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吸血鬼の陰謀
第126話 吸血鬼の陰謀『いざ!コショウ採集へ』
しおりを挟む※『エルフ国』と『不死国』
オレたちは『チチェン・イッツァ』の商会主・トキイロコンドルさんより、『爆裂コショウ』の群生地が、現在何者かに占拠されていて、コショウ採取に行くことができないという事情を伺った。
青いひげの男が急に彼の地にやってきて、占拠してしまったという。
そのせいで、『爆裂コショウ』を各地へ卸すことができなくなり、『東方都市キトル』でも入荷しなくなっていたというわけだったのだ……。
それなら、その地へ行ってみるしかないだろう。
「トキイロコンドルさん! オレたちがそこへ行って『爆裂コショウ』採ってきますよ!」
「なに!? 本当か? 今まで冒険者を複数送り込んだが、帰ってきた者はいないんだぞ!?」
「心配ございません!(キリッ) マスターにお任せくだされば、そんな青ひげの男など追い払って進ぜますわ。」
ええ……!? アイ先生、すごい自信ですけど、その青ひげの男って冒険者を返り討ちにしてるんでしょ?
ヤバイやつじゃあないのかな……。
「そうであるゾ! ジン様に任せておけばよいである!」
「そうなのだ! ジン様に任せておけばよいのだ!」
「そやなぁ。ジンの旦那に任せておけばすべてオールオッケーやで!」
「そうですわねぇ。このジンさんはやる御方だと言うことですわ。」
ちょいちょい!! イシカとホノリはまあ、いつもの通りだからいいよ?
サルワタリもサルガタナスさんもオレを持ち上げるのは、やめてくれない??
オレって、本当に普通の人間なんだよーっ!!
「そこまで言うなら、ジンよ。そなたに任せよう。もし、『爆裂コショウ』の群生地を解放することができれば、今後、コショウの版権を預けても良いぞ!?」
「な……!?」
コショウの版権……って。たしか、『爆裂コショウ』は別名黒い火薬とも言われ、この世界において非常に貴重な資源だったな。
この『エルフ国』と他には『火竜連邦』でも一部生産されているが、非常に貴重で値段も高い。
料理の必須調味料でもあるが、この爆裂する性質を利用した兵器としても利用される利便性の高い資源なのだ。
世の中のある種の流通と権力を握ることにも成るかもしれない……。
「ありがとうございます。それでは、その場所を教えていただけますか?」
「そうだな。コショウの採取もできる腕利きを案内につけよう。おい! カラドリウスとスチュパリデスを呼んで参れ!」
「は!」
こうして、オレたちはカラドリウスさんとスチュパリデスさんの案内で、『爆裂コショウ』の群生地へ向かうことになった。
カラドリウスさんは白っぽい鳥の頭の鳥人だが、首周り、尾の付け根、足は黒い。目は極端に小さく、くちばしも堅く小さめだ。さらに、なにか首にアヌビスと書かれた黒い袋を提げていた。
スチュパリデスさんはというと、嘴と翼の先が青銅で出来ている怪鳥だ。
「いいか!? ジンとか言ったな。『爆裂コショウ』は取り扱い危険種だからな。もし、見かけても決して触れたらダメだぞ?」
スチュパリデスさんが注意喚起してくれる。
なるほど。触っちゃダメなんだな。やっぱ、いきなり爆裂したりするんだろうか……?
いったいどんな植物なんだろう。
「まあまあ。そんなに緊張することはないわ。それよりも、青いひげの男……。あれはかなり手強いぞ?」
カラドリウスさんがそう言うってことは……。
「カラドリウスさんは、現場にいたんですか!?」
「そうよ。あの男がコショウの群生地にやってきた時、ちょうど私は収穫に行っていたの……。」
「そうなんですね……。」
「あの青いひげの男は、従業員たちをあっという間に切り裂いたわ。そしてその臓器を引きずり出して血をすすっていたの……。」
血をすすっていたのか!?
青いひげの男は吸血鬼なのか?
そうなると、不安が残る。あの吸血鬼化したサタン・クロースたちは強敵だった。
(アイ。アーリとオリンはヘルシングさんに連絡が取れたのかい?)
