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第一章 神託騎士への転生

第二十六話 神託騎士は画策する

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 驚くエルフたちを神コテージ内に許可を出して招き入れ、トイレや風呂などを必要な箇所を一通り説明した。
 ドラドたちは、襲われたら可哀想だという理由から、お馬さんたちを庭に入れてあげていた。……クズ共は放置だけど。

 説明が終わった頃にドラドたちも戻ってきて、従魔たちを先に風呂に入れることを伝えた。

「早くな! おれは三番なんだからな! 明日の朝ご飯を作って待ってるから、順番が来たら教えてくれ!」

「分かった。あと、風呂の時に一緒に装備を綺麗にしよう」

「そうしよう!」

 死体処理をしたからな。是非とも綺麗にしたい。

「じゃあ行こうか!」

 カグヤとティエラを一緒につれてお風呂に向かう。二人の装備も綺麗にして、手とブラシを使って体を洗ってあげる。
 少しお湯に浸かったらウトウトし始めてしまった。体を拭いてドライヤーで乾かしながらブラシをかける。このときには完全に寝落ちしており、一人一人部屋に運んで寝かせた。

 ドラドの場合、無理だから一生懸命起こすしかないけど。

「ドラド、お待たせ!」

「意外に早かったな!」

「二人とも寝ちゃったからね! あと、俺は彼女たちの寝床を作ってから行くから、装備を出して置いてね!」

「分かった!」

 ドラドに伝えた後、テーブルやソファーを動かしたり、布団を敷いたりして寝床を作る。
 布団の近くには《PX》で購入したTシャツや、フリーサイズの下着にタオルなどを置いて使い方を教えた。
 その際、触れられるか不安だったが問題なく使用できるみたいだった。サイズの問題があったが。

 予想通りと言えば予想通りだが、下着が一番興味を惹いたが、理由の一つにサイズが合わなかったということもある。

 種類が限られている《PX》ではスポブラみたいなものしかないし、ボクサーパンツみたいな下着しかない。
 しかし、この世界はノーパンかドロワーズみたいなものが基本で、冒険者はモコモコかムズムズを経て、オリジナルの解決法を学ぶらしい。

 さらに、「今はこれしかない」という言葉に気づいた後半戦組の二人――グレースさんとレイラさんが、面白いくらいに反応していた。

 フリーサイズにも上限があるから、彼女たちにはサンプルを渡して試着してもらい、あとで風呂から出たらまとめて購入することに。

 まさか試しに用意したものが入らないとはね……。事故が起こる前でよかった……のかな。

「ドラド、お待たせーー!」

「早くしろ!」

 装備を綺麗にしている間にマッサージをしながらブラシで洗っていく。
 トロ顔のドラドを見ることができる至福の時間だ。……可愛い。

 白いお腹もゴシゴシと洗い、最後に顔面をささっと洗うのがルーティンだ。
 流すのは頭からで、目を閉じている時間が少なく済むようにする。何か出そうで怖いらしい。決して言わないけど、ビクビクして何度も聞いてくるのだ。

 ドラドと一緒に風呂釜に入るとパンパンになるから、一人ずつ交代で入り、ちょっとした会話を楽しむ。ほとんどは乗り物や食べ物の話だけど。

 我が家は風呂場で歯磨きも終わらせてしまうから、脱衣所はブラッシングスペースになっている。
 今もポッチャリした虎さんが寝そべって、ブラッシングを堪能しているところだ。

 ブラッシングのあと、一緒にリビングに行って買い物を済ませる。
 使い方の説明が必要な物は教え、最後に照明の消し方を教えて俺たちは寝室に向かった。そして、この日も枕を持ったドラドがついてきて、仲良く一緒に眠るのだった。

