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第一章 ミスで始まる異世界転生

第七話  熱愛のせいで孤独加速

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 新しいスキルを取得したら、やることは一つ。
 ステータスの確認でしょ。

「では早速」


【情報】
 名前:リンジ・ツクモ
 年齢:10歳
 性別:男性
 種族:半ドワーフ
 属性:躯 識
 Lv:49
 状態:健康
 従魔:キマイラ亜種「アポロ」
    キマイラ亜種「ティア」
 称号:創造神の寵愛(隠蔽)
    生命神の寵愛(隠蔽)
    創造神の使徒(隠蔽)
 攻略:十二獣将ダンジョン「白虎」



【スキル】
 固有:メダル
    生命魔法
    神装霊気(隠蔽)

 肉体:怪力〈1〉毒物耐性〈3〉
    頑強〈3〉即死無効〈5〉
    強靭〈3〉精神耐性〈7〉
    不屈〈1〉病気耐性〈3〉

 補助:言語理解〈5〉身体強化〈5〉
    鑑定妨害〈3〉気配遮断〈5〉

 知覚:魔力感知〈6〉直感〈9〉
    気配探知〈5〉索敵〈4〉

 魔法:魔力操作〈6〉精霊術〈1〉
    加工魔法〈1〉従魔術〈1〉
    錬金魔法〈1〉魔法陣〈1〉
    付与魔法〈1〉刻印術〈1〉
    貴石魔法〈1〉

 戦闘:体術〈3〉短剣術〈1〉
    投擲〈1〉棍棒術〈1〉
    盾術〈1〉
    槍術〈1〉

 生産:木材加工〈1〉料理〈1〉
    金属加工〈1〉調合〈1〉
    魔具作製〈1〉錬金術〈1〉


「うんうん。成長してるねー。良いことだ。──と、言うとでも思ったかぁぁぁぁっ」

「ど、どした?」

「どうしたって……」

 まず、【使徒】の横にあった(仮)はどうした?
 いったいどこに行った?

 それに付随するであろう固有スキルの〈神装霊気〉って何?
 リソースがないんじゃなかったのか?

「あのね、そのスキルはね、称号とセットになっているからリソースは関係ないんだよ」

「ティアは博識だなっ」

「ありがとうっ」

 気づかぬうちに声に出ていたらしく、それに対してティアが答えをくれたのだが、何故知っているのかを聞いても良いのかな?

「よーしっ! よしよしっ!」

 どうやら駄目らしい。
 俺からティアを隠すように、アポロが抱きしめながら撫でくり回している。

「ティア、ありがとね」

「うんっ」

 よし、次っ。

 生命神の寵愛って何?
 お会いした相手はアポロでしょ?
 アポロにつけてあげたら?

 内容は、スキルの強化、レベル上昇補正、派生スキルの付与、新スキルの付与、貴石魔法の付与らしい。
 創造神の寵愛のように永続的な効果を持たせる代わりに、リソースに転換したそうだ。そこまでしなくても良かったんだよ。ありがたいけどね。

 他のスキルは追々確認するとして、なんちゃって攻略のダンジョン表記を非表示偽装しておく。
 ついでにアポロたちのステータスも確認しておこう。



【情報】
 名前:アポロ
 年齢:0歳
 性別:オス
 種族:キマイラ亜種
 属性:火 地 躯
 状態:健康
 称号:生命神の祝福(隠蔽)
    獣神の加護   (隠蔽)



【情報】
 名前:ティア
 年齢:0歳
 性別:メス
 種族:キマイラ亜種
 属性:空 躯
 状態:健康
 称号:創造神の加護(隠蔽)
    生命神の加護(隠蔽)


 従魔のステータスは簡易的なものらしく、本当に必要最低限のことしか知ることができないみたいだ。
 でも必要最低限の情報しかないのに、それでも存在感を放つ箇所があった。

 それは、称号欄だ。

 埋め込まれた知識によると、加護は祝福、寵愛、加護の順に効果が高まるらしい。
 以上を踏まえて再度見ると、特にティアの方は神子と呼んでも過言ではない。
 それに比べれば、ただの使徒止まりである俺は普通なのかもしれない。

