鬼に成る者

なぁ恋

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鬼罪

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*ライside*


あれから服を着たまほろばが、ボクを振り向かず外へ出た。

空には赤い満月が浮かんでた。
懐かしい。
出逢いの時と同じ月。



言われた言葉を繰り返し考える。



近付くな?
鬼が抑えられない?


食事時の記憶が飛んでる。
ダルい身体を押してベランダに出ると、

「ご飯。作ってよ」

樹利亜が破れた壁から顔を覗かせた。
言われて自分もお腹空いてる事に気付いた。

「良いよ」



*樹利亜side* 


悩んでる。
こればかりは何とも口出せない。

“鬼が抑えられない”のは、そのままの意味。

初めての発情期。
極度の興奮状態になってた。ただでさえライの血液を糧としているのだから、それこそ喰べてしまうかもしれない。
一度は喰べちゃってるから尚更かな。

だから余計に“種”を残さない行為をするのは、理性がないと出来ないとまほろばは考えた。

寿とは違うから。



て。ライに話す義理はないから。まだ黙っておく。
 
悩めばいい。
そんな二人を見てると私的には……悪いけど、
スッキリする。
 
前世を引き摺ってるのは私の方かな。
 
***
  
*虎之介side*

一夜明け、鏡を見て安心する。

元に戻ってない。
頭もふさふさのまま


そして、“移動”する。


「うえ!」

毎度の朝の挨拶で大輝の上に乗っかる。

「―――虎之介っ!」

不機嫌な大輝に顔を寄せ、口付ける。

「おはよ」

笑みを向けると、溜め息混じりの吐息を吐いた大輝がほほ笑んでくれた。

口元近くにある頬の傷。撫でて、不思議に思う。この傷が出来たのは何故?
3cm程の傷。真ん中が盛り上がって両端に裂けた様な……
結構目立つのに何で、今の今まで気にならなかったんだろう?


「「虎之介」」


頭の中にノイズと共に“声”がした。
僕を呼ぶ声。

気のせい?


「「虎之介……」」


呼んでる。
にじんだ声。
男とも女とも解らない太くて高い声。


「虎之介?」

大輝の声で我に返る。

「……大輝。この傷、何時出来たの?」

難しい顔。

「さあ、何時だったかな?」

見るからに誤魔化してる。


「「虎之介」」


頭に直接響く声。段々と大きくなって行く。
頭を振る。

「どうした?」
「ん~? 何だろ。誰かに呼ばれてる気がする」
「寝ぼけてるのか?」
「そんな事ないよ」

しっかり起きてる。
幻聴かな?

「今何時だ?」
「5時過ぎ」

早いだろう。文句を言いながら立ち上がると、

「飯作るわ」

嫌な顔一つせず、大輝がにこやかに部屋を出る。


「「トラノスケ……」」

確かに聞こえる。
でも、答えちゃいけない気がした。
 
 
***
  
*まほろばside*

赤い月が明るい陽の光りに消されて行くのを見ていた。

躰の内側、
中心辺りが熱い。

頭の芯が痺れている。

自分の躰なのに、
思う通りならない。

高いビルの屋上、看板の影に隠れる様にして座って居た。

風が強く吹き抜ける。

朝の冷たい風。
それさえこの熱を冷ましてはくれず、

「ライ……」

想い人の名を呼ぶ。
それだけで、震える躰。

鬼の、子の成し方は発情期が来ると始まる。
鬼は一度発情すると“実”を結ぶまで交わる事を止めない。本能で解る。
それは早い者は一度で済み。長ければ数日かかる者もいた。
子どもが出来れば、交わりは終る。


そこに愛は無く、も子孫を残す手段でしかない。
何度か見たそれは、獰猛で互いに対する気持ちがないから躰は傷付き。酷い有様で、



それしか知らない。



ならば、人間と子を成した者達はどうしたのだろう?

考えても答えは出てこない。


躰が熱い。


朝の訪れ。治まらない躰の熱。

ライの傍へ戻れるだろうか?

彼を想うと辛くて、
傍に居たくて、
触れたくて、
堪らない。
 
 
自身を抱き締め、うずくまる。


躰が熱い……
 
 
 
 
 
 
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