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触れ合い
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「そっかー、駄目だよティト、知らないおじさんなんかとお話しちゃ」
まるで小さい子に言い聞かせるみたいに、オルランドが俺に言う。
「はい、気をつけます……」
俺は湯浴みをおえたばかりのオルランドの長い黒髪を、ゆっくりとブラッシングしていく。
ここは、俺たちが拠点にしているこの町一番の高級宿屋の一室ーー。
そしてこれは、このパーティでの俺の数少ない仕事の一つだ。寝る前と朝、俺がこうしてこの長い髪をブラッシングをすることで、オルランドの髪は美しく保たれ、オルランドの毎日のやる気もアップする……そうだ。
「オルランド、いい加減もういいだろ? 次は俺ね! 今日も俺ってばめちゃくちゃ活躍したから、あちこちささくれちゃってさー、ティト、俺にクリームたっぷり塗って、いっぱいやさしくマッサージして、ね?」
「はい、ファビオ様……」
王室御用達の高級クリームを、聖剣を振るうファビオの手指に塗り込むのも、毎日の俺の大切な仕事……。
「おい、ファビオ、いやらしい言い方をするな!」
俺からブラシを受け取ったオルランドが、眉根を寄せる。
「なにがいやらしい言い方、だよ。ちょっとふざけただけだろ? ぶっとい人参をティトの可愛いお口に咥えさせようとしたやつが、よく言う!」
「だから、言い方! お前ね、今俺たちがどれだけギリギリの状態で頑張ってるかわかってるのか? 寝る前のこういう危険な時間帯に、そういうことを想像させるような言葉を使うんじゃない!」
「うるさい、このムッツリが。俺が見てないとでも思ってるのかよ、今日だってスキあらばティトにベタベタ触りやがって!」
「それはこっちのセリフだ。腰を抱き寄せるなと何度言ったらわかるんだ。お前も一度、イラーリアに電流を流してもらったほうがいいんじゃないか?」
「んだと、この……っ」
「あの……、オルランド様……?」
喧嘩が始まりそうな二人にオロオロしていると、オルランドは俺の頭をポンポンと撫でた。
「ごめんね、ティト。こっちの話だから。今日はファビオの手にクリーム塗らなくていいよ。自分で塗らせるから」
「でも……」
「今この状態で、ティトに触られたらファビオがどんな反応するかわかったもんじゃないからね。じゃあ、ティトおやすみ、いい夢を」
オルランドは俺を軽く抱き寄せると、つむじにチュっとキスをする。
「おいっ!! オルランド!!」
「これくらいの触れ合いはセーフだろ?」
オルランドは悪びれず肩をすくめる。
「だからお前は油断ならないんだ。ティト、こっちに!」
ファビオは俺を手招きすると、オルランドがしたように俺を軽く抱きしめて、額にキスを落とした。
「おいっ! ファビオっ!」
「髪もおでこもたいして変わんないだろ? ティト、いよいよ明日は第4層だ。しっかり気を引き締めていくぞ」
「はい! ファビオ様!」
「そうこうするうちに、あっという間に最下層だよ。すべてが終わったら、3人でお祝いしようね」
「はい!」
オルランドの言葉に、俺は大きくうなずいた。
「すべてが終わったら……、俺達から、話がある、ティト」
急に真面目な顔になったファビオが俺をまっすぐ見つめた。
澄み切った青い瞳。
ーー美しすぎて到底直視できない。
「……話?」
「ファビオ、まだ先のことだよ。急かしちゃ駄目だ」
オルランドが低い声で言った。
「……わかってる」
「ファビオ様……?」
「じゃあ、俺たちは部屋に戻るから。ティト、明日も早いから早く寝ろよ?」
俺の頭をくしゃりと撫でると、ファビオはオルランドとともに隣の寝室へと戻っていった。
