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七雄国サミット

第136話 七雄国サミット『世界会議前日その1』

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※世界国家・概略




 『法国』の首都『アーカム・シティ』に、世界の『七雄国』から続々と要人が集まってきていた。

 すでに到着していた各国の首脳たちは、各々の国の大使館にて過ごしていた。

 その中で、『エルフ国』はその代表でもある『ユグドラシルの十長老』が一人、妖精王オベロン・アーサー・ペンドラゴンは『法国』の首都『アーカム・シティ』の都市警備隊の隊長をも兼務しているというとんでもない者である。

 そのオベロンの邸宅には、もう一人の『エルフ国』の代表『ユグドラシルの十長老』タイオワが逗留していた。



 「……なるほど。タイオワ長老、その話がマコトであれば、そのジンという冒険者はSランク認定候補に値する者は間違いないでしょうなぁ。」

 「ああ。それはそうじゃな。なんせ『赤の盗賊団』討伐の功労に続いて、ナナポーゾのヤツの仕出かした件の発見と解決……。あと何らかの功績を上げれば文句は出んじゃろな。」


 オベロンとタイオワが談話している。


 「しかし……。ネイチャメリカ種族の長老としてはタイオワ長老も頭が痛いですね。ナナポーゾのヤツ。」

 「ああ。ヤツのいたずらにはほとほと参っておるわい。その点、白エルフ種族は順調じゃの? お主の娘ベッキーも冒険者として頑張っておるみたいじゃし。」

 「いえいえ。うちの娘なんてまだまだですよ。本当は『ミスカトニック大学』へ進学させたかったのですけどねぇ……。ああ、そういえばそのベッキーはくだんのジン殿とよしみを通じておりますようですよ。」

