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<やまねこのふえ>のお話
27 森と動物
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植物たちは、
ふえの音の影響で、一度は枯れ果てるが、
わずかに残った種や、
地中で生きのびた根から再生する。
しぶとく、強く。
その生命力は、森の動物たちの心配など、
取るに足らないものだと言わんばかりに笑っているようにも見えました。
「このような営みは、太古から折に触れてくり返されてきているではないか。
動物どもよ、いったい、ふえの音がなんだというのか?」と。
そんな、森の再生の姿を間近で見て、
青い湖のある森のカラスは、
わからなくなったのです。
森は一度枯れたとしても、なにも困っていない。
困っているのは、我々動物だけなのかもしれない。
だとしたら、
あのふえは、ほんとうに悪いことをしているのだろうか?
「我々カラスは、やまねこを追うことに執着しすぎた。
もう、やつを悪者として追うことしかできなくなっている。」
青い湖のある森のカラスがうなだれるのを見て、
うさぎの楽器やさんは言いました。
「森が再生しても、
元どおりになるわけではない。
まったく新しい森が誕生するんです。
そこには、青い湖はないかもしれない。
動物たちが、これまで青い湖のまわりで、
生きて、
コツコツとつくりあげてきたものは、なくなってしまったのです。
そんなに、ききわけが良くなる必要なんて、ありませんよ。」
あまりにも悲しい経験をしたものは、
自分の側が悪かったからこんなことになったのではないかと思ってしまうことがあります。
まるで、高いところから俯瞰して
悟ってしまったかのように。
…青い湖のある森のカラスは、もう飛べるようになったので、
俯瞰できますがね!
北の森の動物たちのつくりあげてきたものが、今、なくなろうとしている。
だから、
北の森のカラスは、必死で止めようとしている。
「行きましょう、我々も。
たとえ悪者じゃなくても、
阻止しましょう!
大切にしたいものを守るために。」
うさぎの楽器やさんは、宿に戻って
ほんの少ししかない荷物をまとめると、
青い湖のある森のカラスと共に、
北の森に向かいました。
北の森のカラスをリーダーとした自警団たちは、
静かに、北の森に到着していました。
呼びに行った若いカラスをガイド役に、
白キツネと合流します。
「ふえ吹きのやまねこは、月の丘だ。
間違いない。
あのふえは、おれが扱っていたことのある品物だ。忘れるもんか。
やまねこのふえのウワサをきいて、
そうじゃないかと思っていたが、実際見た。
あれは、間違いなく、おれがうさぎにくれてやった、きみの悪い枝だ。」
白キツネは、到着したカラスたちに説明しました。
その言い方は、少し自慢げにも聞こえました。
「月の丘…」
リーダーの北の森のカラスは、
きき覚えのある場所に、確信と戸惑いを感じました。
うさぎと一緒に行ったあの場所は、
悪い木の住処だったところだ。
だとすると、あのふえは、居心地のいい場所で力を蓄えているに違いない。
いっそうの警戒が必要だ。
そこへ、きつねの子どもがやってきて合流しました。
自警団が北の森にやってくることは、
もちろん森の長にも、話を通してあるのです。
きつねの子どもは、ひとまわり大きな若いきつねになっていました。
北の森のカラスが、うさぎの楽器やさんと共にこの森に来ていたのは、
ほんの数カ月前のことだったのに、動物の子どもの成長は、はやいもんです。
きつねの子どもは、北の森のカラスを見つけると、
すこし低くなった声で話しかけました。
「大じいじ、あの後、間もなく死んじゃったんだ。
朝おきたら、もう動かなくなっててさ…。
あの枝をうさぎのおじさんに渡して、
役目は果たしたって言ってたよ。」
今、きつねの子どもは、森の長である父親の助けをして動いています。
今回、長の代わりに、一軍を率いてカラスたちに加わります。
「そうだったのか、長老…。」
北の森のカラスは、長老とゆかいに話していたことを思い出し、
寂しそうな目をしました。
あの時は、自分も、まさか自警団のリーダーとして、この森に戻るとは思ってもみなかった。
「長老は、おまえを見守っているはずだ。
頼んだぞ。」
「うん。」
きつねの子ども、いいえ、きつねの若者は、素直にうなずきました。
きつねの若者の率いる一軍の中には、
子どもの頃から月の丘で遊んでいた仲良しの友たちも含まれていましたから、
月の丘のことは知りつくしています。
今回の作戦は、きつねの若者の一軍がリードして動くことになりました。
メンバーは、きつねの友だちたちだけではありません。うさぎや、リス、くまなどもいます。
やまねこが、月の丘から降りて、留守をしているあいだに、
罠を仕掛けようというのです。
手順が決まると、
「締まっていこう。」と、
きつねの若者は、始動の声をかけました。
ふえの音の影響で、一度は枯れ果てるが、
わずかに残った種や、
地中で生きのびた根から再生する。
しぶとく、強く。
その生命力は、森の動物たちの心配など、
取るに足らないものだと言わんばかりに笑っているようにも見えました。
「このような営みは、太古から折に触れてくり返されてきているではないか。
動物どもよ、いったい、ふえの音がなんだというのか?」と。
そんな、森の再生の姿を間近で見て、
青い湖のある森のカラスは、
わからなくなったのです。
森は一度枯れたとしても、なにも困っていない。
困っているのは、我々動物だけなのかもしれない。
だとしたら、
あのふえは、ほんとうに悪いことをしているのだろうか?
