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赤の盗賊団

第35話 赤の盗賊団 『反撃だ!』

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※ミトラ砦・挟撃作戦の図



 仕立て屋テラーは驚いていた。

 「なっにっもぬぉだ? あのあのあの!巨大な巨大なとりりりりぃ・・・フク・フクフックッロウですです・・・くわねぇ!?」

 突然現れたコタンコロに完全に虚をつかれたゾンビ群軍。陣形は乱れ、吹き飛ばされたゾンビたちも指揮が乱されていた。



 「ザ・騎士・オブ・ザ・リビングデッド!! NO.28!! デッド・ザ・ドーン!! フライング・デッドに乗ってあいつをっつをっ!! 落とすぇすぇすぇーーーいい!!」

 ゾンビたちがフライングデッドに次々乗って、上空のコタンコロに向かって飛空し、向かっていく。

 そこを口を開き、迎え撃つかのように、エネルギーが集中していく・・・。



 「超・電磁砲ぉーーーーっ!!!」


 チュィンッ!!

 コタンコロに襲いかからんとしていたゾンビたち、地上に残っていたゾンビたち、すべてのものは、耳が一瞬、痛みを覚えるかのように周囲の空気が振動した・・・かと思うと、
その後、膨大なエネルギー照射を受け、一瞬で熱せられた空間に包まれた!



