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<やまねこのふえ>のお話
3 懐かしい森
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うさぎの楽器やさんは、懐かしい風景を、見渡していました。
銀色の森の倍くらい広い、大きな森です。
あの、ふえの枝について、知るために、まず行くべきところは、
うさぎの楽器やさんが、若いうさぎだった頃に暮らしていた、この森でした。
冬桜は、この森に生えていたわけでは、ありませんでしたが、
あの枝は、うさぎの楽器やさんがこの森に暮らしていたときに、
ある動物からもらったのです。
それは、引っ越して来たばかりの
白キツネでした。
その頃は、森に、お店など、ほとんどありませんでしたし、
うさぎの楽器やさんも、まだ、楽器やを始めようか、と考えているだけで、
いくつかの楽器を作って、たまに、露店を開いたりしていました。
その露店に、ある日、
白キツネが現れたのです。
「あんた、この枝で、なんか作らねぇか?」
と、言ってさし出したのが、
あの冬桜の枝でした。
するすると手ざわりのよい、その枝を見たとたん、
うさぎの楽器やさんは、ふえを作りたくなりました。
「つくらなければ。」とさえ、思ったのです。
はたして、あの白キツネが、まだ、この森に居るかどうかは、わかりません。
「まず、そうだな…。
アナグマのルーズのところに行ってみよう。」
うさぎの楽器やさんは、よく見知った友人の家を訪ねることにしました。
うさぎの楽器やさんの友人、アナグマのルーズは、まだ、当時と同じところに住んでいました。
アナグマのルーズは、うさぎの楽器やさんを見ると、あっ、という顔をして、言いました。
「おまえ、楽器やのロンじゃないか!」
ここへ来て、初めて明かしますが、
うさぎの楽器やさんの名前は、ロンというのですよ!
もっとも、いまは、奥さんからでさえ、名前で呼ばれることは、めったにないですがね!
大人になると、奥さんからは「あなた」とか、子どもたちからは「お父さん」と、呼ばれるようになり、
森の動物たちからは、「うさぎの楽器やさん」と、呼ばれていたので、
うさぎの楽器やさんも、自分の名前を、うっかり忘れていたほどです。
アナグマのルーズは、若い頃をともに過ごした、気の合う存在でしたから、
うさぎの楽器やさんが、ロンと呼ばれていたころ、ひまつぶしに、
一緒に、露店の店先に座ってくれたこともありました。
うさぎの楽器やさんとルーズは、
それぞれの近況を話しました。
すると、ルーズがやもめ暮らしをしているってことが、わかりましたよ!
「ルーズ、やまねこのふえのウワサを知っているかい?」
うさぎの楽器やさんは、本題をきりだしました。
「なんだよ、あれ、おまえが作ったのかい?」
ルーズは、冗談のつもりで、ひやかしましたが、
うさぎの楽器やさんが、だまったので、
焦りました。「ほんとかよ…。」
「露店、やってたろ、それで、
いつだったか、白キツネが来ただろ。」
「あの時の、枝か!」
ほんのささいな出来事だったはずですが、
ルーズは、はっきりと覚えていました。
「あの白キツネ、まだ、この森にいるかい?」
「いないな。しばらくの間は、いたと思うけど、
いつのまにか見かけなくなった。
おまえ、あの枝で、ふえを作ってから、
本格的に、楽器やをやるって言い出したんだよ、な!」
そんなことが、あったろうか?
うさぎの楽器やさんは、自分では、忘れていました。
ルーズは、記憶をひっぱりだしながら、
もうひとつ、言いました。
「そういえば、
あの白キツネは、北の森から来たんだって、だれかにきいたことがあるよ。
だれだったかなぁ。」
「北の森…。」
白キツネに会えなくても、
北の森が、冬桜の故郷かもしれないと、わかっただけで、ありがたいと、
うさぎの楽器やさんが思っていると、
「ああ、フクロウのホーロウ先生だ。
天文台の!」
と、ルーズが思い出しました。
「ホーロウ先生か。懐かしいな!