 ◇

 翌日、モフモフの気配を感じて起床する。いつも通りモフモフを堪能していると、いつも通り自然に視線が合う。

「おはよう!」

「……おはよう」

「俺は後始末の準備をしてくるから、食事の準備はお願いね!」

「……また変なことだな?」

「まぁ楽しみにしてて」

 ドラドの胡乱げな視線をかわし、クズ共の元に向かう。
 エルフたちは疲れているようで全く起きる様子がない。

「やぁ、奴隷諸君! ごきげんよう! 無事だったかな? 死体が荒らされたおかげで無事かな? 一応魔物除けを撒いておいたしね!」

「「「…………」」」

 誰も話さない。こういう危機に陥ったとき、女性よりも男性の方が弱いのだ。それが顕著に出ていた。

「今日解放しますので、その準備に入らせていただきますね!」

 まずはパー・プーさんと村長を離して、パー・プーさんだけを姿が見えない場所まで連れて行く。
 彼は一旦放置で、用があるのは子分と村長だ。

 前半戦で真っ先に死んだデブ貴族は赤い鎧を着ていた。それを子分に着せていく。
 このとき拘束を解くのだが、奴隷にしているため素直に言うことを聞いてくれた。

 元々デブが着ていたせいで、子分の体と鎧の間に隙間ができてカパカパしている。
 この隙間にC4爆弾を詰めて、鎧の内側に貼り付けていく。鎧の留め具に仕掛けを施して、無理矢理脱がそうとしても爆発するようにした。

 同じ事を村長にもしたが、彼の鎧はミスリル製なんだとか。少しもったいないかな。

 そして彼らには重要な話をしてあげる。

「その鎧は【聖王国】の貴族が着ていた鎧です。素晴らしい魔具ですが、無理矢理脱がすと呪いが発動します。三日脱がずにいれば自然に脱げるようになるでしょう。最後に自分たちとパー・プーさんのために、創造神に宣誓をしましょう! 救いがあるかもしれませんよ!」

 今日はオラクルナイトの外套を着てるから、神官ぽく見えているはず。

「……アイツのことはどうでもいい!」

 村長は往生際が悪いな……。

「キサマぁぁぁぁーーー!」

 子分の忠誠心はすごいな……。

「村長、拒否するなら仕方がない。教会を通して取引の証拠をエルフが住む各国に送ります。エルフの奴隷を返還するように交渉している国は怒り狂うことでしょう。同族を売るだけじゃなく、交渉相手国に返還を却下する理由を渡してしまうのですから。その恨みがあなたに行かないといいですね?」

「だ……誰が……【落ち人】の言うことを信じるかっ!」

「オラクルナイトとして送付するに決まってるじゃないですか! あなたがオラクルナイトの身分を教えてくれたんですよ? 創造神の使徒だと」

「――ち……誓う! だからっ!」

「分かってますよ! 少し脅しただけです。私も面倒なことはしたくないですからね」

 しないとは言わない。

「では、村長の宣誓内容はこうです。『鎧に関することと、オラクルナイトに関することは生涯誰にも伝えないし、記録にも残さないことを命に掛けて誓う。さらに、取引のことが村民にバレてしまい、王女にも逃げられたことを取引相手に報告する。廃墟街の到着後、真っ先に馬車馬を逃がす事を誓う』の三つでお願いします」

 子分の方は、王女が逃げられたところを、【聖王国】の兵士が全滅したと報告するように指示した。

 二人の宣誓を確認し、パー・プーさんの元に向かう。
 彼にも宣誓をさせるのだが、その前に子分と村長が着ている鎧の話をしてあげる。

「二人が着ている鎧は【聖王国】の貴族のもので優れた魔具なんですが、正統な後継者以外が身につけると、周囲や深い関係の者に呪いの効果をもたらします。三日経ってしまった場合や死んだ場合は脱がせることができなくなってしまうので、できるだけ早く脱がせた方がいいですよ。特に、子分の方は火に関する呪いが発生します。まぁ本人たちは脱ぎたがらないでしょうから、数人がかりで脱がせた方がいいですよ」

「……マジかよ。でも何でそんなものを……」

「これから解放しますので、森から安全に出るために優れた装備が欲しかったそうですよ」

「あいつ……」

 まぁ嘘だけど。

 宣誓内容は『オラクルナイトに関することは生涯誰にも伝えないし、記録にも残さないことを命に掛けて誓う。それに加え、エルフに迷惑をかけない行動を取ること。死体が入った馬車は廃墟街で処分する。呪いの鎧に関する事は廃墟街に到着後に片付ける。最後に、廃墟街に到着したら真っ先に馬車馬を逃がして、呪いに巻き込まないようにする』という五つだ。

