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第6話 商談開始
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母と弟は、応接室でお茶の準備をして待ち構えていた。
「ようこそ、お待ちしておりました」
アルベルトさんたちが部屋に入って来ると、笑顔で立ち上がり席に案内した。
軽く挨拶を交わし、席に案内する。
席に就いたら商談開始だ。
私は早速、ハーブティーを出して、お召し上がりください、と飲むよう促した。
まず、アルベルトさんがカップを手に取り一口含む。
「っ!美味しい。初めて飲みますが、どちらの茶葉でしょうか?」
よし!と内心ガッツポーズした私は澄ました顔で説明を始めた。
「こちらの茶葉はカモミールを使いました。香りが良く、身体にも良い上、誰でもお手軽に作れます。フレッシュハーブティーと言いまして、手間は掛かりません。裏庭で摘んだハーブで作りました」
ニコッと笑うとアルベルトさんとライルさんは大きく目を開いて私を凝視していた。
うん、私まだ九歳になっていない少女だもんね。
もっと子供っぽくしないといけないかな?
「……お嬢様が作られたのですか?」
アルベルトさんはそう言いながら、父を見ていた。
「ああ、娘は賢くてな、器用なんだ。今日呼んだのは、ハーブティーとクッキーを販売して欲しくてな。他にもあるが、今日はこれらを商品化して売ろうと思うんだが、アルベルトの意見が聞きたくて……どうだろうか?」
そう言うと用意していたクッキーをテーブルに置いた。
差し出された皿からクッキーを一つ摘まみ、じっくりと眺めて匂いを嗅いだ後、口に運ぶ。
「おお!香りが良く甘さも控えめでサクサクして美味しいです!これは何と言うお菓子ですか?」
目をカッと見開くと今度は私に顔を向けて聞いてきた。
よくお分かりです、アルベルトさん。
「ハーブクッキーといいます。他に味を変えて数種類用意していますので、試食してください」
ワゴンから残りのハーブクッキーをテーブルに並べて目の前に差し出す。
もの凄い勢いで食べ終わると、ライルさんにも勧める。
「旨い、旨いぞっ!ライルも食べてみろ!」
興奮した様子で孫にグイグイと皿をライルさんの前に移動させた。
アルベルトさんの勢いに若干引き気味ではあったものの、好奇心の方が勝っていたのだろうライルさんは、躊躇いもせず、ハーブクッキーを一つずつ食べていった。
「……美味しいです。少しずつ香りと味が違ってどれも美味しいです」
「ありがとうございます」
美味しいと言われて嬉しくなり、父と母もうんうんと頷いて微笑んでいた。
マーカスは食べたそうにジッとクッキーを見つめていた。
後で上げるからもう少し我慢してね。
ハーブティーで喉を潤したアルベルトさんは、話しを切り出した。
「是非、我がアーバイン商会で取り扱わせて頂けませんか?きっと人気商品になります」
「そうか、ありがとう。では、商談に入ろうか。ディアナ、子供達を頼む」
母は軽く頷くと私達を部屋から出るように促した。
部屋を出る前に頭を下げておくのも忘れずに。
父には説明に困らないようにメモを渡しておいた。
上手く商談が纏まることを祈って私達は厨房へ向かった。
「ようこそ、お待ちしておりました」
アルベルトさんたちが部屋に入って来ると、笑顔で立ち上がり席に案内した。
軽く挨拶を交わし、席に案内する。
席に就いたら商談開始だ。
私は早速、ハーブティーを出して、お召し上がりください、と飲むよう促した。
まず、アルベルトさんがカップを手に取り一口含む。
「っ!美味しい。初めて飲みますが、どちらの茶葉でしょうか?」
よし!と内心ガッツポーズした私は澄ました顔で説明を始めた。
「こちらの茶葉はカモミールを使いました。香りが良く、身体にも良い上、誰でもお手軽に作れます。フレッシュハーブティーと言いまして、手間は掛かりません。裏庭で摘んだハーブで作りました」
ニコッと笑うとアルベルトさんとライルさんは大きく目を開いて私を凝視していた。
うん、私まだ九歳になっていない少女だもんね。
もっと子供っぽくしないといけないかな?
「……お嬢様が作られたのですか?」
アルベルトさんはそう言いながら、父を見ていた。
「ああ、娘は賢くてな、器用なんだ。今日呼んだのは、ハーブティーとクッキーを販売して欲しくてな。他にもあるが、今日はこれらを商品化して売ろうと思うんだが、アルベルトの意見が聞きたくて……どうだろうか?」
そう言うと用意していたクッキーをテーブルに置いた。
差し出された皿からクッキーを一つ摘まみ、じっくりと眺めて匂いを嗅いだ後、口に運ぶ。
「おお!香りが良く甘さも控えめでサクサクして美味しいです!これは何と言うお菓子ですか?」
目をカッと見開くと今度は私に顔を向けて聞いてきた。
よくお分かりです、アルベルトさん。
「ハーブクッキーといいます。他に味を変えて数種類用意していますので、試食してください」
ワゴンから残りのハーブクッキーをテーブルに並べて目の前に差し出す。
もの凄い勢いで食べ終わると、ライルさんにも勧める。
「旨い、旨いぞっ!ライルも食べてみろ!」
興奮した様子で孫にグイグイと皿をライルさんの前に移動させた。
アルベルトさんの勢いに若干引き気味ではあったものの、好奇心の方が勝っていたのだろうライルさんは、躊躇いもせず、ハーブクッキーを一つずつ食べていった。
「……美味しいです。少しずつ香りと味が違ってどれも美味しいです」
「ありがとうございます」
美味しいと言われて嬉しくなり、父と母もうんうんと頷いて微笑んでいた。
マーカスは食べたそうにジッとクッキーを見つめていた。
後で上げるからもう少し我慢してね。
ハーブティーで喉を潤したアルベルトさんは、話しを切り出した。
「是非、我がアーバイン商会で取り扱わせて頂けませんか?きっと人気商品になります」
「そうか、ありがとう。では、商談に入ろうか。ディアナ、子供達を頼む」
母は軽く頷くと私達を部屋から出るように促した。
部屋を出る前に頭を下げておくのも忘れずに。
父には説明に困らないようにメモを渡しておいた。
上手く商談が纏まることを祈って私達は厨房へ向かった。
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