56 / 116
第二章 一期一会
第五十二話 捕縛からのモフモフ
しおりを挟む
魔力を放出しながら気配を消せないのなら、気配を偽る方法に切り替えた。最大値の《偽装》を持っているわけだから、周囲の魔素と同化しているように偽装してみたのだ。
タマさんは何も言わなかったが、ラビくんがサムズアップしてくれたから上手くいったのだろう。良かった。
俺の気配のせいで幻獣の子どもが殺されたりしたら、俺は自分が許せないだろうから。
「もうすぐだ。馬車を通すために木を傷つけている」
さすが【森守】と呼ばれているだけある。樹木を通して状況を把握しているようだ。……敵じゃなくて良かった。森を更地にしない限り勝てそうにない。
リムくんは小さくなって茂みに隠れ、隣にはエントさんがついている。俺とラビくんは全体が見える樹上から機会を窺っている。
案内人はなんと二人のエルフで、護衛らしき獣人の奴隷が二人に、鏡餅みたいに頭胸腹と段々がついているような男が一人。この鏡餅が指示をしているようだ。
さて、どうしたものか。
鏡餅は放置しても良さそうだが、案内人のエルフが二人と護衛の奴隷二人が邪魔だ。それにまだ最低一人はいるだろう。そうでなければ、誰が幻獣を捕獲しているんだということになる。
鏡餅以外をまとめて泥沼ドボンかな。
範囲を狭めるために四人が近づくよう誘導する必要があるわけだが、これはワニたちのおかげでなんとかなりそう。あのときやられた攻撃をしてあげれば一度は近づくだろう。ついでに鏡餅もドボンして欲しいけど。
リムくんたちには別働隊の捜索を頼もう。
狼通信があるおかげで連絡には困らない。ボソボソ言ってもリムくんたちには聞こえるし、エントさんの声はリムくんの耳が拾ってくれる。俺も《聞き耳》スキルを持っているけど、鮮明に聞こえるわけではないから助かっている。
リムくんたちの移動を確認したあと作戦開始だ。
毎日の日課で手に入る魔物の爪や角で作った自作のスローイングナイフの端に、ワニとの戦いでも役に立った《魔糸生成》で作った糸をつける。
これを四つ用意して《投擲》スキルで投げる。同時に地魔術の準備に入る。
「なっ! 何だ!?」
「どこからだ!」
顔に向かって飛んでくるナイフから避ける先を予測して、魔糸を数度操作し後方に跳ばせる。ナイフに勢いがなくなることは想定済みだから、それでも受けようとするものには追加で狩猟用の投げっぱなしブーメランを投げつける。
当然だが俺も樹上を移動している。
半分でもエルフの血液が入っているし、猿獣人の血液も入っている。空中を数歩駆けることができる《天駆》もあって、樹上攻撃が天職なのではないかというくらいだ。
ちなみに、ラビくんは俺の後頭部にしがみついて移動している。モフモフモチモチのお腹が後頭部を刺激して、殺伐とした戦いの中で幸せを感じていた。
今だ!
