84 / 116
第二章 一期一会
第八十話 男村からの強制恋愛
しおりを挟む
後半、従魔視点の話になります。
タグの『ハーレム?』を少し回収しています。
夜の営みについてもオブラートに包んで書いてますが、苦手な方はご注意ください。
==================
ラビくんからの冷たい視線をかわしつつ中継地点に帰還する。
中継地点では、広く開いた落とし穴があった場所には、大部屋を主体に管理者用の特別個室をつけた二階建てを建造していく。
それ以外にも井戸やスライムポットン式トイレを使用した公衆トイレに、馬車の収納倉庫と厩舎なども。
防衛設備は、荊で封鎖した周囲の木々の補強をし、四方に大木に偽装した物見櫓を設置する。
東西にある唯一の出入り口の両側に頑丈な支柱を立て、頑丈な門を設置した。西側は洞窟周辺からあふれ出てくる魔物対策に、東側は村を経由してくる人間対策に。
ゆえに、中継地点は人間に対応できる人間と、戦闘技術を持っている人間が主に住むことになる。家事奴隷などの支援役もいるが、全て男しかいない奴隷男村である。
勤務地は迷宮だったり農園だったりするため、森の小道を通って出勤する。移動には出勤用に馬車を使ってもいいから、そこまで過重労働ではないはずだ。
でも朝は、森の小道内を徘徊しているだろう魔物退治をしながらの出勤になるだろう。
今日はもう遅いから、VIPルームのお掃除をして闇魔術の習得を優先しよう。早く終わればタマさんの指示したセルフ拷問と、従魔の希望スキル付与を行う予定である。
隷属魔術を習得しないかぎりは牢屋が片づかないし、一向に旅立てないからだ。
ちなみに死体は全て、従魔たちの眷属用に取っておいて欲しいと言われた。何かしたいことでもあるのだろうと思い快諾する。
あとこの頃にはカーさんも合流し、自分のカードに捕虜たちの全財産を移す作業を行っている。
アイラさんたちが見物に来たカーさんの目の前に机と椅子を置き、カードが詰まった木箱と空き箱を置いたからだ。
休憩することなく一心不乱に作業をさせられている姿を不憫に思うも、やってもらわねば出発できないのだから仕方がない。
そんなカーさんを横目に見ながら、従魔たちに頼んで一人ずつ地魔術で創った個室に連れて行く。個室は天井がなく、空から覗ける仕様になっている。
さらに二階建てになっており、二階部分はスキルを吸収する部屋を兼ねているから見えないが、一階部分は檻に入っている捕虜にも見えるように水晶製になっている。
つまりは、公開処刑である。
反抗すると問答無用で輪廻行きですよ、ということを示すためでもある。なんせ未成年の子どもだから、まだまだ舐められているのだ。
その心を折るためには、頭がイカレている狂人と思われた方がいろいろやりやすい。
狂人を示し、死体を綺麗に残す必要があるなら、やっぱりスライムの刑かな。最弱と言われる魔物にやられて死ぬという、屈辱的な死である。名誉の死などを与えてあげるつもりはない。
「奴隷商の幹部さん、何か言い残すことはありますか?」
「家族を……家族を……!」
「その気持ちを少しでも他人に分けてあげられてたら、こうはならなかったかもしれませんね」
恒例のハングドマンの刑である。
ただし、今回は特別バージョンの全身ドボンの、逃げ道がない仕様になっている。
全裸で逆さ吊りされている状態から、スライムがギリギリまで入った水槽に頭から落ちていく。
《鑑定》で死亡を確認した後、ロープを引いて死体を上げる。神器に入ったままのスキルを吸収し、神器を使って闇属性を獲得したら、死体の劣化を防ぐために《ストアハウス》に収納する。
これをクソババア、警備員、代官、団長と繰り返した。スキルは事故で殺してしまった者が、《窃取》というユニークスキルを保有しており、まさかの当たりスキル。
クソババアは光属性で、ラビくんゴリ押しの警備員の《性技》に、代官の《複製》スキル。どちらもユニークで、ボスは当たりをドロップする傾向にあるらしい。まぁ団長はノーマルの《騎乗》だったけど。
奴隷商組合の幹部が召集した傘下の奴隷商も、当然水槽行きだ。組合本部に連絡されても困るし、まともな奴隷商ではないからである。
このとき予期せず《按摩》を得たのは嬉しかった。ラビくんをモッチモチして、習熟していこうと思う。