(いいえ。アーリとオリンは『キトル』の街で連絡が取れなかったようです。)
(マジかー!? じゃあ、吸血鬼相手ではちょっときつくないか?)
(マスター! ご安心ください。)
(え……? なんだあれは!?)
オレが前方の樹々のすきまになにかを発見した。
空から降りてくるあれは、間違いなく帆船だ!
空飛ぶ帆船……?
「なんや!? あれは!?」
「おお! 空を飛ぶ船! まさか『幽霊船』?」
サルワタリとサルガタナスさんも見つけたようだ。
しかし、幽霊船って……。そんなおとぎ話じゃああるまいし。
「マスター! あれは我が『霧越楼閣』の飛空艇、『フライング・ダッチマン号』でございます。」
「おお! かっこいいな!」
ヒュンヒュン……
帆船が目の前の空き地に降り立った。
そして、その帆船から降りてきたのが黒装束のボウガンと大剣をかついだイケメン……ヴァン・ヘルシングさんと二人の男女だった。
「ジン殿! 久しいな。オレに指定依頼、ありがとな。相手が吸血鬼なら任せておけ。」
「ヘルシングさん! お久しぶりです! 頼りにしてます。」
「ああ、ジン殿。こちらの二人はオレのパーティーメンバーだ。こっちの男がジョナサン・ハーカーで、こっちの女がウィルヘルミナ・ハーカーだ。」
「ジンさん。ジョナサン・ハーカーです。僕は『ヴァンパイア・ハンターズ』の事務弁護士を務めています。よろしくお願いします。」
「ジン様。お噂はかねがね。あたしはウィルヘルミナ・ハーカー。ジョナサンの妻です。ミナって呼んでください。」
ああ、二人は夫婦なのか。それにしても……。
「ジョナサン・ハーカーに、ミナ・マリーか!? おお! 吸血鬼ハンター勢揃い!!」
ブラム・ストーカー著「吸血鬼ドラキュラ」の有名人だな!
「あら……? ジン様。あたしの旧姓をご存知でしたのね。どこかでお会いしましたっけ?」
ミナさんがふと気づいたように聞いてきた。
おっと……! つい旧世界の知識で反応してしまったぁ……。
これは変に思われるかな。
「マスターは情報収集に事欠かない御方なのです。」
アイがそうぴしゃりと言った。
「なるほど……。オレたちの素性はすでに調査済み……と言うわけだな。さすがはジン殿。ま、かと言って調べられて困ることもないんだがな。」
「あはは……。もちろん、高く評価していますよ!」
オレはあわててフォローをしておく。
「ジン様ぁーーー! 拙者もいるんでございやすよ!」
帆船からチョロチョロと降りてきたのは、月氏小僧のジロキチだった。
「あ、ジロキチ。いたんだ?」
「ひどいでございやす! 拙者がヘルシングさんを連れてきたんですからね!」
「あーあー。それは悪かった。ご苦労さま。で、ジロキチがあの『フライング・ダッチマン号』を操縦してきたの?」
「いえ。拙者ではなくて、船長でございやすよ。」
「船長?」
「ヘンドリック・ファン・デル・デッケンでございます。ジン様。お初にお目にかかります。この『フライング・ダッチマン号』の船長をアイ様から任されております。」
そう言ってジロキチと共に降りてきた男が名乗った。
「ヘンドリック船長。ご苦労。」
アイが船長に声をかけた。
「あ、じゃあ、この船で『爆裂コショウ』の群生地に向かえばいいんじゃあないか?」
「いや。『爆裂コショウ』には空から行くのはまずいわ。一斉に爆裂したら手がつけられないわよ?」
カラドリウスさんがそう進言する。
「ヘンドリック船長! あなたはここで待っていなさい。マスター。ワタクシたちは地上から向かうのが得策でしょう。」
「そうだな。アイ……。ヘルシングさん! オレたちは『爆裂コショウ』の群生地に向かいます。そこは青いひげの男が占拠しているんですが、おそらくヤツは吸血鬼です。」
「青いひげの男……か。なるほどな。そいつは吸血鬼で間違いないだろう。なあ? ジョナサン。」
「ええ。青ひげ男爵……。『不死国』の貴族です!」
やはり、青ひげの男、青ひげ男爵は吸血鬼だったんだな。
~続く~
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