上 下
9 / 12

9.マメ太

しおりを挟む
どれだけの時間落下していたのかわからない。
けれど無事に着地することができた。

シュウメイのおかげで。

シュウメイの身体能力はもはや人間ではないようだ。

どこかに降り立って足元を確認する。足元はしっかりしている。

暗くてよく見えないが建造物なのかもしれない。

その時。



ようこそ。



頭に声が響いた。

先ほどの声と同じものだ。

「君は誰なんだ?」

シュウメイが問いかけるとすぐに返答が返ってきた。

「僕はマメ太。」

えっ。

今度は足元から声が聞こえた。

「正確には君たちがマメ太と呼んでいる‥」

「「まっ、マメ太ーッッ」」


「マメ太が喋った。」

「信じられない。」

夢でも見ているのか。でもそれならどこからが夢?今日起こっていること全て?もしかして、シュウメイと会ったことすら夢だったりして。

混乱する僕たちを見て、マメ太は少し引いていた。

「少し落ち着いてくれないかな。まだ話の途中なんだけど。」

「これが落ち着いていられるかっ。これはすごいことだぞ、何せモンスターがしゃべったんだから。はっ、まさか魔王の遣いなのか。倒すか?うん。倒そう。」

シュウメイは自分以上におかしくなっているのを見て何だか少し冷静になれた。


「シュウメイ。落ち着こう。一旦落ち着いて話を聞こう。ねっ。」

シュウメイは深く深呼吸した。

「そうだね。落ち着こう。まずは落ち着いてからだ。」

マメ太の方を見る。

「あっ、大丈夫ね。じゃあ話すね。」


「僕はね。魔王なのよ。」

‥‥‥。

‥‥‥。


「「は?」」

「んなわけあるかっ。」

シュウメイがキレのあるツッコミを入れる。

「そんなわけあるんだよ。」

「いやいや、魔王がこんなちっこい犬なわけないだろーがー。」

「まあ、確かに、そうかもしれない。だがこれは仮の姿。真の姿を見たら驚くよ。絶対に。」

「じゃあ、なってみろ。真の姿とやらに。」

「それが、今はできないんだなー。これが。」

「‥よし。じゃあ、今のうちに倒すか。」

シュウメイは腕を回す。

まぁ、確かにこいつが本当に魔王なんだとしたら。何らかの理由で弱体化している今がチャンスなのは間違いない。だけど違ったとしたらこの可愛い生物を倒すなんて、できない。

「シュウメイ‥。」

「?どうした。ユア。」

「まだ、その時じゃない。」

「えっ?」

「つまり、こいつを倒すのはまだ後だってこと。」

「なんで。」

「考えてもみなよ。こんなちっちゃい生物が魔王だなんて。第一、魔王が護衛も付けずにこんなところにいる?それに仮にこの言葉が本当だったとしても無害な今の状態で倒しても後味悪いでしょ。真の魔王の姿になってから倒してこそ。世界を救ったっていう実感ができると思うんだよ。」

自分でもよくわからないことを言ってしまった。

「うーん。確かに、そうかもしれない。」

あっ、いいんだ。

「こいつが魔王かなんてまだわからないもんな。弱そうだし。まあ、とにかくここから脱出することを第一に考えよう。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

執着男に勤務先を特定された上に、なんなら後輩として入社して来られちゃった

パイ生地製作委員会
BL
【登場人物】 陰原 月夜(カゲハラ ツキヤ):受け 社会人として気丈に頑張っているが、恋愛面に関しては後ろ暗い過去を持つ。晴陽とは過去に高校で出会い、恋に落ちて付き合っていた。しかし、晴陽からの度重なる縛り付けが苦しくなり、大学入学を機に逃げ、遠距離を理由に自然消滅で晴陽と別れた。 太陽 晴陽(タイヨウ ハルヒ):攻め 明るく元気な性格で、周囲からの人気が高い。しかしその実、月夜との関係を大切にするあまり、執着してしまう面もある。大学卒業後、月夜と同じ会社に入社した。 【あらすじ】  晴陽と月夜は、高校時代に出会い、互いに深い愛情を育んだ。しかし、海が大学進学のため遠くに引っ越すことになり、二人の間には別れが訪れた。遠距離恋愛は困難を伴い、やがて二人は別れることを決断した。  それから数年後、月夜は大学を卒業し、有名企業に就職した。ある日、偶然の再会があった。晴陽が新入社員として月夜の勤務先を訪れ、再び二人の心は交わる。時間が経ち、お互いが成長し変わったことを認識しながらも、彼らの愛は再燃する。しかし、遠距離恋愛の過去の痛みが未だに彼らの心に影を落としていた。 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl 制作秘話ブログ: https://piedough.fanbox.cc/ メッセージもらえると泣いて喜びます:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

悩ましき騎士団長のひとりごと

きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。 ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。 『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。 ムーンライト様にも掲載しております。 よろしくお願いします。

処理中です...