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羅刹鬼
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しおりを挟むその島は確かに存在した。
その島は美しく静かに時が流れる。
若い者、年老いた者、子ども達。
誰もが幸せで、
誰もがにこやかに、
女性のみが存在出来る島。
「羅刹国」
それは昔話。
南の方とか、
東の方とか、
どこだかに存在した女だけが生た島。
男はただ“生”を運ぶだけのモノ。
役目を果たした男は存在を否定される。
存在を否定された男は―――
ただの食糧。
女は闇に溶ける様に乱れて居た。
一心に精を貪って、男はそれに応えて居る。
それはやがて、実を結ぶ。
女は恍惚として、突如変化する。
男は、抵抗出来ぬまま、ただ、生を喰われる。
バリバリ と、
血肉を、そのすべてが、己の子どもの為に。
それはまるでカマキリの生態。
喰い終わり、静寂に包まれたそこには、赤い眼だけが、闇に光って居た。
***
………………………
*樹利亜side*
これは、どう考えたら良いかしらね?
「どうもこうも、女って恐ろしい」
私の下で、温かくたくましい身体が動く。
「それはどう言う意味かしら?」
元気が溜め息を吐く。
「樹利亜。何で毎回裸で俺の上に居るんだよ」
「あら。裸体で眠るのは身体に良いのよ?」
大きく口を開けたまま、もういい。と、不貞腐れて身体を投げ出す。
「だぁって、やっぱりお母さんには甘えたいじゃない」
「おか……違うだろう? 育ての親で、姉で、現在は弟」
そんな事言いながらも、しっかりと腰を抱き締めてくれて、そのたくましい胸に顔を寄せる。
「冗談はさて置き、この夢は“千里眼”が視たものよね?」
「間違いない」
「赤い眼」
「あぁ、朱色の鬼だ」
*ライside*
「千里眼とは、鬼探知機みたいなもんなんだな」
感嘆の声を上げて龍太郎さんが言う。
市松組に集まったボク達は、元気と樹利亜が感知した朱色の鬼の話をしていた。
「二人で居ると余計感じるみたいね」
樹利亜が元気にくっついて笑ってる。
「女だらけの島と言ったか?」
市松の親父さんが、難しい顔をする。
「イメージはそうです。男性は、子作りに使われて後は食糧になる」
元気の感想に、その様子を聞けば聞く程、危険を感じる。
「やな島だな」
吐き捨てるように言う龍太郎さんに、頷いた親父さんが、
「伝説の島だ。“羅刹国”鬼女だけが棲むと言われる島の……それはどこにあるとも分からぬ。伝説と思われていた島」
「どれだけの人数が居るか判るか?」
考えていたまほろばが口を開いた。
「かなり居る?」
「島の大きさは判るが、人数までは……樹利亜の言う通り、かなり居るって曖昧な感じしか。
探る事も出来るけど、あちらの力が強いと気付かれてしまうおそれがある」
元気の言葉は、真剣さを帯びて居る。
「だが、視た時点で、鬼退治をする事は決まっている」
まほろばの言う通り、危険だから感知した。
危険を及ぼすおそれを無意識に千里眼が予知している様なものだ。
元気と樹利亜の“千里眼”は、前世から授かって来た巫女の予知能力。
スゴいなぁ……と、素直に思う。
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