おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一

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第三章 欲望顕現

第九十四話 売買からの敵対禁止

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 タマさんが発行した証明書を見たせいで固まってしまったローワンさんだが、復活まで少々の時間を要した。
 勝手に船を降りるわけにもいかず、【九天王国】の棺桶船に乗り込んでいく人たちを見て時間を潰す。

 どうやらローワンさんのアナド商会と取引したらしく、商会員と偉そうな人が話し合っていた。
 スキルを使ってまで聞きたいわけではなかったし、途中からラビくんとボール遊びをしていたからどうでも良かった。

 ローワンさんが巧くやってくれるだろう。

「――はっ! 私は……いったい……」

「おっ! やっと起きたか! ほれ、それ持って早く降りようぜ!」

「よ……よろしいので……? というか……どうやって……?」

 かなり混乱しているようだが、俺たちには船の時間があるのだ。
 さらに、まだ蛇と鮫の取引を終えていないから倉庫に行かなければいけない。

 ちなみに、お金の振り込みについてはインチキした。

 パンダ大精霊様全面協力のマネーロンダリングだ。
 一部を奴隷村に残した以外は、全てカーさんのギルドカードに移す。カーさんのカードに移した資金をネーさんが新たに作ったカードに移して、空になったカーさんのカードを破棄した。

 俺がギルドカードを作った後、ネーさんのカードからパンダ大精霊様が移してくれ、ネーさんのカードは一度も使われることなく破棄される。

 多少勘ぐられても証拠はない。

 辺境伯領を出たことと、アナド商会というコネがあること、さらに目的地が僻地という三つが揃って初めてギルドカードの破棄が可能になる。
 カーさんも不便であることは分かっているから、【迷宮都市】に着いたら魔力紋を変化させて、別人として登録し直すそうだ。

 閑話休題それはさておき

 困惑するローワンさんを強引に動かし、商会の倉庫に連れて行った。
 端から見れば、ドナドナされているおっちゃんに見えたかもしれない。

「ねぇ、アーク!」

「……どうしたの?」

 俺の腕の中から観光をしているラビくんが話し掛けてきたが、なんとなく予想がついているだけに返事がしづらい。

「この後、観光するんだよね?」

「……しません」

「――え?」

「……しません」

「り……理由を聞いても……いいかな……?」

「鬼畜天使の方針です。全力で協力すると約束したでしょ? アレ関係らしいよ?」

「なっ! 何だったってーーー!」

 俺も観光をしたかったけど、目的地には時間制限があるから今日の船を乗り過ごすことは許さないそうだ。
 観光を希望するとか言いそうだったため、【霊王】様の姿を教えるという手札を切ってまで阻止したそうだ。

 暇つぶしのときに、「そういえば何をするか聞いてないな」と思って質問したら、とりあえず最速で【九天王国】に向かうことを指示された。

 具体的な内容を知らないことがこんなにも怖いとは思わなかったが、【迷宮都市】に早く行きたいカーさんとも意見が合致したおかげで誰からも文句は出ていない。

 ……今までは。

 ラビくんは【九天王国】に寄ることは同意したが、観光をする気満々だったのだ。
 それなのに、倉庫で取引を終えたら港に戻って再び「どんどん、どんぶらこっ♪ どんどんどんどん、どんぶらこっ♪」と、船に揺られることが決まっている。

