Hな短編集・夫婦純愛編

矢木羽研

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投稿したエロ小説を運営に削除された俺は優しい妻に慰めてもらう

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 投稿したエロ小説が削除された! 表現や内容には気を遣っていたのに!……という体験談を小説にしました。
 なお、この小説はフィクションなので実在の人物やウェブサイトとは関係ないはずです。

「うわぁ! やられた!! 3ヶ月ぶり2回目の削除かぁ」
「どんまーい♪」

 モニターに向かって絶叫する俺に、床に寝転んで漫画を読んでいた妻がのんきな合いの手を入れた。

「ちくしょう、この程度なら大丈夫だと思ったのになぁ」
「何やらかしたの?」
「削除だよ、投稿した小説が運営に削除されたの!」

 小説投稿サイト「オメガシティ」。
 閲覧数に応じてインセンティブ報酬という、ちょっとしたお小遣いがもらえるのが魅力だ。小遣いどころかこれで生活しているプロ作家もいるらしい。R-18作品を投稿することもできるが、他のアダルト投稿サイトと比較すると基準は厳しく、ある程度のラインを超えると削除されてしまうことがある。

 俺がこのサイトでエロ小説を投稿するようになってから数ヶ月。削除(厳密にいえば公開の取り消し)を食らうのは、これで2回目となる。

「どうせ変なの書いたんでしょ?ロリとかレイプとかさ。この変態!」

 彼女が俺を小突きながら言う。

「違う!今回の話は仲良くイチャラブするだけだし、男女とも28歳だ!」
「妙に細かいね……なになに、高校卒業して10年ぶりの再会、ねえ」

 彼女はモニターの前に座ると、俺の書いた小説を読み始めた。

「結婚しなくてもいいから妊娠させて欲しい?!キモッ、男の願望丸出しじゃん」
「男向けのエロ小説だからいいんだよ。それにこの作品は"嘘"がテーマだから、最後はこの二人は……」
「ネタバレしなくていいよ、自分で読むから」

 そう言いながら妻はテキストエディタをスクロールさせる。

「この生徒会長、モデルいるんでしょ?」

 妻が作中人物の設定について尋ねてくる。

「いねーよ、そもそも生徒会に入ってたわけでもなかったし、部活でもこんな女子はいなかったな」

 俺の小説には、自身の体験が元になっている話がないわけではないのだが、大抵はフィクションだ。

「ふーん。まぁ、そういうことにしておきますか」

 妻はにやにやしながら読み進める。

「あ、さすがに本番シーンはカットだね」
「そう、今までの投稿作品はそれでOKだったんだ」
「でもさ、その前のおっぱいにむしゃぶりつくシーンはNGなんじゃないかな」

 彼女は冷静に問題点を指摘する。

「うーむ、確かにそうかも知れないな。今まで削除されなかった作品ではその手前あたりからカットしてたものなぁ」

 しばらく本格的なエロ作品を投稿していなかったので、匙加減を忘れていた部分は確かにあるかも知れない。

「ま、どうせあっちのほうにも投稿してるんでしょ。バックアップも残ってるし、別に気にしなくていいじゃん」

 オメガシティで削除された作品や、掲載済み作品の「完全版」は、より規制の緩い別のサイトで公開することにしている。閲覧数などはあちらのほうが明らかに多く、お気に入りユーザーが可視化されるのも嬉しいのだが……。

「そうなんだけどさ、やっぱりインセンティブがもらえると嬉しいんだよな」

 趣味で投稿しているだけなので、ささやかながら報酬が出るのはやはり嬉しいものだ。実際、妻がさっきまで読んでいた漫画もインセンティブ報酬を使って購入したものである。

「運営としても広告収入のおすそわけみたいなもんだろうから、削除しないほうがお互いのためでもあると思うんだけどなぁ」
「このサイトも大きくなったからね。テレビでCM流れたりするし、どうしても保守的な運用になるのは仕方ないよ」

 極めて現実的な考察をしつつ、彼女は再び小説を読み進めた。

「一週間は消えないキスマーク?!うわぁ、あんたらしい!」
「キスマークっていいだろ?それも首筋みたいに目立つところじゃなくて、お互いの秘密みたいな形で胸元とかにさ」
「私の体にもさんざん付けてくれたっけねぇ」

 そう言いながら俺の体に頭をこすりつけてくる。

「うるさいな、お前のほうから求めてきたこともあるくせに」
「えへへ♪」

 照れくさそうに笑いながら、彼女はさらに俺に密着してきた。

「ところでさ、今の私の体にキスマーク付いてないんだけど?」

 このご時世、お互いに家にいる機会が増えた。しかし、だからといって夫婦のスキンシップが増えるとは限らない。異性というよりも家族としての側面が強くなり、一緒にテレビを見たりゲームをしたり、料理を作って一緒に食べたりするだけで満足してしまっていた。付き合い始めた頃はお互いの体にキスマークが絶えることがないほど積極的に求めあっていたのだが。

「ねえ、久しぶりに仲良くしない?」
「珍しいな、お前から求めてくるなんて」
「だってあんた、珍しく落ち込んでるんだもん。慰めてあげたいなって」

 妻が俺に寄りかかりながら口に出した。

「夫婦で野球拳しよっか?それとも学校の制服着ていちゃいちゃする?」
「なんだよ、俺の小説なんて興味ないとか言いながら読んでたりするんじゃないか」
「へへへ、好きな人が書いた文章だもん」

 彼女が口に出したシチュエーションは、俺がエロ小説で書いたものばかりだ。

「裸で徘徊とかはさすがに無理だけど、ヌードモデルにならなってあげてもいいよ、だらしないお腹でよければ。……あ、さすがにハメ撮りはやめてね」

 妻の方から様々なプレイを提案してくるとは驚きだ。俺の小説を読んだことで性癖を理解したのだろうか。

「ねえねえ、久々にラブホ行かない?そこなら思いっきり声出せるし」
「ラブホかぁ、本当に久しぶりだなぁ」

 結婚前や新婚時代はよく利用したのだが、最近はずっとご無沙汰だった。

「あのホテルってまだあるかなぁ。……ほら、初めてしたところ」

 俺はすかさずパソコンで検索する。
「お、あるみたいだな。しかもリニューアルしたばっかりだ。今なら空室も多いぞ」
「じゃあ決まりね!」

「ねえ、早く行こうよ。今からならフリータイムで夕方までたっぷり遊べるし」

 支度を終えた妻が俺を急かしてくる。

「そうだな、今日はもう仕事もないから久しぶりに一日遊ぶか!」

 こうして、俺たちは玄関を後にした。
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