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第三章 学園国家グラドレイ
第四十八話 取引
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第一回の、魔法の授業が終了した後、軽く召喚獣の説明をした。授業中に話さなかったのは、忘れていたからだ。それに、俺には関係ない話だったからだ。
「忘れていたが、召喚獣はテイマーの従魔と少し違い、影に控えさせたり、召喚で呼び出したりが可能だ。それでも、必ず従魔証をつけろ。最近は、従魔の売買とか盗難が、相次いでいるらしい。ちなみに、俺の生徒で、従魔の売買なんかに手を出したら、お仕置き確定だからな? 自分の従魔は、自分の手で守れ! 無理なら、相談しろ。以上だ。実技の説明会は午後。俺も担当しているが、短期だから来なくてもいいぞ」
と、やんわりと他へ促す。もしかしたら、なくなるかもしれないという、淡い期待を込めて言ったのだが、どうやら叶わないらしい。
「妾は行くと、決めているのじゃ。お爺さまが言ってたのじゃ。属性纏なるものを覚えれば、カルラと冒険出来ると。妾も一度でいいから、一緒に十大ダンジョンに、行きたいのじゃ。でも、足手まといは、嫌じゃ。だから、属性纏なるものを、習得するのじゃ」
あの爺さんは、余計なことをしてくれたようだ。獅子王神様の弟子と聞いたときは、属性纏を知っていたことに納得し、その割には弱いことに驚きもした。そして、王女はどうやら本気らしい。ボムは嬉しそうだ。
ボムとしては、カルラに親友を、作ってあげたいのだろう。自分にとっての、ソモルンのように。親友相手なら、喧嘩くらい、多少はあるものだと、納得している。理由は、無人島出発前にソモルンと、大喧嘩したからだ。
ボムは、あの寂しい無人島に、ソモルンを残して行くのを、忍びないと思ったが、危険な外に連れ出すのは、もっと嫌だった。彼の過保護ぶりは、カルラだけが、対象ではない。そして、ボムは思いついた。ソモルンのための、国を作ろうと。みんなが、ソモルンと遊んでくれて、ボムがいなくても、大丈夫なように。
それに対して、ソモルンは大激怒。ボムのおデブなお腹を、ポカポカと殴るくらいの大激怒。見てた俺は、ソモルンが可愛くて幸せだったが、ボムは大混乱。理由は簡単だった。
『ボムちゃんと、ずっと一緒にいるの。国なんかいらない。この島と、何も変わらない。ボムちゃんがいなければ、何も意味はない』
大号泣しながらの訴えに、平謝りするボム。結局、丸一日、口を聞いてもらえなかった。落ち込むボムを見て、可哀想に思ったため、ソモルンを説得して、一週間ソモルンウィークとして、俺も一緒に遊ぶことで、許してもらえたのだった。そのことがきっかけで、ボムはソモルンと、旅をすることを楽しみにしている。
それはさておき、横で頷く、ボア四騎士とカトレア。どうやら、これで授業確定である。
「そうか……。頑張れ。さあ、次の授業の教室へ行かないと、間に合わないぞ。ボアに乗っていくなよ。怒られるからな。乗りたいなら、外でだぞ」
一応注意した。ボムも、乗りたそうにしていたからだ。
「「「「はい」」」」
素晴らしい返事をして、教室を出て行った。
「ラースは行かないのか?」
王女は暇な俺が、何処かの授業に行かないのかと、聞いてきた。ぶっちゃけ暇ではない。
「いろいろ仕事があるからな。さあ、遅れるぞ」
さっさと行くように促した。遅れると、嫌味を言われるからだ。
「分かったのじゃ。カルラ、またあとでなのじゃ」
『うん。またねー♪』
手を振る王女に、手を振り返すカルラ。
「ご飯一緒に食べよ」
カトレアが、決定事項のように言ってくるが、確約できるか微妙である。
「出来たらな」
「分かった」
こういうところは、楽でいい。物分かりのいいところは、父親似だろう。母親は、物分かりがいいとは、言えない。ボムという、被害者がいるからだ。
「さて、調査を始めますか。まずは、結界の中心に行くぞ」
ボムの椅子をしまって、移動を始めた。すると、移動中に横切った教室の中で、胸糞悪い光景が目に入ってきた。
「これで約束通りだ。金を寄こせ」
「お代は、一律金貨一枚(十万円)ですよ。またのご利用をお待ちしています」
そう言って、従魔に首輪をはめていた光景が、目に映った。俺は、ノックして声を掛けた。
「なかなか面白いことしてるな。自分の従魔を他人に売るとか、頭大丈夫か?」
ばつが悪そうな顔をして、逃げ出した生徒の首に、手刀を叩き込む。喉を押さえて膝をつく、胸糞系阿呆生徒。
「それで、そちらさんは、どうするつもりだ?」
おかしな仮面で顔を隠す、黒いローブの何か。まず、男か女か分からない。次に、頭に角がある。そして、トカゲみたいな尻尾がある。それでつい、言ってしまった。
「トカゲみたいなやつだから、コイツをトカゲの尻尾のように、切り捨てるのか?」
すると、殺気が入り混じった怒気が、放たれた。
「トカゲではない! 俺は竜だ! 俺を侮辱したことを、後悔させてやる」
さっきまでの口調では、なくなっていた。そして、竜と言ったが、言っては悪いが、鱗の色が亜竜のように、薄汚いのだ。竜族以外の亜竜は、竜族からしたら、トカゲらしい。プルーム様も、言っていた。だから、つい言ってしまったのだ。
「気に触ったなら、済まない。だが、俺も胸糞悪い光景を見せられたんだ。お互い様だろ? もちろん、俺も許す気はない」
――属性纏《雷霆》――
相手の攻撃に対応出来るように、雷霆属性にした。
「それは、属性纏……。何故人間ごときが!? これでは、計画に支障が出るではないか!」
――属性纏《暴嵐》――
どうやら相手も、属性纏を使えるようだ。ボム達は、胸糞系阿呆生徒を見張りながら、久々の強敵との戦闘を、観戦するようだ。ジュースを飲みながら、見学していた。
さて、どうやら相手は、カウンター狙いのようだ。それなら、いつものパターンを実行してみよう。
――魔闘術《斧撃》――
――魔闘術《武流》――
――雷霆魔術《雷槍》――
ローキックで膝を壊し、いつもならここで手刀だが、アレンジして抜き手を喉に突っ込んだ。人間なら死ぬが、予想的中。ゴムを突いたような弾力があり、突き抜けなかった。だが、痛みにより体が固まったため、即座に蹴りと雷霆魔術の合わせ技を!食らわした。
属性纏《雷霆》の速度に、追いつくためには、同じく、属性纏《雷霆》を使わなければならない。だが、速度に関しては、下位互換でしかない、暴嵐属性では、目で捕らえることも、到底無理だ。
「かっ! こんなことがあってたまるか! 俺は選ばれた、存在なんだ。お前なんかに……お前なんかに!」
そう言うと、目の前にローブと仮面を取った男がいた。何故、男というのが分かるかというと、全裸だからだ。俺が脱がす前に、全裸になっていた。その姿は、二足歩行のトカゲだ。ここにも、二足歩行の不思議系魔獣がいたのか? と思い、聞いてみた。
「二足歩行の魔獣? それとも、リザードマンというやつか? それを竜というのは、無理があるんではないか?」
「殺す……殺す……殺す~!」
どうやら彼の地雷を、踏み抜いてしまったらしい。そして、ロックオン。発射!
