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目指せ!Sランク!

第115話 目指せ!Sランク!『スタンピードその2』

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 逃げてくるリスの魔物ラタトスクや、ウサギの魔物アルミラージ、イタチの魔物カマイタチが狂乱して攻撃を仕掛けてくるが、それに対しては防御に留め、待ち構える。

 ラタトスクは「走り回る出っ歯」の意味で、北欧神話において世界樹ユグドラシルに住んでいるといわれる栗鼠だ。アルミラージは某国民的ロールプレイングゲームで有名な角の生えたウサギに似た動物で、カマイタチはご存知日本の妖怪だ。

 つか、なんていう統一感のない魔物の群れなんだ……。まさにスタンピードってやつだな。


 ドドドドドドドドドドドドド……。

 地響きが聞こえてくる。



 「マスター! 来ました!」

 「了解! みんな! 気合を入れろよぉっ!!」

 「「おおーー!」」


 猿の魔物の群れが一番早く姿を見せた!

 「ムッキャッキャーッ!!」

 翻訳モードでも何を言っているのかわからない。狂乱しているのはわかった。



 「あれはやはりマンダリル、コリアンデールの群れじゃな! 行けぃ! 我が『ミクトランの骨部隊』よ!」

 ケツァルパパロトルの号令がかかる。

 ゾンビ軍が猿の軍団に向かっていく。

 なんという光景か……。



 ゾンビ軍の数はおよそ1千、猿の大群はおよそ2千、倍ほどの戦力差があるが、ゾンビたちは不死の軍隊。そこはなんとかなるだろう。

 続いて第二陣がやってくる。鳥の魔物たちだ。


 「ガルーダモンク!! 姑獲鳥!! それに……あれは!? ロック鳥か!?」

 オセロトルさんがそう叫ぶ。


 ガルーダとは、インド神話に登場する炎の様に光り輝き熱を発する神鳥のことだが、それのモンク(僧)か……。格闘術を使う鳥の魔物なのかもな。

 姑獲鳥は鳴き声だけで不気味な鳥だし、それにロック鳥か……。



 (マスター。ロック鳥の伝説は中東・インド洋地域の伝説に登場する巨大な白い鳥で、3頭のゾウを持ち去って巣の雛(ひな)に食べさせてしまうぐらい大きく力が強いとされています。)

 (なるほど。巨大な鳥だな……。翼も合わせると数十メートルはあるな。)

 (ご安心ください。空の敵にはワタクシめが対処致します。)

 (それは助かる。オレは地上に専念しよう。)

 (イエス! マスター!)



 「オセロトルさん! 鳥の魔物はオレたちがなんとかする! 地上の敵に注意してください!」

 「なんと! それはありがたいが……。本当に大丈夫か!? ロック鳥までいるんだぞ!?」

 「アイ! 任せたぞ!」

 「イエス! マスター!」



 アイと視点を共有しているオレには見えた。

 サーチ・アイが上空の鳥の魔物のすべてにマーカーを付けている。

 鳥たちが上空から襲いかかってくる動きのすべては、そのさらにはるか上空を包み込んでいる『プラネタリウム・サテライトシステム』の範囲内なのだ。手にとるように……いや、ゲーム画面で確認するかのように魔物の動きがわかる。



 「マスター! お任せを!! サイコキネシス・ビーム……乱反射!」

 すると周囲の超ナノテクマシンの一つ一つが作り出したエネルギーが波動となって、膨大なエネルギーの塊がそのパワーを集結させ、マーキングされた鳥の魔物たち一匹一匹に向かって、破壊光線が命中していく。

