うさぎの楽器やさん

銀色月

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<森のオルガン>のお話

3 森のオルガン

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その木は、たしかに半分枯れていました。

枯れた幹は、中が空洞になっていて、
樹皮は、なんともいい状態で乾いています。

枝先の少ない葉には、ほんの少しの道すじで、水分が届けられているのでしょう。
ただ、病気や、弱っているようでは、ありません。

凛とした、気品のあるたたずまいをしているのです。


まわりに生えた、銀色トウヒたちに、
頭の上で、覆いつくされ、
銀色の下葉の間からこぼれ落ちる日差しが、スポットライトのように、その木と、うさぎの楽器やさんを、照らしています。

うさぎの楽器やさんは、オルガンだと言いましたが、
鍵盤らしきものは、まだ、見当たりません。

でも、

その木が、なんの楽器になりたがっているか、うさぎの楽器やさんは、ちゃんとわかって言ったのだと、
ニノくんはわかりました。

そうやって、今までも、楽器を作ってきたのですから。


うさぎの楽器やさんは、ていねいに中の空洞を削ったり、補強のオイルを塗ったりしています。

背の高いはしごもかかっています。
 

うさぎの楽器やさんの道具カバンは、
開けると、中身をすべて見渡せるように、階段のようになっていて、
お店の作業机にならんでいた、ノミや、ブラシが一式、入っています。


ニノくんは、うさぎの楽器やさんの器用な手先と、いろんな道具を、次々に持ち替えて使う、ムダのない動きに、魅入られていました。

「なんて、美しい動作だろう。

小さな楽器も、こんなに大きな楽器も、
うさぎの楽器やさんは、同じ手つきで、
こつこつと作り上げていくんだ。

そして、いつか、かならず完成する。」


下葉に反射した、小さな日の光が、
雲母のようにキラキラと、輝いています。
 


「ニノくん、お店は、どうしたの?」

と、うさぎの楽器やさんにいわれて、
ニノくんは、やっと、アッ、とテンくんの顔を思い出しました。
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