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羅刹鬼
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しおりを挟む*ライside*
白い閃光が島を包み吸収された。
それは、島を満たす命の源。
“魂を統べる”ボクの魂が、その本質を視る。
羅刹は生まれ変わった。
彼女を最初から守っていた“黒蛇”と、後から“鬼”と成した“白蛇”が彼女を哀れと思い一から生命を吹き込んだ。
“生と死”を間近で見て来た二匹は、
元々霊的力がついていた白い蛇は神と成り、島の守り主に。
黒い蛇は生き物を守り育む者に変化した。
黒蛇は、幼い羅刹を初めから見守って来た。
羅刹は彼女の子どもを初めて口にした。
大人に押さえ付けられ、こじあけられた口に押し込まれた黒蛇の子ども。彼女は、自身の子も、幼い羅刹も哀れと思い、見守る側に成ったのだ。
やがて羅刹に喰われ“魂”が羅刹に寄り添い加護した。
白蛇の言葉に嘘はなく、その加護の力で羅刹は転生出来たのだ。
朝陽が昇る。
新しい島の朝。
葉の間から差し込む陽の光りが眩しくて目を開ける。
まほろばの身体の上で伸びをして、彼を見下ろす。
「おはよう。まほろば」
ゆっくりと開いた金の瞳がボクを見つめる。
優しく……熱い眼差し。
「おはよう。ライ」
そう。彼だけが居れば良い。
そよぐ風が肌を撫でる。銀の髪が一度上空に流され、まほろばに落ちくすぐる。
もう“統べる者”の力は要らない。
“視る”眼を瞑る。
*
*まほろばside*
銀の長髪が朝陽に溶ける様に消えて行く。
それはまるで靄の様に風に流されていった。
俺の上にまたがったライが溜め息を吐いて元に戻る。
陽に輝く青い短髪。
額に白い一本角。
銀の瞳は黒が強く出ている。
「残念だったな」
俺の言葉に首を傾げるライの耳元に顔を近付けてうそぶく。
「いつもの倍の官能体験が出来なくなった」
真っ赤になったライが、顔を上げ、「それはまほろばの方でしょう?」柔らかい笑みと唇が落ちて来た。
能力が有ろうが無かろうが、ライはライで、
俺のただ一人の想い人。
温かい躰を抱きしめる。返る腕の優しさに自然と笑みが出る。
「愛している」
優しい言葉。
「愛してる」
その存在が奇跡。
島に風が舞う。
それは優しく、島の住民を包む。
潮の香るその風は、島の守り。
風の鳴く島。
鬼が造りし島。
その名は羅刹島。
思い付き、口にする。
「許されるなら、ここに帰ろう。」
眼を開いたライが「それは……楽しいだろうね」頷いた。
今は昔の故郷は遠く、道案内はどこにも居らず、どこにあるかも定かではない。
そんな故郷が懐かしいと思えた。
“地獄”はこの島の様に美しくは無かったが、確かに生まれた場所。
故郷。
だが、俺が本当に帰る所は、ライ。
俺の故郷はライその人なのだ。
***
*龍太郎side*
来た時は霧に覆われて居た海辺は、それは澄んだ海水の広がる白い砂浜で、その美しさに溜め息が出る。
その海水に足先を漬けてはしゃいで居る俺の樹利亜の美しさに。
長い長過ぎる黒髪が優しく風に揺られて宙を舞う。
あの髪が肌に触れた感覚を思い出し躰が震える。
「龍太郎?」
愛しい人の声で、白昼夢から目覚める。
「なぁに?」
ただ笑みが浮かぶ。
近寄る細い指が、俺に巻き付いて来て、身体に乗る。
「想い出させてどうするつもりだ?」
「残念でした。皆が来たのよ」
砂浜に続く林の中から数人の人影。
まほろばと、青い髪のライ。
続く元気と、空羅寿か?
「あら。どうしたの? 可愛らしい子」
樹利亜が嬉しそうに俺から立ち上がり空羅寿に向かう。
その腕に綺麗な着物に包まれた赤ん坊が居た。
「羅刹です」
「生まれ変わったんだ。そんで俺が父親になるんだ」
元気の満面の笑みが愛を勝ち取った事を物語って居る。嬉しい限りだ。
生まれ変わった羅刹? 後で詳細を訊かないとな。
「この島を出る時が来たんだな?」
「何の危険も無い島に成ったからね。
ここは二頭の女蛇が守る島。
空羅寿と羅刹は守られ健やかに暮らして行ける」
ライの言葉に
「やっぱり女しか住めない島なのか?」
ちょっとした疑問。
「いいえ。これからは望むならどなたでも歓迎します」
空羅寿の瞳には元気が映っている。
「一件落着か」
虎之介を呼ぶ時が来た。
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