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贈り物

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 気づくと、俺は寝室にいて、例のツヤツヤの真っ黒いシーツに沈められていた。

「あ、えぇ?」

 ――なにこれ、魔法!?


「ああ、やっとティトとこうして……」

 宝石のように綺麗なファビオの瞳が俺を見下ろしている。


「ずいぶん待たされた感じがするよ。でも……だから余計に……」

 オルランドの漆黒の瞳が、情欲で揺らいでいる。


「あの、俺……、俺……っ」


「大丈夫だ。全部俺たちに任せろ!」

「ティトは何もしなくていいからね」

 迫ってくる二人の美形に、俺は圧倒されていた。


 でも……、


「ま、待ってくださいっ!」

 俺は、シャツの襟元を握り締めて叫んだ。

「俺……、まだ頭の中がめちゃくちゃで……。わかんないこともいっぱいあって……!
だからっ、こういうことする前に、ちゃんとお二人と、話をしたい、ですっ!」

「「……!!」」

 あきれられるかと心配したが、二人はびっくりした顔をしたあと、優しく微笑んだだけだった。


「……そうだったな。俺としたことが、許しも得ずに、ティトを強引に組み敷くところだったぜ!」

「私も焦りすぎていたようだ。せっかく用意してきたプレゼントも渡さずに……」



 ーーというわけで、俺は二人からの求愛のプレゼントを受け取ることになったのだが……。


「ティト、俺の気持ちだ。受け取ってくれ! 一生俺の隣にいてくれ!」

 キメ顏で、深紅の薔薇とともに、青いリボンで包まれたプレゼントを渡された俺。


「……これは……?」

 箱の中には羊紙の巻物のようなものが入っていた。

「俺が相続するサヴォイア家の領地や領海、その他山林、屋敷……、家宝を含めたその他諸々財産の目録だ! 聖剣や魔剣のリストももちろん入っているから安心してくれ!
……ティト、今ある俺のすべてを君に捧げる!!」

「……」

 俺はいったいどう返事をしたらいいのか……?



「ティト、私からも受け取ってくれ。気に入ってくれるといいが……」

 すこしはにかんだ笑顔でオルランドから渡されたのは、白いバラの花束と、深紅のリボンで包まれたプレゼント……。

「ヒッ……!」

 箱を開けた俺は、青ざめた。
 中には、魔道具の鎖で厳重に封じられた「何か」が蠢いていた。
 それは赤くもあり青くもあり、光っているようであり、暗いようでもあり、何かを呑み込むのを待っているかのようにぐにゃぐにゃと形を変え続けている。

「こ、これは……っ!?」

「ふふ、これが我がグリマルディ家に伝わる門外不出の秘宝だ。魔力の源とよばれるもので、つまりはこれが我がグリマルディ家の繁栄を支えているといってもいい……。
ティト、これを君に……」

「!!」

 ――いや、今、門外不出って言ったよね? っていうか生活魔法もちゃんと使えない俺に、こんな凄い魔力を発しているモノは、荷が重すぎるっていうか、そもそもこんな大切なもの、人にあげていいのーーーっ!!??


 俺は期待に満ちた二人の顔を交互に見てから、ゆっくりと言った。


「せっかくですが、これは受け取れません」



「「なんで!!??」」

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