 その後、感づかせないように鎧の話はしない方がいいとアドバイスをして合流させる。

 この頃にはエルフも起きていて、朝から目の毒になりそうなほど刺激的な格好でフラフラしていた。
 普段から全裸のドラドたちはあまり気にしていないようだけど、俺は正直キツかった。完全装備だったおかげで体の変化が見えずに済んでよかったと思う。

 今日もハムエッグだったのだが、ジャガイモのポタージュスープがついていた。
 とても美味しゅうございました。

 食休みのあと、エルフたちに手伝ってもらい馬車の改造をする。
 目立つ赤い鎧のデブ貴族の馬車を先頭にして、最後尾に後半戦の貴族の豪華な馬車を置く。その間に七台の幌馬車と二台の箱馬車を配置し、ロープで連結する。

 ちなみに、パー・プーさんたちが乗ってきた二頭引きの幌馬車はエルフたちにあげた。
 これから村に帰らなきゃいけないけど、死体が乗っていない馬車はパー・プーさんたちの幌馬車しかなかったからだ。

 馬は全部無事だったし、騎馬の馬が二頭無事だったおかげで三十頭もいる。森の中の道が狭いから一列にするしかなく、非効率な形になってしまった。

 三分割しないのは逃がすとき一箇所で済んだ方が早いからだ。ロープを切るだけで済むしね。

 ここまで終わらせ先頭の馬車に三人を乗せて首輪を外し、死体を満載した馬車の行列を見送った。

「さて、私たちは出発します」

「どちらにですか?」

 グレースさんが即座に質問してきた。

「確か【武皇国ネメアー】の北方辺境侯の領都だったかな」

「お隣さんですね……」

 エルフさんたちが集合して何やら相談している。そこには王女も混じっていた。

「わたくしグレースもルシア様と一緒に同行させてください」

「――ん? 王女も一緒に来るのですか?」

「――ルシア様っ!? 話を通していないのですか!? 素直になってお願いをしないと!」

「……分かっている」

 モジモジとして、あの気の強そうな姿がない。

「……私のことを助けて欲しい。国を滅ぼした者への復讐と、国の復興に協力して欲しい。お願いだ……この通り」

 頭を深々と下げ、助力を願う姿を見て一先ず胸をなで下ろす。

「もちろん、協力させていただきます。ただ、オラクルナイトの仕事もありますから、すぐというのは無理です。まぁ【聖王国】への報復は最優先で行いますけどね」

「それでいい! ありがとう! ……ありがとう!」

 涙ぐむ王女を我が家のモフモフとエルフたちが慰めていた。一歩前進したことを喜ぶ声も聞こえ、殲滅作戦が無駄にならなかったと安心できた。

「騎士様、待っててね」

 レイラさんがエルフの輪から一人離れ話し掛けてきたが、何を待てばいいんだ?

「はぁ……」

「ふふふ」

 よく分からないけど、笑顔が戻ったのは良いことだろう。素敵な笑顔だ。

 ドラドを可愛いと言っていたエルフは前半戦で保護した二人で、双子のエルフらしい。
 彼女たちはティエラとカグヤも可愛いと言って仲良くなっていて、別れを名残惜しそうにしていた。お互い抱擁を交わし、涙ぐんでいる。

 そして俺は彼女たちの感動の時間を使って、昨夜にやろうとして忘れていた車の改造を施すことにした。

 グ○ディエーター風の車両で、深い緑と灰色が混じったみたいな色だ。今回は色の変更はなし。
 テクニカルへの変更が主な改造内容だ。
 まずはドアとトップを外し、ツーシーターにする。後部座席だった部分にはM134を固定した銃架を設置。……ドラドの喜ぶ顔が見たくてね。

 ドアはロールバーでできたものに変え、窓より低い位置にいる敵にも攻撃を当てられるようにした。
 最後に、荷台部分に人間を堕落させるクッションを置いてシート代わりにする。

 ついでに、魔法円盾と車両の【液体魔力】を補充し、装備を元に戻した。

 やっと終わったと思っていたら、みんなの視線を集めていたらしい。
 そりゃあ意味不明な機械を必死になっていじっていればそうなるか。

「それじゃあ行こうか!」

 ――《ガレージ》

 パッと光った後、目の前に改造後の車両が現れた。



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