VIPルームと奴隷商のお片付けが終了したら、中継地点の奴隷男村予定地から奴隷本村がある洞窟に移動する。
「明日また来ますから、檻の中で大人しくしておいてください。少し怖いかもしれませんが、通路を封鎖しておくので、多分大丈夫だと思います!」
「そんな……!」
「メシは!?」
「私だけでも! 体には自信があるの!」
などなど、言い募っている。全て無視するけどね。
だけど、体を使って助命嘆願を願っていた女性陣は、従魔たちの威圧で卒倒していた。もちろん、周囲を巻き込んで。
レニーさんの怒りを経験してる身としては、見て見ぬ振りをするしかないと判断して、洞窟に向かって歩き出す。カーさんもカード地獄から一時的に解放されると喜び、軽い足取りで洞窟に向かっている。
「みんな、これから移すよ!」
神器で能力を移すと言って注意を引く。
「はーーい!」
俺の言葉に素早く反応したイムさんは、元気いっぱいに返事をして駆けてきて、ガシッと俺の左腕に抱きついた。可愛い子である。疲れが軽減される気がする。
「ズルいぞ!」
「抜け駆け禁止だ!」
「そうですよ。だから右腕はもらいます!」
直後、ふにょんという感触が体を突き抜ける。だが、顔色を変えてしまえば第三次災害大戦が勃発してしまう。
どうすれば……。
「主様、いかがですか?」
何がだよ……。
『ラビくん、助けて!』
『素直に答えればいいんだよ?』
『大戦が起きるでしょ?』
『大丈夫だよ! ……多分』
『不安!』
「主様……?」
悲しそうな顔をしないでくれ……。
「嬉しいよ」
『それだけーー?』
『しょうがないじゃん!』
『いつも一緒にお風呂に入っているんだから、抱きつくくらい普通だって!』
『……それもそうだね。でもレニーさんたちの目つきが怖いよ?』
『気のせい!』
……覚えてろよ。モッチモチの刑に処してやる。
両手に花状態で洞窟に戻ると、アイラさんたちがカーさんの目の前にカードセットを置いた。
「またーー!?」
という文句を言いながらも黙々と作業を始め、俺たちは神器大会とセルフ拷問を行った。
「――ッ!」
本当に痛いときは声すら出ないというのは本当なんだね……。今までとは次元が違うよ……。
全てはモフモフの王様のために。
「モフモフ……モフモフ……」
終わった頃には疲れ果てて何もやる気は起きなかったが、晩御飯を作ったりお風呂に入ったりと、あと少ししかできない洞窟での生活を楽しんだ。
寝る前にわけの分からない薬をタマさんとラビくんに飲まされ、早々に眠りに就いた。薬はスキルを体に定着させたり、魔力量で体が壊れないようにさせたりする効果があるらしいが、本当かどうかは不明である。
たまに地獄の刑務官になるコンビだからというのもあるし、何故か鑑定させてくれなかったからだ。
まぁ薬のせいか、気絶訓練をやるくらいの体力が戻り、無事に日課をすることができた。
◇◇◇
「ラビ殿、約束は覚えているだろうか?」
「もちろんだよ! だから、レニーさん睨まないで!」
「だが、危うくバレそうになったぞ?」
「だって……『純粋』とか言うんだもん……」
「純粋だが?」
「え? どこが? 気絶しているアークに、毎晩添い寝と称した夜這いをする人たちを、純粋とは言わないんだよ?」
「純粋な愛を持っているから問題ない。それよりも、何故毎回顔をガードしているんだ? 唇を堪能できないではないか」
「……ガードしてるわけじゃないよ? ぼくの定位置だもん! 首から下は譲ってるじゃない! それに順番決めで喧嘩するでしょ? さすがにアークが起きちゃうと思うな! というか、黙ってこっそりじゃなくて、ちゃんと気持ちを伝えればいいと思うんだ! きっと喜んでくれると思うけどな! ……多分」
「魔物とはイヤだと言われたら関係が壊れてしまうだろ? だが、人間の姿を得てからは歯止めがきかなくなったのだ。悪いとは思ってるが、内緒にしてくれる約束だろ? お互いの秘密を守るという約束は厳守してもらわなければな」
「お詫びに希望のスキルを取らせたし、派生を促す神薬も飲ませたでしょ?」
何でこんなことに……。
あの添い寝が始まってから女性陣の機嫌がいいから、何事かと思って夜中に薄目を開けてみれば、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。
何とは言わないよ?