「風よ、《風弾》」
鏡餅を四人にぶつけ、体勢を崩した後に本命を放つ。
「地よ、《泥沼》……からの《硬化》」
「クソッ! エルフ! 精霊は!?」
「言ったはずだ! この森の、特にこの場所周辺は精霊が協力したがらないと! 気配を消す手伝いをしただけでも奇跡だ!」
「チッ! 使えねぇーー!」
「それより奴隷商の旦那の無事を確認しろ!」
「はっ? 両手両足埋まってるから無理だ!」
内輪もめか……。好きにやってくれ。俺はリムくんの方が気になる。
「ラビくん、リムくんから連絡あった?」
「うん! 獣人が二人いたって。これから連れて来るって!」
「じゃあこっちも始めていいかな?」
「うん! 精霊にもお仕置きしちゃって!」
「分かった!」
珍しくラビくんが怒ってる……。
ストッパー役のラビくんが怒っているなら、少しくらいやり過ぎてもいいかな。
それにもう魔力を偽る必要もないしね。
「こんにちは」
「カッ――」
「おや? どうしました? あぁ、魔力が低い人には水の中にいるみたいに苦しいんでしたっけ? エルフさんはまだ平気かもしれませんが、獣人や人族には十分苦しいみたいですね。そうだ! エルフさんも限界を試してみるってどうですか?」
「な……何を言っている?」
「え? これでも体の周りに放出しているだけの魔力なんですよ? これから追加で放出していくので限界を試してみてください」
「ば……バカな……」
「やめ……やめて……くれ……」
「イヤでーす!」
魔力を放出しては圧縮をしていき、精霊も逃がさないように押し包んでいく。タマさんに竜種みたいと言われたことがあったから、竜が精霊を掴んでいるイメージをしながら魔力を放出していた。
侵入者たちは竜の口の中に入ってもらっているようなイメージだ。ふと、この状態で魔術を使ったらどうなるかな? と思っていたら制止の声がかかった。
「そこまで! それ以上は災害級の惨事になるからやめなさい! 精霊も消滅するわよ!」
「完全解除ですか?」
「えぇ! レニーさんも近づけなくて困っているわよ!」
「えっ? 悪いことしちゃったな。ラビくん、精霊の方は任せていいかな?」
「うん! アーク、ありがとね! 手加減してくれて!」
「いいんだよ。ラビくんが悲しむようなことはしないからね!」
「うん! リムくん、カモーンヌ!」
「ガウーー!」
ラビくんが「ヘイ! タクシー!」みたいなノリでリムくんを呼ぶと、目にもとまらぬ速さでラビくんの目の前に行き、伏せの体勢になった。よじよじと背中に上り、エルフに近づいていく。
エルフは泡を噴いて失神しているから危険はない。
「凄まじいな。木々がさざめいていたぞ」
「つい感情的になってしまいました。恥ずかしい限りです」
「いや、それだけ心配してくれたのだろう? 本当に恥ずかしい者たちはコイツらだ」
「一人ずつ尋問しながら有効活用させてもらいましょう! エルフもいるし!」
「ふむ。イム殿に土産ができるな」
「でも三体が仲違いしたら可哀想ですけどね」
「そのことなのだが、アイラ殿とメル殿にスライムの能力を移すことはできないか?」
「――は? 吸収して変身させるってことですか?」
「そうだ」
相変わらずすごいこと考えるな。全く思いつかなかった。リムくんも聞こえたみたいで、こちらをガン見している。
「まぁ帰ったらやってみましょう」
「頼む」
次は死体の取り合いで喧嘩になりそうだなと思いながら、護送車みたいな馬車の扉を開けた。中には白い子虎が横たわっている。
可愛い。
手足が大きくなるだろうことが想像できるような太さと大きさを持つのに、まだまだ短いアンバランスさが堪らなく可愛い。
「可愛いすぎる。ラビくん見てーー! 可愛い子がいるよ!」
「今行くーー! お前らは大人しくしてるんだよ?」
「ん? どうしたのーー?」
「何でもなーい!」
痛々しい首輪がついているから、首輪の外し方をラビペディア大先生に教えてもらおう。
「どの子? どの子?」
「あの子だよ」
「可愛い……。フワフワだね!」
「でも首輪が痛々しいよ。どうすればいいかな?」
「あの魔核が魔力の供給源だから、魔核に魔力を込めて飽和状態にして壊してしまえばいいよ! 再利用するなら鍵が必要だけどね!」
「隷属魔術を知ってるからいらないかな」
「……何で知ってるの?」
「伯爵家の書斎に魔導書があったし、首輪を使わない方法も書いてあったよ。闇属性が必要だけどね。個人的にすごい欲しいんだよね!」
この話の流れで欲しいと言えば奴隷と言うことになるため、ラビくんは目と口を開けて驚いていた。
「……何で?」
「ドロンと薬草の農園造りの作業員を確保したいからね。俺は訓練があるし、【霊王】様を捜さなきゃいけないから専業農家をすることはできない。でも、こういう俺の生活領域に侵入してきて平穏を侵す犯罪者たちにやらせることで、時間の節約になるじゃん。片っ端から討伐してもいなくなることはないし、犯罪奴隷として売るにも手続きが面倒で二束三文にしかならない。それなら働いて償ってもらった方が得でしょ?」
「【霊王】を捜しているのか? それなら――「なるほどねーー! ドロン農園のためかーー! 闇属性は優先的にアークにあげよう! ね!」」
「どうしたの? いきなり大声出して」
「感動したんだよ! アークの素晴らしい考えに! あと、レニーさん! 後で大事な話があるから!」
「う、うむ」
ラビくんの様子も気になるけど、今は白虎ちゃんの解放を優先しなければ。首輪を掴んで圧縮した魔力を流したら、すぐに魔核が破裂した。しょぼい造りの首輪だったのかな?
「水よ、癒やしと安らぎを与え、生命を回復せよ《水龍の祝福》」
今回は水龍になってもらっては困るから、魔力はあまり込めずに発動した。それでも劇的な効果があったのか、タオルで拭いている最中に目を覚まし、力いっぱい噛みついてきた。
以前の俺なら絶対に避けていたけど、《高速再生》の検証をしたくてあえて受けてみることに。
このとき《身体硬化》の検証もしたかったが、白虎ちゃんの歯が折れても困るからやめたのだ。
「元気になったね。もうすぐで拭き終わるから待っててね」
「アーク……何ともないの?」
「うん。《物理攻撃耐性》と《身体異常無効》がいい仕事しているね」
「人間はやめないでね!」
「任せて!」
「ホントかな……」
ラビくんは半信半疑の様子で白虎ちゃんに近づき、「大丈夫だよー!」と声をかけていた。癒やし系のラビくんに心を開いた白虎ちゃんは、俺の手から口を離してラビくんに抱きついた。恐怖のせいで涙がこぼれ、体が震えている。
しばらく時間がかかりそうだと思い、検証を先にやることにした。さすがに白虎ちゃんを追い出して尋問部屋にすることはできなかったからだ。
万能薬を傷口にかけて消毒をした後、《高速再生》を意識する。
「おぉーー! 時間が巻き戻っていくみたいだ。魔力を消耗するけど、俺にとっては微々たるものだな。ただ、人間がやることではなさそうだ」
「早速人間やめたの?」
「これは違うじゃん。呑兵衛たちに、おつまみ欲しさにワニと戦わせられたんだから、御褒美くらいあってもいいじゃん!」
「人聞きが悪いことは言わないの! ぼくたちは森の危機を心配したんだよ!」
「……じゃあワニジャーキーは売却してもいいのかな?」
「酷い! モフモフをいじめないでーー!」
「ワニジャーキーを一欠片でも売ったら許さないわよ!?」
今まで沈黙していたタマさんまで……。あれだけの量があるんだから少しくらいいいじゃないかと思ったが、言わぬが花である。
「じゃあ尋問を始めましょうか」
「うむ」
「白虎ちゃんはぼくたちに任せて!」
まずは鏡餅から始めることにした。理由は闇属性を持っていそうだから。闇属性を引けば労働力確保のために方針転換するから、吸収大会の景品にならずに済むのだ。
「それでは何が出るかな?」
タマさんは何も言わなかったが、ラビくんがサムズアップしてくれたから上手くいったのだろう。良かった。
俺の気配のせいで幻獣の子どもが殺されたりしたら、俺は自分が許せないだろうから。
「もうすぐだ。馬車を通すために木を傷つけている」
さすが【森守】と呼ばれているだけある。樹木を通して状況を把握しているようだ。……敵じゃなくて良かった。森を更地にしない限り勝てそうにない。
リムくんは小さくなって茂みに隠れ、隣にはエントさんがついている。俺とラビくんは全体が見える樹上から機会を窺っている。
案内人はなんと二人のエルフで、護衛らしき獣人の奴隷が二人に、鏡餅みたいに頭胸腹と段々がついているような男が一人。この鏡餅が指示をしているようだ。
さて、どうしたものか。
鏡餅は放置しても良さそうだが、案内人のエルフが二人と護衛の奴隷二人が邪魔だ。それにまだ最低一人はいるだろう。そうでなければ、誰が幻獣を捕獲しているんだということになる。
鏡餅以外をまとめて泥沼ドボンかな。
範囲を狭めるために四人が近づくよう誘導する必要があるわけだが、これはワニたちのおかげでなんとかなりそう。あのときやられた攻撃をしてあげれば一度は近づくだろう。ついでに鏡餅もドボンして欲しいけど。