「我々カラスは、やまねこを追うことに執着しすぎた。
もう、やつを悪者として追うことしかできなくなっている。」
青い湖のある森のカラスがうなだれるのを見て、
うさぎの楽器やさんは言いました。
「森が再生しても、
元どおりになるわけではない。
まったく新しい森が誕生するんです。
そこには、青い湖はないかもしれない。
動物たちが、これまで青い湖のまわりで、
生きて、
コツコツとつくりあげてきたものは、なくなってしまったのです。
そんなに、ききわけが良くなる必要なんて、ありませんよ。」
あまりにも悲しい経験をしたものは、
自分の側が悪かったからこんなことになったのではないかと思ってしまうことがあります。
まるで、高いところから俯瞰して
悟ってしまったかのように。
…青い湖のある森のカラスは、もう飛べるようになったので、
俯瞰できますがね!
北の森の動物たちのつくりあげてきたものが、今、なくなろうとしている。
だから、
北の森のカラスは、必死で止めようとしている。
「行きましょう、我々も。
たとえ悪者じゃなくても、
阻止しましょう!
大切にしたいものを守るために。」
うさぎの楽器やさんは、宿に戻って
ほんの少ししかない荷物をまとめると、
青い湖のある森のカラスと共に、
北の森に向かいました。
北の森のカラスをリーダーとした自警団たちは、
静かに、北の森に到着していました。
呼びに行った若いカラスをガイド役に、
白キツネと合流します。
「ふえ吹きのやまねこは、月の丘だ。
間違いない。
あのふえは、おれが扱っていたことのある品物だ。忘れるもんか。
やまねこのふえのウワサをきいて、
そうじゃないかと思っていたが、実際見た。
あれは、間違いなく、おれがうさぎにくれてやった、きみの悪い枝だ。」
白キツネは、到着したカラスたちに説明しました。
その言い方は、少し自慢げにも聞こえました。
「月の丘…」
リーダーの北の森のカラスは、
きき覚えのある場所に、確信と戸惑いを感じました。
うさぎと一緒に行ったあの場所は、
悪い木の住処だったところだ。
だとすると、あのふえは、居心地のいい場所で力を蓄えているに違いない。
いっそうの警戒が必要だ。
そこへ、きつねの子どもがやってきて合流しました。
自警団が北の森にやってくることは、
もちろん森の長にも、話を通してあるのです。
きつねの子どもは、ひとまわり大きな若いきつねになっていました。
北の森のカラスが、うさぎの楽器やさんと共にこの森に来ていたのは、
ほんの数カ月前のことだったのに、動物の子どもの成長は、はやいもんです。
きつねの子どもは、北の森のカラスを見つけると、
すこし低くなった声で話しかけました。
「大じいじ、あの後、間もなく死んじゃったんだ。
朝おきたら、もう動かなくなっててさ…。
あの枝をうさぎのおじさんに渡して、
役目は果たしたって言ってたよ。」
今、きつねの子どもは、森の長である父親の助けをして動いています。
今回、長の代わりに、一軍を率いてカラスたちに加わります。
「そうだったのか、長老…。」
北の森のカラスは、長老とゆかいに話していたことを思い出し、
寂しそうな目をしました。
あの時は、自分も、まさか自警団のリーダーとして、この森に戻るとは思ってもみなかった。
「長老は、おまえを見守っているはずだ。
頼んだぞ。」
「うん。」
きつねの子ども、いいえ、きつねの若者は、素直にうなずきました。
きつねの若者の率いる一軍の中には、
子どもの頃から月の丘で遊んでいた仲良しの友たちも含まれていましたから、
月の丘のことは知りつくしています。
今回の作戦は、きつねの若者の一軍がリードして動くことになりました。
メンバーは、きつねの友だちたちだけではありません。うさぎや、リス、くまなどもいます。
やまねこが、月の丘から降りて、留守をしているあいだに、
罠を仕掛けようというのです。
手順が決まると、
「締まっていこう。」と、
きつねの若者は、始動の声をかけました。
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