でも、いいのかな? って思ったわけよ。そしたら、いつかのタマさんみたいなことを言い出したわけ。
お互いの秘密を守る協定を結ぼうと……。
ぼくはこんなんでも一応【霊王】だよ? 内緒にしているから名前を出したくないけども。だけど、少しは忖度してくれてもいいと思うんだ!
まさか二度目の脅迫とは……。
しかも、タマさんやオークちゃんとの女子会でも話が出ていて、オークちゃんは本当に愛しているならいいと言ったそうだ。
逆に強い者はモテるから、競争に勝つためにはそれくらい積極的でないといけないと。だから、今から唾をつけておくそうだ。
……それって野生の話じゃん。
獣人の成長速度が仇になっているね。それに加えて、神族は全ての種族と子を成して人間を増やすように創られているから、レニーさんたちに有利に働いている。
タマさんは条件付きで許可を出したそうだ。冒険に支障を来さないという条件で、『予防の薬』を飲んでいるらしい。
……止めろよ! 何してるんだよ!
タマさんの主張も分かるけど、まずは本人に気持ちを伝えることが大事じゃないの? ぼくだけ? ぼくがおかしいのかな?
タマさんは、どこぞの有象無象が寄ってきた場合、ほとんどが紐付きで面倒だからだそうだ。ドロン酒など秘密が多いから、頻繁に恋愛ができそうにない。
しかしアークにも幸せになってもらいたい。
というか、強制的にでも恋愛させないと、ずっとスキルの習熟をしてそうで怖い。
幸い、種族を考慮しなくてもいい神族だ。レニーさんたちも美人だし、絶対に裏切ることもない。四人で仲良く共有するなら問題ないと、あの鬼畜天使は考えたわけだ。
今もエルフ娘たちが観覧しながら、もみくちゃになっている。エルフ娘たちはアークに性行為を解禁されているけど、タマさんの危惧する紐付きだ。
エルフは本国から精霊樹が植えられそうな場所に部族単位で派兵されて、そこに住み着いて精霊樹の所有権を主張するのだ。
この森ではカーさんが、もうまもなく植える予定だったそうだが、エルフの愚かな行為で撤退をするはめに……。
精霊樹の確保が失敗したエルフは本国に帰り、別の地域に送られるそうだ。だから今もエルフの国の所属である彼女たちは、タマさんに信用されていない。生殺し状態である。
これを解決する方法は、首輪ではない本物の隷属魔術の使用だ。エルフたちは勉強しながら待っている。すでにレニーさんたち同様根回しは終わっており、隷属魔術を受けたあとは加わる了承を得ていた。
そしてぼくはアークの顔面の上に座って待機している。戦争が起きないために唇をガードしているからだ。
「……喧嘩しなければいいのか?」
「アークに言う気はないんだね?」
「うむ。バレたときは素直に謝ろう」
「でもでも! アークに髪の毛撫でてもらいながらとか、きれいだねって言いながらしてもらいたいって思わないの?」
「思うに決まっている!」
「ご……ごめん!」
怖いよ……。
アークごめん! 洞窟への帰り道、大丈夫とか適当なこと言って! もう言わない!
「……順番が決まったら教えて。覚悟を決めているなら、もう何も言わないよ……」
「うむ。集合! ジャンケーン……ポン!」
アイラさんが一番か……。めちゃくちゃ喜んでるから水を差したら死ぬな……。
我が家の女性陣は怖すぎるよ。
「どうぞ、楽しんで。終わったら、ぼくを顔面に載せといて。バレちゃうからね」
「うむ。任せよ!」
「おやすみ……」
アーク、たくましく生きてくれ!