「がぁっ……ぐぅ……!」
トカゲの股間の位置は、よく分からなかったが、正確に貫いていたようだ。いつもの股間槍である。
「どうだ? 素晴らしいプレゼントを、受け取った感想は? トカゲの奥さんには、申し訳ないが、自業自得だと、思ってくれ」
苦しみながらも、抗議したいことがあるようだ。
「トカゲの奥さんなぞいない。俺はトカゲではない。角があるだろう!」
どうやら独身のようだ。だが、何故トカゲに、違和感を感じていたか、やっと分かった。すると、ジュースをストローで飲んでいたボムが、何やら放り投げてきた。
「ラース!」
受け取った物を見ると、ボム特製の刀だった。どうやら同じ事を、考えているらしい。
「……まさか! やめろ! それは、やめろー!」
さらば……角! 刀を二振りすると、角は頭から、おさらばした。
――火炎魔術《火葬》――
すぐに燃やし、角アンデッドになるのを防いだ。汗を拭う仕草をして、トカゲ男に声を掛けた。
「ふぅー。角の処理を完了しました。これで心置きなく、トカゲとして、人生を歩めるはずです。これからは、ありのままの、自分を受け止め、精一杯生きていくことを、勧めます。悪事なんか、お止めなさい。あなたを見ている者が、必ずいます。すぐに、トカゲの奥さんが、見つかるでしょう」
と、お祓いを終えたかのように、諭す真似をしてみた。ボムのように、上手くは出来なかったが、許して欲しい。そして、ボム達には、大受けのようだった。あの胸糞系阿呆生徒まで、喉を押さえながら笑っている。さらに、いつの間にか、魔狐のギンも来ていて、笑っていた。
「貴様……なんてことを……悪魔か!」
と言う、トカゲもどき。頷いてるのは、毎度お馴染みのセルと、新たに魔狐のギンもだった。あとで、お仕置き確定である。そして、何故もどきなのかというと、角を切ったら、体が萎み始めたからだ。干からびた、トカゲみたいな肌をした、木になっていた。
「体が……まだ死にたくない……! 竜になる……のだ……」
どうやら、死んでしまったようだ。身包みを剥ぎ、焼却してしまおう。だが、その前にやることがある。
――神聖魔術《解呪》――
――召喚魔術《契約破棄》――
――生命魔術《完治》――
召喚獣を、自由にしてあげ、傷を治してあげた。そして、首輪と死体を燃やすことにした。
――結界魔術《絶界》――
――火炎魔術《火葬》――
絶界の中で燃やせば、火事になる心配がないから、楽でいい。それにしても、属性纏が使えるくせに、雑魚だったことが、不思議でならなかった。訓練せずに、属性纏を使えるのは、生粋の聖獣か神獣だけだ。
だが、あのトカゲはどう見ても、聖獣ですらない。あの角から、何か分かったかもしれないが、既に燃やしてしまった。後悔しても、仕方がないので、とりあえず胸糞系阿呆生徒の処分を、決めようと思ったのだった。
「さて、召喚獣の君は、もう自由だ。コイツを好きにさせてやるぞ」
そう聞くと、俺を見る狼。
「お前に、お仕置きして欲しいそうだ。トカゲの結末を見たときに、ちょっとスッキリしたから、コイツも、同じようにして欲しいそうだ」
ボムが狼の言葉を教えてくれた。
「そうか。任せろ」
そう言って撫でてやった。そして、ボムたちはワクワクしながら、見学再開。
「新薬登場! まずは全裸にします。
次に、この薬を水にとかして、塗りたくります。ボム達は、触らないように。最後は、水で流してやると、あら不思議。ツルッツルに、なりました。続きまして、首輪をはめられる恐怖を、味わって頂こう。その前に、胸糞系阿呆生徒君。知っていたかね? この学園には、様々な癖を持った方々が、いるということを。そこは、懲罰と称した、ある催しが開かれている。ここまで言えば、何か分かってくれただろう。そこの顧問の先生に、言われているんだよ。何か悪さをした生徒がいた場合、そこに連れてきてくれれば、俺の味方もするし、協力も惜しまないとね。
その時に、この首輪を渡された。これは強制力はないが、見て分かる者には、ある種の許可証となっているそうだ。普通は、日数が書かれているが、家族を売るような阿呆には、特別に無期限の物を、つけてあげよう。頑張って社会奉仕して、罪を償ってくれたまえ」
そう言って、専用の魔道具を使って連絡したら、すぐに顧問が来た。
「ラース先生。早速ありがとうございます。これからも、よろしくお願いしますね」
満面の笑みで、そう言って、連れて行ってしまった。もちろん、大声を出せないように、特別製のマスクをされてだが。
「どうかな? スッキリしたかい?」
そう聞くと、何やらセルとギンと話していた。そして、コクコク頷いた。そのあと、ペコリとお辞儀して、転移門へと入っていった。ちなみに、召喚獣は契約が破棄されると、自分の住処に帰れるのだ。
狼を見送った俺は、ギンの尻尾とセルの頭を掴み、ある質問を問いかけた。
「お仕置きに、チョップとデザート抜き、どちらにしますか?」
驚愕の顔を浮かべ、二人は同時に宣言した。
「「チョップで!」」
この答えは分かっていた。そして、セルは狙っていたようだ。だが、毎度楽な思いはさせない。
「そうか。分かったぞ。ボムさん、出番です」
ボムチョップの出番です。理由は、学園の中での彼の役職は、調教師だからだ。そして、想像していたものでは、なかったものの登場に、二人は慌てる。
「セル様、聞いていた話と違います。親分のチョップを喰らったら、死んでしまいます」
「お……お兄ちゃん。お願い。やめて」
セルも必死であるが、残念だ。
「お前、普段お兄ちゃんなんて、言わないだろ! 普段は、ラースと呼んでるだろうが! それに、俺の妹は、カルラだけだ」
『わーい! 兄ちゃん、好きー♪』
可愛い妹である。左手でギンの尻尾を掴み、右手でカルラを撫でる。
ニールは、ボムの頭の上に、爆笑しながら、乗っかっている。
「さあ、ボムチョップをやってしまえ」
そう言って、二人の頭には、手加減されたチョップが、落とされたのだった。
「じゃあ調査に行くぞ」
涙目で頭を抱え、うずくまる二人を横目に、移動を促すのだった。
「忘れていたが、召喚獣はテイマーの従魔と少し違い、影に控えさせたり、召喚で呼び出したりが可能だ。それでも、必ず従魔証をつけろ。最近は、従魔の売買とか盗難が、相次いでいるらしい。ちなみに、俺の生徒で、従魔の売買なんかに手を出したら、お仕置き確定だからな? 自分の従魔は、自分の手で守れ! 無理なら、相談しろ。以上だ。実技の説明会は午後。俺も担当しているが、短期だから来なくてもいいぞ」
と、やんわりと他へ促す。もしかしたら、なくなるかもしれないという、淡い期待を込めて言ったのだが、どうやら叶わないらしい。
「妾は行くと、決めているのじゃ。お爺さまが言ってたのじゃ。属性纏なるものを覚えれば、カルラと冒険出来ると。妾も一度でいいから、一緒に十大ダンジョンに、行きたいのじゃ。でも、足手まといは、嫌じゃ。だから、属性纏なるものを、習得するのじゃ」
あの爺さんは、余計なことをしてくれたようだ。獅子王神様の弟子と聞いたときは、属性纏を知っていたことに納得し、その割には弱いことに驚きもした。そして、王女はどうやら本気らしい。ボムは嬉しそうだ。
ボムとしては、カルラに親友を、作ってあげたいのだろう。自分にとっての、ソモルンのように。親友相手なら、喧嘩くらい、多少はあるものだと、納得している。理由は、無人島出発前にソモルンと、大喧嘩したからだ。
ボムは、あの寂しい無人島に、ソモルンを残して行くのを、忍びないと思ったが、危険な外に連れ出すのは、もっと嫌だった。彼の過保護ぶりは、カルラだけが、対象ではない。そして、ボムは思いついた。ソモルンのための、国を作ろうと。みんなが、ソモルンと遊んでくれて、ボムがいなくても、大丈夫なように。
