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第三章 始まりと報復

第四十三話 嘘つきは針千本

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 今回の話は少し不快に思う人がいますが、できる限り詳しい表現は抑えています。それでも不快に思われましたらすみません。作者の力不足です。


 ==========


 今日はいろいろあった。サイコパスに会ったり楽しい採集をしたり、最後には職人ギルドの刺客みたいなのが来たりと。まぁ宿のご飯時にはヴェイグさんの楽しそうな笑い声が聞けて、ルドルフさんたちも嬉しそうにしていたから総じていい日だったと言える。

 そして深夜。最近はリアを一人にしておきたくなかったため夜遊びをしていなかったが、頼もしいヴァルもいるということで夜遊びに出掛けることにした。

 今夜の予定は銀行に行って預金を引き出してくることと、後顧の憂いを断つために職人ギルドに行くことである。時間があれば他にもいろいろやりたいが、とりあえずはこの二つを今日中に熟してしまおう。もちろんリアとヴァルには簡単に出掛けるということだけ伝えておいた。

 まずは職人ギルドから行こうかな。約束を守ってくれているか気になるところだ。魂モードでギルド内に入って行くと話し声が聞こえてきた。深夜なのに仕事しているのかな? って思って聞いてみると、どうやら俺のことを話しているようだった。

「もう無理です! あの話の通じないドワーフのせいで家族もろとも死ねと仰るのなら、やめさせていただきます!」

「まぁ待て。だが、理事の言うことも分からんでもない。そんなに実力があるのに、今まで無名だったのは逆に気になるではないか」

「最近ギルドに登録したのならば無名で当然です! 名前を売ってからギルドに登録するものなど皆無ですよ! 調査したいなら自分たちでしてください! 私を巻き込むことはやめていただきたい!」

「だがお前のミスで私は巻き込まれているぞ? ドヴェルグの鍛冶職人の店に鋼材を売る許可を出したことで、例の理事からすぐに苦情が入った。その尻ぬぐいくらいして行ったらどうだ?」

 どうやら組織の上の者は揃ってクソしかしないらしい。

「苦情くらいでグチグチ言うのならギルマスやめたらどうでしょうか? それとも人生も終わらせますか?」

「だっ! 誰だ!?」

 俺は薄暗くなっている部屋の隅で変身すると、スローイングナイフをギルマスの首に当てた。

「どうやら約束は守ってくれないみたいですね? でしたら私も本気ということをお見せするしかありませんね」

「待ってください! 今説得を!」

「え? 説得してました? やめようとしてただけでしょ? 例の依頼主からは周辺の者の調査を任され、ギルマスもそれに賛同する始末。俺は何て言いました? 二度はないと言いましたよね? 全員いなくなれば後顧の憂いを断てるとは思いませんか?」

「お……お前! こんなことをしてタダで済むとーー」

 いきなり強がり出したギルマスの首にナイフを強めに押しつけると、すぐに黙り込んだ。

「立場分かっています? 脅しているのはこちらで、あなたたちは命乞いをする側ですよ。まぁ意味ないけど。元々信用してなかったのに、せっかくあげたチャンスを半日も持たずに失うとか今後も信用できるわけがないからな。さて、言い残すことは?」

「やめてくれーーー! 何でもする!!! だからーー」

「さよなら」

 サイコパスの言うとおり危害を加えてくる相手は全て『敵』であり、俺は敵には容赦しないと決めている。弱みをみせた瞬間、一瞬で全て奪われる世界に来てしまったのだから。

「では、続きまして」

「待ってください! 鋼材商会のことも手配しました! 嫌がらせも押さえ込んでいます! 言われたことは全てやっています!」

「俺も言ったことをやっているにすぎないんだが?」

「でしたら、あなたに忠誠を誓います! どうか! どうかチャンスを!!!」

「わかった。家族はやめておく」

 その瞬間絶望の表情を浮かべていたが、同情する余地はない。調べられては困る事情を抱えた俺たちの身の安全のためでもあるし、大人しく潜入だけしていればいいのに調べたことがきっかけで他のヤツらに興味を持たれた上、自分だけ逃げようとしたのだ。一番信用できないのは間違いない。

「さようならー」

 二つの死体を収納し魂を吸い込んでいったとき、ふとあることに気づく。人間の心臓を吸収したらどうなるのかということだ。なんか倫理的に問題ありそうだなと思ったりもしたが、人殺しをした後に言っても意味のないことだと思い直した。

 それと、この体になってから敵を殺すことの忌避感というものがなくなっているように感じられる。一般的に十五歳の子どもが平気で人殺しをしたら、れっきとした異常者だ。でも今は全く問題ない。多少申し訳なく感じる程度である。やっぱりモンスターになってしまったのかなとも思うし、魂を剥がされたときの後遺症かもしれないと人間を諦めきれなくもある。

 そして当然吸収してみた。すると、本人が持っていたスキルをランダムで得ることができるということが判明した。だからといって、率先して人殺しをすることはしないし、リアたちの前ではしたくないとさえ思える。モンスターの心臓ならリアたちも内臓を食べるから、俺も同じように食べているだけと思われるが、人間のものは完全にアウトだろ。

 俺自身もなんか不快であるから、おそらく今日が最後だと思われる。ちなみに、獲得したスキルは【格闘術】と【解体】だ。裏方職員だから隠蔽とか変装系のスキルが手に入るかと思ったが、まさかの格闘術だった。それに加え、職人ギルドのギルドマスターだから職人系のスキルだろうと、ほぼ確定的な考えだったのだが、見事に裏切られた気持ちである。まぁはずれよりはいいけどね。

 名前  アルマ
 年齢  十五歳
 加護  創造神の加護
 スキル 魂霊術・言語・異空間倉庫・槍術
     感知EX・探知EX・格闘術
     解体

 スキル【格闘術】☆
 格闘術の基本を修得した。

 スキル【解体】☆☆☆
 解体の基本を修得した。
 解体の速度が上がる。
 解体の速度を維持した状態で質が上がる。

 詳細を見ると何故か解体スキルのみ中途半端なレベルだった。もしかしたら、俺の解体習熟度も加算されているのかもしれない。だとしたら、これからもいろいろやっておいた方がいいし、ポールアックスを使う意味も見出せるだろう。

 とりあえずスキルのことは置いといて、ギルドマスターの個人資産を回収していく。もちろん運営費には手を出していない。ギルド口座や金庫にしまってある宝石や魔具などの研究資料などを、手当たり次第に回収していく。まさに立つ鳥跡を濁さず状態である。そこで本人がいなくなれば、緊急の出張か失踪と思ってくれるだろう。

 そして今は三人目の邪魔者を排除しに来た。魂モードで軽々侵入していると、何やら奥の部屋からカチャカチャと音が聞こえてくる。

「あの魔具職人はいいのぅ。金を運んでくれる船のようじゃ」

 暗い部屋の中で魔道具のランタンで金貨を数えている老人に《読取リーディング》を使い、資産や資料の隠し場所などの情報を読み取っていく。ついでに以前太陽教国の教皇に使った方法を試してみる。それはさらに深く強くスキルを使うことだ。新しい攻撃手段になる可能性があるならと思い、実験台としても活躍してもらうことに決めた。

「グゥゥゥ……ゥッ……!」

 体がガクガク震えだした老人はそのまま倒れ込んでしまった。《生命探知》で生きていることは確認しているが、昏睡状態であることは間違いなさそうだ。ただ相応のリスクがある。教皇のときはゆっくりと読み取っていたから何ともなかったが、今回は戦闘スキルとして使用するために早く読み取るようにしてみた。しかしこれがいけなかったようだ。

 膨大な情報が一気に大量に入ってくるせいで、処理できず頭がないのに頭痛がするような感覚に襲われるのだ。今回は一人だったからよかったが、これが複数なら聖剣に触れたとき並みの痛みが体を襲うだろう。一番いい方法は一人ずつ組み伏せた上での使用か、味方の支援ありきの使用だろう。

 となると、【格闘術】スキルはかなり有用かもしれない。もちろん魂と心臓の両方を吸収し、スキルも得た。三連続は初めてだからかなり嬉しい。もしかして人間の方が確率が高いのかもしれないが、人間の全員がスキル持ちじゃないし、年齢が高くなって初めて最低一つにスキルを持っているというくらいだ。

 名前  アルマ
 年齢  十五歳
 加護  創造神の加護
 スキル 魂霊術・言語・異空間倉庫・槍術
     感知EX・探知EX・格闘術
     解体・記録

 スキル【記録】☆☆
 記憶力が上昇する。
 一瞬で記憶し記録する。瞬間記憶能力。

 今回のスキルは特殊技能系のスキルのようで、かなり希少な部類だ。さらにこちらも元々自身が持っていた能力に加算されているようだった。というのも、現在のアストラル体である魂の体になってから図鑑の内容をすぐに記憶できるようにもなったが、知識や記憶を引き出すことがしやすくなったのだ。

 人間のときは暗記しても記憶を引き出せないから苦労するのだが、この体は魂に記録されるからすぐに引き出せるわけである。そこに今回の瞬間記憶能力だ。もはや知識に関しては鬼に金棒状態である。

 さて、ここでも偽装工作していこう。


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