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第2話 ハーブティーとクッキー
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数週間後、頭の傷もすっかり癒えた私は屋敷の裏庭に来ていた。
いつから手入れしていないのか分からないが、雑草が生い茂り足を踏み入れるのを躊躇してしまう。
そこで食材になりそうな草を探していたのだが、偶然、自生しているハーブを見つけた。
「わぁ。これハーブだよね…うん。この香り、やっぱりハーブだ」
早速、数種類のハーブを摘み取りフレッシュハーブティーを作った。
「は~。美味しい。温まるし、落ち着く」
家族にハーブティーを飲んでもらおうと、リビングに集まるよう声をかけた。
皆それぞれ仕事の手を止めて、何事かと思い思い椅子に腰を下ろす。
私はにやけ顔でお茶の準備をすると、飲むように勧めた。
「美味いな。体が暖まるし落ち着く」
最初に感想を漏らしたのは、くすんだ金色の髪に青色の瞳を持つハーベスト家現当主のマリウス。
外国人は顔立ちがはっきりしているので基準がよく分からないが、娘の目から見てもイケメンの部類に入ると思う。
真面目過ぎて不器用なところもあるが、母一筋で子煩悩だ。
「えぇ。香りも良くて穏やかな気持ちになりますわ」
次に言葉を発したのは、薄茶色の髪に翠色の瞳を持つ母ディアナ。
生粋のお嬢様だったが、ハーベスト家に嫁いで慣れない家事を一生懸命頑張っている。
家事に育児に忙しいこともあり、肌も髪も手入れが行き届いていないが、それを差し引いても儚げな美人であることは、娘の私が保証する。
料理は独創的で、毎回不思議な味と見た目をしているが、それも致し方ない。
最近では私も調理の補助をしているので、以前よりも父と弟の食事時の表情が柔らかい。
「本当だ。美味しい」
最後に発言したのは、まだあどけない顔立ちの弟マーカスで、母親似の美少年。
薄茶色の髪は母親から、薄水色の瞳は父親から受け継いでいる。
伯爵家の跡継ぎなので、父に勉強をみてもらっているが、元々読書好きなこともあり賢い。
人見知りなところがあるが、家族には屈託のない笑顔をよく見せてくれる。
「クッキーも作りました。どうぞ、召し上がれ」
ドヤ顔でクッキーを勧めるのは、くすんだ金色の髪に翠色の瞳を持つ私、ミリアーナ、転生者である。
満面の笑みでクッキーをすすめ、空いたカップにハーブティーを注ぐ。
「おお。甘すぎないから幾らでも食べれる!」
「えぇ。それにほんのり草の香りがしてしつこくありませんわ」
「……美味しい」
気付いたらクッキーは全て、父、母、弟の胃袋に消えていた。
「……もうないの?」
小首を傾げてのおねだりは卑怯ですよ。マーカスくん。
「今日はそれでお終い。明日は違うハーブ入りクッキーにするね」
そう言うとぱあ、と顔が明るくなるマーカス。
「……ハーブ入り?食材に使えるのか?」
「ハーブ?薬草のこと?」
父と母は驚いた顔になり固まった。
「……今飲んでいるのはハーブ入りのお茶ですよ」
「 「え?!」 」
部屋中に響き渡るほどの声を出した後、父は顎に手をあてて考え込む。
そして顔を私に向けると話しがしたい、と執務室に来るように告げられた。
いつから手入れしていないのか分からないが、雑草が生い茂り足を踏み入れるのを躊躇してしまう。
そこで食材になりそうな草を探していたのだが、偶然、自生しているハーブを見つけた。
「わぁ。これハーブだよね…うん。この香り、やっぱりハーブだ」
早速、数種類のハーブを摘み取りフレッシュハーブティーを作った。
「は~。美味しい。温まるし、落ち着く」
家族にハーブティーを飲んでもらおうと、リビングに集まるよう声をかけた。
皆それぞれ仕事の手を止めて、何事かと思い思い椅子に腰を下ろす。
私はにやけ顔でお茶の準備をすると、飲むように勧めた。
「美味いな。体が暖まるし落ち着く」
最初に感想を漏らしたのは、くすんだ金色の髪に青色の瞳を持つハーベスト家現当主のマリウス。
外国人は顔立ちがはっきりしているので基準がよく分からないが、娘の目から見てもイケメンの部類に入ると思う。
真面目過ぎて不器用なところもあるが、母一筋で子煩悩だ。
「えぇ。香りも良くて穏やかな気持ちになりますわ」
次に言葉を発したのは、薄茶色の髪に翠色の瞳を持つ母ディアナ。
生粋のお嬢様だったが、ハーベスト家に嫁いで慣れない家事を一生懸命頑張っている。
家事に育児に忙しいこともあり、肌も髪も手入れが行き届いていないが、それを差し引いても儚げな美人であることは、娘の私が保証する。
料理は独創的で、毎回不思議な味と見た目をしているが、それも致し方ない。
最近では私も調理の補助をしているので、以前よりも父と弟の食事時の表情が柔らかい。
「本当だ。美味しい」
最後に発言したのは、まだあどけない顔立ちの弟マーカスで、母親似の美少年。
薄茶色の髪は母親から、薄水色の瞳は父親から受け継いでいる。
伯爵家の跡継ぎなので、父に勉強をみてもらっているが、元々読書好きなこともあり賢い。
人見知りなところがあるが、家族には屈託のない笑顔をよく見せてくれる。
「クッキーも作りました。どうぞ、召し上がれ」
ドヤ顔でクッキーを勧めるのは、くすんだ金色の髪に翠色の瞳を持つ私、ミリアーナ、転生者である。
満面の笑みでクッキーをすすめ、空いたカップにハーブティーを注ぐ。
「おお。甘すぎないから幾らでも食べれる!」
「えぇ。それにほんのり草の香りがしてしつこくありませんわ」
「……美味しい」
気付いたらクッキーは全て、父、母、弟の胃袋に消えていた。
「……もうないの?」
小首を傾げてのおねだりは卑怯ですよ。マーカスくん。
「今日はそれでお終い。明日は違うハーブ入りクッキーにするね」
そう言うとぱあ、と顔が明るくなるマーカス。
「……ハーブ入り?食材に使えるのか?」
「ハーブ?薬草のこと?」
父と母は驚いた顔になり固まった。
「……今飲んでいるのはハーブ入りのお茶ですよ」
「 「え?!」 」
部屋中に響き渡るほどの声を出した後、父は顎に手をあてて考え込む。
そして顔を私に向けると話しがしたい、と執務室に来るように告げられた。
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wikipediaなど
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