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第一章 神託騎士への転生

第四話 モフモフ従魔と旅に出る

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 モフモフに警戒心を抱かせてしまったが、過ぎたことを悔やんでも仕方がない。これから徐々に警戒を解いて行けばいいのだ。

 それよりも今はやることがある。

「早速出発したいんだけど、船を着けられる場所ってどこにあるか分かる? あと戸締まりの仕方は?」

「戸締まりはいらない。資格がないものはこの島を見つけられないし、建物自体にも侵入対策用の結界が施してある。船着き場は東に行けばすぐだ! もう出発するのか? 船はどうするんだ? 造らないのか?」

「船はあるよ。いくつか持っているけど、今回は神様製クルーザーをしようする予定だよ。元々は両親が使っていた物をもらったんだけどね!」

「主のか!」

「正確に言えば、その複製だけどね!」

「楽しみだ!」

「忘れ物がないようにね!」

 ◇

 パンパンに詰まった袋を背負ったドラドと、手ぶらで移動する女性陣を伴い船着き場へ行く。

「袋に何が入っているかは、聞いてもいいのかな?」

「これは魔石と魔核が入っている! 人間はお金が必要なんだろ?」

「なるほどね! 見せてもらってもいい?」

「ほらよ!」

「ありがとう!」

 ドラドから袋を受け取り中を見る。

「――これは! あのさ、これもらっていい?」

「別にいいけど、お金は大丈夫なのか?」

「消費するのは弾薬や消耗品だけだから大丈夫だよ。神様が向こうのお金を使えるようにしてくれたから、数百万はあると思うよ」

「金持ちなんだな!」

「そうだけど……結婚資金を貯めてたからね」

「結婚したのか?」

「直前で破談になった……」

「……すまん」

「気にしなくていいよ」

 モフモフしてくれればいいという言葉を飲み込み、当たり障りがない言葉を返しておく。

「それで、それは何に使うんだ?」

「この魔核があれば魔具という物が使えるんだろうけど、俺の能力では魔核と迷宮ジェムと呼ばれる物を混ぜて加工すると、【液体魔力】という燃料が作れるんだ。俺の能力内での魔法武器や乗り物に必要な燃料なんだけど、この魔石っていうのが迷宮ジェムにそっくりなんだよね!」

「乗り物って馬車か?」

「……やっぱり馬車なのか。俺の言う乗り物は馬車じゃなくて、馬なし馬車って言えばいいのかな? 箱だけで動くんだよ!」

「自動車ってやつか?」

「知ってるんかい!」

「主様に聞いたのよ。名前だけね!」

「カグヤも乗れる?」

 カグヤはモ○キーより少し小さく、百五十センチくらいのティエラなら背中に乗れる大きさだ。これでも小型の部類に入るのだが、カグヤは自分だけ乗れないのではないかと不安そうにしている。

「ドラドが乗れる大きさだから大丈夫だよ! ドラドは俺より大きいでしょ!」

「鎧を着てるディエスの方が大きく感じるんじゃないのか?」

「そうかな? まぁどちらにしろ、カグヤは乗れるから心配しなくても大丈夫だよ!」

「よかった!」

 ぶかぶかのシャツを着た状態で万歳して喜ぶカグヤが可愛い。敵対したら怖いのだろうが、それはアラクネに限ったことではないからカグヤを怖がる理由にはならない。

「そういえば、海って魔物が出るの?」

「海の方が強くて大きい魔物がたくさんいるぞ! だから船の心配をしたんだ!」

「今回の船は結界が発動するらしいから大丈夫だと思うよ! それよりも魔物が出たら銃の訓練をしよう! 適性というか、好きな戦闘スタイルを見つけようじゃないか!」

「いいな、いいな! 楽しみだ! 早く行くぞ!」

 ポテポテと駆け出すドラドを追いかけ、目的の船着き場へ急いで向かった。

 走ったこともあって、さほど時間もかからず船着き場へ到着する。

 異世界の海は透明度も高く、まるでリゾートビーチみたいだった。旅立った先も同じような海なら、時間を設けて遊んでもいいかもと思う。

 ――《ガレージ》

「えーと、船のカテゴリーを選んで……あった!」

 少し派手な装飾が増えてる気がしないでもないけど、今更気にしても意味がない。元々馬車しかない世界だから、多少派手でもクルーザー自体が異物だろうからな。

「出でよ! 神様製クルーザー!」

 《ガレージ》のシャッターが目の前に現れる。《コンテナ》みたいにシャッターの部分だけが、直立して出現している。

 シャッターが一番上まで上がると、中からクルーザーが射出される。

「さぁ乗って!」

「一番乗りーー!」

「ちょっと! レディーファーストを習ったでしょ!?」

「待ってよーー!」

 乗船補助をしながら、みんながはしゃいでいる様子を見る。思わず笑みが浮かぶ光景を見て、異世界に来ても独りじゃないと実感できた。

 養父さん、養母さん。今まで育ててくれてありがとう。『大切なものを守れる者になれ』という言葉を胸に、俺は二人の家族を守ることを誓うよ。俺にとっても大切な家族になったしね。

「おーい! ディエス! 早くしろーー!」

「今行くーー!」

 養父さん、養母さん。いってきます!