俺のベッドに置かれた魔剣『イラーリア』は、なにか言いたげにカタカタと揺れていた。
「そっかー、駄目だよティト、知らないおじさんなんかとお話しちゃ」
まるで小さい子に言い聞かせるみたいに、オルランドが俺に言う。
「はい、気をつけます……」
俺は湯浴みをおえたばかりのオルランドの長い黒髪を、ゆっくりとブラッシングしていく。
ここは、俺たちが拠点にしているこの町一番の高級宿屋の一室ーー。
そしてこれは、このパーティでの俺の数少ない仕事の一つだ。寝る前と朝、俺がこうしてこの長い髪をブラッシングをすることで、オルランドの髪は美しく保たれ、オルランドの毎日のやる気もアップする……そうだ。
「オルランド、いい加減もういいだろ? 次は俺ね! 今日も俺ってばめちゃくちゃ活躍したから、あちこちささくれちゃってさー、ティト、俺にクリームたっぷり塗って、いっぱいやさしくマッサージして、ね?」
「はい、ファビオ様……」
王室御用達の高級クリームを、聖剣を振るうファビオの手指に塗り込むのも、毎日の俺の大切な仕事……。
「おい、ファビオ、いやらしい言い方をするな!」
俺からブラシを受け取ったオルランドが、眉根を寄せる。
「なにがいやらしい言い方、だよ。ちょっとふざけただけだろ? ぶっとい人参をティトの可愛いお口に咥えさせようとしたやつが、よく言う!」
「だから、言い方! お前ね、今俺たちがどれだけギリギリの状態で頑張ってるかわかってるのか? 寝る前のこういう危険な時間帯に、そういうことを想像させるような言葉を使うんじゃない!」
「うるさい、このムッツリが。俺が見てないとでも思ってるのかよ、今日だってスキあらばティトにベタベタ触りやがって!」
「それはこっちのセリフだ。腰を抱き寄せるなと何度言ったらわかるんだ。お前も一度、イラーリアに電流を流してもらったほうがいいんじゃないか?」
「んだと、この……っ」
「あの……、オルランド様……?」
喧嘩が始まりそうな二人にオロオロしていると、オルランドは俺の頭をポンポンと撫でた。
「ごめんね、ティト。こっちの話だから。今日はファビオの手にクリーム塗らなくていいよ。自分で塗らせるから」
「でも……」
「今この状態で、ティトに触られたらファビオがどんな反応するかわかったもんじゃないからね。じゃあ、ティトおやすみ、いい夢を」
オルランドは俺を軽く抱き寄せると、つむじにチュっとキスをする。
「おいっ!! オルランド!!」
「これくらいの触れ合いはセーフだろ?」
オルランドは悪びれず肩をすくめる。
「だからお前は油断ならないんだ。ティト、こっちに!」
ファビオは俺を手招きすると、オルランドがしたように俺を軽く抱きしめて、額にキスを落とした。
「おいっ! ファビオっ!」
「髪もおでこもたいして変わんないだろ? ティト、いよいよ明日は第4層だ。しっかり気を引き締めていくぞ」
「はい! ファビオ様!」
「そうこうするうちに、あっという間に最下層だよ。すべてが終わったら、3人でお祝いしようね」
「はい!」
オルランドの言葉に、俺は大きくうなずいた。
「すべてが終わったら……、俺達から、話がある、ティト」
急に真面目な顔になったファビオが俺をまっすぐ見つめた。
澄み切った青い瞳。
ーー美しすぎて到底直視できない。
「……話?」
「ファビオ、まだ先のことだよ。急かしちゃ駄目だ」
オルランドが低い声で言った。
「……わかってる」
「ファビオ様……?」
「じゃあ、俺たちは部屋に戻るから。ティト、明日も早いから早く寝ろよ?」
俺の頭をくしゃりと撫でると、ファビオはオルランドとともに隣の寝室へと戻っていった。
俺のベッドに置かれた魔剣『イラーリア』は、なにか言いたげにカタカタと揺れていた。
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