 果たして、地獄の刑務所長は上司に逆らうことができるのか。

「……くぅぅぅぅーーー!」

 うん、できそうにないね。

 すごく悔しそうだが、言い負かしている状況を想像できなかったようだ。
 それも仕方があるまい。
 ラビくんもタマさんに逆らえない何かがあるらしいからね。

「……また時間があるときに来よっか! ねっ!?」

「……うん。約束だよ……?」

「約束!」

 小さいお手手を持って指切りげんまんのような仕草をする。
 ついでに柔らかい肉球をプニプニさせてもらう。

「おい、アーク! 蛇と鮫を少しずつ出してやってくれ! ついでに船からもらってきたもので処分できそうな物もな!」

「食料品と魔物素材、鉱石くらいしかないよ? 貴金属はバラすか闇市場に流さないとバレると思うし」

「それで十分だな。容器を変えればいいし。ってことだ、木箱や樽も用意した方が良いぞ!」

「……あのぉ……空荷って報告を受けているんですが……?」

 俺とカーさんが検品しながら積み荷を出していくと、話しについて来れていないローワンさんが恐る恐る質問してきた。

「……そうなのか? ――そういえば船は空だったぞ。オレたちは大きな木箱から取り出しただけだし……」

 確かに大穴が開いて動かない船のことを大きな木箱・・・・・と言えるかもしれないが、少し苦しい弁解だと思う。

 ローワンさんはきっと思っている事だろう。
 「持ち主に返してあげないのですか?」と。

 しかし、鬼畜天使の薫陶を受けた我が一行に、タダ働きを是とするような者は一人もいない。
 霞を食べて生きているわけではない以上、善意や良心とは別に対価を要求することは必然だ。

 今回は被害者である者から対価をもらうことになるだろうが、同時に犯罪行為の加害者たちであるため良心は不要である。
 俺たちから買い取った後、拾得物を返すのも売却するのもローワンさん次第だ。

 ただ、報告と違うことが起こったせいで混乱しているだけのような気がするけど。
 すでに配送先を確認しているからね。

 ちなみに、我が一行で食事を必要としている者は俺だけというね。
 霞を食べて生きているっていうのは、あながち間違いではない気がする。

 さて、次々と蛇や鮫を出しているのだが、どうやって保存するのか謎だ。
 鮮度が重要なのに、別の国で売りたいそうだ。出国を邪魔されそうだからという理由で。

「おっ! 大切にしてくれてるのか!」

「当然です! 我が家の家宝です! 盗難対策に護衛を雇っているようなものです!」

 アタッシュケースのような鞄から取り出した物を胸に抱えて、カーさんに言葉を返しているローワンさん。

「それってもしかして【空間袋】ですか?」

「そうです! 祖父から代々受け継いでいる物なんです! それも、迷宮産の聖宝具カキア級ですよ!」


 こんなに興奮しているローワンさんを見るのは初めてかもしれない。

 迷宮は、水没からのゴーレム兵をルーチンワークにしてたから価値がよく分からない。
 ゆえに、ローワンさんの反応から推測するしかないのだ。が、一目で分かるほど興奮していることから、大変価値があるものなのだろう。