それに対して、ソモルンは大激怒。ボムのおデブなお腹を、ポカポカと殴るくらいの大激怒。見てた俺は、ソモルンが可愛くて幸せだったが、ボムは大混乱。理由は簡単だった。
『ボムちゃんと、ずっと一緒にいるの。国なんかいらない。この島と、何も変わらない。ボムちゃんがいなければ、何も意味はない』
大号泣しながらの訴えに、平謝りするボム。結局、丸一日、口を聞いてもらえなかった。落ち込むボムを見て、可哀想に思ったため、ソモルンを説得して、一週間ソモルンウィークとして、俺も一緒に遊ぶことで、許してもらえたのだった。そのことがきっかけで、ボムはソモルンと、旅をすることを楽しみにしている。
それはさておき、横で頷く、ボア四騎士とカトレア。どうやら、これで授業確定である。
「そうか……。頑張れ。さあ、次の授業の教室へ行かないと、間に合わないぞ。ボアに乗っていくなよ。怒られるからな。乗りたいなら、外でだぞ」
一応注意した。ボムも、乗りたそうにしていたからだ。
「「「「はい」」」」
素晴らしい返事をして、教室を出て行った。
「ラースは行かないのか?」
王女は暇な俺が、何処かの授業に行かないのかと、聞いてきた。ぶっちゃけ暇ではない。
「いろいろ仕事があるからな。さあ、遅れるぞ」
さっさと行くように促した。遅れると、嫌味を言われるからだ。
「分かったのじゃ。カルラ、またあとでなのじゃ」
『うん。またねー♪』
手を振る王女に、手を振り返すカルラ。
「ご飯一緒に食べよ」
カトレアが、決定事項のように言ってくるが、確約できるか微妙である。
「出来たらな」
「分かった」
こういうところは、楽でいい。物分かりのいいところは、父親似だろう。母親は、物分かりがいいとは、言えない。ボムという、被害者がいるからだ。
「さて、調査を始めますか。まずは、結界の中心に行くぞ」
ボムの椅子をしまって、移動を始めた。すると、移動中に横切った教室の中で、胸糞悪い光景が目に入ってきた。
「これで約束通りだ。金を寄こせ」
「お代は、一律金貨一枚(十万円)ですよ。またのご利用をお待ちしています」
そう言って、従魔に首輪をはめていた光景が、目に映った。俺は、ノックして声を掛けた。
「なかなか面白いことしてるな。自分の従魔を他人に売るとか、頭大丈夫か?」
ばつが悪そうな顔をして、逃げ出した生徒の首に、手刀を叩き込む。喉を押さえて膝をつく、胸糞系阿呆生徒。
「それで、そちらさんは、どうするつもりだ?」
おかしな仮面で顔を隠す、黒いローブの何か。まず、男か女か分からない。次に、頭に角がある。そして、トカゲみたいな尻尾がある。それでつい、言ってしまった。
「トカゲみたいなやつだから、コイツをトカゲの尻尾のように、切り捨てるのか?」
すると、殺気が入り混じった怒気が、放たれた。
「トカゲではない! 俺は竜だ! 俺を侮辱したことを、後悔させてやる」
さっきまでの口調では、なくなっていた。そして、竜と言ったが、言っては悪いが、鱗の色が亜竜のように、薄汚いのだ。竜族以外の亜竜は、竜族からしたら、トカゲらしい。プルーム様も、言っていた。だから、つい言ってしまったのだ。
「気に触ったなら、済まない。だが、俺も胸糞悪い光景を見せられたんだ。お互い様だろ? もちろん、俺も許す気はない」
――属性纏《雷霆》――
相手の攻撃に対応出来るように、雷霆属性にした。
「それは、属性纏……。何故人間ごときが!? これでは、計画に支障が出るではないか!」
――属性纏《暴嵐》――
どうやら相手も、属性纏を使えるようだ。ボム達は、胸糞系阿呆生徒を見張りながら、久々の強敵との戦闘を、観戦するようだ。ジュースを飲みながら、見学していた。