リムくんたちには別働隊の捜索を頼もう。
狼通信があるおかげで連絡には困らない。ボソボソ言ってもリムくんたちには聞こえるし、エントさんの声はリムくんの耳が拾ってくれる。俺も《聞き耳》スキルを持っているけど、鮮明に聞こえるわけではないから助かっている。
リムくんたちの移動を確認したあと作戦開始だ。
毎日の日課で手に入る魔物の爪や角で作った自作のスローイングナイフの端に、ワニとの戦いでも役に立った《魔糸生成》で作った糸をつける。
これを四つ用意して《投擲》スキルで投げる。同時に地魔術の準備に入る。
「なっ! 何だ!?」
「どこからだ!」
顔に向かって飛んでくるナイフから避ける先を予測して、魔糸を数度操作し後方に跳ばせる。ナイフに勢いがなくなることは想定済みだから、それでも受けようとするものには追加で狩猟用の投げっぱなしブーメランを投げつける。
当然だが俺も樹上を移動している。
半分でもエルフの血液が入っているし、猿獣人の血液も入っている。空中を数歩駆けることができる《天駆》もあって、樹上攻撃が天職なのではないかというくらいだ。
ちなみに、ラビくんは俺の後頭部にしがみついて移動している。モフモフモチモチのお腹が後頭部を刺激して、殺伐とした戦いの中で幸せを感じていた。
今だ!
「風よ、《風弾》」
鏡餅を四人にぶつけ、体勢を崩した後に本命を放つ。
「地よ、《泥沼》……からの《硬化》」
「クソッ! エルフ! 精霊は!?」
「言ったはずだ! この森の、特にこの場所周辺は精霊が協力したがらないと! 気配を消す手伝いをしただけでも奇跡だ!」
「チッ! 使えねぇーー!」
「それより奴隷商の旦那の無事を確認しろ!」
「はっ? 両手両足埋まってるから無理だ!」
内輪もめか……。好きにやってくれ。俺はリムくんの方が気になる。
「ラビくん、リムくんから連絡あった?」
「うん! 獣人が二人いたって。これから連れて来るって!」
「じゃあこっちも始めていいかな?」
「うん! 精霊にもお仕置きしちゃって!」
「分かった!」
珍しくラビくんが怒ってる……。
ストッパー役のラビくんが怒っているなら、少しくらいやり過ぎてもいいかな。
それにもう魔力を偽る必要もないしね。
「こんにちは」
「カッ――」
「おや? どうしました? あぁ、魔力が低い人には水の中にいるみたいに苦しいんでしたっけ? エルフさんはまだ平気かもしれませんが、獣人や人族には十分苦しいみたいですね。そうだ! エルフさんも限界を試してみるってどうですか?」
「な……何を言っている?」
「え? これでも体の周りに放出しているだけの魔力なんですよ? これから追加で放出していくので限界を試してみてください」
「ば……バカな……」
「やめ……やめて……くれ……」
「イヤでーす!」
魔力を放出しては圧縮をしていき、精霊も逃がさないように押し包んでいく。タマさんに竜種みたいと言われたことがあったから、竜が精霊を掴んでいるイメージをしながら魔力を放出していた。
侵入者たちは竜の口の中に入ってもらっているようなイメージだ。ふと、この状態で魔術を使ったらどうなるかな? と思っていたら制止の声がかかった。
「そこまで! それ以上は災害級の惨事になるからやめなさい! 精霊も消滅するわよ!」
「完全解除ですか?」
「えぇ! レニーさんも近づけなくて困っているわよ!」
「えっ? 悪いことしちゃったな。ラビくん、精霊の方は任せていいかな?」
「うん! アーク、ありがとね! 手加減してくれて!」
「いいんだよ。ラビくんが悲しむようなことはしないからね!」
「うん! リムくん、カモーンヌ!」
「ガウーー!」
ラビくんが「ヘイ! タクシー!」みたいなノリでリムくんを呼ぶと、目にもとまらぬ速さでラビくんの目の前に行き、伏せの体勢になった。よじよじと背中に上り、エルフに近づいていく。
エルフは泡を噴いて失神しているから危険はない。
「凄まじいな。木々がさざめいていたぞ」
「つい感情的になってしまいました。恥ずかしい限りです」
「いや、それだけ心配してくれたのだろう? 本当に恥ずかしい者たちはコイツらだ」
「一人ずつ尋問しながら有効活用させてもらいましょう! エルフもいるし!」
「ふむ。イム殿に土産ができるな」
「でも三体が仲違いしたら可哀想ですけどね」
「そのことなのだが、アイラ殿とメル殿にスライムの能力を移すことはできないか?」
「――は? 吸収して変身させるってことですか?」
「そうだ」
相変わらずすごいこと考えるな。全く思いつかなかった。リムくんも聞こえたみたいで、こちらをガン見している。
「まぁ帰ったらやってみましょう」
「頼む」
次は死体の取り合いで喧嘩になりそうだなと思いながら、護送車みたいな馬車の扉を開けた。中には白い子虎が横たわっている。
可愛い。
手足が大きくなるだろうことが想像できるような太さと大きさを持つのに、まだまだ短いアンバランスさが堪らなく可愛い。
「可愛いすぎる。ラビくん見てーー! 可愛い子がいるよ!」
「今行くーー! お前らは大人しくしてるんだよ?」
「ん? どうしたのーー?」
「何でもなーい!」
痛々しい首輪がついているから、首輪の外し方をラビペディア大先生に教えてもらおう。
「どの子? どの子?」
「あの子だよ」
「可愛い……。フワフワだね!」
「でも首輪が痛々しいよ。どうすればいいかな?」
「あの魔核が魔力の供給源だから、魔核に魔力を込めて飽和状態にして壊してしまえばいいよ! 再利用するなら鍵が必要だけどね!」
「隷属魔術を知ってるからいらないかな」
「……何で知ってるの?」
「伯爵家の書斎に魔導書があったし、首輪を使わない方法も書いてあったよ。闇属性が必要だけどね。個人的にすごい欲しいんだよね!」
この話の流れで欲しいと言えば奴隷と言うことになるため、ラビくんは目と口を開けて驚いていた。
「……何で?」
「ドロンと薬草の農園造りの作業員を確保したいからね。俺は訓練があるし、【霊王】様を捜さなきゃいけないから専業農家をすることはできない。でも、こういう俺の生活領域に侵入してきて平穏を侵す犯罪者たちにやらせることで、時間の節約になるじゃん。片っ端から討伐してもいなくなることはないし、犯罪奴隷として売るにも手続きが面倒で二束三文にしかならない。それなら働いて償ってもらった方が得でしょ?」
「【霊王】を捜しているのか? それなら――「なるほどねーー! ドロン農園のためかーー! 闇属性は優先的にアークにあげよう! ね!」」
「どうしたの? いきなり大声出して」
「感動したんだよ! アークの素晴らしい考えに! あと、レニーさん! 後で大事な話があるから!」
「う、うむ」
ラビくんの様子も気になるけど、今は白虎ちゃんの解放を優先しなければ。首輪を掴んで圧縮した魔力を流したら、すぐに魔核が破裂した。しょぼい造りの首輪だったのかな?
「水よ、癒やしと安らぎを与え、生命を回復せよ《水龍の祝福》」
今回は水龍になってもらっては困るから、魔力はあまり込めずに発動した。それでも劇的な効果があったのか、タオルで拭いている最中に目を覚まし、力いっぱい噛みついてきた。
以前の俺なら絶対に避けていたけど、《高速再生》の検証をしたくてあえて受けてみることに。
このとき《身体硬化》の検証もしたかったが、白虎ちゃんの歯が折れても困るからやめたのだ。
「元気になったね。もうすぐで拭き終わるから待っててね」
「アーク……何ともないの?」
「うん。《物理攻撃耐性》と《身体異常無効》がいい仕事しているね」
「人間はやめないでね!」
「任せて!」
「ホントかな……」
ラビくんは半信半疑の様子で白虎ちゃんに近づき、「大丈夫だよー!」と声をかけていた。癒やし系のラビくんに心を開いた白虎ちゃんは、俺の手から口を離してラビくんに抱きついた。恐怖のせいで涙がこぼれ、体が震えている。
しばらく時間がかかりそうだと思い、検証を先にやることにした。さすがに白虎ちゃんを追い出して尋問部屋にすることはできなかったからだ。
万能薬を傷口にかけて消毒をした後、《高速再生》を意識する。
「おぉーー! 時間が巻き戻っていくみたいだ。魔力を消耗するけど、俺にとっては微々たるものだな。ただ、人間がやることではなさそうだ」
「早速人間やめたの?」
「これは違うじゃん。呑兵衛たちに、おつまみ欲しさにワニと戦わせられたんだから、御褒美くらいあってもいいじゃん!」
「人聞きが悪いことは言わないの! ぼくたちは森の危機を心配したんだよ!」
「……じゃあワニジャーキーは売却してもいいのかな?」
「酷い! モフモフをいじめないでーー!」
「ワニジャーキーを一欠片でも売ったら許さないわよ!?」
今まで沈黙していたタマさんまで……。あれだけの量があるんだから少しくらいいいじゃないかと思ったが、言わぬが花である。
「じゃあ尋問を始めましょうか」
「うむ」
「白虎ちゃんはぼくたちに任せて!」
まずは鏡餅から始めることにした。理由は闇属性を持っていそうだから。闇属性を引けば労働力確保のために方針転換するから、吸収大会の景品にならずに済むのだ。
「それでは何が出るかな?」
0
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
召喚勇者、人間やめて魂になりました
暇人太一
ファンタジー
甘酸っぱい青春に憧れ高校の入学式に向かう途中の月本朝陽は、突如足元に浮かび上がる魔法陣に吸い込まれてしまった。目が覚めた朝陽に待っていた現実は、肉体との決別だった。しかし同時に魂の状態で独立することに……。
四人の勇者のうちの一人として召喚された朝陽の、魂としての新たな生活の幕が上がる。
この作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
怪物転生者は早期リタイアしたい~チートあるけど、召喚獣とパシリに丸投げする~
暇人太一
ファンタジー
異世界に召喚された王明賢(おう あきたか)。
愚民呼ばわりが我慢できず、思わず「私は王だ」と言ってしまう。
単なる自己紹介が誤解を生んでしまい、これ幸いと異世界の国王を装うことに……。
その結果、リセマラ転生の生贄から実験体にランクアップして、他国の辺境男爵家のカルムとして第二の人生を送ることになる。
99人分の能力や生命力などを取り込んだ怪物となったが、目指すは流行の早期リタイア『FIRE』!
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?
不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ
ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。
賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!?
フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。
タイトル変えました。
旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~
※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。
あまりシリアスにするつもりもありません。
またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。
感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。
よろしくお願いします。
想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。
※カクヨムさんでも連載はじめました。
Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。
石八
ファンタジー
主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。
実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる