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第1章 ビキニアーマーができるまで
下着姿で剣を振るう少女
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ケルベロス・ダークの毒がケレンの身体を蝕んでいく。筋肉は硬直し、思うように剣を振るうこともできない中、ケレンは雪見を逃すための時間稼ぎをするべく、自らの身体に鞭を打った。
「さぁ行け! なるべく遠くへ逃げるんだ」
「私は逃げない! 戦います。ケルベロスを倒すために、今まで猛特訓を受けてきたんだから!」
雪見はケレンの制止を振り払い、ケルベロス・ダークに向かっていった。袴をはいていない分、空気抵抗が少なく走りやすい。
「いける!」
いつもより軽やかな動きで剣を振るい、ケルベロス・ダークの首元を直撃させた。しかし、安全設計のプラスチックソードでは傷をつけることは叶わず、刃の根本から二つに折れてしまった。
ケルベロス・ダークは、すかさず雪見に反撃してきた。本来ならば召喚主に攻撃はしてこないはずだが、雪見の戦いたいという欲求に反応しているのだ。雪見にかけられている魔法は、自傷や自慰などあらゆる欲求を満たす。その想いが強ければ強いほど効果は増していき、ケルベロス・ダークの力も増幅させていく。
「避けろ! 爪に触れたら死ぬぞ!」
「分かってる!」
ケルベロス・ダークの爪が雪見の道着を斜めに切り裂いた。間一髪、爪は肌をかすめていなかったが、道着は内側の結び紐ごと無惨に裂かれ、前は完全に開いた状態になってしまった。
「あんな爪にやられたら、毒が回る以前に出血で死んでしまう。もう、次は無い……!」
白いブラジャーが丸見えになり、雪見の防御力は、ほぼゼロになっていた。
「雪見! この剣を使え!」
ケレンはミラーソードを雪見に向かって投げた。雪見はケルベロス・ダークの攻撃をかわしながら、飛んでくるミラーソードに手を伸ばす。
「俺には軽すぎたが、雪見にはちょうど良いはずだ!」
「タケルくんが作ってくれたプラスチックソードは壊れてしまったけれど……この新しい剣なら! 私にだって斬れる!」
雪見は道着を脱ぎ捨てた。防御力を無くした代わりに、素早さと攻撃力をアップさせたのだ。しかし、そこまで徹底しても、ケルベロス・ダークには深傷を与えられない。
「絶対に諦めない!」
雪見の渾身の一撃が、ケルベロス・ダークの目にミラーソードを突き刺した。雪見は剣を手放し、敵の背後に回る。そして、ケルベロス・ダークの身体に手を当て「生成!」と叫んだ。
魔物の血液をポーションに変えるなど、一体誰が思いつこうか。そもそも、命をかけた戦いの中で、成功するかどうかも怪しい攻撃をすること自体がどうかしているのだ。しかし、雪見は実行した。ケルベロス・ダークの全身の血液を、生成魔法でポーションに変えてみせたのだ。
ケルベロス・ダークは死んだ。ケレンは今まで何匹もの魔物を倒してきたが、これほどまでに、苦しみで歪んだ死顔を見たことがない。毒を持つ魔物とポーションは、ただでさえ相性が悪いのだ。ケルベロス・ダークにとって、地獄のような苦しみだったのだろう。
「生成魔法を攻撃に転換させるとは……恐れ入ったな」
ケルベロス・ダークの死体が霧になって消滅すると、ケレンの身体の毒も消えて無くなった。
ケレンは雪見の白い下着姿を心の底から称賛していた。剣道着姿の雪見とは比べ物にならないくらいに、良い動きをしていたのだ。とくに胸の揺れを抑える防具の構造にケレンは興味津々だ。
「それが雪見の新コスチュームなのだな。ぜひ、間近で見させてほしい」
