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第二章 一期一会
第六十話 仕事からの希少素材
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リムくんが町に行くために必要な能力を獲得しに深層の岩場に来たわけだが、何もいないようにしか見えない。
「グォ、グォグォ!」
「ふむふむ。なるほどね! リムくん! 岩場にヌシがいるから、魔核周辺を傷つけず、九割以上は綺麗な状態で仕留めてくるように! 終わったら早く呼ぶんだよ! 三分しか時間がないからね!」
「ガル!」
「よろしい! 健闘を祈る!」
「ガルルゥゥゥーー!」
気合を入れたリムくんは、能力獲得を目標に岩場の奥に向かって駆けていく。
ここで思う。俺は……?
「グォ、グォ!」(おまえはこっちだ!)
俺の視線に気付いた親分は、岩場近くの水場に残りの全員を案内した。
「グォグォ、グォグォオ!」
「ふむふむ。ここは元々女王ワニの領域で、岩場のヌシは右腕だったらしいよ。女王の後釜を狙って内戦みたいなことになったけど、オークちゃんたちにボッコボコにされたんだって」
「今の短い言葉に含まれてた?」
「違うよ。移動中に聞いたの!」
「だよね! ビックリした!」
「それでね、この大きな水場はぶーちゃんとオークちゃんの領域と接しているんだって。でも毒に汚染されてるし、爬虫類が入っていたから扱いに困ってるんだって! 周囲の水場の水源地でもあるから、アークが浄化したところや、途中にあるハイドラさんの元領域も近いうちに汚染されるかもって!」
迂遠な言い方だけど、なるほど。俺は浄水器という役目を負っていたんだな。
「親分も水くさいですよ! 普通に頼んでくれればいいのに。……まぁ案内がなければ無理ですけどね」
「だって! 良かったね、ぶーちゃん!」
「グォ!」(ぶーちゃんじゃない!)
ラビくんを背中から落とそうとするも、ラビくんはロデオみたいに楽しむだけで終わり、親分が諦めていた。親分で遊ぶなんて肝が据わってるな……。
「そういえば、他の水場も綺麗にしなくていいの?」
「今は毒が他に漏れないように、水をせき止めてるんだって。でもそれも時間の問題だから、可能か聞きに洞窟に来たんだって!」
「じゃあここだけでいいの?」
「そうだけど、この水場はかなり広いよ?」
「エントさん、護衛をお願いします!」
「任されよ」
後顧の憂いを断ち、前回と同様にバケツに万能薬と特濃魔力水を入れてかき混ぜる。
浄化の準備をしたら、集中して魔力を高めていく。エントさんに頼んだ護衛は、魔力を高めたときに釣られてくる魔物対策だ。
さすがに水量が多い水場の水を全て持ち上げるには集中力が必要だから、他に構ってる余裕はない。幸いなことに、ここには採取できる薬草は生えていない。
「水よ、《創水》。からの……《操水》」
――重っ!
「うわぁぁぁーー! すごーーい!」
あまりの重さに普通に持ち上げるだけでは安定せず、万能薬を散布する余裕がない。だから球体になるようにイメージをし、魔力で作った手で持てるようにする。
おかげで万能薬を撒け、神器を使っての浄化も完了した。
水の球体を戻すときは細心の注意を払い、決して落とさないように静かに、そして少しずつ水場に戻していく。
「ふぅ……。親分、終わりました!」
「グォ!」(よくやった!)
「はい! エントさんもありがとう!」
「うむ。しかし現れたのは岩蜥蜴が二体だけだ。手応えがなさすぎる」
「でも美味しいらしいですよ」
「それは楽しみだ!」
人の姿を得てから美食に目覚めたエントさんは、ついに料理にも興味を持ち始めてた。俺としてはアシスタントができて大変助かっている。体が大きい子や、たくさん食べる子がいるからね。
「ねぇ! リムくんのところに戻ろう! もう終わってるかもよ!」
「そうだね!」
浄化を終え岩場に戻ろうとしていると、上空から大きな気配が近づいてきた。
「キューー!」
「グォ!?」(何故だ!?)
「誰ーー?」
「グォ!」(隠れろ!)
親分は岩場と水場の境に生えている林に俺たちを隠すと、空に向かって威圧し始めた。
「グォ!」(帰れ!)
一瞬見えた姿は、前に洞窟に来た巨大な鳥さんだった。でも鳴き声が違ったから、誰か乗せてきたのか?
