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第1章 ビキニアーマーができるまで
書記のプライド
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友依が惜しみなくパンツを披露しているその後ろで何かが動いた。噴水の中から黒い獣が飛び出してきたのだ。それは、ケルベロス・ロード。三つ首のケルベロスの、上位種にあたる魔物だ。
ケルベロス・ロードは、友依に向かって飛びかかる。
「友依ちゃん、危ない!」
雪見は咄嗟の判断で友依に飛びつき押し倒した。間一髪、友依を守ることはできたが、代わりに雪見は足を捻って痛めてしまった。状況をまだ理解できていない友依に、雪見は痛みを堪えて叫ぶ。
「逃げて! ケルベロスが現れたの!」
ケルベロスの存在に気づいた友依は、驚き硬直してしまった。一体誰がこんな事態を予測できようか。もしも雪見が助けてくれなかったら、今頃自分は死んでいたかもしれない。その恐怖が友依の背筋を凍らせていた。
「これは困りましたね……。まさか、学校の敷地以外でも出現するとは……。でもご安心を……! 私だって生徒会の端くれ、遭遇したからには放っておきませんよー」
友依は背中のリュックサックを正面に回し、中から銀色のポーチを取り出した。そのポーチには「防災」という文字が大きく書かれてある。
「緊急時に必要なものは、この防災ポーチに入れてあるんです。雪ちゃん。ここは私に任せてください。あのカフェまで逃げられますか? 足、痛いかもですが、頑張ってください!」
「何言ってるの? 無理だよ。私はいいから、友依ちゃんだけでも走って逃げて!」
「ふふっ。舐めないでくださいよ。確かに私は柔道部の剛田さんのような腕力はありませんし、会長のような戦闘タイプの生徒会でもありません。しかし、書記には書記のプライドってものがあるんですー!」
防災ポーチの中から取り出したのは、小さなオレンジ色のゴムボールだった。
「ふっふー。私なりにケルベロスのことは調べてましてねー。これまでのデータから推測しますと、おそらくケルベロスは──」
友依はゴムボールを遠くへ投げた。地面を弾んでいくゴムボールに、ケルベロスは気を取られている。その隙に友依は雪見に肩を貸し、カフェまで一直線に走り出した。
「雪ちゃん。後ろは見ないで、走り続けてください!」
「待って! 足が痛い! 痛いってば!」
「死にたいんですか! 我慢してください!」
ケルベロスに追いかけられてるかもしれないという不安と恐怖に耐えながら、二人はカフェの入口まで辿り着いた。そしてガラスのドアを開け、店内に滑り込む。
「ケルベロスは!?」
友依は振り向き、ガラス張りの壁から広場を見渡した。
「やっぱりでしたか……。雪ちゃん、もう大丈夫ですー。ケルベロスはいなくなりましたー」
「……何が、どうなってるの?」
「ケルベロスが狙っているのは私たち学生だけなんですよー。大人に見つかって騒ぎが大きくなるのを極端に嫌っているんですねー。もしも、このカフェの店員さんが全員学生バイトだったらアウトでした。私たちは運が良かったんですー」
カフェの店員は五十代の女性ばかりだった。二人を心配して声をかけにきてくれた店員に、友依はそれっぽく、ありきたりな説明をし、気分が落ち着くまでカフェにいても良いとの許可を得た。
二人はテーブル席に案内され、雪見には店員からお湯が差し出された。雪見は不思議に思いながらも頭を下げ、ゆっくりお湯を飲んだ。
「……ねぇ、店員さんに、何て説明したの?」
雪見は店員がキッチンに入るのを見計らって、小声で友依に尋ねた。
「私にだけお湯がサービスされてるのは、どうして?」
「ふっふー。店員さんには、こう説明したんですー。連れがミルクティーの飲み過ぎでお腹を下してるので、落ち着くまでここにいさせて欲しいって。さっそくですが雪ちゃん。足が痛いところ大変恐縮ではありますが、お手洗いに向かってくださいー」
「え? 私、お腹下してないよ!」
「しっ! 声が大きいですよー。ケルベロスのことを正直に話すわけにもいかないでしょう。ほら、早くお手洗いに行ってください。なるべくリアルに演じてくださいねー」
「酷いよ~。友依ちゃん……」
足を痛めている雪見は、演じずとも辛そうに歩くことができた。そんな雪見を見た店員たちは心配し、トイレから戻って来た雪見に膝掛けまで貸してくれた。
「自然な演技、グッジョブです!」
「うぅ……。友依ちゃんのいじわる~。恥ずかしくて、もう二度とここに来れないよ……」
「さて、ケルベロスのことで、雪ちゃんにも話しておきたいことがあります。かなりショッキングな内容になるので、まずはお湯を飲んで、心を落ち着かせてください」
友依はケルベロスについて語り始めた……。
ケルベロス・ロードは、友依に向かって飛びかかる。
「友依ちゃん、危ない!」
雪見は咄嗟の判断で友依に飛びつき押し倒した。間一髪、友依を守ることはできたが、代わりに雪見は足を捻って痛めてしまった。状況をまだ理解できていない友依に、雪見は痛みを堪えて叫ぶ。
「逃げて! ケルベロスが現れたの!」
ケルベロスの存在に気づいた友依は、驚き硬直してしまった。一体誰がこんな事態を予測できようか。もしも雪見が助けてくれなかったら、今頃自分は死んでいたかもしれない。その恐怖が友依の背筋を凍らせていた。
「これは困りましたね……。まさか、学校の敷地以外でも出現するとは……。でもご安心を……! 私だって生徒会の端くれ、遭遇したからには放っておきませんよー」
友依は背中のリュックサックを正面に回し、中から銀色のポーチを取り出した。そのポーチには「防災」という文字が大きく書かれてある。
「緊急時に必要なものは、この防災ポーチに入れてあるんです。雪ちゃん。ここは私に任せてください。あのカフェまで逃げられますか? 足、痛いかもですが、頑張ってください!」
「何言ってるの? 無理だよ。私はいいから、友依ちゃんだけでも走って逃げて!」
「ふふっ。舐めないでくださいよ。確かに私は柔道部の剛田さんのような腕力はありませんし、会長のような戦闘タイプの生徒会でもありません。しかし、書記には書記のプライドってものがあるんですー!」
防災ポーチの中から取り出したのは、小さなオレンジ色のゴムボールだった。
「ふっふー。私なりにケルベロスのことは調べてましてねー。これまでのデータから推測しますと、おそらくケルベロスは──」
友依はゴムボールを遠くへ投げた。地面を弾んでいくゴムボールに、ケルベロスは気を取られている。その隙に友依は雪見に肩を貸し、カフェまで一直線に走り出した。
「雪ちゃん。後ろは見ないで、走り続けてください!」
「待って! 足が痛い! 痛いってば!」
「死にたいんですか! 我慢してください!」
ケルベロスに追いかけられてるかもしれないという不安と恐怖に耐えながら、二人はカフェの入口まで辿り着いた。そしてガラスのドアを開け、店内に滑り込む。
「ケルベロスは!?」
友依は振り向き、ガラス張りの壁から広場を見渡した。
「やっぱりでしたか……。雪ちゃん、もう大丈夫ですー。ケルベロスはいなくなりましたー」
「……何が、どうなってるの?」
「ケルベロスが狙っているのは私たち学生だけなんですよー。大人に見つかって騒ぎが大きくなるのを極端に嫌っているんですねー。もしも、このカフェの店員さんが全員学生バイトだったらアウトでした。私たちは運が良かったんですー」
カフェの店員は五十代の女性ばかりだった。二人を心配して声をかけにきてくれた店員に、友依はそれっぽく、ありきたりな説明をし、気分が落ち着くまでカフェにいても良いとの許可を得た。
二人はテーブル席に案内され、雪見には店員からお湯が差し出された。雪見は不思議に思いながらも頭を下げ、ゆっくりお湯を飲んだ。
「……ねぇ、店員さんに、何て説明したの?」
雪見は店員がキッチンに入るのを見計らって、小声で友依に尋ねた。
「私にだけお湯がサービスされてるのは、どうして?」
「ふっふー。店員さんには、こう説明したんですー。連れがミルクティーの飲み過ぎでお腹を下してるので、落ち着くまでここにいさせて欲しいって。さっそくですが雪ちゃん。足が痛いところ大変恐縮ではありますが、お手洗いに向かってくださいー」
「え? 私、お腹下してないよ!」
「しっ! 声が大きいですよー。ケルベロスのことを正直に話すわけにもいかないでしょう。ほら、早くお手洗いに行ってください。なるべくリアルに演じてくださいねー」
「酷いよ~。友依ちゃん……」
足を痛めている雪見は、演じずとも辛そうに歩くことができた。そんな雪見を見た店員たちは心配し、トイレから戻って来た雪見に膝掛けまで貸してくれた。
「自然な演技、グッジョブです!」
「うぅ……。友依ちゃんのいじわる~。恥ずかしくて、もう二度とここに来れないよ……」
「さて、ケルベロスのことで、雪ちゃんにも話しておきたいことがあります。かなりショッキングな内容になるので、まずはお湯を飲んで、心を落ち着かせてください」
友依はケルベロスについて語り始めた……。
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