◇◇◇
タグの『ハーレム?』を少し回収しています。
夜の営みについてもオブラートに包んで書いてますが、苦手な方はご注意ください。
==================
ラビくんからの冷たい視線をかわしつつ中継地点に帰還する。
中継地点では、広く開いた落とし穴があった場所には、大部屋を主体に管理者用の特別個室をつけた二階建てを建造していく。
それ以外にも井戸やスライムポットン式トイレを使用した公衆トイレに、馬車の収納倉庫と厩舎なども。
防衛設備は、荊で封鎖した周囲の木々の補強をし、四方に大木に偽装した物見櫓を設置する。
東西にある唯一の出入り口の両側に頑丈な支柱を立て、頑丈な門を設置した。西側は洞窟周辺からあふれ出てくる魔物対策に、東側は村を経由してくる人間対策に。
ゆえに、中継地点は人間に対応できる人間と、戦闘技術を持っている人間が主に住むことになる。家事奴隷などの支援役もいるが、全て男しかいない奴隷男村である。
勤務地は迷宮だったり農園だったりするため、森の小道を通って出勤する。移動には出勤用に馬車を使ってもいいから、そこまで過重労働ではないはずだ。
でも朝は、森の小道内を徘徊しているだろう魔物退治をしながらの出勤になるだろう。
今日はもう遅いから、VIPルームのお掃除をして闇魔術の習得を優先しよう。早く終わればタマさんの指示したセルフ拷問と、従魔の希望スキル付与を行う予定である。
隷属魔術を習得しないかぎりは牢屋が片づかないし、一向に旅立てないからだ。
ちなみに死体は全て、従魔たちの眷属用に取っておいて欲しいと言われた。何かしたいことでもあるのだろうと思い快諾する。
あとこの頃にはカーさんも合流し、自分のカードに捕虜たちの全財産を移す作業を行っている。
アイラさんたちが見物に来たカーさんの目の前に机と椅子を置き、カードが詰まった木箱と空き箱を置いたからだ。
休憩することなく一心不乱に作業をさせられている姿を不憫に思うも、やってもらわねば出発できないのだから仕方がない。
そんなカーさんを横目に見ながら、従魔たちに頼んで一人ずつ地魔術で創った個室に連れて行く。個室は天井がなく、空から覗ける仕様になっている。
さらに二階建てになっており、二階部分はスキルを吸収する部屋を兼ねているから見えないが、一階部分は檻に入っている捕虜にも見えるように水晶製になっている。
つまりは、公開処刑である。
反抗すると問答無用で輪廻行きですよ、ということを示すためでもある。なんせ未成年の子どもだから、まだまだ舐められているのだ。
その心を折るためには、頭がイカレている狂人と思われた方がいろいろやりやすい。
狂人を示し、死体を綺麗に残す必要があるなら、やっぱりスライムの刑かな。最弱と言われる魔物にやられて死ぬという、屈辱的な死である。名誉の死などを与えてあげるつもりはない。
「奴隷商の幹部さん、何か言い残すことはありますか?」
「家族を……家族を……!」
「その気持ちを少しでも他人に分けてあげられてたら、こうはならなかったかもしれませんね」
恒例のハングドマンの刑である。
ただし、今回は特別バージョンの全身ドボンの、逃げ道がない仕様になっている。
全裸で逆さ吊りされている状態から、スライムがギリギリまで入った水槽に頭から落ちていく。
《鑑定》で死亡を確認した後、ロープを引いて死体を上げる。神器に入ったままのスキルを吸収し、神器を使って闇属性を獲得したら、死体の劣化を防ぐために《ストアハウス》に収納する。
これをクソババア、警備員、代官、団長と繰り返した。スキルは事故で殺してしまった者が、《窃取》というユニークスキルを保有しており、まさかの当たりスキル。
クソババアは光属性で、ラビくんゴリ押しの警備員の《性技》に、代官の《複製》スキル。どちらもユニークで、ボスは当たりをドロップする傾向にあるらしい。まぁ団長はノーマルの《騎乗》だったけど。
奴隷商組合の幹部が召集した傘下の奴隷商も、当然水槽行きだ。組合本部に連絡されても困るし、まともな奴隷商ではないからである。
このとき予期せず《按摩》を得たのは嬉しかった。ラビくんをモッチモチして、習熟していこうと思う。
VIPルームと奴隷商のお片付けが終了したら、中継地点の奴隷男村予定地から奴隷本村がある洞窟に移動する。
「明日また来ますから、檻の中で大人しくしておいてください。少し怖いかもしれませんが、通路を封鎖しておくので、多分大丈夫だと思います!」