……気になる。が、林から出たら怒られそうだ。ここは大人しくしているべきだろう。
「ピュオーー!」
「キュッ? キューー!」
「グォ! グォ!」(よし! 帰った!)
「もういいですか?」
「グォ!」(良いぞ!)
いったい何だったんだろうか……。気になるが、言わないってことは聞かない方がいいんだろうな。
「ガゥゥゥーー!」
「終わったって! 急ぐよ!」
後ろ髪引かれるが、それを許さない状況になってしまった。素材を無駄にしないため、リムくんの努力を無駄にしないため全速力で向かった。
到着後即座に解体して、全ての宝珠をリムくんの口に放り込んだ。
今回得た能力は、《擬態》《認識阻害》《幻影》の三つ。
一つ目の《擬態》は他のものに姿を変えることが可能で、それは生き物だけではない。さらに《吸収》は不要で、必要なものは明確なイメージだけ。
二つ目の《認識阻害》は存在感を薄くすることで、擬似的に透明になれる。周囲に溶け込むように使用した《擬態》と合わせたら、本当の透明化と遜色ないだろう。
三つ目の《幻影》は魔法に近いもので、イメージできる幻を好きな場所に出して見せることができるというものらしい。ただし、有効範囲がある上に大きさや距離によって消費する魔力量が変化する。
実際に、二十メートルほどのカメレオンの攻撃方法は、幻影を陽動に使用して、姿を消しての奇襲とヒットアンドアウェイが主体らしい。
リムくんは《咆哮:水》と《火炎弾》の無差別攻撃であぶり出し、《身体硬化》と《竜鰐闘技》でカウンターを狙ったようだ。
親分は及第点をあげたものの、感知系の能力の向上を指示していた。無差別攻撃は敵地で自分一人だけだったから可能な戦法で、洞窟周辺や町ではできないからだ。
リムくんも自覚していたのか、素直に頷いていた。
「ぶーちゃんの新弟子だね!」
「グォ……グォ」(だから……もういい)
「勝った!」
「グォ……」(ムカつく……)
「じゃあ帰って蜥蜴食べる?」
「グォ! グォグォ!」
「ん? そうなの? 気にしないと思うけどな」
「グォグォ!」
なんか長文の会話をしている。念話のチャンネルを開いてくれないと、まだ長文は分からんのだ。
通訳さん、早く!
「オークちゃんからも?」
「グォ!」(そうだ!)
「分かった! アーク。なんかねー、ここに埋まっている特殊な鉱石と神金属の製法が、女王ワニ討伐の御褒美だって! 最初はドロン酒のレシピの代金にしようと思ったらしいけど、アークは元からあげるつもりだったでしょ?」
「もちろんだよ! そのために考えていたことだからね!」
「うむうむ。でも、タダでもらうことは嫌だったから保留にしてたんだって。だから女王ワニの討伐報酬も兼ねたものを用意したみたいだよ。なんと! 親分自ら大ちゃんに聞きに行ったみたい!」
「大ちゃんって誰?」
「ん? 【始原竜】の大地竜のことだよ!」
「親分の交友関係にも驚いているけど、ラビくんが気安く呼んでいることの方がビックリだよ……」
「……ぶーちゃんから聞いたに決まってるじゃん! ねっ!」
「……グォ」(……まぁな)
微妙な間が気にならなくもないけど、情報量が多すぎて理解が追いつかない。そもそも神金属って作れるのか? 図鑑には決まった魔境か、大迷宮でしか採掘できない超希少金属だと記載されていたぞ?
「大ちゃんのことはいいの! 神金属の製法はぶーちゃんからだけど、特殊な鉱石はオークちゃんからなんだから! 今度会ったらお礼を言うように!」
「もちろんだよ!」
「では神金属についてだけど、さすがに天然物には劣るみたい。でも準神金属という扱いで、魔鉱石が必要な魔金属の上位互換になるらしい。方法は精錬した金属に魔力を込めるだけ。《魔力圧縮》して《魔力付与》するだけという二工程だけど、めちゃくちゃ魔力が必要で制御が難しいらしいよ。そもそも《魔力付与》は、《魔力制御》のレベルが四以上でないと使えないしね!」
「グォグォ!」(普通は無理だってよ!)
