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1.出会い
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この世界に来てそろそろ一年になる。
武器や防具の販売を始めて約半年ぼちぼちやってる。売り上げもそんなに伸びているわけではないがお得意様のおかげで何とかやっていけてる。ここは他では手に入らない防具が手に入ると絶賛してもらうこともある。
店の場所に問題があるのだろうか。確かに人通りの少ない、むしろ人よりモンスターの方が多い山奥のこんな場所にわざわざやってくる冒険者は少ない。まぁ宣伝になることをあまりしていないということを考えると、努力不足という一言で片付けることができてしまう。
「いらっしゃい。本日はなにをお探しですか?」
冒険者様御一行だ。
「クエストこなしてる時にしくじってさ、見てよこの防具。危なかったよ。」
本当にあぶない。胸の辺りが一部大きく凹んでいて。こちらはエンチャントの装備がこんなにボロボロに。どういう敵と戦ったらこうなるんだ。
「ちなみにこの傷は。」
「第三回層のビッグリザードにやられたよ。エンチャントがあったから何とかなったけどね。」
三回層のビッグリザードにエンチャントがあってこの傷は‥‥粗悪品だ。
ちょっと待ってくださいね。
新しいものに取り替えますから。
すぐに冒険者さん達の装備一式を準備した。
防具以外の武器も一通り調べ、明らかに粗悪品なものは取り替えた。
軽いなこりゃ。なのに耐久度は問題ない。
驚いている冒険者さん。
「えっと代金は‥こんなに安いの。こんなの見たことないよ。ありがとう。やつだよね。ありがとう。」
「冒険者様のお役に立てて嬉しいです。」
ありがとうございました。
「そんなことばっかりしてるから貧乏なままなんだよ。」
近くで居酒屋を営んでいるリーシン。
日中はたまにこうして僕の店でゴロゴロしてる。
「1人でやってるから大丈夫。」
「確かにすげーよなお前。1人で武器作って、防具作って、エンチャントまで施しちゃうなんてさ。」
この世界に来た時に何故かすでに装備関係生成のスキルが高く設定されていた僕は大して多くを学ばずにこの世界に順応していった。
誰かから学ぶのではなく自分で作っては改善してを繰り返した結果、独自の装備を作ることができるようになった。
そんなある時。
その日は嵐が来ていた。徐々に風が強くなり、雷の音は止まなかった。
午後になると立っていられないほどの風が吹き始めたため、当然客も来ることはないだろうとお店を閉めることにした。
店前のシャッターを閉め店の中に入ろうとした時。
ドサッと音がした。何か大きなものが倒れるような。音の下方向を見た。人が倒れていた。すぐさま駆け寄り確認する。長身の男性。冒険者?のようだ。モンスターにやられたのだろうか。とにかく早く部屋の中に運ばないと。
急いでその冒険者を店の中に運んだ。傷の確認をする。ボロボロの上半身の装備脱がせ確認をする。小さな傷がある苦しそうにしているのはもしかしたら毒かもしれない。だけど調べたところ僕の持っている治癒魔法で何とかなりそうだった。
治癒スキルも高いレベルのものではないが持っていた。こんな山の中に生活している身ともなれば意外と便利なものだ。
かなり鍛えられた体をしている。よく見れば端正な顔立ちをしている。黒髪の青年。僕よりも年下のように見える。
体が冷えないようにタオルで体を拭き毛布を被せた。あとは寝て体力を回復させれば何とかなるだろう。
僕は冒険者を寝かせて奥の部屋でエンチャントの実験をすることにした。こういう日は誰も来ないから僕の邪魔をするものは誰もいない。ふっふっふ。
まずは打撃をそのまま跳ね返すエンチャントの実験だ。時間を忘れて実験に没頭した。
「完成だー。」
凝り固まった肩を回す。
「どれどれ。試してみましょうか。」
ん?えっ。
突然後ろから聞こえてきた声に驚いて飛び上がる。
「いっ、いつからそこに。」
「30分ほど前から。」
「かなり長い間いたね。その間気づかなかった僕も僕だけど。」
「かなり集中していたものだから話しかけられませんでした。助けてくれてありがとう。私はシュウメイ。何か、お礼をしたいのですが何か、手伝えることってあったりしますか?」
「もう、大丈夫なんですか?」
「もちろん、あなたのおかげでこの通りっと。」
ふらふらっとよろけた。
グーッとお腹のなる音が聞こえた。
「何か作りましょうか。」
「すみません。昨日からなにも食べてないもので。」
そんなこんなで夕食を作ることにした。気づけばもう夜だった。外はまだ大荒れのようだ。雷の音が聞こえる。
「それにしてもどうしてこんなところに倒れていたんです?」
「ははっ、それは。」
シュウメイさんが言うに、彼はシカリト王国の騎士団に入る予定だったらしい。道中モンスターに幾度となくモンスターに襲われその度に撃退したものの、食切れで倒れ込んでいたところを毒グモに刺されたらしい。
「そういえば荷物は?」
「荷物?特になにも。」
「食料は?」
「現地調達で。」
「地元から王国までの距離は?」
「一月ほどかかります。」
なにを考えているのだろう。王国に呼ばれるくらいだからそれなりに腕は立つんだろうけど。
