海辺の光、時の手前

夢野とわ

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世界

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四時限目の授業が終わると、僕は学校の廊下を歩いていた。
意味もなく、ただゆらゆらと廊下を歩く。
昨日まで、有紀と仲良く話しをしていたこととか、その感覚が少し減ってしまったことを感じる。
音楽室の前まで来ると、昨日長谷川有紀と話しをしたことが、じわじわと身体に、広がり始める。
あの置時計。
十一時五十一分。
そんなことを、考えていると、また誘われるようにして、音楽室の中へと入ってしまった。
真夏の音楽室は、時が止まったようだった。
とても暑い。クーラーが止まっている時間の教室なので、しばらくいると、汗がじわっと吹き出るようだった。
そのまま、教室の隅に歩くと、そっとカーテンを開ける。
窓の外では、グラウンドを走っている生徒たちがいる。
光が滲んでいる。目が痛い。
また、僕は、あの置時計の前に近付いた。
やはり時間は、十一時五十一分で、止まっている。
僕は、そっとそれを手に取ると、しげしげと置時計の中を眺めた。
なんの変哲もないように思える、古い置時計だ。
しかし、じっくりと見ていると、目の奥がじわじわと痛くなる。
ただの柔らかい感触だと思っていたら、急にふらふらとして来て、僕の足元が弱くなり始める。
置時計を落とす。
それから、教室の外で大騒ぎをする、生徒たちの駆けつける声が聞こえただけだった。
僕もまた、この町から消える運命だった。
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