「ぶーちゃん、安心して! アークは普通じゃないから!」
「……ドロン酒――「冗談だよーー! ねっ!」」
調子のいい子だ……。まぁそこが可愛いのだけどね。
「次は特殊な鉱石だけど、分類的には宝石に含まれるらしいよ。でもアークがグラスを作ったときみたいに形を変えた後、硬化する前に魔力を込めれば武器の素材になるんだって! オークちゃんが捜してくれたらしいよ!」
「……鈍器?」
「それもあるだろうけど、刃物系もいけるみたいだよ。魔力を込めれば込めるほど強度も増すし、魔力を通す素材としても優秀なんだって。魔境の深層にしかない上、少量しか採れないみたいだよ」
「そんな希少なものもらっていいの?」
「ぶーちゃんは武器を使わないし、オークちゃんは異常な量の魔力を所持した加工できる部下がいないから、見つけた分は全部あげるって。その分、武器術も磨いて無駄にしなければいいって!」
「頑張ります! それと汚染された水場周辺の土地の浄化はいらないんですか?」
「グォ、グォグォ!」
「ふむふむ。オークちゃんがやっているって。水の浄化は親分の担当で、地面の浄化はオークちゃんの担当みたいだよ。せき止めたのは二人でってことだよね!?」
「グォ!」(そうだ!)
なるほど。なら大丈夫か。親分たちが毒に汚染されては困るからね。
「では、レシピおよび魔水晶製のタンクや保存容器などを用意するので、多少の御時間をいただいてもいいですか?」
前払いでもらった手前、待ってって言いにくい。
「グォ!」(構わん!)
「タンクは大きい方がいいよ! たくさん飲めるからね!」
「グォォォーー!」(楽しみだなぁぁ!)
「オークちゃんにも伝言をお願いできますか?」
「グォ!」(任せろ!)
「ありがとうございます!」
「グォ!」(うむ!)
◇
その後、世界の鉱石図鑑を読んだおかげで習得した《鉱物鑑定》と、《発掘》を駆使して採掘しまくった。工具はないが、そこは地魔術の面目躍如である。
ついでに親分から《気功》の使い方や応用を教えてもらい、ワニの能力である《身体硬化》と併用して岩を砕いたりと、親分に稽古をつけてもらった素晴らしい時間だった。
採掘後は深層の入口まで送ってもらって帰路についた。途中エントさんの案内で、どこにでもいるような狼の領域を教えてもらい、少し大きいが魔の森以外にもいる狼を観察していくことに。
結果、リムくんは町に行けることになった。
「ガルン♪」
拗ねていたときとは打って変わって、大変ご機嫌な様子でスキップしているようだ。
親分には感謝の思いでいっぱいである。
「グォ、グォグォ!」
「ふむふむ。なるほどね! リムくん! 岩場にヌシがいるから、魔核周辺を傷つけず、九割以上は綺麗な状態で仕留めてくるように! 終わったら早く呼ぶんだよ! 三分しか時間がないからね!」
「ガル!」
「よろしい! 健闘を祈る!」
「ガルルゥゥゥーー!」
気合を入れたリムくんは、能力獲得を目標に岩場の奥に向かって駆けていく。
ここで思う。俺は……?
「グォ、グォ!」(おまえはこっちだ!)
俺の視線に気付いた親分は、岩場近くの水場に残りの全員を案内した。
「グォグォ、グォグォオ!」
「ふむふむ。ここは元々女王ワニの領域で、岩場のヌシは右腕だったらしいよ。女王の後釜を狙って内戦みたいなことになったけど、オークちゃんたちにボッコボコにされたんだって」
「今の短い言葉に含まれてた?」
「違うよ。移動中に聞いたの!」
「だよね! ビックリした!」
「それでね、この大きな水場はぶーちゃんとオークちゃんの領域と接しているんだって。でも毒に汚染されてるし、爬虫類が入っていたから扱いに困ってるんだって! 周囲の水場の水源地でもあるから、アークが浄化したところや、途中にあるハイドラさんの元領域も近いうちに汚染されるかもって!」
迂遠な言い方だけど、なるほど。俺は浄水器という役目を負っていたんだな。
「親分も水くさいですよ! 普通に頼んでくれればいいのに。……まぁ案内がなければ無理ですけどね」
「だって! 良かったね、ぶーちゃん!」
「グォ!」(ぶーちゃんじゃない!)
