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ファイナルファンタジー1
第23話:過去への旅立ちと復活の屍
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日々木さんを見送った後、僕は改めてFF1を起動し、コーネリアの町でポーションを補充した。「データはそのままにしておく」とは言ったものの、さすがにボタン連打で数分間かけてポーションを買うところから始めるのは勘弁してほしい。FF1、アイテムのまとめ買いさえできれば文句のないゲームなのになぁ。
カオス神殿の前でセーブすると、僕はその日ファミコンで遊ばなかった。カセットを差し替えると接触不良でデータが消えやすくなるという話を父から聞いたからだ(今思えば、それなのに平気でDQ1に差し替えた件について抗議したくなるのだが)。
**
「今度、ファミコンのバックアップ電池の交換やろうと思ってるんだけど」
翌朝、トレ部の朝練に来たソラに相談する。日々木さんのカセットが気になったし、うちにあるソフトの電池も全て無事かどうかわからない。今後もファミコンで遊ぼうと思うのなら、覚えておいて損はないと思ったのだ。
「ということは、はんだ付けとかが必要ってこと?」
「うん。やり方は色々あるみたいだけど、電池ホルダーごと交換するのが一番安定するみたいだから」
昨夜、父と色々調べてみた。カセット内臓のボタン電池は端子タブが固定されているようで、それを強引に剥がして付け替えても固定するのが難しい。よって、交換する場合はタブ付きの電池か、あるいは再交換も容易なプラスチックのホルダーに付け替えるのが良いようだ。
「なかなか面白そうだね。ただ、うちに来るなら中間テストの後がいいかな」
5月の連休明けには中間テストがある。高校生になったというソラの兄も同じだろう。僕も、そろそろ真面目に勉強しなければならない。それまでに、父に頼んで必要なものを買ってきてもらおうと思う。
**
放課後、昨日と同じように部活もそこそこに、僕は昨日と同じように日々木さんを連れてきた。今日は母はいない。パートのシフトを火曜日にも入れたのだ。
「お菓子どうしようかな、豆菓子しかないけどいい?」
そして、手頃なお菓子がないことに気づいた。牛乳ゼリーは昨日食べてしまったし、父がおつまみ用に買い込んでいる豆菓子の小袋くらいだ。
「私は別にいいよ。それに、汚れた手でコントローラを操作するのって良くない気がする」
それを聞いて僕は少し反省した。今度からはゲーム中は手づかみをやめて、箸でも使って食べようかな。ともかく、麦茶だけは用意して2階に上がった。
*
「データはそのままにするって言ったけど、アイテムだけ買い足したよ」
「ありがとね。私もポーション買うの面倒だなって思ってたし」
昨日と同じように、テレビの前に並んでプレイを開始する。
「ねえ、アダマンタイト拾ったでしょ。ドワーフのところに持っていこうよ」
日々木さんに指摘されるまですっかり忘れていた。
「エクスカリバー! 僕でも聞いたことがある伝説の剣!」
赤魔でも装備できるディフェンダーやサンブレードと違い、正真正銘のナイトのためだけの武器のようだ。
そして、新たな武器を手にカオスの神殿に向かう。中心部の黒水晶から、2000年前の世界にタイムスリップ!
*
「これ、外には出られないのかな」
過去の世界の神殿。外に通じる道は塞がれているようだ。
「かもね。中を調べてみるしか無いみたい」
地下へ降りる階段は行き止まりだったので、上を目指す。グリーンドラゴンがとにかく強い。逃げようとしたらどうやら不可能のようで、毒ガスの連発で全滅してしまった。
「正面から戦わなきゃ駄目かぁ」
パーティのレベルは23。まだ、赤魔がブリザガを使うことすらできない。直接攻撃で2体ずつは倒せるので、地道に回復して進むしかないようだ。
*
「この祭壇みたいなとこ、ボスだよね」
3階の中央部の部屋に入ると、予想通りにデスビホルダーが登場! しかし大した敵ではなかった。ストップの魔法でナイト"たける"がマヒしたくらいだ。
「この石板、どこかで見たような……」
「アースの洞窟じゃない? ほら、土の杖で消したとこ!」
小部屋の奥は石の板で封じられている。どうしようかと思ったところで、日々木さんの一言で過去にも似たようなイベントがあったことを思い出した。さっそくアイテムから土の杖を使うが、何も起こらない。
「どうしよう、別のアイテム探す?」
「とりあえず今持ってるのを試せばいいんじゃない?」
片っ端からアイテムを試す。反応したのは一番最初のイベントでもらった後、使う機会がなかった「リュート」であった。
*
「なんか、敵が弱くなったね」
「うん」
地下に入ると敵が一変する。ゴーレムやアースエレメントなど、ここは「土」のフロアのようだ。アースメデューサは強敵かと思ったが、ガントレットや魔術の杖であっさりと倒れてくれるので、余裕を持って癒やしシリーズで回復したりする。
「お、復活ボスかな」
階段の手前で現れたのは、最初に倒したカオスである「リッチ」。今となっては楽勝だろうと、ろくに画面も見ずに適当に攻撃したところ、強烈なダメージが飛んできた。
「え、今何が起こった?」
「フレアー! リッチが唱えてきたの!」