 ◇

 船は一路南に向けて真っ直ぐに進んでいる。
 ティエラが言うには、両親が処刑された場所がある【中央大陸】に向かっているようだ。

 情報収集に最適の場所である。

 しかし人族が多く住む場所だから、差別意識が高いかもしれないそうだ。サイコパス神のせいで覚悟をしていたことだから、多分大丈夫だと思う。我慢できなくなったら別の大陸に行けばいい。

「おい、ディエス! おれたちには装備はないのか?」

「忘れてた!」

 ジト目を向けてくるドラドから視線を外し、手持ちの装備を確認する。
 サイズが合わないだろうし、全員分揃わないだろうから全部買うことにした。

  ――《PX》

 弾薬や消耗品に量産品しか買えないけど、幻想地下世界で唯一地上の製品が購入できる施設だ。これが封印されていたら、俺は転生初日に詰んでいた。

「カグヤは買うとして、二人も服が欲しい?」

「いらん!」「いらないわ」

 素敵なモフモフを持ってらっしゃるからね。隠すのはもったいないよね!

「じゃあタクティカルベストを三つと、ポーチを追加で買っておこう! 高いけど共有ポーチがいいかな」

 弾薬用と消耗品用を一つずつと、強化素材製の個別ポーチを小物用に一つの合計三つをかごに入れてと。

 レッグホルダーは足が短いからやめておいて、代わりにベルトと各種ホルダーを購入しよう。

「じゃあカグヤはこれを着てみて! 一番小さいサイズを選んだから、成長してキツくなったら言うんだよ!」

「うん!」

「良い子!」

 妹ができたみたいで可愛く、つい頭を撫でてしまった。

「えへへ」

 ――よし! カグヤをいじめるやつは俺の敵にすることをここに誓おう!

「これを着ればいいのか?」

「そうだね。少し重く感じると思うけど、防具も兼ねているから我慢してくれ!」

「これくらいどうってことないぞ」

 君はね。俺は女性陣に言ったんだけど……うん、平気そうだ。

 カグヤにはタクティカルベストと同じ黒いパーカーを着せて、その上からベストをつけてもらった。

 俺の装備には温度調節機能がついているけど、みんなにはついていない。温度調節をする場合、温かくすることはできるけど涼しくすることは難しいから、ベストの下は薄手のパーカーで済ました。

 色は俺と同じがいいんだって! 尊い……!

 情報処理端末は二種類用意する。
 一つは俺と同じタイプでカグヤ用の物。上半身は複眼を除けば人間と同じだから、俺と同じタイプの物を装着可能である。

 もう一つはイヤーカフタイプ。
 両耳にはめることで、起動時は目から上を覆うゴーグルが発動する。耳は出せるから、幻想地下世界の住人も使用できた。
 でもデメリットが大きく、幻想戦士はほとんど使わなかった。デメリットは、収納時に視覚情報を得られないというものである。

 自分を中心に半径二百メートルを自動探索し、害意を向けている者を探知して表示してくれたり、罠や宝の位置も表示してくれたり。
 最高の機能とも言える視覚情報支援がないのだ。ハンデを背負ってゲームしているようなもので、全オプションをつけた俺には信じられないことである。

 今回は俺の機能を共有しているから、従魔たちも同じフルオプション状態で使える。
 ドラドたちのデメリットについては、個人の高い索敵能力でデメリットを弱めた。

「それではやってきましたよ! 装備を選択する時間です」

「やっとか! 迫力があるのがいいな!」

「みんなは銃が良いんだよね?」

「他に何があるんだ?」

「魔法武器や近接武器もあるよ」

「銃がいい!」

 それなら俺の方向性は決まったな。騎士っぽくてちょうど良かったかも。

「派手なヤツはあるか!?」

「機関銃があるけど……」

「それを見せてくれ!」

 ――《コンテナ》

 銃器を収納している《コンテナ》を開き、ドラドを招き入れる。
 ドラドはキョロキョロ周囲を見回し、わんぱく小僧の勘と嗅覚を持って派手な銃を捜しているようだ。

「これ! これがいい!」

「……やっぱりか。それを選んで欲しくなかった!」

「何でだよ! これはすごいものだと本能が告げている!」

 ドラドが選んだのは「M134」という有名な機関銃だ。威力も弾薬消費量もハンパない代物だが、携行武器には向かない。パワードスーツを着て初めて使用できるものを、ポッチャリ体型の虎さんが使えるはずない。

 しかも専用のアタッチメントをつけたパワードスーツか、液体魔力発電機が必要なのだ。液体魔力は俺も使うから残量が心配である今、目の前の大食い機関銃を使う気にはなれない。

「大人しくミニミにしよう?」

「何でもいいって言ったろ?」

 ……言ってない。でも言えない。モフモフが遠ざかるから言いたくても言えない!

「じゃあこうしよう! 普段はミニミを使う! 大型魔獣や殲滅戦は希望のM134を使う! 威力が強すぎて素材がめちゃくちゃになるからね!」

「うーん……絶対だぞ?」

「もちろん! 両親に誓って嘘はつかない!」

「分かった! ミニミという機関銃を装備する!」

 神スマホを操作してドラドのメイン武器二枠のうち、一つ目の枠にミニミを選択して登録する。

「次行くぞーー!」

 これが続くのか……。養母さん、あなたのペットは手がかかります。

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