「そんな……!」
「メシは!?」
「私だけでも! 体には自信があるの!」
などなど、言い募っている。全て無視するけどね。
だけど、体を使って助命嘆願を願っていた女性陣は、従魔たちの威圧で卒倒していた。もちろん、周囲を巻き込んで。
レニーさんの怒りを経験してる身としては、見て見ぬ振りをするしかないと判断して、洞窟に向かって歩き出す。カーさんもカード地獄から一時的に解放されると喜び、軽い足取りで洞窟に向かっている。
「みんな、これから移すよ!」
神器で能力を移すと言って注意を引く。
「はーーい!」
俺の言葉に素早く反応したイムさんは、元気いっぱいに返事をして駆けてきて、ガシッと俺の左腕に抱きついた。可愛い子である。疲れが軽減される気がする。
「ズルいぞ!」
「抜け駆け禁止だ!」
「そうですよ。だから右腕はもらいます!」
直後、ふにょんという感触が体を突き抜ける。だが、顔色を変えてしまえば第三次災害大戦が勃発してしまう。
どうすれば……。
「主様、いかがですか?」
何がだよ……。
『ラビくん、助けて!』
『素直に答えればいいんだよ?』
『大戦が起きるでしょ?』
『大丈夫だよ! ……多分』
『不安!』
「主様……?」
悲しそうな顔をしないでくれ……。
「嬉しいよ」
『それだけーー?』
『しょうがないじゃん!』
『いつも一緒にお風呂に入っているんだから、抱きつくくらい普通だって!』
『……それもそうだね。でもレニーさんたちの目つきが怖いよ?』
『気のせい!』
……覚えてろよ。モッチモチの刑に処してやる。
両手に花状態で洞窟に戻ると、アイラさんたちがカーさんの目の前にカードセットを置いた。
「またーー!?」
という文句を言いながらも黙々と作業を始め、俺たちは神器大会とセルフ拷問を行った。
「――ッ!」
本当に痛いときは声すら出ないというのは本当なんだね……。今までとは次元が違うよ……。
全てはモフモフの王様のために。
「モフモフ……モフモフ……」
終わった頃には疲れ果てて何もやる気は起きなかったが、晩御飯を作ったりお風呂に入ったりと、あと少ししかできない洞窟での生活を楽しんだ。
寝る前にわけの分からない薬をタマさんとラビくんに飲まされ、早々に眠りに就いた。薬はスキルを体に定着させたり、魔力量で体が壊れないようにさせたりする効果があるらしいが、本当かどうかは不明である。
たまに地獄の刑務官になるコンビだからというのもあるし、何故か鑑定させてくれなかったからだ。
まぁ薬のせいか、気絶訓練をやるくらいの体力が戻り、無事に日課をすることができた。
◇◇◇
「ラビ殿、約束は覚えているだろうか?」
「もちろんだよ! だから、レニーさん睨まないで!」
「だが、危うくバレそうになったぞ?」
「だって……『純粋』とか言うんだもん……」
「純粋だが?」
「え? どこが? 気絶しているアークに、毎晩添い寝と称した夜這いをする人たちを、純粋とは言わないんだよ?」
「純粋な愛を持っているから問題ない。それよりも、何故毎回顔をガードしているんだ? 唇を堪能できないではないか」
「……ガードしてるわけじゃないよ? ぼくの定位置だもん! 首から下は譲ってるじゃない! それに順番決めで喧嘩するでしょ? さすがにアークが起きちゃうと思うな! というか、黙ってこっそりじゃなくて、ちゃんと気持ちを伝えればいいと思うんだ! きっと喜んでくれると思うけどな! ……多分」
「魔物とはイヤだと言われたら関係が壊れてしまうだろ? だが、人間の姿を得てからは歯止めがきかなくなったのだ。悪いとは思ってるが、内緒にしてくれる約束だろ? お互いの秘密を守るという約束は厳守してもらわなければな」
「お詫びに希望のスキルを取らせたし、派生を促す神薬も飲ませたでしょ?」
何でこんなことに……。
あの添い寝が始まってから女性陣の機嫌がいいから、何事かと思って夜中に薄目を開けてみれば、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。
何とは言わないよ?
でも、いいのかな? って思ったわけよ。そしたら、いつかのタマさんみたいなことを言い出したわけ。
お互いの秘密を守る協定を結ぼうと……。
ぼくはこんなんでも一応【霊王】だよ? 内緒にしているから名前を出したくないけども。だけど、少しは忖度してくれてもいいと思うんだ!