 電子レンジで熱せられたもののように、ゾンビたちは一瞬で蒸発してしまった―。

 「ぬわぬわぬわにぃーーーっ!?」

 離れた位置にいたテラーはその惨劇に巻き込まれなかった様子だ。



 「や・・・やばいやばやばやばいーーーっ!! 逃げ逃げ逃げるるるるぅぅーーー!!」

 一目散に残っていたフライングデッドに飛び乗り、その場から逃げ出し、ミトラ砦方面にテラー・テーラーは去っていった―。

 こういう素早さはさすがというべきだろう。



 生き残った(?)ゾンビの残党を地上に降り、ギルガメシュたちは掃討する。

 コタンコロはそのままふわりと舞い降り、待機していた。

 やがて、あたりには動くものがいなくなった。



 「コタンコロ殿! 貴殿のおかげで助かった。礼を言う。」

 「うむ。我はただ、ご主人様の命に従ったまで。礼ならご主人様に言うがよかろう。」

 だが、ウントコ・ドッコイを看病していたオット・ドッコイが叫んだ。

 「ウントコあんちゃんが!!・・・意識がないよ!」

 「ギルガメシュ様! こちらを!」

 「ああ。エンキドゥ。・・・さぁ、ウントコにこれを。」



 そう言ってギルガメシュがエンキドゥから受け取り差し出したのは、パナケイア薬だ。

 法国の名医パナケイアが開発したという回復薬だ。効き目は抜群で、数刻もすれば体力も傷も回復するという。

 「パナケイア薬・・・そんな高価な薬を・・・あんちゃんのために・・・。ありがとう。」

 「いや、我々は一緒に戦った仲間じゃないか。気にするでない。」

 「ギルガメシュ兵長・・・。」



 「では、我の背中にふたたび乗るがいい。我が主人の下へ運ぼうではないか。」

 「おお! それはありがたい。」

 「かたじけない!」

 「ありがとう。コタンコロさん!」



 こうして、コタンコロは負傷したウントコとオットのドッコイ兄弟たちと、ギルガメシュ、エンキドゥを背中に乗せた。

 「我の羽毛の中にはいっておられよ。衝撃波が来るぞ。」

 「しょ・・・しょうげき・・・?」

 「うむ。まあ反動が来るということだ。音速を超えるのでな。」

 「おん・・・そく・・・? よ・・・よくわからないが、言うとおりにしよう。何かいやな予感がする・・・。」

 「で・・・ですね。ギルガメシュ様。」



 コタンコロは羽毛の中に入り、羽毛にくるまったみなをその羽毛で優しく包み込み、風とその衝撃で飛ばされないよう固定した。

 「では、参るぞ!」

 そのまま空に羽ばたいたかと思うと、一気に加速し、ジンたちのもとへ急ぐのであった―。


 ・・・もちろん、その背中で、あまりの速度の衝撃に驚き、身を小さく羽毛にしがみついた3名と、何も知らず幸せに回復を待って眠っていたウントコの姿があったのだが―。




 ◇◇◇◇

 一方、少し時間をさかのぼり、コタンコロが飛び去っていった後のジンたちはと言うと―。



 イシカとホノリがレッド・マントに二人がかりで攻撃していた。

 「ロケット・ナックル・パァーーーーンッチィイイーーーッ!!」

 赤の制服姿のイシカが赤色のでロングの髪をなびかせて、攻撃する。

 「おっと! ってこっちに曲がってきた! なんなんだ!? その身体!!」

 急速にその軌道を変え、追尾したイシカのパンチを、さらに身体を異様なくらい曲げてかわすレッド・マント。



 「回転蹴り! なのだっ!!」

 そこをすかさず、瞬速で近寄ったホノリが回し蹴りを叩き込む。青の制服姿のホノリが、青色のロングの髪をたなびかせる。

 「ぐばっ・・・!」

 血反吐を吐き、後方へ逃れるレッド・マント。



 そこへ、イシカが腕をもう一発、発射し、追撃を加える。

 「ロケット・ナックル! 第二弾!!」

 シュゴォオオオォオオオオーーーッ!!!

 勢いよく向かってきた腕を、レッド・マントが掴み、その勢いでさらに後方へ弾け飛ぶ。

 掴んだイシカの腕を、レッド・マントが剣で突き飛ばす。



 「くっ・・・。傷一つつかないか・・・。」

 レッド・マントはここまで劣勢に追い込まれたことなどなかった。

 サタン・クロースとの戦いでさえ、互角・・・攻撃の数ならレッド・マントのほうが上回っていたのだ。

 「これは、まずいですねぇ。サタン様っ!!」

 レッド・マントはサタン・クロースに呼びかけた。





 サタン・クロースも、ヒルコの粘体の柔軟すぎる身体を引き裂くことも引きちぎることもできず、劣勢だった。

 「おう! マント!! わかっておる! ここは、一時、撤収だわ!!」

 「はい! でしょうねぇ。これはまずい! サタン様!! こちらへ!!」

 「おお!! 理解した!!」



 「あ!待て!! 」

 オレは逃げるサタン・クロースに向かって手をかざし、あれをイメージした。

 「ポルター・ガイストォオオオオーーーッ!!」

 すると周囲の超ナノテクマシンが一斉にまわりの岩、石つぶて、砂を巻き上げ、サタン・クロースに向かって投げつけたのだ。

 まわりから見ると、周囲の岩や石つぶてが勝手に空中に浮き、一斉にサタン・クロースへ向かって行く光景なんだろう。
そう、まるでポルターガイスト現象のように。



 「くっ・・・。これしきぃ!!」

 サタン・クロースはそれらの岩や石をもろに背中から食らったが、その足を止めず、レッド・マントの下へ駆けつけた。

 「行きます!!」

 「おお! やれぃ!!」

 レッド・マントが何やら呪文を唱えていた!



 『Open thy lattice love,listen to me! 
The cool balmy breeze is abroad on the sea!

 The moon like a queen,roams her realms of blue,
And the stars keep their vigils in heaven for you 
Ere morn's gushing light tips the hills with its ray,
Away o'er the waters away and away!

 Then open they lattice,love listen to me!
While the moon's in the sky and breeze on the sea!』

 長い呪文を唱えている間、イシカとホノリの攻撃を今度はサタン・クロースがすべて受け止める。

 その肉体の頑強さで魔法を唱えるレッド・マントの詠唱時間を守り抜く算段だ。



 そして、イシカのロケット・ナックルで襲いかかる腕もすべて弾き飛ばし、さらにホノリの攻撃をも肉体の盾で受け止めたのだ。

 「完成です!! 転移呪文『恋人よ窓を開け』!!」

 レッド・マントがそう叫ぶと、その前に扉が出現した。

 バタンと音を立てて扉が開くと、レッド・マントとサタン・クロースがその中へ消えていく・・・。



 「捉えなさい!! シャドウアーム!!」

 アイがそう指示し、超ナノテクマシンを総動員し、巨大な手に変え、今にも扉の内側へ入らんとしていたサタンの足を掴んだ!

 「そのまま、引きずり出しなさい!!」

 さらにアイが叫ぶ。ちょっと焦った感じに見えたのは気のせいか・・・。




 「むぅ・・・。仕方なし!! 足は・・・くれてやる!! やれい!! マント!!」

 「御意!!」

 レッド・マントはその剣で、サタン・クロースの捉えられた足を切り落とした!

 血が吹き出すと同時に、サタン・クロースの身体は扉の内側へ引き寄せられ、消えていった。

 その後、扉が開いた時と同じように、バタンと一気に閉じ、扉自体も宙に消えてしまったのだった―。



~続く~
©「恋人よ窓を開け」(曲/フォスター 詞/モリス)


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