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第2章 星屑のビキニアーマー
魔法剣士ホノ
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「地下階の像を調べる? それは構わないけど。ガーランドさまは一体何を考えているのかしら」
タケルの話を聞いたクロナは不思議そうに首を傾げた。
「クロナさんは何か知らないの? 例えば、魔物の発生と地下の像の関係性とかさ」
「そんなの無いわ。だってそうでしょ? あの像が魔物の発生に関係してるなら、レナスが真っ先に滅ぼされているはずよ。だけど被害が大きいのは北の大地。少しくらいならレナスにも魔物は現れるけど、どれもザコばかりなんだから」
「だとしたら、どうしてガーランドは僕にあんな指示を出したんだろう」
タケル以上にクロナの方がその疑念は強かった。魔物の形をした像は確かに不気味ではあるが、もしもそれが悪しきものなら、クロナが何も感じぬはずはない。物心ついたときには、あの像は既にあったのだ。いや、もっと昔からあったのかもしれない。地下に像があることが、レナスの民にとっては当たり前のことなのだ。
「きっとガーランドさまにも考えあってのことだと思うけど、それより私は、ビキニアーマーの生産の方に大賛成だわ。タケル、二百と言わずに五百作りなさいな」
「無茶言わないでよ。てかさ、本当にクロナの家に入っちゃって良いの?」
「仕方ないじゃない。壁を鈍器で壊されるくらいなら、大人しく鍵を渡すわよ」
鍵には魔法がかけられており、ドアにかけられた結界を解くには、これを鍵穴に通す以外に方法は無い。壁を爆破すれば侵入は可能だが、クロナがそれを良しとするはずはなかった。
翌日、クロナはタケルを見送るより前に、街の外れへと出かけていった。ラグラークの騎馬隊の演習に顔出しするためだ。この演習にはケレンも参加する。魔王討伐のパーティーを選別するには、いくつもの課題を通過しなければならない。この日の演習もその一つなのだ。
「クロナさんともしばらく離れ離れか……。レナスまで同行するのはガーランドの一人娘って話だけど……」
タケルを迎えにきたのは、まだ幼さの残る少女だった。ラグラークでも数人しかいないという、剣と魔法を扱う将来有望な人材だ。しかし、タケルは自分より幼い少女の同行に不安もあった。そしてもう一つ、気になることが──
「妹にそっくりだ……」
少女の容姿は、妹のほのかと瓜二つだった。妹も異世界に飛ばされてきたのかと疑うほどに何もかもが似ている。雪見とクロナも見た目は似ていたが、目の前の少女は髪の色まで同じなのである。
「はじめまして。タケルさんですね。私はガーランドの一人娘、ホノです。……あの、私の顔に何かついてますか?」
マジマジ見つめるタケルに、ホノは不機嫌そうに問いかけた。
「えっと……。変なことを言うようだけど、ひょっとして、ほのか?」
「ホノか? と、聞かれましても、私の名前はそれ以外にありません」
ホノにしてみれば、いきなり呼び捨てにされたようなものである。
「いや、キミが僕の妹にそっくりなもんで」
「私に兄はいません。馬車の準備ができたようです。行きましょう」
ホノのように魔法と剣を扱える者を魔法剣士と呼ぶ。だが、腰にぶら下げている剣は薄っぺらく、身につけている鎧も軽装だ。これはこの世界特有の、つまりは貧弱な身体ゆえの装備である。しかも、ホノはクロナのように長いスカートをはかず、ミニスカートを着用している。動きやすさを重視したものだが、タケルには目に余るものがあった。
「あれ? 鎧をつくる材料はこれだけ?」
「はい。材料の補充は、鎧の回収の際に行われます」
「そうか。確かガーランドもそんなこと言ってたっけ」
ホノはムッとした表情でタケルを睨む。
「私を呼び捨てにするのは構いませんが、父まで呼び捨てにするのは許しません」
「あ……ごめん」
ピリついた空気のまま、タケルとホノはレナスに向けて馬車を走らせた。
タケルの話を聞いたクロナは不思議そうに首を傾げた。
「クロナさんは何か知らないの? 例えば、魔物の発生と地下の像の関係性とかさ」
「そんなの無いわ。だってそうでしょ? あの像が魔物の発生に関係してるなら、レナスが真っ先に滅ぼされているはずよ。だけど被害が大きいのは北の大地。少しくらいならレナスにも魔物は現れるけど、どれもザコばかりなんだから」
「だとしたら、どうしてガーランドは僕にあんな指示を出したんだろう」
タケル以上にクロナの方がその疑念は強かった。魔物の形をした像は確かに不気味ではあるが、もしもそれが悪しきものなら、クロナが何も感じぬはずはない。物心ついたときには、あの像は既にあったのだ。いや、もっと昔からあったのかもしれない。地下に像があることが、レナスの民にとっては当たり前のことなのだ。
「きっとガーランドさまにも考えあってのことだと思うけど、それより私は、ビキニアーマーの生産の方に大賛成だわ。タケル、二百と言わずに五百作りなさいな」
「無茶言わないでよ。てかさ、本当にクロナの家に入っちゃって良いの?」
「仕方ないじゃない。壁を鈍器で壊されるくらいなら、大人しく鍵を渡すわよ」
鍵には魔法がかけられており、ドアにかけられた結界を解くには、これを鍵穴に通す以外に方法は無い。壁を爆破すれば侵入は可能だが、クロナがそれを良しとするはずはなかった。
翌日、クロナはタケルを見送るより前に、街の外れへと出かけていった。ラグラークの騎馬隊の演習に顔出しするためだ。この演習にはケレンも参加する。魔王討伐のパーティーを選別するには、いくつもの課題を通過しなければならない。この日の演習もその一つなのだ。
「クロナさんともしばらく離れ離れか……。レナスまで同行するのはガーランドの一人娘って話だけど……」
タケルを迎えにきたのは、まだ幼さの残る少女だった。ラグラークでも数人しかいないという、剣と魔法を扱う将来有望な人材だ。しかし、タケルは自分より幼い少女の同行に不安もあった。そしてもう一つ、気になることが──
「妹にそっくりだ……」
少女の容姿は、妹のほのかと瓜二つだった。妹も異世界に飛ばされてきたのかと疑うほどに何もかもが似ている。雪見とクロナも見た目は似ていたが、目の前の少女は髪の色まで同じなのである。
「はじめまして。タケルさんですね。私はガーランドの一人娘、ホノです。……あの、私の顔に何かついてますか?」
マジマジ見つめるタケルに、ホノは不機嫌そうに問いかけた。
「えっと……。変なことを言うようだけど、ひょっとして、ほのか?」
「ホノか? と、聞かれましても、私の名前はそれ以外にありません」
ホノにしてみれば、いきなり呼び捨てにされたようなものである。
「いや、キミが僕の妹にそっくりなもんで」
「私に兄はいません。馬車の準備ができたようです。行きましょう」
ホノのように魔法と剣を扱える者を魔法剣士と呼ぶ。だが、腰にぶら下げている剣は薄っぺらく、身につけている鎧も軽装だ。これはこの世界特有の、つまりは貧弱な身体ゆえの装備である。しかも、ホノはクロナのように長いスカートをはかず、ミニスカートを着用している。動きやすさを重視したものだが、タケルには目に余るものがあった。
「あれ? 鎧をつくる材料はこれだけ?」
「はい。材料の補充は、鎧の回収の際に行われます」
「そうか。確かガーランドもそんなこと言ってたっけ」
ホノはムッとした表情でタケルを睨む。
「私を呼び捨てにするのは構いませんが、父まで呼び捨てにするのは許しません」
「あ……ごめん」
ピリついた空気のまま、タケルとホノはレナスに向けて馬車を走らせた。
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