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七雄国サミット
第148話 七雄国サミット『テロリスト・ジャックメイソン』
しおりを挟む※『アーカム・シティ』地図
『アーカム・シティ』の中央に東西に流れるミスカトニック川の南の川岸で黒煙があがっていた。
ここに謎に置かれていた大量の樽が急に爆発したのだ。
これに巻き込まれた善良な老人が死亡した。
毎日、散歩することが日課だったらしく、不運なことだ。
また、そこからほど遠くないフェラーズ婦人の屋敷が爆発し、多数の犠牲者が出た。
フェラーズ婦人を狙ったものと思われた。
消化に駆けつけた都市警備隊『スプリガンズ』の魔女モルガン・ル・フェイが水の魔法を使う。
『雨がふります、雨がふる、遊びにゆきたし、傘はなし、紅緒(べにお)の木履(かっこ)も緒(お)が切れた!!』
レベル3の水魔法・雨乞いの呪文『雨』だ。
すると急に空が暗くなり、このあたり一帯に雨が降り注ぎだす。
「うーん。ただの爆発じゃあなさそうね。黒い火薬かな……。そうなると……。」
モルガンの魔法の雨でもなかなかフェラーズハウスの火はおさまらない。
「わかりました。モルガン様。私にお任せあれ!」
そう勢いよく答えたのは、カラドック・ブリエフブラ。
『スプリガンズ』の円卓の騎士の一人『縮んだ腕のカラドック』の異名を持つ者だ。
エレオーレス・デュラハンの息子でもある。
「いでよ! 我が腕に眠りし蛇『ナーガラジャ』!」
カラドックの腕から巨大な蛇の精霊が召喚され、屋敷の炎をものともせず、駆け巡った。
「おお! カラドック……。どうやら、炎も雨で消え去りしようだな……。爆発の要因を『ナーガラジャ』で食ったか!?」
「はい。どうやら、黒い火薬が大量に狂乱状態にさせられていた模様……。私の蛇が『爆裂コショウ』ごと食べ尽くしたのでもう問題ありません。」
「さすがだな。その縮んだ腕の魔力はすさまじいな。」
「川岸の方でも爆発があったようです。被害者はいないかもしれませんが……。」
「ああ。じゃあ、カラドック。すまないが、ここは私に任せて、そちらも見てきてくれるか?」
「了解です。モルガン様。」
カラドックは急ぎ足で、ミスカトニック川のほうへ向かう。
魔女モルガンは続けて消火活動にあたっている。
その様子を隠れて伺っている人影がいた。
ジェイムズ・シェパード医師であった。
「モルガン様。負傷者がいるようですね。治療を手伝いますよ。」
「おお。医者か? ありがたい。では、負傷者を頼む。」
「ええ。わかりました。」
「しかし、助かったな。医者がすぐ近くにいたなんて。」
「はい。偶然、通りかかったもので……。」
****
一方、『キムリンゲB&M駅』の爆発現場では、二匹の魔物と『スプリガンズ』の騎士たちの攻防が続いていた。
「喰らえっ! 連撃の舞っ!」
「おっと! やられたーっ!」
アマノ・ジャックが言うことはまったくの嘘である。
あっさりとかわしたアマノにさらに、ガラハッドの連撃が次々と斬りつける。
「むぅーーん……。こりゃ余裕だねぇ? じゃあ、チカラを削っちゃおっか!? パワー弱化呪文『ゆうやけこやけ』だっ!」
『夕焼小焼で、日が暮れて、山のお寺の、鐘がなる、お手々つないで、皆かえろ! 烏と一緒にぃ……、帰りましょう!!』
アマノ・ジャックが呪文を唱えると、周囲の色が変わる。
夕暮れ時のような飴色の光が周囲を包み込む。
「うっ……。チカラが……!」
ランスロットたちの動きが鈍る。
そして、ジャック・オー・ランタンもさらに呪文を重ねてきた。
『雪が降る夜中も燃えろ燃えろペチカ、風も吹き始めた、夜はまだまだ明けなぬ、夢も深い夜は燃えろ燃えろペチカ、春の日待たれる、冬の夜は長い!』
炎の火球が繰り出される!
