3 / 12
3.騎士
しおりを挟む陽が落ち始めている。
ここら辺は結構道に迷う冒険者も多い。暗くなれば尚更危険だ。
夜は危険なモンスターも出る危険があるからできるだけ出歩かないようにしている。
ちょっとだけ。ちょっとだけ探していなかったら帰ろう。
森の奥に進んでいく。徐々になにも見えなくなる。ここまできたんだ。これ以上先にはもういないよね。そろそろ引き返そう。
そう思って後ろを振り向く。
あれ、ここどこだっけ。
見慣れた景色のはずなのにいつも歩く場所のはずなのに目の前が真っ白な霧に囲まれている。
どっちに行けばいいのだろう。
わからない。
何かにばかされているのだろうか。こんなことなかったのに。
ぼんやりと目の前に大きな影が見える。人のシルエットではない。徐々にその何かがこちらに向かってくる。
まさか、あれは、モンスター?
大きな猪のような見た目をしたそれは鼻息荒くこちらにゆっくりとにじり寄ってくる。
どうするか、戦うか、戦えないわけではない。
戦闘スキルも持ってはいる。だけど経験が無い。この世界に来てから戦闘は避けてきた。
痛いのが嫌いだから。
逃げるか、逃げるしかない。
猪の逆方向を向いて走り出す。
ジグザグに逃げればもしかしたら着いてこれないかもしれない。
そう思い、走る。
だけど現実はそう甘くはなかった。
普段からあまり運動をしていない僕はあろうことか木の根につまづく。
「いたっ。」
走っていた勢いのまま転がる。
起き上がって振り向くとすぐ目の前に大猪の顔があった。
もうダメだ、と僕は目を瞑った。
それから時間が止まった。
ような感覚だった。
いくら待っても痛みを感じない。自分になにもぶつかってはこなかった。
恐る恐る目を開ける。
目の前には昨日出会った彼の背中が見えた。
「シュウ メイ?」
「すみません。遅くなりました。」
その目の前には大猪が横たわっている。
振り向いたシュウメイは勇者の顔をしていた。
「あ、ありがとう。」
差し伸べられた手を掴み、起き上がる。
「帰りましょう。」
「うん。帰ろっか。」
ここら辺は結構道に迷う冒険者も多い。暗くなれば尚更危険だ。
夜は危険なモンスターも出る危険があるからできるだけ出歩かないようにしている。
ちょっとだけ。ちょっとだけ探していなかったら帰ろう。
森の奥に進んでいく。徐々になにも見えなくなる。ここまできたんだ。これ以上先にはもういないよね。そろそろ引き返そう。
そう思って後ろを振り向く。
あれ、ここどこだっけ。
見慣れた景色のはずなのにいつも歩く場所のはずなのに目の前が真っ白な霧に囲まれている。
どっちに行けばいいのだろう。
わからない。
何かにばかされているのだろうか。こんなことなかったのに。
ぼんやりと目の前に大きな影が見える。人のシルエットではない。徐々にその何かがこちらに向かってくる。
まさか、あれは、モンスター?
大きな猪のような見た目をしたそれは鼻息荒くこちらにゆっくりとにじり寄ってくる。
どうするか、戦うか、戦えないわけではない。
戦闘スキルも持ってはいる。だけど経験が無い。この世界に来てから戦闘は避けてきた。
痛いのが嫌いだから。
逃げるか、逃げるしかない。
猪の逆方向を向いて走り出す。
ジグザグに逃げればもしかしたら着いてこれないかもしれない。
そう思い、走る。
だけど現実はそう甘くはなかった。
普段からあまり運動をしていない僕はあろうことか木の根につまづく。
「いたっ。」
走っていた勢いのまま転がる。
起き上がって振り向くとすぐ目の前に大猪の顔があった。
もうダメだ、と僕は目を瞑った。
それから時間が止まった。
ような感覚だった。
いくら待っても痛みを感じない。自分になにもぶつかってはこなかった。
恐る恐る目を開ける。
目の前には昨日出会った彼の背中が見えた。
「シュウ メイ?」
「すみません。遅くなりました。」
その目の前には大猪が横たわっている。
振り向いたシュウメイは勇者の顔をしていた。
「あ、ありがとう。」
差し伸べられた手を掴み、起き上がる。
「帰りましょう。」
「うん。帰ろっか。」
1
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
執着男に勤務先を特定された上に、なんなら後輩として入社して来られちゃった
パイ生地製作委員会
BL
【登場人物】
陰原 月夜(カゲハラ ツキヤ):受け
社会人として気丈に頑張っているが、恋愛面に関しては後ろ暗い過去を持つ。晴陽とは過去に高校で出会い、恋に落ちて付き合っていた。しかし、晴陽からの度重なる縛り付けが苦しくなり、大学入学を機に逃げ、遠距離を理由に自然消滅で晴陽と別れた。
太陽 晴陽(タイヨウ ハルヒ):攻め
明るく元気な性格で、周囲からの人気が高い。しかしその実、月夜との関係を大切にするあまり、執着してしまう面もある。大学卒業後、月夜と同じ会社に入社した。
【あらすじ】
晴陽と月夜は、高校時代に出会い、互いに深い愛情を育んだ。しかし、海が大学進学のため遠くに引っ越すことになり、二人の間には別れが訪れた。遠距離恋愛は困難を伴い、やがて二人は別れることを決断した。
それから数年後、月夜は大学を卒業し、有名企業に就職した。ある日、偶然の再会があった。晴陽が新入社員として月夜の勤務先を訪れ、再び二人の心は交わる。時間が経ち、お互いが成長し変わったことを認識しながらも、彼らの愛は再燃する。しかし、遠距離恋愛の過去の痛みが未だに彼らの心に影を落としていた。
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl
制作秘話ブログ: https://piedough.fanbox.cc/
メッセージもらえると泣いて喜びます:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
悩ましき騎士団長のひとりごと
きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。
ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。
『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。
ムーンライト様にも掲載しております。
よろしくお願いします。
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる