鬼に成る者

なぁ恋

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餓鬼

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………………………

***


「うえっ……」

その視えた映像に気持ち悪くなり、起き抜けに吐いた。

視えたものは何だったんだ?

ベットから起き上がると、怠い身体を引きずる様にして冷蔵庫を開ける。水のペットボトルを掴むと、一気に飲み干す。

二つの心臓が有り得ない程早い速度で鳴っていた。

俺のものと、樹利亜のものも。

「ごめんな。姉さんまで視ちゃったのか」

胸に手を置くと目を閉じ深く深呼吸。
ココロ落ち着ける。

「あれは、朱色の鬼だった」

窓の光りを見て、まだ夜明け前だと確認する。
二人が帰るのはもう少し。

“視た”って、感覚。
リアルで、匂いまで感じられた。

これは新しい能力?
あまり嬉しいものではないが、何にせよ、放っておく事は出来ない。

「ヤな能力だな」

空になったペットボトルをゴミ箱に放ると、ベットを簡単にそうじし、もう一度寝転がる。

「早く帰って来い!」

苛立ちを拳に込め、壁を殴る。
鈍い音と共に拳台の大きさに空いた、穴。

「あ゛」

忘れてた。
馬鹿力。

無残に穴の空いた壁。

コンクリートの粉が付く拳を息で吹くと、

「慣れないとな」

自分の状況に。
今の立場に。

空いた穴の先を見ながら、漠然と思う。
慣れるしかないのだから。
 
先刻視た光景にまた気持ちが悪くなる。

「勘弁してくれよ」
 
両手で顔を覆うと、小さく呻く。
 
 
  
*ライside*

帰宅した途端、ベランダのドアから元気が勢い良く入って来た。

「遅いっ!!」

「何? いつもと同じ時間だけ・ど……」

って答えてる途中に抱き締められる。

「嫌─────な夢。てか、視た!」

何を?
口を開く前に、頭に送られて来た映像。

赤い瞳。
赤い口。

「うわぁ……気持ち悪い」

喉元まで上がる酸味を慌て飲み込む。

「解ったから! 放して!」

「俺の気持ち解る?? 寝ても覚めてもちらつくんだ! 変になるっ」

元気の切羽詰まった顔。抱き返し少し背伸びして頭を撫でてやる。

「ライ?」

背後からまほろばの声。

振り向こうとして顔を上げると、いきなり重なる唇。

「んん!?」

元気がキスして来た!


───ゴンッ


鈍い音がして、元気が後ろへ倒れていた。
床に転がるドアノブ。

ドアノブ?

まほろばを振り向くと、冷静に見える顔。でも背後の玄関ノブが無くなってる。

もぎ取って投げた?

「あは……はは───」

ダメ!

堪え切れず爆笑してしまった。
まほろばの今までのイメージがっ!

何だか可愛くて。

こんなまほろばを引き出す元気に感謝すらして、お腹が痛くなるまで笑い転げた。
 
 
  
*元気side*
 
「まほろばは容赦ないね」

額がまだピリピリしてるし。

しれっとしたまほろばが、

「……“千里眼”だな。
朱色の鬼と長く繋がって居た事で、奴等を感知する能力が目覚めた」

淡々と話す。

絶対腹ん中煮えくり返ってる筈。

なのに。

無表情。

まほろばのココロは読めなくて。
面白くない。

「フ……」

あ。笑った。
確かに、声を出して。

「もう良いから、真面目に聞け。」

優しさの宿った金の瞳。
何で懐かしいんだろ。

この想いを早く解明したい。
けど……

「そうだな。あの様子だと犠牲者は増えるばかりだ」

「あったよ」

テレビニュースを観ていたライが、声を出す。
放送されていたのは、最近起こっている行方不明者の事。

十代の少年少女がとある地域を中心に居なくなっていて現代の神隠しか? 何て取り上げられていた。

数にして19人。

全員が犠牲者とは思いたくはない。

「“千里眼”は相手の位置も把握出来るのか?」
   
黙っててるだけしか出来ない能力ならいらない。

「出来る。だが、話しからして、朱色の鬼もお前を感知している様だな」

重なった視線。
そう、奴は俺の眼をみていた。

「なら、おびき出せるんじゃないか?」

「どうやって?」

ライが心配げに覗き込んで来た。

「俺は美味しいぞ! ってさ“色気”を送る」
 
少し右眉端を上げたまほろばが挑戦的に瞳を輝かせた。
 
 
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