ラビくんを背中から落とそうとするも、ラビくんはロデオみたいに楽しむだけで終わり、親分が諦めていた。親分で遊ぶなんて肝が据わってるな……。
「そういえば、他の水場も綺麗にしなくていいの?」
「今は毒が他に漏れないように、水をせき止めてるんだって。でもそれも時間の問題だから、可能か聞きに洞窟に来たんだって!」
「じゃあここだけでいいの?」
「そうだけど、この水場はかなり広いよ?」
「エントさん、護衛をお願いします!」
「任されよ」
後顧の憂いを断ち、前回と同様にバケツに万能薬と特濃魔力水を入れてかき混ぜる。
浄化の準備をしたら、集中して魔力を高めていく。エントさんに頼んだ護衛は、魔力を高めたときに釣られてくる魔物対策だ。
さすがに水量が多い水場の水を全て持ち上げるには集中力が必要だから、他に構ってる余裕はない。幸いなことに、ここには採取できる薬草は生えていない。
「水よ、《創水》。からの……《操水》」
――重っ!
「うわぁぁぁーー! すごーーい!」
あまりの重さに普通に持ち上げるだけでは安定せず、万能薬を散布する余裕がない。だから球体になるようにイメージをし、魔力で作った手で持てるようにする。
おかげで万能薬を撒け、神器を使っての浄化も完了した。
水の球体を戻すときは細心の注意を払い、決して落とさないように静かに、そして少しずつ水場に戻していく。
「ふぅ……。親分、終わりました!」
「グォ!」(よくやった!)
「はい! エントさんもありがとう!」
「うむ。しかし現れたのは岩蜥蜴が二体だけだ。手応えがなさすぎる」
「でも美味しいらしいですよ」
「それは楽しみだ!」
人の姿を得てから美食に目覚めたエントさんは、ついに料理にも興味を持ち始めてた。俺としてはアシスタントができて大変助かっている。体が大きい子や、たくさん食べる子がいるからね。
「ねぇ! リムくんのところに戻ろう! もう終わってるかもよ!」
「そうだね!」
浄化を終え岩場に戻ろうとしていると、上空から大きな気配が近づいてきた。
「キューー!」
「グォ!?」(何故だ!?)
「誰ーー?」
「グォ!」(隠れろ!)
親分は岩場と水場の境に生えている林に俺たちを隠すと、空に向かって威圧し始めた。
「グォ!」(帰れ!)
一瞬見えた姿は、前に洞窟に来た巨大な鳥さんだった。でも鳴き声が違ったから、誰か乗せてきたのか?
……気になる。が、林から出たら怒られそうだ。ここは大人しくしているべきだろう。
「ピュオーー!」
「キュッ? キューー!」
「グォ! グォ!」(よし! 帰った!)
「もういいですか?」
「グォ!」(良いぞ!)
いったい何だったんだろうか……。気になるが、言わないってことは聞かない方がいいんだろうな。
「ガゥゥゥーー!」
「終わったって! 急ぐよ!」
後ろ髪引かれるが、それを許さない状況になってしまった。素材を無駄にしないため、リムくんの努力を無駄にしないため全速力で向かった。
到着後即座に解体して、全ての宝珠をリムくんの口に放り込んだ。
今回得た能力は、《擬態》《認識阻害》《幻影》の三つ。
一つ目の《擬態》は他のものに姿を変えることが可能で、それは生き物だけではない。さらに《吸収》は不要で、必要なものは明確なイメージだけ。
二つ目の《認識阻害》は存在感を薄くすることで、擬似的に透明になれる。周囲に溶け込むように使用した《擬態》と合わせたら、本当の透明化と遜色ないだろう。
三つ目の《幻影》は魔法に近いもので、イメージできる幻を好きな場所に出して見せることができるというものらしい。ただし、有効範囲がある上に大きさや距離によって消費する魔力量が変化する。
実際に、二十メートルほどのカメレオンの攻撃方法は、幻影を陽動に使用して、姿を消しての奇襲とヒットアンドアウェイが主体らしい。
リムくんは《咆哮:水》と《火炎弾》の無差別攻撃であぶり出し、《身体硬化》と《竜鰐闘技》でカウンターを狙ったようだ。
親分は及第点をあげたものの、感知系の能力の向上を指示していた。無差別攻撃は敵地で自分一人だけだったから可能な戦法で、洞窟周辺や町ではできないからだ。
リムくんも自覚していたのか、素直に頷いていた。
「ぶーちゃんの新弟子だね!」
「グォ……グォ」(だから……もういい)
「勝った!」
「グォ……」(ムカつく……)
「じゃあ帰って蜥蜴食べる?」
「グォ! グォグォ!」
「ん? そうなの? 気にしないと思うけどな」
「グォグォ!」
なんか長文の会話をしている。念話のチャンネルを開いてくれないと、まだ長文は分からんのだ。
通訳さん、早く!
「オークちゃんからも?」
「グォ!」(そうだ!)