「そろそろ良いんじゃないか?」

「そうだね。じゃあ、はい」

「何だこれ?」

「干し肉」

「──おいっ! 赤ん坊にこんな固いものを食べさせるのか? 歯が生え揃う前に食べて良いものじゃない」

「歯が生え揃っているのは知っているよ?」

「えっ?」

 耳を掴んで強制的に聞こえないようにしているらしいが、タイミングがバッチリだから聞こえているはずだ。

「だって、さっき拾った物資しか食べるものないし、物資の山から調理器具を探さないといけないんだよ。だから我慢しよう?」

「アポロ。意外に美味しいよ」

「……ティアがそう言うなら、まぁ」

 赤ん坊云々言っていたアポロの牙は、固い干し肉をものともせず食い千切っていた。

「……意外にイケるな」

「ねっ」

「うんっ」

 モフモフ二体のラブラブぶりのせいで疎外感が半端ない。
 これは新しいモフモフを探すべきか?
 それとも俺も彼女をつくるべきか?

「どした?」

「…………」

 どこか勝ち誇った表情をするアポロ。
 そのアポロに何を言っても負け犬の遠吠えになりそうなので、俺は何も言わず遺品整理に集中することにした。

 と言っても、ただの遺品整理ではない。
 誰にも見られない環境でしかできない仕分け作業と、馬車の改造が主な目的だ。

 特に馬車の修理及び改造は急務だと思っている。
 野営具がタープとロープしかなく、物資からもテントのようなものを見つけられなかった。
 キャンプ未経験者の俺としては、できれば屋根と壁がある暮らしをしたいと思っている。
 現状馬車を引く生物が不在だが、テントの代わりとして機能するのは間違いない。

 だが、問題点もある。

 それは、馬車には所有物を示す記号や紋章がついているということだ。
 一つは冒険者ギルドのもの。
 もう一つは貴族風のもの。
 拾得物は拾ったものに権利が移ることが基本だが、今回は時と場所が良くない。
 火事場泥棒みたいに受け取られてしまうし、絶賛被害が拡大している町の市民たちも領主たちに賛同するだろう。

 誰からも支持されない場合、法律よりも民意が優先されるらしい。

 ということで、記号や紋章がついているところを排除してニコイチ、サンコイチで一つの馬車を作ろうと思っている。
 それでも残ってしまう場合は、スキル習熟も兼ねて魔法を使って削り取ろる予定だ。

「おいっ! 無視すんなっ!」

 ボリューミーな体を持つアポロが、俺の背中に体当たりをしてきた。
 柔らかい体とちょっと熱めの体温を背中で感じ、思わずニヤけてしまう。

 何だかんだ言っても、どんな態度でも二体の従魔は可愛い。

「無視はダメなのっ」

 モフモフ砲弾、二発目が背中を襲う。
 こちらは初弾よりも衝撃が弱めだ。

「野生じゃないんでしょ?」

「そうだ」

「だから寝床を作ろうと思ってさ」

「馬車なのっ?」

 ティアも嬉しそうだ。
 興奮して飛び跳ねてる。

「「可愛い」」

 アポロとハモってしまうくらい可愛かった。

「手伝ってくれる?」

「うんっ」

「ティアが喜んでくれるなら、オレも手伝うぞ」

「ありがとう」

 二体の協力で改造速度が一気に加速する。
 特にアポロの魔法が良い仕事をした。
 車体を持ち上げたり、地属性魔法で仮固定をしたりと、自動車修理工場にいるような気持ちで作業をしていた。

 あとやっぱり削ることになったのだが、使用した〈加工魔法〉は電動含めた工具のようなことができるらしい。
 おかげで削り作業は一瞬で終わった。
 それから〈錬金魔法〉の使い勝手が良く、金属の結合や融合などが簡単にできる。同じことが〈錬金術〉でできるらしいけど、魔力消費を気にせず、完成予想のイメージさえできれば〈錬金術〉より使い勝手が良いかもしれない。

