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第9話 洗礼
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魔力切れで倒れて更に数ヶ月が経った。
十歳を迎えた私は、洗礼を受けるために家族四人で神殿に訪れた。
神殿と言っても木造の教会みたいな建物だが。
父も母も魔力はそこそこあるそうで、貴族であれば多少でもあるのが当たり前らしい。
「ん?でも、貴族じゃない子も来てるよ?」
私が疑問を口にすると、この国では十歳になったら洗礼を必ず受けなければならないことと、正式に国民として登録されるためには必要なことだと説明された。
医療が発達していないから十歳を迎える前に亡くなる子供が多いらしい。悲しいね。
そう言えば子供が少ないなと思っていると、父が悲しそうにうちの領は特に若い領民が少ないからねと呟いた。
お父さま!私、頑張るからそんな顔しないで!
私自身、屋敷と工場以外の外出に胸が高鳴っていた。
マーカスくんも嬉しそうな表情を浮かべて、隣を歩く。
目の前には優し気な目をした白いローブのような物を身に纏ったおじいちゃんが立っていた。
「ハーベスト伯爵様、お久しぶりでございます。本日はご令嬢の魔力鑑定の儀でございますね」
穏やかだけど、しっかりした口調で話しかける。
「ああ、久しいな。ヴォルド神官長。娘のミリアーナだ。よろしく頼む」
そう言いながら、私の背中をそっと押して前に行くよう促す。
「初めまして。ハーベスト伯爵家、長女のミリアーナと申します。よろしくお願いします。ヴォルド神官長様」
一歩進み出て挨拶をした後、深々と頭を下げた。
その様子に神官長は目尻に皺を作り、笑みを浮かべた。
「なんと、そのお年でしっかりしていらっしゃる。流石、ハーベスト伯爵様のご息女であられますね」
神官長の言葉に父は曖昧に返事をして、続きを促した。
「では、皆様、魔力鑑定の儀の間にご案内いたします」
神官長の後を四人はついて行く。
魔力鑑定の儀の間は以外と小じんまりとしていて、落ち着くというか癒されるような空間だった。
台座の上に水晶のような玉がクッションのような布に置かれていた。
「ミリアーナ様、こちらに来てこの玉に手を触れてください」
「はい」
私は緊張と好奇心で、神官長に言われるまま玉に手を触れた。
瞬間玉が光り、部屋中を照らした。
「もう手を放して大丈夫ですよ。魔力量は多いですね。そのお年でこれだけの魔力量とはー」
神官長の言葉を遮り父は、少し話しがあると言い、先に馬車に乗るように告げた。
私達が完全に部屋から出たのを確認すると、神官長に向き直り静かに話しを切り出した。
「ヴォルド神官長、すまないが娘のことは他言無用で頼む。あの娘は自由に育てたい。娘には心から好いた相手と一緒にさせてやりたいんだ。頼む」
深々と頭を下げて懇願するマリウスに、神官長は優しく目を細めて口を開く。
「何か深い事情があるのでしょう。魔力量が多いと知られれば高位貴族は黙っていないはずです。伯爵様はお嬢様を大切にされておられるのですね。…かしこまりました。こちらで上手く報告を上げておきますので、ご心配はいりません」
「…感謝する」
馬車で待っていた私達は、父と神官長の姿を見つけて手を振る。
「お父さま。お腹空いちゃった。早く帰ろう」
「ふ、そうだな。早く帰ろう」
私を優しく見つめると、少し笑いながら答える。
ゆっくりと動き出した馬車を、神官長は穏やかに微笑んで見送っていた。
十歳を迎えた私は、洗礼を受けるために家族四人で神殿に訪れた。
神殿と言っても木造の教会みたいな建物だが。
父も母も魔力はそこそこあるそうで、貴族であれば多少でもあるのが当たり前らしい。
「ん?でも、貴族じゃない子も来てるよ?」
私が疑問を口にすると、この国では十歳になったら洗礼を必ず受けなければならないことと、正式に国民として登録されるためには必要なことだと説明された。
医療が発達していないから十歳を迎える前に亡くなる子供が多いらしい。悲しいね。
そう言えば子供が少ないなと思っていると、父が悲しそうにうちの領は特に若い領民が少ないからねと呟いた。
お父さま!私、頑張るからそんな顔しないで!
私自身、屋敷と工場以外の外出に胸が高鳴っていた。
マーカスくんも嬉しそうな表情を浮かべて、隣を歩く。
目の前には優し気な目をした白いローブのような物を身に纏ったおじいちゃんが立っていた。
「ハーベスト伯爵様、お久しぶりでございます。本日はご令嬢の魔力鑑定の儀でございますね」
穏やかだけど、しっかりした口調で話しかける。
「ああ、久しいな。ヴォルド神官長。娘のミリアーナだ。よろしく頼む」
そう言いながら、私の背中をそっと押して前に行くよう促す。
「初めまして。ハーベスト伯爵家、長女のミリアーナと申します。よろしくお願いします。ヴォルド神官長様」
一歩進み出て挨拶をした後、深々と頭を下げた。
その様子に神官長は目尻に皺を作り、笑みを浮かべた。
「なんと、そのお年でしっかりしていらっしゃる。流石、ハーベスト伯爵様のご息女であられますね」
神官長の言葉に父は曖昧に返事をして、続きを促した。
「では、皆様、魔力鑑定の儀の間にご案内いたします」
神官長の後を四人はついて行く。
魔力鑑定の儀の間は以外と小じんまりとしていて、落ち着くというか癒されるような空間だった。
台座の上に水晶のような玉がクッションのような布に置かれていた。
「ミリアーナ様、こちらに来てこの玉に手を触れてください」
「はい」
私は緊張と好奇心で、神官長に言われるまま玉に手を触れた。
瞬間玉が光り、部屋中を照らした。
「もう手を放して大丈夫ですよ。魔力量は多いですね。そのお年でこれだけの魔力量とはー」
神官長の言葉を遮り父は、少し話しがあると言い、先に馬車に乗るように告げた。
私達が完全に部屋から出たのを確認すると、神官長に向き直り静かに話しを切り出した。
「ヴォルド神官長、すまないが娘のことは他言無用で頼む。あの娘は自由に育てたい。娘には心から好いた相手と一緒にさせてやりたいんだ。頼む」
深々と頭を下げて懇願するマリウスに、神官長は優しく目を細めて口を開く。
「何か深い事情があるのでしょう。魔力量が多いと知られれば高位貴族は黙っていないはずです。伯爵様はお嬢様を大切にされておられるのですね。…かしこまりました。こちらで上手く報告を上げておきますので、ご心配はいりません」
「…感謝する」
馬車で待っていた私達は、父と神官長の姿を見つけて手を振る。
「お父さま。お腹空いちゃった。早く帰ろう」
「ふ、そうだな。早く帰ろう」
私を優しく見つめると、少し笑いながら答える。
ゆっくりと動き出した馬車を、神官長は穏やかに微笑んで見送っていた。
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