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プロローグ
神様、Vtuberになる?
しおりを挟む「だから買っちゃったの!!!」
底辺YouTuberこと色上紫の悲痛な叫びがこだました。都内某所の1LDKで一人と一匹が配信機材に囲まれながらくつろいでいる。近所迷惑だが、幸い防音室だったので壁ドンされなかった。
「――何を買ったんじゃ?」
興味無さそうに尻尾を向けて返事したおおかみさまはぺらぺらと少女漫画をめくる。
「……アバター」
「あばたーってなんじゃー?」
「普段私たちって顔出しで配信してますよね?それをキャラクターになって配信する為のアニメーションです」
「ふむ、何とはなしにわかったが何故そんな物を買ったのだ?今のままでも配信できるじゃろ」
「……たの」
「――?聞こえんぞ、はっきり述べよ」
「……VTuberが人気出てて羨ましかったんです!私のYoutubeチャンネルは全然伸びないし、アバター買って金欠になったし、失敗したら泣きます!」
「とりあえずその手に持っておるウイスキー瓶を机に置くのじゃ酔っぱらい」
「……ぐすっ。だから配信して下さい」
「汝がやれば良いじゃろ、我は漫画読んでおるから好きにやれば良い」
「……たの」
「――?また声が小さいのう、なんじゃ言ってみよ」
「……アバターおおかみさまそっくりに作っちゃったの!!費用かさんでそれしか買えなかったし、おおかみさまの見た目が可愛すぎるからいけないんだ。この顔だけ綺麗狼!」
「それ誉めておるのか、貶しておるのか?汝はいつも不遜じゃが、酔っぱらうと本当にだめだめになるのう……。はあ仕方ない、居候の我も鬼ではないし配信くらいしてやろう」
「……ぐすっ。本当に?」
「泣くでないわ、ほれ布団で寝よ。風邪をひくぞ」
おおかみさまは泣き上戸の紫を寝室に連れていき、配信環境に座る。
「えー、これがこうでこうかの?」
紫が事前に配信準備をしてくれていたらしく、画面にはおおかみさまそっくりなアバターが映っていた。長い銀髪、蒼玉のような瞳に巫女装束。極めつけはピンと伸びる耳に、ゆらゆらする尻尾。
「本当に我にそっくりなんじゃが……これ神ばれ不可避ではないかのう。まあ調べてみると鬼、けろべろす、悪魔なんかの人ならざる者も配信しておるみたいじゃし、狼の神様が配信していても目立たないじゃろ。とりあえず配信すたーとじゃ!!」
🐺🍶よりおおかみさまの外見です!
最初に目を惹き寄せたのは月光を集めて作った様な長く濃い銀髪と水晶であしらわれた簪だった。整った相好には蒼玉をはめ込んだように光る瞳。華奢な体躯を古風な巫女装束で包んでおり、凄艶な佇まいだ。
そして明らかに胡乱なのは、人間のものとは似つかないピンと立ち上がったイヌ科の耳と、ゆらゆら揺らされている尻尾……。
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