「分かった! アーク。なんかねー、ここに埋まっている特殊な鉱石と神金属の製法が、女王ワニ討伐の御褒美だって! 最初はドロン酒のレシピの代金にしようと思ったらしいけど、アークは元からあげるつもりだったでしょ?」
「もちろんだよ! そのために考えていたことだからね!」
「うむうむ。でも、タダでもらうことは嫌だったから保留にしてたんだって。だから女王ワニの討伐報酬も兼ねたものを用意したみたいだよ。なんと! 親分自ら大ちゃんに聞きに行ったみたい!」
「大ちゃんって誰?」
「ん? 【始原竜】の大地竜のことだよ!」
「親分の交友関係にも驚いているけど、ラビくんが気安く呼んでいることの方がビックリだよ……」
「……ぶーちゃんから聞いたに決まってるじゃん! ねっ!」
「……グォ」(……まぁな)
微妙な間が気にならなくもないけど、情報量が多すぎて理解が追いつかない。そもそも神金属って作れるのか? 図鑑には決まった魔境か、大迷宮でしか採掘できない超希少金属だと記載されていたぞ?
「大ちゃんのことはいいの! 神金属の製法はぶーちゃんからだけど、特殊な鉱石はオークちゃんからなんだから! 今度会ったらお礼を言うように!」
「もちろんだよ!」
「では神金属についてだけど、さすがに天然物には劣るみたい。でも準神金属という扱いで、魔鉱石が必要な魔金属の上位互換になるらしい。方法は精錬した金属に魔力を込めるだけ。《魔力圧縮》して《魔力付与》するだけという二工程だけど、めちゃくちゃ魔力が必要で制御が難しいらしいよ。そもそも《魔力付与》は、《魔力制御》のレベルが四以上でないと使えないしね!」
「グォグォ!」(普通は無理だってよ!)
「ぶーちゃん、安心して! アークは普通じゃないから!」
「……ドロン酒――「冗談だよーー! ねっ!」」
調子のいい子だ……。まぁそこが可愛いのだけどね。
「次は特殊な鉱石だけど、分類的には宝石に含まれるらしいよ。でもアークがグラスを作ったときみたいに形を変えた後、硬化する前に魔力を込めれば武器の素材になるんだって! オークちゃんが捜してくれたらしいよ!」
「……鈍器?」
「それもあるだろうけど、刃物系もいけるみたいだよ。魔力を込めれば込めるほど強度も増すし、魔力を通す素材としても優秀なんだって。魔境の深層にしかない上、少量しか採れないみたいだよ」
「そんな希少なものもらっていいの?」
「ぶーちゃんは武器を使わないし、オークちゃんは異常な量の魔力を所持した加工できる部下がいないから、見つけた分は全部あげるって。その分、武器術も磨いて無駄にしなければいいって!」
「頑張ります! それと汚染された水場周辺の土地の浄化はいらないんですか?」
「グォ、グォグォ!」
「ふむふむ。オークちゃんがやっているって。水の浄化は親分の担当で、地面の浄化はオークちゃんの担当みたいだよ。せき止めたのは二人でってことだよね!?」
「グォ!」(そうだ!)
なるほど。なら大丈夫か。親分たちが毒に汚染されては困るからね。
「では、レシピおよび魔水晶製のタンクや保存容器などを用意するので、多少の御時間をいただいてもいいですか?」
前払いでもらった手前、待ってって言いにくい。
「グォ!」(構わん!)
「タンクは大きい方がいいよ! たくさん飲めるからね!」
「グォォォーー!」(楽しみだなぁぁ!)
「オークちゃんにも伝言をお願いできますか?」
「グォ!」(任せろ!)
「ありがとうございます!」
「グォ!」(うむ!)
◇
その後、世界の鉱石図鑑を読んだおかげで習得した《鉱物鑑定》と、《発掘》を駆使して採掘しまくった。工具はないが、そこは地魔術の面目躍如である。
ついでに親分から《気功》の使い方や応用を教えてもらい、ワニの能力である《身体硬化》と併用して岩を砕いたりと、親分に稽古をつけてもらった素晴らしい時間だった。
採掘後は深層の入口まで送ってもらって帰路についた。途中エントさんの案内で、どこにでもいるような狼の領域を教えてもらい、少し大きいが魔の森以外にもいる狼を観察していくことに。
結果、リムくんは町に行けることになった。
「ガルン♪」
拗ねていたときとは打って変わって、大変ご機嫌な様子でスキップしているようだ。
親分には感謝の思いでいっぱいである。
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