 ……少し機嫌が悪そうだが、かの大先生に聞くことにしよう。

『ラビペディア大先生、アレはすごい物なんですか?』

 俺の腕の中で丸まって拗ねているラビくんに念話で話し掛けてみると、上目遣い風に見つめてきたあと話し出した。

『……そうだよ』

 ここまでやる気がない大先生は初めて見るな。

『どれくらいでしょうか?』

『……一番上。人生を左右するレベル。なんでここにあるんだろう?』

 少しだけ興味が出てきたようだ。

『ここにあったらダメなのですか?』

『うむ……。ダメではないけど、国宝レベルの物品を商会の代表が持っていることが謎なのです! しかも、普通は手放したくないほどの物を受け継ぐとはいったい……!?』

 いつもの話し方になってきたな。

「ローワンさん、それを持っていて危なくないですか? それにどうやって入手したのですか?」

「ふむ……」

「欲しいわけではないですよ。俺には必要ないですしね」

 余程大切な物のようで、かなり警戒心を煽ってしまったようだ。
 一瞬垣間見えた視線や表情から、強者の風格を覗かせていた。もちろん、個人の戦闘力ではないが。

「オレがローワンの爺さんにやったんだよ。昔、迷宮に潜ったときに入手してな。世話になった礼だよ」

 どうやって誤解を解こうかと思っていると、思わぬところから答えが返ってきた。

「カーさんからの贈り物か。それなら家宝にするのも分かるかも。俺にとっては親分にもらうようなものでしょ?」

「いや……パンダ大精霊って呼んでる方に近いかな」

『……【大老】に怒られても知らないよ?』

『……しばらく会わないから大丈夫だ!』

 ラビくんの突っ込みから、カーさんが調子に乗っちゃったことが分かる。
 まぁ自分が【商神】様と同等と言ったら怒られるだろうよ。

『カーさん、それをフラグというんだよ?』

 と、教えてあげる。ローワンさんと揉めずに済んだからね。

「ふ……ふらぐって何だ? ――まぁいいか。この【空間袋】は大容量なのに、時間停止機能がついているんだよ。普通は大容量だけか、時間遅延くらいだからな。他にも迷宮を攻略したけど、これと同等の物は手に入らなかったな。だからって返せなんて言わないから警戒すんな」

「すみません……。つい……」

「いえ、こちらこそ不躾にすみませんでした」

 一応【空間袋】についての話は終わりにし、【空間袋】内のものを取り出して倉庫に置き、蛇と鮫を取り込んでいく。
 袋の口が小さくないかと思わずにはいられないが、そこは聖宝具。対策が用意されていた。

 袋内に手を入れ反対の手で収納する物品を触ることで、大きさに関係なく収納できるらしい。

 引き渡し自体はすんなり終わらせることができ、振り込み先を確認したあと契約書にサインをして終わった。

 そのあとすぐ【一の島】行きの船に乗る。時間ギリギリだったが、無事出発することができて一安心だ。鬼畜天使に文句を言われずに済む。

「では、お世話になりました!」

「先に行ってるからなーー!」

「必ず行きますのでーー! また会いましょう!!!」


 ◇◇◇


「ローワンさんよ、あまり無茶してくれるな。寿命が縮んだぞ?!」

「ん? いつのことです? あの御方がいる時点で私の安全は確保されていましたよ?」

 『迷宮商会』の別名を持つほど、迷宮や魔境関係でのし上がった『アナド商会』。
 国に所属することもなく、貴族の後ろ盾もないのに一目置かれる商会になった要因の一つに、武力での解決があった。

 警備や護衛を建前に私兵団を組織し、商売敵や貴族などとも渡り合ってきた。
 アークが感じた強者の風格は、武力を行使することを躊躇わず、武力を振るう覚悟を持っていた者特有の雰囲気のことだろう。

 私兵団の団長である『モーガン』は高位の冒険者で、専属契約を結んだ腹心の部下――あるいは親友と言える人物だ。

「安全の確保? どこが……。あの集団で一番ヤバいのはあの少年だよ。他も気になる存在もいたが、少年を見た瞬間に俺の固有スキルが警報鳴らしてたからな」

「確か、直感系のスキルでしたか……。とても強そうには見えなかったのですが……」

「いやいや! 魔物を足止めしてただろ!? しかも倒していたし!」

「あれは……あの御方がやってくれたのかと思っていたのですが……。では、強そうに見えないのは何故?」

「そういうスキルを使ってるんだろうな。それ込みでヤバいやつってことだ。商会の鑑定士でも見えないスキルを使うだけで、十分脅威となる実力者だ。年齢を考えたら余計に恐ろしいわ!」

「――では、アレも? それからアレもなのか?」

「いろいろ繋がったようだが、あの場を治めてくれた人物に感謝だな。戦闘になったら介入する暇すらもらえないだろうよ。あの一行とは敵対しないよう、徹底的に指示を出すことだ」

「そうですね。すでに二人ほど阿呆を出してしまいましたからね。さて、追いかけるための行動を開始しましょうか!」

 アークの目に映らないように隠れて護衛していたが、全て把握されていたせいで、激しいストレスに襲われていた。
 短時間の同行で、戦闘もしていないのにだ。

 もう二度と会いたくないが、会うことが確定しているため、せめてストレスなく会えるように手を尽くすのだった。


 ◇◇◇

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