おれ、ホーロウ先生の望遠鏡をこわして、
おこられたこと、あるんだ。」
まるで、自慢でもするように、うさぎの楽器やさんがいいました。
「ちょうどいい。
久しぶりに、会いに行こう!」
うさぎの楽器やさんは、ルーズの家の次に、
天文台に向かうことに決めました。
銀色の森の倍くらい広い、大きな森です。
あの、ふえの枝について、知るために、まず行くべきところは、
うさぎの楽器やさんが、若いうさぎだった頃に暮らしていた、この森でした。
冬桜は、この森に生えていたわけでは、ありませんでしたが、
あの枝は、うさぎの楽器やさんがこの森に暮らしていたときに、
ある動物からもらったのです。
それは、引っ越して来たばかりの
白キツネでした。
その頃は、森に、お店など、ほとんどありませんでしたし、
うさぎの楽器やさんも、まだ、楽器やを始めようか、と考えているだけで、
いくつかの楽器を作って、たまに、露店を開いたりしていました。
その露店に、ある日、
白キツネが現れたのです。
「あんた、この枝で、なんか作らねぇか?」
と、言ってさし出したのが、
あの冬桜の枝でした。
するすると手ざわりのよい、その枝を見たとたん、
うさぎの楽器やさんは、ふえを作りたくなりました。
「つくらなければ。」とさえ、思ったのです。
はたして、あの白キツネが、まだ、この森に居るかどうかは、わかりません。
「まず、そうだな…。
アナグマのルーズのところに行ってみよう。」
うさぎの楽器やさんは、よく見知った友人の家を訪ねることにしました。
うさぎの楽器やさんの友人、アナグマのルーズは、まだ、当時と同じところに住んでいました。
アナグマのルーズは、うさぎの楽器やさんを見ると、あっ、という顔をして、言いました。
「おまえ、楽器やのロンじゃないか!」
ここへ来て、初めて明かしますが、
うさぎの楽器やさんの名前は、ロンというのですよ!
もっとも、いまは、奥さんからでさえ、名前で呼ばれることは、めったにないですがね!
大人になると、奥さんからは「あなた」とか、子どもたちからは「お父さん」と、呼ばれるようになり、
森の動物たちからは、「うさぎの楽器やさん」と、呼ばれていたので、
うさぎの楽器やさんも、自分の名前を、うっかり忘れていたほどです。
アナグマのルーズは、若い頃をともに過ごした、気の合う存在でしたから、
うさぎの楽器やさんが、ロンと呼ばれていたころ、ひまつぶしに、
一緒に、露店の店先に座ってくれたこともありました。
うさぎの楽器やさんとルーズは、
それぞれの近況を話しました。
すると、ルーズがやもめ暮らしをしているってことが、わかりましたよ!
「ルーズ、やまねこのふえのウワサを知っているかい?」
うさぎの楽器やさんは、本題をきりだしました。
「なんだよ、あれ、おまえが作ったのかい?」
ルーズは、冗談のつもりで、ひやかしましたが、
うさぎの楽器やさんが、だまったので、
焦りました。「ほんとかよ…。」
「露店、やってたろ、それで、
いつだったか、白キツネが来ただろ。」
「あの時の、枝か!」
ほんのささいな出来事だったはずですが、
ルーズは、はっきりと覚えていました。
「あの白キツネ、まだ、この森にいるかい?」
「いないな。しばらくの間は、いたと思うけど、
いつのまにか見かけなくなった。
おまえ、あの枝で、ふえを作ってから、
本格的に、楽器やをやるって言い出したんだよ、な!」
そんなことが、あったろうか?
うさぎの楽器やさんは、自分では、忘れていました。
ルーズは、記憶をひっぱりだしながら、
もうひとつ、言いました。
「そういえば、
あの白キツネは、北の森から来たんだって、だれかにきいたことがあるよ。
だれだったかなぁ。」
「北の森…。」
白キツネに会えなくても、
北の森が、冬桜の故郷かもしれないと、わかっただけで、ありがたいと、
うさぎの楽器やさんが思っていると、
「ああ、フクロウのホーロウ先生だ。
天文台の!」
と、ルーズが思い出しました。
「ホーロウ先生か。懐かしいな!
おれ、ホーロウ先生の望遠鏡をこわして、
おこられたこと、あるんだ。」
まるで、自慢でもするように、うさぎの楽器やさんがいいました。
「ちょうどいい。
久しぶりに、会いに行こう!」
うさぎの楽器やさんは、ルーズの家の次に、
天文台に向かうことに決めました。
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