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第59話 婚姻の申し込み
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無事粉薬が揃い、ディラン様がリオーレスト王国に帰る日が近付いていた。
「ミリー。今日はミリーも同席してほしい。ディラン殿の強い要望でな。何か大事な話しがあるそうだ。くれぐれも失礼のないように」
緊張した面持ちで、私に告げる父。
この様子だと、内容までは知らされていないようだ。
「はい。かしこまりました」
私は大人しく頷き彼等の到着を待つことにした。
然程待たされることもなく、ディラン様が乗った馬車が屋敷に着いた。
馬車から降りてきたディラン様は、今までの騎士服ではなく正装だった。
白に金糸で刺繡が施された衣装は、金色の瞳と合い黒く艶やかな髪を際立たせていた。
「ハーベスト伯爵。伯爵夫人。本日はお忙しいところ時間を作って頂き感謝します」
「いいえ、こちらこそ態々ご足労いただきありがとうございます。では、応接室へご案内します」
応接室に入るとすぐにお茶の用意がされた。
室内には私、父、母、ディラン様の四人のみ。
「ハーベスト伯爵。粉薬の件、引き受けて頂いたこと誠にありがとうございました。魔法に頼らない治療法は画期的で、ポーションより安く手に入るのは民にとって大変有り難いことです。今後とも良好な付き合いを望みます」
「ディラン殿。頭をお上げください。我々は困っている人達が少しでも減ってくれればそれで十分です。それに私は大したことはしていません。どうかもう頭をお上げください」
父に言われてようやく頭を上げたディラン様は、一度視線を私に向けると居住まいを正した。
「ハーベスト伯爵。今回は粉薬の件よりも大事な話しがあって訪れました。実はミリアーナ嬢は私の番なのです。今日は婚姻の申し込みに伺いました」
ディラン様の言葉に父は驚きを隠せなかった。
母はまあ、と嬉しそうな表情で私を見る。
分かっていたこととは言え、改めて告げられて顔が瞬時に赤くなる。
「ミリーがディラン殿の番、ですか?それはまことですか?」
父の声は上擦っていた。
「はい。間違いありません」
父の問いにディラン様はきっぱりと言い切った。
「まあまあまあ。今日はなんて素晴らしい日なのでしょう。ねぇ、マリウス。私も彼なら婚約者として問題はないと思うわ。ミリーも十五歳。貴族なら婚約者が居てもおかしくない年齢よ。それにモフモフの孫が出来るなんて。素敵だわぁ」
後半の言葉は母の願望だろう。
呆気にとられていた父は我に返ると、咳払いを一つしてディラン様に視線を移した後、私に顔を向けて尋ねた。
「ミリーは婚約のことどう思う?お前が良ければ反対はしない。幸せになってほしいからな。どうするかはお前の判断に任せるよ」
父の優しさに私は満面の笑みで答えた。
「はい。私はディラン様と幸せになりたいです」
私の返事に父は寂し気な表情を浮かべたが、分かった、と了承してくれた。
「ディラン殿。婚約の件、お受けいたします。娘のことよろしくお願いいたします」
「もちろんです。了承して頂き感謝します」
私達の婚約はとんとん拍子に進んだ。
リオーレスト王国に戻ったディラン様から正式に婚姻の申し込みが届いて手続きは完了した。
父はディラン様が公爵家の者だと知らず、後にそのことを知った父は顔を青ざめていた。
「ミリー。今日はミリーも同席してほしい。ディラン殿の強い要望でな。何か大事な話しがあるそうだ。くれぐれも失礼のないように」
緊張した面持ちで、私に告げる父。
この様子だと、内容までは知らされていないようだ。
「はい。かしこまりました」
私は大人しく頷き彼等の到着を待つことにした。
然程待たされることもなく、ディラン様が乗った馬車が屋敷に着いた。
馬車から降りてきたディラン様は、今までの騎士服ではなく正装だった。
白に金糸で刺繡が施された衣装は、金色の瞳と合い黒く艶やかな髪を際立たせていた。
「ハーベスト伯爵。伯爵夫人。本日はお忙しいところ時間を作って頂き感謝します」
「いいえ、こちらこそ態々ご足労いただきありがとうございます。では、応接室へご案内します」
応接室に入るとすぐにお茶の用意がされた。
室内には私、父、母、ディラン様の四人のみ。
「ハーベスト伯爵。粉薬の件、引き受けて頂いたこと誠にありがとうございました。魔法に頼らない治療法は画期的で、ポーションより安く手に入るのは民にとって大変有り難いことです。今後とも良好な付き合いを望みます」
「ディラン殿。頭をお上げください。我々は困っている人達が少しでも減ってくれればそれで十分です。それに私は大したことはしていません。どうかもう頭をお上げください」
父に言われてようやく頭を上げたディラン様は、一度視線を私に向けると居住まいを正した。
「ハーベスト伯爵。今回は粉薬の件よりも大事な話しがあって訪れました。実はミリアーナ嬢は私の番なのです。今日は婚姻の申し込みに伺いました」
ディラン様の言葉に父は驚きを隠せなかった。
母はまあ、と嬉しそうな表情で私を見る。
分かっていたこととは言え、改めて告げられて顔が瞬時に赤くなる。
「ミリーがディラン殿の番、ですか?それはまことですか?」
父の声は上擦っていた。
「はい。間違いありません」
父の問いにディラン様はきっぱりと言い切った。
「まあまあまあ。今日はなんて素晴らしい日なのでしょう。ねぇ、マリウス。私も彼なら婚約者として問題はないと思うわ。ミリーも十五歳。貴族なら婚約者が居てもおかしくない年齢よ。それにモフモフの孫が出来るなんて。素敵だわぁ」
後半の言葉は母の願望だろう。
呆気にとられていた父は我に返ると、咳払いを一つしてディラン様に視線を移した後、私に顔を向けて尋ねた。
「ミリーは婚約のことどう思う?お前が良ければ反対はしない。幸せになってほしいからな。どうするかはお前の判断に任せるよ」
父の優しさに私は満面の笑みで答えた。
「はい。私はディラン様と幸せになりたいです」
私の返事に父は寂し気な表情を浮かべたが、分かった、と了承してくれた。
「ディラン殿。婚約の件、お受けいたします。娘のことよろしくお願いいたします」
「もちろんです。了承して頂き感謝します」
私達の婚約はとんとん拍子に進んだ。
リオーレスト王国に戻ったディラン様から正式に婚姻の申し込みが届いて手続きは完了した。
父はディラン様が公爵家の者だと知らず、後にそのことを知った父は顔を青ざめていた。
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