最速のメッセージなのでうっかりして見落としていたが、リッチが最強の黒魔法を唱えたらしい。300前後のダメージを食らって、パーティが壊滅しかける。なんとか生き残ったが、赤魔がやられたら脱出も蘇生もできなくなる。
「危なかった……」
「階段の前には強化ボスがいるんだね……」
ともかく、受けたダメージを回復させなければならない。ここで持ち込んだポーションの半分近くを消費することになってしまった。今後もこのペースだと先が思いやられる。
*
「ここが最後の風のフロアってことか」
土のフロアに続き、火のフロア、水のフロアがあった。階段には復活ボスがおり、警戒して全力でヘイスト攻撃を仕掛けたが、いずれも大したことはなかった。運次第で強烈な攻撃が飛んできたのかも知れないが。
そしてここは地下4階、今までのパターンからすると「風」のエリアだ。ポーションにはまだまだ余裕があるので、強気で探索する。
「うわ、いきなり!」
予想通りティアマットが現れたのだが、その出現場所は予想外だった。階段の前ではなく、部屋をつなぐ連絡通路のようなところで出てきたのだ。幸い、こいつも大したことなかった。
「どうする? 先に進む?」
画面には階段が見える。おそらく、この先に最後のボスがいるのだろう。
「せっかくだから探索してみたら?」
「ま、それもそうか」
階段から降りて最初にこの部屋に来たので、フロアの南半分は探索していない。フロア南東の細い通路の先の宝箱を開けると「マサムネ」を発見。
「名刀正宗! これなら僕も知ってるぞ。やっぱり忍者専用かな?」
「一応試してみたら?」
「ナイトも装備できるな。これで命中は135。余裕で5回ヒットじゃないか!」
この段階で、パーティはレベル26になっていた。
「どうする? 進む? それとも今日はこれで終わりにする?」
時計は5時半になっていた。そろそろ帰らないと、彼女の門限に間に合わない。
「明日にしよっか。強い武器も手に入れたし、すぐに来られると思うし」
「そうだね」
ダテレポを唱えて、脱出した(もし脱出できなければどうしようかと思ったが)。そしてセーブをして電源を切る。エンディングは、早くても明日に持ち越されることになった。
***
『リュート』
ファミコン版では特に演出がなく石板が消える。リメイク版では演奏シーンとともにプレリュードが流れる名シーンが追加された。リメイク版の追加・変更演出のうち、筆者が純粋に評価している数少ない要素である。
カオス神殿の前でセーブすると、僕はその日ファミコンで遊ばなかった。カセットを差し替えると接触不良でデータが消えやすくなるという話を父から聞いたからだ(今思えば、それなのに平気でDQ1に差し替えた件について抗議したくなるのだが)。
**
「今度、ファミコンのバックアップ電池の交換やろうと思ってるんだけど」
翌朝、トレ部の朝練に来たソラに相談する。日々木さんのカセットが気になったし、うちにあるソフトの電池も全て無事かどうかわからない。今後もファミコンで遊ぼうと思うのなら、覚えておいて損はないと思ったのだ。
「ということは、はんだ付けとかが必要ってこと?」
「うん。やり方は色々あるみたいだけど、電池ホルダーごと交換するのが一番安定するみたいだから」
昨夜、父と色々調べてみた。カセット内臓のボタン電池は端子タブが固定されているようで、それを強引に剥がして付け替えても固定するのが難しい。よって、交換する場合はタブ付きの電池か、あるいは再交換も容易なプラスチックのホルダーに付け替えるのが良いようだ。
「なかなか面白そうだね。ただ、うちに来るなら中間テストの後がいいかな」
5月の連休明けには中間テストがある。高校生になったというソラの兄も同じだろう。僕も、そろそろ真面目に勉強しなければならない。それまでに、父に頼んで必要なものを買ってきてもらおうと思う。
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放課後、昨日と同じように部活もそこそこに、僕は昨日と同じように日々木さんを連れてきた。今日は母はいない。パートのシフトを火曜日にも入れたのだ。
「お菓子どうしようかな、豆菓子しかないけどいい?」
そして、手頃なお菓子がないことに気づいた。牛乳ゼリーは昨日食べてしまったし、父がおつまみ用に買い込んでいる豆菓子の小袋くらいだ。
「私は別にいいよ。それに、汚れた手でコントローラを操作するのって良くない気がする」
それを聞いて僕は少し反省した。今度からはゲーム中は手づかみをやめて、箸でも使って食べようかな。ともかく、麦茶だけは用意して2階に上がった。
*
「データはそのままにするって言ったけど、アイテムだけ買い足したよ」
「ありがとね。私もポーション買うの面倒だなって思ってたし」
昨日と同じように、テレビの前に並んでプレイを開始する。
「ねえ、アダマンタイト拾ったでしょ。ドワーフのところに持っていこうよ」
日々木さんに指摘されるまですっかり忘れていた。
「エクスカリバー! 僕でも聞いたことがある伝説の剣!」
赤魔でも装備できるディフェンダーやサンブレードと違い、正真正銘のナイトのためだけの武器のようだ。
そして、新たな武器を手にカオスの神殿に向かう。中心部の黒水晶から、2000年前の世界にタイムスリップ!