さて、どうやら相手は、カウンター狙いのようだ。それなら、いつものパターンを実行してみよう。
――魔闘術《斧撃》――
――魔闘術《武流》――
――雷霆魔術《雷槍》――
ローキックで膝を壊し、いつもならここで手刀だが、アレンジして抜き手を喉に突っ込んだ。人間なら死ぬが、予想的中。ゴムを突いたような弾力があり、突き抜けなかった。だが、痛みにより体が固まったため、即座に蹴りと雷霆魔術の合わせ技を!食らわした。
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「かっ! こんなことがあってたまるか! 俺は選ばれた、存在なんだ。お前なんかに……お前なんかに!」
そう言うと、目の前にローブと仮面を取った男がいた。何故、男というのが分かるかというと、全裸だからだ。俺が脱がす前に、全裸になっていた。その姿は、二足歩行のトカゲだ。ここにも、二足歩行の不思議系魔獣がいたのか? と思い、聞いてみた。
「二足歩行の魔獣? それとも、リザードマンというやつか? それを竜というのは、無理があるんではないか?」
「殺す……殺す……殺す~!」
どうやら彼の地雷を、踏み抜いてしまったらしい。そして、ロックオン。発射!
「がぁっ……ぐぅ……!」
トカゲの股間の位置は、よく分からなかったが、正確に貫いていたようだ。いつもの股間槍である。
「どうだ? 素晴らしいプレゼントを、受け取った感想は? トカゲの奥さんには、申し訳ないが、自業自得だと、思ってくれ」
苦しみながらも、抗議したいことがあるようだ。
「トカゲの奥さんなぞいない。俺はトカゲではない。角があるだろう!」
どうやら独身のようだ。だが、何故トカゲに、違和感を感じていたか、やっと分かった。すると、ジュースをストローで飲んでいたボムが、何やら放り投げてきた。
「ラース!」
受け取った物を見ると、ボム特製の刀だった。どうやら同じ事を、考えているらしい。
「……まさか! やめろ! それは、やめろー!」
さらば……角! 刀を二振りすると、角は頭から、おさらばした。
――火炎魔術《火葬》――
すぐに燃やし、角アンデッドになるのを防いだ。汗を拭う仕草をして、トカゲ男に声を掛けた。
「ふぅー。角の処理を完了しました。これで心置きなく、トカゲとして、人生を歩めるはずです。これからは、ありのままの、自分を受け止め、精一杯生きていくことを、勧めます。悪事なんか、お止めなさい。あなたを見ている者が、必ずいます。すぐに、トカゲの奥さんが、見つかるでしょう」
と、お祓いを終えたかのように、諭す真似をしてみた。ボムのように、上手くは出来なかったが、許して欲しい。そして、ボム達には、大受けのようだった。あの胸糞系阿呆生徒まで、喉を押さえながら笑っている。さらに、いつの間にか、魔狐のギンも来ていて、笑っていた。
「貴様……なんてことを……悪魔か!」
と言う、トカゲもどき。頷いてるのは、毎度お馴染みのセルと、新たに魔狐のギンもだった。あとで、お仕置き確定である。そして、何故もどきなのかというと、角を切ったら、体が萎み始めたからだ。干からびた、トカゲみたいな肌をした、木になっていた。
「体が……まだ死にたくない……! 竜になる……のだ……」
どうやら、死んでしまったようだ。身包みを剥ぎ、焼却してしまおう。だが、その前にやることがある。
――神聖魔術《解呪》――
――召喚魔術《契約破棄》――
――生命魔術《完治》――
召喚獣を、自由にしてあげ、傷を治してあげた。そして、首輪と死体を燃やすことにした。
――結界魔術《絶界》――
――火炎魔術《火葬》――
絶界の中で燃やせば、火事になる心配がないから、楽でいい。それにしても、属性纏が使えるくせに、雑魚だったことが、不思議でならなかった。訓練せずに、属性纏を使えるのは、生粋の聖獣か神獣だけだ。
だが、あのトカゲはどう見ても、聖獣ですらない。あの角から、何か分かったかもしれないが、既に燃やしてしまった。後悔しても、仕方がないので、とりあえず胸糞系阿呆生徒の処分を、決めようと思ったのだった。
「さて、召喚獣の君は、もう自由だ。コイツを好きにさせてやるぞ」
そう聞くと、俺を見る狼。
「お前に、お仕置きして欲しいそうだ。トカゲの結末を見たときに、ちょっとスッキリしたから、コイツも、同じようにして欲しいそうだ」
ボムが狼の言葉を教えてくれた。
「そうか。任せろ」
そう言って撫でてやった。そして、ボムたちはワクワクしながら、見学再開。
「新薬登場! まずは全裸にします。
次に、この薬を水にとかして、塗りたくります。ボム達は、触らないように。最後は、水で流してやると、あら不思議。ツルッツルに、なりました。続きまして、首輪をはめられる恐怖を、味わって頂こう。その前に、胸糞系阿呆生徒君。知っていたかね? この学園には、様々な癖を持った方々が、いるということを。そこは、懲罰と称した、ある催しが開かれている。ここまで言えば、何か分かってくれただろう。そこの顧問の先生に、言われているんだよ。何か悪さをした生徒がいた場合、そこに連れてきてくれれば、俺の味方もするし、協力も惜しまないとね。
その時に、この首輪を渡された。これは強制力はないが、見て分かる者には、ある種の許可証となっているそうだ。普通は、日数が書かれているが、家族を売るような阿呆には、特別に無期限の物を、つけてあげよう。頑張って社会奉仕して、罪を償ってくれたまえ」
そう言って、専用の魔道具を使って連絡したら、すぐに顧問が来た。
「ラース先生。早速ありがとうございます。これからも、よろしくお願いしますね」
満面の笑みで、そう言って、連れて行ってしまった。もちろん、大声を出せないように、特別製のマスクをされてだが。
「どうかな? スッキリしたかい?」
そう聞くと、何やらセルとギンと話していた。そして、コクコク頷いた。そのあと、ペコリとお辞儀して、転移門へと入っていった。ちなみに、召喚獣は契約が破棄されると、自分の住処に帰れるのだ。
狼を見送った俺は、ギンの尻尾とセルの頭を掴み、ある質問を問いかけた。
「お仕置きに、チョップとデザート抜き、どちらにしますか?」
驚愕の顔を浮かべ、二人は同時に宣言した。
「「チョップで!」」
この答えは分かっていた。そして、セルは狙っていたようだ。だが、毎度楽な思いはさせない。
「そうか。分かったぞ。ボムさん、出番です」
ボムチョップの出番です。理由は、学園の中での彼の役職は、調教師だからだ。そして、想像していたものでは、なかったものの登場に、二人は慌てる。
「セル様、聞いていた話と違います。親分のチョップを喰らったら、死んでしまいます」
「お……お兄ちゃん。お願い。やめて」
セルも必死であるが、残念だ。
「お前、普段お兄ちゃんなんて、言わないだろ! 普段は、ラースと呼んでるだろうが! それに、俺の妹は、カルラだけだ」
『わーい! 兄ちゃん、好きー♪』
可愛い妹である。左手でギンの尻尾を掴み、右手でカルラを撫でる。
ニールは、ボムの頭の上に、爆笑しながら、乗っかっている。
「さあ、ボムチョップをやってしまえ」
そう言って、二人の頭には、手加減されたチョップが、落とされたのだった。
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涙目で頭を抱え、うずくまる二人を横目に、移動を促すのだった。
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