? 覚悟するのはてめぇらのほうさ!!」


 そう言ったムツクの目はまぶしいほどの輝きを放っていたのだった―。




~続く~


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

処理中です...