 そして、それをかわしたものでさえ、その破壊光線を瞬間的に角度を変え、跳ね返す鏡のような役割を超ナノテクマシンが覆い尽くしていたのだ。




 まさに籠の中の鳥……。いや、プラネタリウム内の鳥……か。

 一定の半径の球体の中を無数の光が七色に乱反射して、それはもう何と言ったらいいか……。きれいだった。

 そして、その中を鳥の魔物たちがバッサバッサと落ちていくのだ。

 最初の初撃で生き延びた鳥たちも、何往復も、何十往復も、いや、何百、何千往復かもしれないその光線の雨に耐えきれたものはいなかった。



 「すさまじいな……。ジン! アイ! おまえたちは、とんでもない魔法使いだったな。」

 オセロトルさんもこれには驚いたようだった。

 「いやはや。森の外の者もなかなかやりおるわい。」

 ケツァルパパロトルさんも感心している。



 「みなさん! 油断しないでください! 次が来ます!」

 アイが注意喚起した途端、森林の木々の影から、槍を振り回した森オークたち、きのこの化け物の大群が現れ、襲ってきた。

 弓と矢を持って振り回している森オークもいる。

 以前、襲ってきた森オークは遠くから弓を放ってきた。今はそんな戦い方を忘れてしまったかのように、弓と矢を手に持って攻撃してきているのだ。



 「森オークたちは冷静さを失ってるんのちゃうか!? それに、マタンゴもあんなに大群で動くことはあらへん!」

 あ、そういえばいつのまにサルワタリ、目覚めてたんだ? まあいいけど。

 あのきのこ、マタンゴっていうのか……。某国民的ロールプレイングゲームで有名なモンスターだ。



 「あっちはわしに任せていいぞい! 豚にきのこって合うんじゃよなぁ!」

 ムカデ爺やがそう言って、踊るように前へ立ちふさがって、オークどもやきのこにかぶりつきに行く!

 爺や……ゲテモノ好きだったり、何でも食べるんだな……。



 しかし、森オークの集団とマタンゴの群れに対して、対峙してくれるのは助かる。

 猿の魔物の軍団にはゾンビ軍団がせき止めてくれていて、膠着状態になっている。

 「アイ……。

 「マスター! 第四陣が来ます! イシカとホノリを出します!」

 「わかった! イシカ! ホノリ! 頼んだぞ!」

 「ジン様! わかったであるー! 任せておけだゾ!」

 「ジン様! わかったのだー! 任せるのだーっ!」


 イシカが赤い制服をひるがえし、赤のロングの髪をたなびかせて走っていく。

 青い制服姿のホノリも、青のロングヘアーをかきあげて前へ出ていった。

 頼もしい制服コンビ。頑張ってくれ。



 イシカが向かった方角から、大量の蛇の魔物が襲いかかってきた。

 レッドバイパーだ。恐るべき消化液を吐き出しながら、イシカに絡みつこうとする。

 大蛇は舌を出しながら、その牙を向いた。


 シュシュッシュシュンッ!!



 それを躱しながら、大蛇の下顎の下からパンチを繰り出すイシカ。

 「ナックル・パーンチ! アンド……キック!」

 その背後から迫る別の蛇に更に蹴りを繰り出し、ふっとばした。



 しかし、多勢に無勢なところを、次々とぶっ飛ばすイシカは、遠距離のレッドパイパーにも追尾ミサイルのようにパンチを撃ち込む。


 また別の方角に向かっていたホノリもちょうど乱戦に入ったところだった。

 こちらに襲ってきていたのは大蜘蛛の魔物たち、ギガントタランチュラだ。

 こちらも毒を持つ魔物だが、ホノリに噛みつこうと牙をガチガチ鳴らす。



 「回転旋風蹴り……なのだっ!!」


 その蜘蛛たちをまさに蜘蛛の子を散らすかのように吹き飛ばした。

 異常な速さで回転し、次々と蜘蛛たちに蹴りを繰り出す青い女子高生……。

 アニメだわ。これ、あの制作会社だったらめちゃくちゃすごいアニメーションに仕上げるだろうなぁと思うほどの動きを魅せるホノリ。



 ホノリが吹き飛ばした蜘蛛をイシカが超絶威力のパンチで叩き落とす。

 かと思えば、イシカがパンチでぶっ飛ばした大蛇にホノリが蹴りで地面に叩きつけた。

 息がピッタリな二人の動きはまるで決まった殺陣を演じている伝統芸能を見ているようだった。




 しかし、まだスタンピードはこれで終わりではなかった。

 (マスター! お気をつけください! 第5弾の波がやってまいります!!)

 (くぅ……。まだ来るのか!?)



 「あれです!」

 アイが示した方向から来るのが見えた。

 大量のライオンの魔物、ライオンヘッドとそのまわりを光るおびただしい青白い光の塊が……。



 「ウィル・オー・ウィスプ……。あれに普通の攻撃は通じへん。しかもあのライオンヘッドの背後に……ボス・アンズーがおる!!」


 「ガオォオオオオーーーーォオオオオォンッ!!」


 ライオンの頭を持つワシの姿のその魔物は雷をまとって吠えたのであった。


~続く~


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