*
「これ、外には出られないのかな」
過去の世界の神殿。外に通じる道は塞がれているようだ。
「かもね。中を調べてみるしか無いみたい」
地下へ降りる階段は行き止まりだったので、上を目指す。グリーンドラゴンがとにかく強い。逃げようとしたらどうやら不可能のようで、毒ガスの連発で全滅してしまった。
「正面から戦わなきゃ駄目かぁ」
パーティのレベルは23。まだ、赤魔がブリザガを使うことすらできない。直接攻撃で2体ずつは倒せるので、地道に回復して進むしかないようだ。
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「この祭壇みたいなとこ、ボスだよね」
3階の中央部の部屋に入ると、予想通りにデスビホルダーが登場! しかし大した敵ではなかった。ストップの魔法でナイト"たける"がマヒしたくらいだ。
「この石板、どこかで見たような……」
「アースの洞窟じゃない? ほら、土の杖で消したとこ!」
小部屋の奥は石の板で封じられている。どうしようかと思ったところで、日々木さんの一言で過去にも似たようなイベントがあったことを思い出した。さっそくアイテムから土の杖を使うが、何も起こらない。
「どうしよう、別のアイテム探す?」
「とりあえず今持ってるのを試せばいいんじゃない?」
片っ端からアイテムを試す。反応したのは一番最初のイベントでもらった後、使う機会がなかった「リュート」であった。
*
「なんか、敵が弱くなったね」
「うん」
地下に入ると敵が一変する。ゴーレムやアースエレメントなど、ここは「土」のフロアのようだ。アースメデューサは強敵かと思ったが、ガントレットや魔術の杖であっさりと倒れてくれるので、余裕を持って癒やしシリーズで回復したりする。
「お、復活ボスかな」
階段の手前で現れたのは、最初に倒したカオスである「リッチ」。今となっては楽勝だろうと、ろくに画面も見ずに適当に攻撃したところ、強烈なダメージが飛んできた。
「え、今何が起こった?」
「フレアー! リッチが唱えてきたの!」
最速のメッセージなのでうっかりして見落としていたが、リッチが最強の黒魔法を唱えたらしい。300前後のダメージを食らって、パーティが壊滅しかける。なんとか生き残ったが、赤魔がやられたら脱出も蘇生もできなくなる。
「危なかった……」
「階段の前には強化ボスがいるんだね……」
ともかく、受けたダメージを回復させなければならない。ここで持ち込んだポーションの半分近くを消費することになってしまった。今後もこのペースだと先が思いやられる。
*
「ここが最後の風のフロアってことか」
土のフロアに続き、火のフロア、水のフロアがあった。階段には復活ボスがおり、警戒して全力でヘイスト攻撃を仕掛けたが、いずれも大したことはなかった。運次第で強烈な攻撃が飛んできたのかも知れないが。
そしてここは地下4階、今までのパターンからすると「風」のエリアだ。ポーションにはまだまだ余裕があるので、強気で探索する。
「うわ、いきなり!」
予想通りティアマットが現れたのだが、その出現場所は予想外だった。階段の前ではなく、部屋をつなぐ連絡通路のようなところで出てきたのだ。幸い、こいつも大したことなかった。
「どうする? 先に進む?」
画面には階段が見える。おそらく、この先に最後のボスがいるのだろう。
「せっかくだから探索してみたら?」
「ま、それもそうか」
階段から降りて最初にこの部屋に来たので、フロアの南半分は探索していない。フロア南東の細い通路の先の宝箱を開けると「マサムネ」を発見。
「名刀正宗! これなら僕も知ってるぞ。やっぱり忍者専用かな?」
「一応試してみたら?」
「ナイトも装備できるな。これで命中は135。余裕で5回ヒットじゃないか!」
この段階で、パーティはレベル26になっていた。
「どうする? 進む? それとも今日はこれで終わりにする?」
時計は5時半になっていた。そろそろ帰らないと、彼女の門限に間に合わない。
「明日にしよっか。強い武器も手に入れたし、すぐに来られると思うし」
「そうだね」
ダテレポを唱えて、脱出した(もし脱出できなければどうしようかと思ったが)。そしてセーブをして電源を切る。エンディングは、早くても明日に持ち越されることになった。
***
『リュート』
ファミコン版では特に演出がなく石板が消える。リメイク版では演奏シーンとともにプレリュードが流れる名シーンが追加された。リメイク版の追加・変更演出のうち、筆者が純粋に評価している数少ない要素である。
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