「やめてよ。それに、これは下着だよ。コスチュームじゃないの。分かるでしょ」
「分からんな。触らせてくれ」
ケレンの世界にブラジャーは存在しない。ケレンは純粋な気持ちでブラジャーに触りたいのだ。
「触ったら怒るよ」
「では教えてくれ。胸部分の構造はどうなっているのだ? 動いているとき、乳房の揺れを最小限に抑える効果があるようだが」
「随分と食いついてくるなぁ」
雪見は照れ臭さを通り越して、面倒くさくなってきた。
「これは、こういうブラなんだよ」
「しかし、素材がお粗末過ぎる。せっかくの防具が台無しだ」
「悪かったわね。お粗末で」
ケレンはブラジャー自体の素材について言っていたのだが、雪見は自分の胸のことを言われているのだと勘違いしていた。
「それにしても、腹はさすがに出すぎだろ」
ケレンは腹の露出を抑えた方が良いと言う意味で言ったのだが、当然、雪見はそう捉えなかった。
「お腹出てないもん!」
「本気で言ってるのか。まぁいい。とにかく、袴より動きやすいことは雪見にも分かったはずだ。一度、タケルに相談してみよう。彼はコスチューム作りの天才だからな。きっと、雪見に合った防具を作ってくれるだろうさ」
「いや、そこまでしなくて良いよ。むしろ、やめて下さい」
「遠慮するな。俺は動きに制限のない、完璧な状態の雪見と手合わせしてみたいんだ。これまで稽古をつけてきた俺の、最後のわがままを聞いてほしい」
「それを言われたら断れないけど……。まぁ、手合わせで着るだけなら構わないよ。水着で良ければ自分でも用意できるし」
「いいや。タケルに作ってもらう。俺はタケルの可能性を信じているのだ。タケルは伸びる。これは、今まで稽古をつけてきてやった俺の、最後のわがま──」
「それ言えば何でも聞いてくれると思ったんでしょ。しょうがないなぁ。良いよ。タケルくんのことだから、恥ずかしがって断るはずだし。タケルくんに断られたら、ケレンさんも諦めがつくでしょ」
「そうだな。さすがに、タケルが嫌だと言えば無理強いはできない。そのときは、俺も諦めよう」
「さぁ行け! なるべく遠くへ逃げるんだ」
「私は逃げない! 戦います。ケルベロスを倒すために、今まで猛特訓を受けてきたんだから!」
雪見はケレンの制止を振り払い、ケルベロス・ダークに向かっていった。袴をはいていない分、空気抵抗が少なく走りやすい。
「いける!」
いつもより軽やかな動きで剣を振るい、ケルベロス・ダークの首元を直撃させた。しかし、安全設計のプラスチックソードでは傷をつけることは叶わず、刃の根本から二つに折れてしまった。
ケルベロス・ダークは、すかさず雪見に反撃してきた。本来ならば召喚主に攻撃はしてこないはずだが、雪見の戦いたいという欲求に反応しているのだ。雪見にかけられている魔法は、自傷や自慰などあらゆる欲求を満たす。その想いが強ければ強いほど効果は増していき、ケルベロス・ダークの力も増幅させていく。
「避けろ! 爪に触れたら死ぬぞ!」
「分かってる!」
ケルベロス・ダークの爪が雪見の道着を斜めに切り裂いた。間一髪、爪は肌をかすめていなかったが、道着は内側の結び紐ごと無惨に裂かれ、前は完全に開いた状態になってしまった。
「あんな爪にやられたら、毒が回る以前に出血で死んでしまう。もう、次は無い……!」
白いブラジャーが丸見えになり、雪見の防御力は、ほぼゼロになっていた。
「雪見! この剣を使え!」
ケレンはミラーソードを雪見に向かって投げた。雪見はケルベロス・ダークの攻撃をかわしながら、飛んでくるミラーソードに手を伸ばす。
「俺には軽すぎたが、雪見にはちょうど良いはずだ!」
「タケルくんが作ってくれたプラスチックソードは壊れてしまったけれど……この新しい剣なら! 私にだって斬れる!」
雪見は道着を脱ぎ捨てた。防御力を無くした代わりに、素早さと攻撃力をアップさせたのだ。しかし、そこまで徹底しても、ケルベロス・ダークには深傷を与えられない。
「絶対に諦めない!」
雪見の渾身の一撃が、ケルベロス・ダークの目にミラーソードを突き刺した。雪見は剣を手放し、敵の背後に回る。そして、ケルベロス・ダークの身体に手を当て「生成!」と叫んだ。
魔物の血液をポーションに変えるなど、一体誰が思いつこうか。そもそも、命をかけた戦いの中で、成功するかどうかも怪しい攻撃をすること自体がどうかしているのだ。しかし、雪見は実行した。ケルベロス・ダークの全身の血液を、生成魔法でポーションに変えてみせたのだ。
ケルベロス・ダークは死んだ。ケレンは今まで何匹もの魔物を倒してきたが、これほどまでに、苦しみで歪んだ死顔を見たことがない。毒を持つ魔物とポーションは、ただでさえ相性が悪いのだ。ケルベロス・ダークにとって、地獄のような苦しみだったのだろう。
「生成魔法を攻撃に転換させるとは……恐れ入ったな」
ケルベロス・ダークの死体が霧になって消滅すると、ケレンの身体の毒も消えて無くなった。
ケレンは雪見の白い下着姿を心の底から称賛していた。剣道着姿の雪見とは比べ物にならないくらいに、良い動きをしていたのだ。とくに胸の揺れを抑える防具の構造にケレンは興味津々だ。
「それが雪見の新コスチュームなのだな。ぜひ、間近で見させてほしい」
「やめてよ。それに、これは下着だよ。コスチュームじゃないの。分かるでしょ」
「分からんな。触らせてくれ」
ケレンの世界にブラジャーは存在しない。ケレンは純粋な気持ちでブラジャーに触りたいのだ。
「触ったら怒るよ」
「では教えてくれ。胸部分の構造はどうなっているのだ? 動いているとき、乳房の揺れを最小限に抑える効果があるようだが」
「随分と食いついてくるなぁ」
雪見は照れ臭さを通り越して、面倒くさくなってきた。
「これは、こういうブラなんだよ」
「しかし、素材がお粗末過ぎる。せっかくの防具が台無しだ」
「悪かったわね。お粗末で」
ケレンはブラジャー自体の素材について言っていたのだが、雪見は自分の胸のことを言われているのだと勘違いしていた。
「それにしても、腹はさすがに出すぎだろ」
ケレンは腹の露出を抑えた方が良いと言う意味で言ったのだが、当然、雪見はそう捉えなかった。
「お腹出てないもん!」
「本気で言ってるのか。まぁいい。とにかく、袴より動きやすいことは雪見にも分かったはずだ。一度、タケルに相談してみよう。彼はコスチューム作りの天才だからな。きっと、雪見に合った防具を作ってくれるだろうさ」
「いや、そこまでしなくて良いよ。むしろ、やめて下さい」
「遠慮するな。俺は動きに制限のない、完璧な状態の雪見と手合わせしてみたいんだ。これまで稽古をつけてきた俺の、最後のわがままを聞いてほしい」
「それを言われたら断れないけど……。まぁ、手合わせで着るだけなら構わないよ。水着で良ければ自分でも用意できるし」
「いいや。タケルに作ってもらう。俺はタケルの可能性を信じているのだ。タケルは伸びる。これは、今まで稽古をつけてきてやった俺の、最後のわがま──」
「それ言えば何でも聞いてくれると思ったんでしょ。しょうがないなぁ。良いよ。タケルくんのことだから、恥ずかしがって断るはずだし。タケルくんに断られたら、ケレンさんも諦めがつくでしょ」
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