上 下
8 / 167
第一章 無人島

第七話 探検

しおりを挟む
 とりあえず、城門の内側で降りるみたいだ。助かった……。あんなに強そうな魔物に、勝てる気がしない。
 
 地面に雲が近付くと、ボム達は降りていく。俺も降りなければ置いて行かれる。それは御免こうむる。魔物は城門の中に、入れはしないんだろうけど、声は聞こえるからだ。


 さて、探検の始まりだ!

 まずは、正面の巨大な扉を開け、中の様子をみる。入ってすぐに、広い玄関ホール。左右から二階に繋がっていると思えた階段は、右は二階へ。左は三階へ。
 何だろうか、この巫山戯た階段は。二階から三階に行くときは、どうするのだろうか。まぁその内、分かるだろう。

 二人と一緒に中へ入ろうと思ったら、ボムの頭の上にソモルンが、小さいサイズで乗っかっている。二人は、仲良しになっていた。さて、待ちきれない二人とともに、いざ! 中へ!

 まず、一階で目を惹いたのは、国立図書館並みの本の数が並ぶ、書斎だった。だが、書斎の規模ではない。
 一階のこじんまりとした、食堂。魔道具のトイレ。小さいソモルンとなら、三人で入れそうな風呂。それ以外の全てが、書斎という一つのデカい部屋だった。

 ここに住んでいた人とは誰なのだろうか。
 
 ただ、トイレが魔道具で、風呂があるのは素直に嬉しい。今までは、生活魔法で処理してたから、なおさらだ。俺達の城ではないが、あとで入らせてもらおう。

 それじゃあ次は、二階だ。
 ここは、個人の部屋があるだけのようだ。
 客室らしきものが一つ。
 私室らしき部屋が四つ。
 ということは、四人が住んでいたのだろう。

 さて、また一階に降りて、三階に行かねばならないようだ。めんどくさい。何でこんな構造にしたんだろうか。
 結局一階まで戻って、三階へ。

 ところが、階段をちょうど二階部分まであがると、途中壁に阻まれてるような感覚があり、全く進めない。

「なんだ? この壁は……。俺達の探検を邪魔するのか?」

 と言いながら、ボムは魔力を込め始めた。
 ヤバい。仮にも聖獣。

 だが、頭の上のソモルンは、大興奮でボムの応援をしている。

「ちょっと待った! 探検なんだろ? 探検は、謎を解いて先に進んだり、一筋縄じゃいかない問題を協力したりして乗り越えてこそ、達成したときに大満足のものになるんだ。今までは拍子抜けだったじゃないか」

 どうにかして収めなければ……。

「ふむ。そういうものか。じゃあどうやって進むんだ? 先が進まないのはつまらないぞ」

 なんとか怒りを収めてくれたようだ。
 まず、どこからどう見ても階段がおかしい。こんな階段、不便意外の何物でもないだろう。

「とりあえず、一階に降りてみよう。階段以外に何かあるかも」

 二人を促し、一階へ。
 手分けして周囲を見渡すと、ソモルンが鳴き声をあげた。

「グルァ」

 ソモルンの元に行ってみると、階段の裏の黒い石で出来た柱の床に近い部分に、よく見なきゃ分からない程度の亀裂が四つあった。これは鍵穴なのだろうか。
 だとすると、鍵が必要になるのだが……。
 どんな物なのか見当もつかない。

「でかしたソモルン。これはきっと鍵穴だな。ソモルンは鍵穴を見つけ、俺は鍵を見つけたぞ」

 えっ? ボムさん、あなた鍵を見つけたのか? ドヤ顔で俺を見てくる熊さんと、褒められて大いに喜ぶソモルン。

 なんか凄く悔しい……。

 一人悔しがる俺を横目に、鍵を挿していく二人。一つ挿すごとに、柱に彫られただろう溝を光が走り抜ける。四つ目を挿し終わると、三階に繋がる階段が消え、代わりに高さ一メートル位の四角柱が目の前に現れた。

 三人で近付き、ボムとソモルンがペタペタ触るが何も起きず。そこで、俺も触ってみた。手が一番上の面に触れた瞬間、魔法陣が展開され、三人が余裕で乗れる、透明な板のような物が、エレベーターのごとく上がっていく。

 なるほど。
 人間にしか反応しないようだ。
 一応三人で協力した形になったのだが、ボムとソモルンは少し悔しげだ。そしてついに、三階に到着。

 これだけもったいぶった三階には何があるのか、楽しみでしょうがない。
 とりあえず、一周してみた。
 ぶっちゃけ何もない。
 ある一つを除けば……。

 この目の前の分厚く、金や宝石で飾られた本を除けば、一つの広大な部屋だった。扉が四つあるから、四つ部屋があるのかと思ったが、中で繋がってた。
 ちなみに、この本も他の二人には全く反応しなかった。

 催促の目を向ける二人にせかされ、魔導書とだけ書かれた、いかにも怪しい本をめくる。勇気を出してめくったはいいが、表紙しかめくれず、一ページ目に魔法陣が描かれ……

【先を読みたければ魔力を流し鍵を開けよ】

 と、書かれていた。無言のプレッシャーを背に浴びながら、魔法陣に手を乗せ、魔力を流す。

 すると、魔力を流しているはずなのに、逆に魔力が流れ込んできた。流れ込んできた魔力は、激しく渦を巻くかのように、右腕に巻き付いていく。
 痛みはなく、声をあげることはなかったのだが、その現象と魔力が流れ込む違和感で、手を退けるなどの行動が、全くできなかった。

 その魔力の奔流がおさまると、目の前に本はなく、四角く黒いキューブだけが置かれていた。

 ……いったいなんだったんだ?
 
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら侯爵令嬢だった~メイベル・ラッシュはかたじけない~

おてんば松尾
恋愛
侯爵令嬢のメイベル・ラッシュは、跡継ぎとして幼少期から厳しい教育を受けて育てられた。 婚約者のレイン・ウィスパーは伯爵家の次男騎士科にいる同級生だ。見目麗しく、学業の成績も良いことから、メイベルの婚約者となる。 しかし、妹のサーシャとレインは互いに愛し合っているようだった。 二人が会っているところを何度もメイベルは見かけていた。 彼は婚約者として自分を大切にしてくれているが、それ以上に妹との仲が良い。 恋人同士のように振舞う彼らとの関係にメイベルは悩まされていた。 ある日、メイベルは窓から落ちる事故に遭い、自分の中の過去の記憶がよみがえった。 それは、この世界ではない別の世界に生きていた時の記憶だった。

呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。 ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…! 8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。 同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。 実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。 恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。 自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌

力水
ファンタジー
 楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。  妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。  倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。  こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。  ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。  恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。    主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。  不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!  書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。  一人でも読んでいただければ嬉しいです。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

処理中です...