 「ほーん……。なかなかじゃのぉ。その者……いずれ相まみえる時が来るやもしれんのぉ……。」

 「そうですなぁ。」




 するとそこへオベロン王の妻であり妖精女王ティターニア・グィネヴィア・ペンドラゴンがお茶を持って入ってきた。


 「グレイ伯爵茶でございますわ。タイオワ長老。」

 「おお! ティターニアは相変わらず美しいのぉ。」

 「あらまぁ? タイオワ様は相変わらずお上手ですわね。」



 「それで……。今度の世界会議『七雄国サミット』では、いかがなさいますの?」

 「まあのぉ。先日の魔境会議で決まった通り、すべてはレッド・キャップ種族のサタン・クロースの責任とするしかあるまいて。」

 「それでは『世界樹共和国』としては少数民族は切り捨てるのか……と非難の的になりませんか?」

 「うむ。不幸中の幸いにしてレッド・キャップ種族は生き残りはおらぬ。また他の種族とも仲良くはなかった。かばうものはあるまい。」

 「なんだか、火竜の尻尾切りのようですね……。しかし、それも彼らの種族が『死すべき定め』の妖精たちであったということかしらね……。」


 ティターニア女王は優しい性格なのだ。

 このティターニア女王の言葉にはレッド・キャップたちを見下していると同時に彼らに同情している心情が現れていた。


 「しかし……、我が娘ベッキーは今何してるのやら……。ふぅ……。」

 ティターニアは娘を思い、ため息をつくのであったー。



 ****






 『アーカム・シティ』にある『南部・幕府』の大使館『六波羅探題』には、管理守護大名マハーヴィーラ六師外道が常駐している。

 六師外道は幕府の外で幕府の命を実行する外道機関の長なのだ。

 マハーヴィーラは久々に緊張していた。

 もちろんそれは言わずもがな、幕府のトップ・征魔大将軍マハー・ヴァイローチャナ大日将軍その人が滞在しているからだ。



 「マハーヴィーラよ。そう緊張するでない。余が許す。リラックスするのだ。」

 「は! 将軍閣下! では、足を崩させていただきます!」

 「して、ラナケートゥ。どうやら各国の代表たちも集まっておるようだな?」


 執政を行う機関・中台八葉院のメンバーのひとりであるラトナケートゥがちらりと外を見て答えた。



 「ええ。そのようでございますね。『エルフ国』はこの都市に常駐しているオベロン閣下に加えて、タイオワ長老が来ておる模様です。」

 「ふん。あの食えない爺いか?」

 「上様……。『六波羅探題』の中とはいえ、お口にお気をつけ遊ばせ。誰が聞いているやもしれませぬぞ?」


 発言した者は将軍の御庭番・アチャラナータ不動明王だ。

 マハー大日将軍の身の回りの警護を行う者であり、Sランク冒険者『五大明王』のリーダーだ。


 「なるほどな。壁に耳あり、ブラッディーメアリーと言うからな。」

 「は! 出過ぎた発言をお許しくださいませ。」

 「うむ。アチャラナータよ。余はおまえの発言を許そう。」



 「ところで、東方面指揮官のマンジュシュリーから報告があった件、幕府としては『エルフ国』の責任を問うことで良いな?」

 「は! 上様。その判断でよろしいかと。仮にすべての責を問えなくとも、今後、有利に進むかと存じ上げます。」

 「ふむ。さすがはラナケートゥよ。大円鏡智(心を鏡にし全てのものを写し取る智恵)の持ち主であるな。」

 「いえ。上様には及びません。」


 「上様。ご報告がございます!」

 控えていたもうひとりの御庭番が発言をした。





 「では、プラジュニャー・パーラミターよ。申すが良い。」

 御庭番衆の頭目であり、智慧波羅蜜とも言う。

 六波羅蜜の一つで真実を見極めることが使命である。



 「はい。『北部・帝国』のブラフマー皇帝陛下がすでに『エーラーワンの祠(ほこら)』に逗留されていらっしゃると報告が上がってきております。」

 「ほお? 陛下が……。儀礼的にではあるが、挨拶に上がらねばならんな。」

 「ですが、十分ご注意を。」

 「なぁに。反幕府派の連中も、まさか、エーラーワンの祠の松の廊下で狼藉を働くことはあるまい?」

 「御意。古の伝説でそのような狼藉があったと言われておりますが……。」



 「まあ、そのためにアチャラナータがおるではないか?」

 「は! 精進いたす所存であります!」

 「うむ。期待しておるぞ。」



 ****




 「……っくしょんっ!」

 「ベッキーお嬢様……。お風邪でも引かれましたか?」

 黒騎士エレオーレスがベッキーを気遣う。


 「じいや。大丈夫。なんだか鼻がむずむずしただけ。」

 「それはぁ……。誰かがベッキー様の噂でもしているのかしらねぇ……?」

 ベッキーのお目付け役・湖の婦人マダム・レイク・ヴィヴィアンが何かを察したかのように言う。



 「それなら誰かしらね? 私のことを誰かがみそめたのかしら?」

 「そうであるといいですなぁ。お嬢様。ジン様とか?」

 「ええ!? ジンさんか……。彼ってやっぱり私に興味持ってますよねぇ?」

 「そうでございますな。好意を持っていただいてなければ、こたびのパック捜索など引き受けていただけなかったでしょうからな……。」

 「やはり、じいやもそう思うか? 困ったなぁ……。私はパックが……。」


 「え!? お嬢様? お嬢様はパックのことがお好きなんですか!?」

 びっくりした衝撃で、黒騎士エレオーレスの頭が、ポトリと地面に落ちた!



 「エレオーレスさん! もぉ! また! 気をつけてくださいってあれほど言ってますのに!」


 エレオーレスは、デュラハンなのだ。


 「これは失礼しました。」

 そう言って当たり前のように、地面に転がっている頭部を拾って、小脇に抱えるエレオーレス。



 「それにしても、この砂竜鉄道って便利よね。振動も少ないし……。パックのいる『楼蘭』までほんの数刻で着くなんて……。画期的だわ!」

 「はい。ですね。アーリ様、オリン様がパックが『楼蘭』の街で保護されていると教えてくれてありがたいことでした。」



 「ベッキー! ベッキー! 『楼蘭』の街が見えてきただよぉ!?」

 窓から外をずっと見ていたオットが嬉しそうに言った。


 「がーっはっはっはっはーーっ!! ジンめ。砂竜を鉄道に使うだなんて、なんという発想だわい!」

 ウントコもさっきまで大口を開けて寝ていたとは思えないほど快活に言う。




 その様子を見ながら、ベッキーは早くパックに会いたいとひとり思うのであったー。



~続く~




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