ランスロットがここで呪文を唱え防御する。
『あらしの吹けば立ち待つに、我(あ)が衣手に置く霜も氷(ひ)にさえわたり降る雪も凍りわたりぬ、今さらに君来まさめや!』
「凍結呪文『氷にさえわたり』だっ!」
氷と炎が衝突し、中央でくすぶり、対消滅した。
なんとか防御できたが、ランスロットの魔力もアマノのデバフ(弱化)呪文でチカラを弱められているようだ。
「くっくっくっ! 君たちにさらに嬉しいプレゼントをあげちゃおっかなぁ?」
アマノが不敵に笑う。
「な……!? 何をする気だ!?」
パーシヴァルが叫んだ。
『起きろ起きろと、いたきがなる、ねむいまなこを無理に開けて、おはようおはようと挨拶する……あなたもわたしも……、ニコニコッ!!』
これは、あのジャック・ザ・リッパーも使った混乱と狂乱呪文『ニコニコの歌(おなかがすいた)』だ。
すると、やはりというか、爆発を巻き起こしていた『爆裂コショウ』たちが狂乱状態に変化する。
異様な姿の暗い影が『キムリンゲB&M駅』で暴れだしたのだ。
「なんだなんだ……?」
緑と赤の色をした化け物『爆裂コショウ』の群れだった……。
蔦のようなものが覆い、トゲトゲの幹に、緑の触手のようなものが蠢き、その中心に大きな牙の生えた口のようなものが開いてよだれを垂らすかのように樹液を垂らしている。
「キッシャァアアアアァアアーーーッ……ジュルルン……!」
爆裂コショウたちは我先にランスロットたちに噛みつこうとその歯を剥き出しにしてくる!
もう駅ビル自体が大混乱になってしまっている。
『むすんで ひらいて、手をうって、むすんでまたひらいて、手をうって、その手を上に!!』
『むすんで ひらいて、手をうって むすんで、むすんで ひらいて、手をうって むすんで またひらいて、手をうって、その手を下に!!』
狂乱の『爆裂コショウ』たちが爆裂呪文を次々に連鎖で唱える。
ドッカァアアーーーーッンッ!
ドゴォォオオオオオオーーーーーーンンッ!!
バッグゥオオォォオオオーーーーーーーッン!
「ランスロット殿! これはやばいです! 応援を呼ばなくては!」
「しかし、ガラハッド。我々の誰か一人でも欠けてしまうと、ここを抑えることはできんぞ!?」
「仲間が来るまで耐えきるしか無いでしょう!」
「きひひーーっ! 僕の火炎も忘れないでねぇ!?」
ランタンがさらに火を注ぐ。
「くふふ……! 君たち、まだまだ余裕だねぇ?」
アマノがまた嘘を付く。
すると、どこからか呪文を唱える声がした!
『ねむれよい子よ、庭や牧場に、鳥も羊もみんな眠れば、月は窓から銀の光をそそぐこの夜。ねむれよい子よ、ねむれや!』
「あれは……!? レベル5の精神魔法、催眠呪文『フリースの子守歌』だっ!」
ランスロットが叫ぶ。
みるみる『爆裂コショウ』たちが、おとなしくなって行く……。
「ああ! あなたたちは!?」
そこへ颯爽と現れたのは、『法国』と『皇国』にまたがって活躍するSランク冒険者パーティー『モーニング・スター』だった。
そして、一瞬にして状況を見極め、眠りの催眠呪文を唱え、『爆裂コショウ』たちをおとなしくさせたのは、そのリーダー。
この世界唯一のSSランクの冒険者、リュツィフェール・”ルーシー”・ヴィーナス、ルーシー・ヴィーナスその人であった。
「待たせたな!?」
「ああ! ルーシーさん!!」
「助かった! 『モーニング・スター』が来てくれた!」
「なんだなんだ? 後から来て偉そうな!」
「そうだそうだ。どうせ、大したヤツじゃあないだろ?」
「僕たちに敵うはずないんだよねぇ?」
「え……? アマノ。君がそう言っちゃあマズイんじゃあないの……?」
「あれ……?」
~続く~
©「雨」(曲/弘田龍太郎 詞/北原白秋)
©「夕焼け小焼け」(中村雨紅:作詞/草川信:作曲)
©「ニコニコの歌(おなかがすいた)」(曲:作曲者不詳・アメリカ民謡/詞:作詞者不詳)
©「フリースのモーツァルトの子守歌」(作曲:ベルンハルト・フリース/作詞:フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ゴッター/訳詞:堀内敬三)
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