 馬車の廃棄部品や補修部材に、大量にあった武器防具の処分を兼ねて金属装甲を創作してみた。
 軽量化と強度の両立で有名なハニカム構造を試し、さらにティア先生の魔法陣講座により《障壁》の魔法陣を設置済みだ。何故なら、夜番せずに熟睡したいから。
 さすがに《障壁》が発動するほどの衝撃を受ければ、熟睡しているであろう俺達も起きるはず。

 あと車輪を魔物素材で補強したり、板バネなども試作してみたりと、内装だけでなく外装も快適重視で徹底的に手を入れた。
 そのせいで普通の大型馬車より大幅に大きくなってしまった。

「「「完成ーーっ!!!」」」

 超大型の箱馬車で、なんと六輪だ。

 まずは後部の出入り口は少し広めにとってトイレを設置している。
 と言っても便座は金属製。
 冬は不意の冷たさに絶対にビクッとすることだろう。
 便座クッションは近日中に用意しなければ。
 手洗い場も用意しているけど、水が湧き出る魔具は一つしかないのでキッチンとの兼用になっている。
 ちなみに何故外かと言うと、排水の問題があったからだ。
 牽引できる従魔がいないので、しばらくは野営や休憩にしか使わない。
 休憩の度に室内に入るのは面倒だし、アポロが地属性魔法で穴を開けるだけ済むからということで外に設置した。

 まぁ夜間の利用は恐怖しかないと全員が理解しているため、すでにティアから夜中のトイレで起こす宣言をされている。
 もちろん、アポロもだ。

 次に外開きのドアを開け入室するとすぐに玄関になっており、少し段差を設けている。
 床材や壁材は一番材料があった木材を使用しているが、おかげで温かみがある空間に仕上がっていると思う。
 入ってすぐの右手にはキッチンがあり、拾得物の中から見つけ出した魔導コンロを設置し、鉄板を加工して作ったシンクも設置した。
 でもさすがに換気扇は無理だったので、突き出し窓を設置して代わりとすることに。

 キッチンの下には収納も用意しているから、お気に入りの食器を探すのも楽しいかもしれない。

 続いて、入って左側は収納棚を設置している。
 これは靴箱も兼ねており、アポロたちはここで足を拭いてもらう。
 なお、トイレに行く度に靴を履くのは面倒なので、サンダルみたいなものを全員分作った。
 本当は柔らかい革で作りたかったけど、知識も経験も技術もないという無い無い尽くしだったから、木材と布で作った簡易的なものだ。
 便所サンダルだと思えば十分だろう。

 そして収納の奥はソファとなっている。
 料理中の会話で使っても良いが、本来の目的は緊急用のベッドだ。
 誰も乗せたくないけど、可愛いモフモフが行倒れている可能性もなくはないだろう。その場合は、治療する面も考えてソファベッドの方が便利かなと思う。

 反対側には作業台及び本棚付きの机を設置している。
 一応設定では生産系のスキル構成になっているから、調合や木工を励める場所を用意した。
 実際にやらなくても言い訳としては必要かなと思ったのだ。
 あと、予定では机の下に冷蔵庫を設置する予定で、その場所を用意している。

 最後に一番奥の就寝室だ。

 カーテンで仕入れるようになっており、半個室としてのプライベート空間を確保している。
 普段はキャンピングカーなどでよく見られる対面型のソファに、テーブルが設置してあるタイプ。
 当然可変式となっていて、テーブルを畳んだ後は背もたれをテーブルがあった場所に持って来れば、キングサイズベッドくらいの広さを用意できる。

 ぽっちゃりなアポロがいても窮屈な思いをせずに寝れるはずだ。
 貴重品を入れるサイドテーブル兼用の宮棚もあり、ティア曰く貴族以上の寝室馬車らしい。

「素晴らしいものができちゃいましたね」

「うむうむ。晩御飯が楽しみだ」

「素敵っ」

「今後の目標はお風呂の設置だね」

「お風呂だと? そんなもの──「素敵ねっ!」」

「アポロ、何か言った?」

「……ないから早く欲しいなって」

「そうだね」

 女の子であるティアや、元日本人である俺にはお風呂は必須の道具である。
 こちらも金属製の浴槽でもいいから早めに設置したいと思っている。が、石鹸がないのだ。石鹸確保を目指して、そこそこ栄えている町を目指そうと思うのだった。





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