まさか二度目の脅迫とは……。
しかも、タマさんやオークちゃんとの女子会でも話が出ていて、オークちゃんは本当に愛しているならいいと言ったそうだ。
逆に強い者はモテるから、競争に勝つためにはそれくらい積極的でないといけないと。だから、今から唾をつけておくそうだ。
……それって野生の話じゃん。
獣人の成長速度が仇になっているね。それに加えて、神族は全ての種族と子を成して人間を増やすように創られているから、レニーさんたちに有利に働いている。
タマさんは条件付きで許可を出したそうだ。冒険に支障を来さないという条件で、『予防の薬』を飲んでいるらしい。
……止めろよ! 何してるんだよ!
タマさんの主張も分かるけど、まずは本人に気持ちを伝えることが大事じゃないの? ぼくだけ? ぼくがおかしいのかな?
タマさんは、どこぞの有象無象が寄ってきた場合、ほとんどが紐付きで面倒だからだそうだ。ドロン酒など秘密が多いから、頻繁に恋愛ができそうにない。
しかしアークにも幸せになってもらいたい。
というか、強制的にでも恋愛させないと、ずっとスキルの習熟をしてそうで怖い。
幸い、種族を考慮しなくてもいい神族だ。レニーさんたちも美人だし、絶対に裏切ることもない。四人で仲良く共有するなら問題ないと、あの鬼畜天使は考えたわけだ。
今もエルフ娘たちが観覧しながら、もみくちゃになっている。エルフ娘たちはアークに性行為を解禁されているけど、タマさんの危惧する紐付きだ。
エルフは本国から精霊樹が植えられそうな場所に部族単位で派兵されて、そこに住み着いて精霊樹の所有権を主張するのだ。
この森ではカーさんが、もうまもなく植える予定だったそうだが、エルフの愚かな行為で撤退をするはめに……。
精霊樹の確保が失敗したエルフは本国に帰り、別の地域に送られるそうだ。だから今もエルフの国の所属である彼女たちは、タマさんに信用されていない。生殺し状態である。
これを解決する方法は、首輪ではない本物の隷属魔術の使用だ。エルフたちは勉強しながら待っている。すでにレニーさんたち同様根回しは終わっており、隷属魔術を受けたあとは加わる了承を得ていた。
そしてぼくはアークの顔面の上に座って待機している。戦争が起きないために唇をガードしているからだ。
「……喧嘩しなければいいのか?」
「アークに言う気はないんだね?」
「うむ。バレたときは素直に謝ろう」
「でもでも! アークに髪の毛撫でてもらいながらとか、きれいだねって言いながらしてもらいたいって思わないの?」
「思うに決まっている!」
「ご……ごめん!」
怖いよ……。
アークごめん! 洞窟への帰り道、大丈夫とか適当なこと言って! もう言わない!
「……順番が決まったら教えて。覚悟を決めているなら、もう何も言わないよ……」
「うむ。集合! ジャンケーン……ポン!」
アイラさんが一番か……。めちゃくちゃ喜んでるから水を差したら死ぬな……。
我が家の女性陣は怖すぎるよ。
「どうぞ、楽しんで。終わったら、ぼくを顔面に載せといて。バレちゃうからね」
「うむ。任せよ!」
「おやすみ……」
アーク、たくましく生きてくれ!
◇◇◇
0
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
召喚勇者、人間やめて魂になりました
暇人太一
ファンタジー
甘酸っぱい青春に憧れ高校の入学式に向かう途中の月本朝陽は、突如足元に浮かび上がる魔法陣に吸い込まれてしまった。目が覚めた朝陽に待っていた現実は、肉体との決別だった。しかし同時に魂の状態で独立することに……。
四人の勇者のうちの一人として召喚された朝陽の、魂としての新たな生活の幕が上がる。
この作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
怪物転生者は早期リタイアしたい~チートあるけど、召喚獣とパシリに丸投げする~
暇人太一
ファンタジー
異世界に召喚された王明賢(おう あきたか)。
愚民呼ばわりが我慢できず、思わず「私は王だ」と言ってしまう。
単なる自己紹介が誤解を生んでしまい、これ幸いと異世界の国王を装うことに……。
その結果、リセマラ転生の生贄から実験体にランクアップして、他国の辺境男爵家のカルムとして第二の人生を送ることになる。
99人分の能力や生命力などを取り込んだ怪物となったが、目指すは流行の早期リタイア『FIRE』!
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?
不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ
ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。
賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!?
フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。
タイトル変えました。
旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~
※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。
あまりシリアスにするつもりもありません。
またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。
感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。
よろしくお願いします。
想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。
※カクヨムさんでも連載はじめました。
Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。
石八
ファンタジー
主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。
実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる