16 / 64
第1章 ビキニアーマーができるまで
戸惑い
しおりを挟む
文化祭当日、タケルの予想に反して、クラスの女子たちはノリノリだった。
女子たちのメイド服姿を真近で見ようと、それまで乗り気じゃなかった男子たちも、自ら進んで手伝いにきていた。
裏方に回るはずだった雪見の仕事も当然無くなり、タケルが雪見のために作ったメイド服も、他の女子生徒に取られてしまった。
「まったく何なんだよ! 前日までの面倒な準備は全部僕らにやらせといてさ。当日の良いとこどりするのがクラスメイトのすることかよ。ちくしょう! グムォッ!」
行き場を失い、一緒にベランダに出ている雪見の隣で、タケルは焼きそばを食べながら叫び、そしてむせた。
「小須藤くん、行儀が悪い」
雪見は教室に戻って備品箱から紙コップを二つ取り出し、冷水をそこに注いだ。暗幕で仕切られたスペースには机が積み重なり荷物でいっぱいだったが、表舞台よりこっちの方が落ち着くと雪見は思っていた。
ベランダに出て戸をしめると、教室の声は遮断されて静かになる。雪見は水の入った紙コップを一つ、タケルに手渡した。
「ありがとう。メイド喫茶の方は繁盛してた?」
「うん。凄く賑やかだったよ」
「そっかぁ。笠原さんのメイド服姿、やっぱり見たかったよなぁ」
「私は昨日の夜に試着させてもらってるから、それで満足してるよ。小須藤くんには本当に感謝してる」
「違うんだよ。僕はクラスの女子たちに知らしめてやりたかったんだ。お前らなんかより、笠原さんのメイド服姿の方が可愛いし、似合ってるんだぞってのを。まったく、あいつらときたらさ──」
タケルの熱弁は続いた。コスプレのことになると、タケルは止まらなくなる。
「──だから、笠原さんはもっと前へ出て良いと思うんだよ。お世辞や冗談抜きで、笠原さんは可愛いんだから」
「ありがと……」
雪見は自分の身内以外から、こんなに可愛いと言われたことは無かった。むしろ、見た目や名前でからかわれることの方が多かったのである。
それ故、タケルの褒め言葉を、素直に受け入れることができずにいた。
女子たちのメイド服姿を真近で見ようと、それまで乗り気じゃなかった男子たちも、自ら進んで手伝いにきていた。
裏方に回るはずだった雪見の仕事も当然無くなり、タケルが雪見のために作ったメイド服も、他の女子生徒に取られてしまった。
「まったく何なんだよ! 前日までの面倒な準備は全部僕らにやらせといてさ。当日の良いとこどりするのがクラスメイトのすることかよ。ちくしょう! グムォッ!」
行き場を失い、一緒にベランダに出ている雪見の隣で、タケルは焼きそばを食べながら叫び、そしてむせた。
「小須藤くん、行儀が悪い」
雪見は教室に戻って備品箱から紙コップを二つ取り出し、冷水をそこに注いだ。暗幕で仕切られたスペースには机が積み重なり荷物でいっぱいだったが、表舞台よりこっちの方が落ち着くと雪見は思っていた。
ベランダに出て戸をしめると、教室の声は遮断されて静かになる。雪見は水の入った紙コップを一つ、タケルに手渡した。
「ありがとう。メイド喫茶の方は繁盛してた?」
「うん。凄く賑やかだったよ」
「そっかぁ。笠原さんのメイド服姿、やっぱり見たかったよなぁ」
「私は昨日の夜に試着させてもらってるから、それで満足してるよ。小須藤くんには本当に感謝してる」
「違うんだよ。僕はクラスの女子たちに知らしめてやりたかったんだ。お前らなんかより、笠原さんのメイド服姿の方が可愛いし、似合ってるんだぞってのを。まったく、あいつらときたらさ──」
タケルの熱弁は続いた。コスプレのことになると、タケルは止まらなくなる。
「──だから、笠原さんはもっと前へ出て良いと思うんだよ。お世辞や冗談抜きで、笠原さんは可愛いんだから」
「ありがと……」
雪見は自分の身内以外から、こんなに可愛いと言われたことは無かった。むしろ、見た目や名前でからかわれることの方が多かったのである。
それ故、タケルの褒め言葉を、素直に受け入れることができずにいた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる