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出逢い編
迷③
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*龍side*
最初は小さな炎から始まった。
自覚したのは大好きなリンに、裏切られた後。
悲しくて、辛くて……。
でも、その行為は……、身体の奥底にある、何かを目覚めさせた。
身体は熱く……熱く燃える様な感覚が支配して、手の平から、星の煌めきの様な小さな無数の炎が現れた。
ココロ奪われた。
だから、リンの下から逃げ出した振りをして、
彼を、好きな様に弄んだ。
これは、リンへの“罰”肌を合わせるのも、ボクの気まぐれで、
彼を……夢中にさせる……。
ボクの躰と、この冷めた視線で。
“情熱”は、隠して“炎”の糧にした。
好奇心から、ルドウと肌を合わせた。
彼は、リンのそれよりも、ボクを夢中にさせた。
ボクと同じ“ニオイ”を感じたから、
触れ合う度に“力”が付く。
毎日、毎日をルドウと過ごして、“力”は十分に育って行った。
……ルドウ、愛しい人。
ボクは、一緒に“逝ける”相手を探してた。
この、汚れた身体を、“炎”で清め、やり直す為に……。
だから、
おいで、この、ボクの所へ……。
***
*凌児side*
告白し終えた尾崎は、静かに、ただ俺の隣りに座って居た。
「……好きな気持ちは、どこから来るモノ?」
無意識に、呟く様に訊いていた。
「さぁ。分からんね。何故こんなに惹かれるのか…自分でも……」
解る筈が無い。
気持ちは見えないモノだから。
ただ、誰でも、誰かを必要としていて……気持ちに気付いたら、欲しくなる……。
その相手のすべてが、欲しくなる。
“綺麗なだけの想い”なんて、有り得る筈もなく。
「ただ、そうだな。最初に好きになった方が……弱い。望むなら、きっと何でも叶えてやりたくなる」
寂しげなほほ笑みを向けた尾崎は、小さく「すまんな……」と、呟いた。
大きな身体が小さく見えて、尾崎の事を、憎みきれない自分が居た。
年齢も、性別も、
もしかしたら関係ないのかもしれない。
“想う”気持ちには……。
今、何時なんだろう?
窓の無い室内に、ロウソクが一本灯してあるだけで、時間の感覚がない。
その、小さな炎が、一瞬大きく燃え上がり、静かに、おにぃが入って来た。
「良い子にしてた?」
俺を見る瞳に、何かを感じる。
嫌な予感。
「リン。何もしちゃダメだよ。見てるだけ……判った?」
緩い笑みを浮かべたおにぃは、恐ろしく綺麗に見えた。
俺の顎に指をかけ、下に指を這わして来た。
学ランの首もとを掴み、一気に引いた。
音を立てて、シャツごと破ける。
あらわになった肌に、恐怖で鳥肌が立つ。
背筋が、冷たくなる。
温かい指先が、肌を滑りおり、右下辺りで止まる。
「ボクは……この時間が、苦痛だったよ。誰も……助けてくれない」
指先の触れている箇所が、ジリジリと、熱さを増して行く。
「熱……いっ!」
指が離れた後、その場所にあった指の跡が、まるで、タバコを押し付けて出来た火傷の様になっていた。
「何をされてたか判る?」
また、手の平を同じ場所に置き、
「あっ! ―――っ!!」
痛さに涙が滲む。
五本の指が、爪を立て、長い傷を付ける。
「……これを、毎日、一時間……四年、されてたんだよ?」
着ていた服をはだけ、お腹から胸下辺りに広がる傷跡を見せる。
「お前は、悪い子……お前は、ダメな子。お前は……お前はっ!」
静かに言い始め、語尾は叫ぶ。
そして、
無表情になり、
「ダカラ……殺シタ。モウ“龍”ワ、耐エラレナカッタカラ」
機械の様に話すおにぃは、また目線は遠くにあり、ブツブツと、呪文の様に何やら呟いて、
「……リン」
壁際に立ちつくし見ていた彼は、呼ばれて無言で近付く。
*リンside*
破かれた服を渡される。
彼の血痕に、焦げた跡のある服の切れ端。
「……これを、ルドウに渡して、それだけで良いから。彼には判るから……」
感情のない瞳に、俺の姿は映ってはいない。
「お前は……」
拳を握り、首を振る。
「いや……判った」
そう、これは俺への“罰”。龍が俺を見ないのは、俺を必要としないのは、俺が犯した“罪”への“罰”
償えば、いずれは、帰って来るのだろうか?
俺の、腕の中へ。
哀しい想いはココロに封じて、
言われたままに、
彼の思うままに、
俺は動く。
罪のない少年は、見ないふりをして。
愛しい人を、
ただ、取り戻す為に……。
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