「ま、まぁ、今日はゆっくり休んでくださいね。」
話をしているうちに夕食ができた。
武器や防具の販売を始めて約半年ぼちぼちやってる。売り上げもそんなに伸びているわけではないがお得意様のおかげで何とかやっていけてる。ここは他では手に入らない防具が手に入ると絶賛してもらうこともある。
店の場所に問題があるのだろうか。確かに人通りの少ない、むしろ人よりモンスターの方が多い山奥のこんな場所にわざわざやってくる冒険者は少ない。まぁ宣伝になることをあまりしていないということを考えると、努力不足という一言で片付けることができてしまう。
「いらっしゃい。本日はなにをお探しですか?」
冒険者様御一行だ。
「クエストこなしてる時にしくじってさ、見てよこの防具。危なかったよ。」
本当にあぶない。胸の辺りが一部大きく凹んでいて。こちらはエンチャントの装備がこんなにボロボロに。どういう敵と戦ったらこうなるんだ。
「ちなみにこの傷は。」
「第三回層のビッグリザードにやられたよ。エンチャントがあったから何とかなったけどね。」
三回層のビッグリザードにエンチャントがあってこの傷は‥‥粗悪品だ。
ちょっと待ってくださいね。
新しいものに取り替えますから。
すぐに冒険者さん達の装備一式を準備した。
防具以外の武器も一通り調べ、明らかに粗悪品なものは取り替えた。
軽いなこりゃ。なのに耐久度は問題ない。
驚いている冒険者さん。
「えっと代金は‥こんなに安いの。こんなの見たことないよ。ありがとう。やつだよね。ありがとう。」
「冒険者様のお役に立てて嬉しいです。」
ありがとうございました。
「そんなことばっかりしてるから貧乏なままなんだよ。」
近くで居酒屋を営んでいるリーシン。
日中はたまにこうして僕の店でゴロゴロしてる。
「1人でやってるから大丈夫。」
「確かにすげーよなお前。1人で武器作って、防具作って、エンチャントまで施しちゃうなんてさ。」
この世界に来た時に何故かすでに装備関係生成のスキルが高く設定されていた僕は大して多くを学ばずにこの世界に順応していった。
誰かから学ぶのではなく自分で作っては改善してを繰り返した結果、独自の装備を作ることができるようになった。
そんなある時。
その日は嵐が来ていた。徐々に風が強くなり、雷の音は止まなかった。
午後になると立っていられないほどの風が吹き始めたため、当然客も来ることはないだろうとお店を閉めることにした。
店前のシャッターを閉め店の中に入ろうとした時。
ドサッと音がした。何か大きなものが倒れるような。音の下方向を見た。人が倒れていた。すぐさま駆け寄り確認する。長身の男性。冒険者?のようだ。モンスターにやられたのだろうか。とにかく早く部屋の中に運ばないと。
急いでその冒険者を店の中に運んだ。傷の確認をする。ボロボロの上半身の装備脱がせ確認をする。小さな傷がある苦しそうにしているのはもしかしたら毒かもしれない。だけど調べたところ僕の持っている治癒魔法で何とかなりそうだった。
治癒スキルも高いレベルのものではないが持っていた。こんな山の中に生活している身ともなれば意外と便利なものだ。
かなり鍛えられた体をしている。よく見れば端正な顔立ちをしている。黒髪の青年。僕よりも年下のように見える。
体が冷えないようにタオルで体を拭き毛布を被せた。あとは寝て体力を回復させれば何とかなるだろう。
僕は冒険者を寝かせて奥の部屋でエンチャントの実験をすることにした。こういう日は誰も来ないから僕の邪魔をするものは誰もいない。ふっふっふ。
まずは打撃をそのまま跳ね返すエンチャントの実験だ。時間を忘れて実験に没頭した。
「完成だー。」
凝り固まった肩を回す。
「どれどれ。試してみましょうか。」
ん?えっ。
突然後ろから聞こえてきた声に驚いて飛び上がる。
「いっ、いつからそこに。」
「30分ほど前から。」
「かなり長い間いたね。その間気づかなかった僕も僕だけど。」
「かなり集中していたものだから話しかけられませんでした。助けてくれてありがとう。私はシュウメイ。何か、お礼をしたいのですが何か、手伝えることってあったりしますか?」
「もう、大丈夫なんですか?」
「もちろん、あなたのおかげでこの通りっと。」
ふらふらっとよろけた。
グーッとお腹のなる音が聞こえた。
「何か作りましょうか。」
「すみません。昨日からなにも食べてないもので。」
そんなこんなで夕食を作ることにした。気づけばもう夜だった。外はまだ大荒れのようだ。雷の音が聞こえる。
「それにしてもどうしてこんなところに倒れていたんです?」
「ははっ、それは。」
シュウメイさんが言うに、彼はシカリト王国の騎士団に入る予定だったらしい。道中モンスターに幾度となくモンスターに襲われその度に撃退したものの、食切れで倒れ込んでいたところを毒グモに刺されたらしい。
「そういえば荷物は?」
「荷物?特になにも。」
「食料は?」
「現地調達で。」
「地元から王国までの距離は?」
「一月ほどかかります。」
なにを考えているのだろう。王国に呼ばれるくらいだからそれなりに腕は立つんだろうけど。
「ま、まぁ、今日はゆっくり休んでくださいね。」
話をしているうちに夕食ができた。
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