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第106話 ジュールの愛
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「……っ!!」
――もしかして、もしかしなくても、昨日の俺とテオドールのこと、お姉様にすっかり知られてる!?
「ねえ、ジュール。いくらその男がいい男だとしても、所詮は済む世界が違う人間なのよ。いくら好きでも、生涯を共にすることはできないの!
それに比べてテオドールはどう? 将来有望、すでに聖騎士としての信頼度も抜群! 知ってる? 聖騎士ってものすごい額の報酬をもらえるらしいの!
ま、それは置いといて……、テオドールは真剣に、ジュールのことを一生守ると誓っているわ。
たしかにちょっと、思い込みは激しそうなのと、嫉妬心が強すぎるきらいはあるけどそれくらいなんだって言うの!? あんな極上物件そうそうあるもんじゃないわ!
ジュールっ、この国の娘はみんなテオドールに夢中よ!
それを……、あなたという子はっ! どうして、嫌がるの? 何がそんなに不満なのっ!?」
「お姉さま、その、俺は……」
「もちろんまだ淫紋は消えていないんでしょ? それなら、遅かれ早かれあなたは誰かに抱かれなきゃいけないのよ! その相手が、どうしてテオドールじゃ駄目なの? ええ、わかってる、お姉さまはわかってるわ。向こうの国の男はすごく情熱的だって聞くわ。そりゃ、あっちの方のテクニックもすごかったんでしょう! 忘れられないっていうジュールの気持ちも十分理解できる。しかも、テオドールに無理やり別れさせられたんですってね。つらかったでしょう。その男をひどく恋しく思うあなたの気持ちもわかるわ。失恋ってつらいわよね。私も経験があるわ……って、そんなことじゃなく!!
そう、ジュール、テオドールはこれからなのよっ! ああいうことは回数を重ねればきっと上手になるわ! それに、そっちの拙さは、若さと体力で十分カバーできるわ! だからっ……」
「全然違うんですお姉さまっ!!!!」
俺は隣に座るシャンタルの手を握りしめた。
「ジュール!?」
「お姉さま、俺はっ!! テオドールに幻滅されたくないんですっ!」
言ったそばから、ポロリと涙が頬を伝った。
「ジュールっ!?」
「お姉ざま゛ぁ゛!! 俺はァ! 俺だってぇ! 本当はぁ! テオに抱かれたかったんですっ!
でもぉ! うっ、ぐすっ、もし、テオがっ、俺をっ、抱いたらぁ、絶対に、幻滅されて、嫌われ、るぅっ!!
うっく、う゛、う゛、うえぇぇんっ!!!!」
「まああああっ、なんてこと!!!!」
シャンタルは俺の背中に手を回し、よしよしと抱きしめてくれた。
「う゛ぅ゛っ、テオはっ、立派な聖騎士なのに、俺はっ、仕事もしなくて引きこもってて、しかもっ、淫紋まであって、とっかえひっかえ男とヤりまくってて……、そんなの、そんなのテオにとって、最悪な物件じゃないですかあっ!
せっかくシャルロット殿下と結婚できそうなのに、俺なんか相手にしてたら、テオは絶対、幸せになれないっ! うわああああんっ!」
「まあ、ジュールったら、そんな事を考えていたの?」
シャンタルが、俺の髪を優しく梳いた。
「グスッ、だって、テオドールは俺にとっての唯一の聖域なんですっ! 決して汚してはいけない神聖な場所なんですっ!
ひっ……ひっく……、でも、俺なんかを抱いたら、テオドールは穢れてしまうんですっ!
だからっ、俺はっ、グスッ、絶対っ、ひっ……ひっく……、テオとは、セックスしてはいけないんですっ!!」
「まあ、まあ、あら、あら……」
シャンタルはとんとんと俺の背中をたたくと、ふぅっと息を吐いた。
「驚いたわ。こんなことになっていたなんて……。でもよくわかったわ」
お姉様は優しい声で言うと、俺の耳元に顔を寄せた。
「ジュール、あなた……、テオドールを愛してるのね……」
そのときのシャンタルお姉様の言葉は、ストンと俺の心に落ちてきた。
「俺が……、テオドールを……」
ーーそうか、やっとわかった。
俺はテオドールを愛していたんだ。
もうずっと、前から。
――もしかして、もしかしなくても、昨日の俺とテオドールのこと、お姉様にすっかり知られてる!?
「ねえ、ジュール。いくらその男がいい男だとしても、所詮は済む世界が違う人間なのよ。いくら好きでも、生涯を共にすることはできないの!
それに比べてテオドールはどう? 将来有望、すでに聖騎士としての信頼度も抜群! 知ってる? 聖騎士ってものすごい額の報酬をもらえるらしいの!
ま、それは置いといて……、テオドールは真剣に、ジュールのことを一生守ると誓っているわ。
たしかにちょっと、思い込みは激しそうなのと、嫉妬心が強すぎるきらいはあるけどそれくらいなんだって言うの!? あんな極上物件そうそうあるもんじゃないわ!
ジュールっ、この国の娘はみんなテオドールに夢中よ!
それを……、あなたという子はっ! どうして、嫌がるの? 何がそんなに不満なのっ!?」
「お姉さま、その、俺は……」
「もちろんまだ淫紋は消えていないんでしょ? それなら、遅かれ早かれあなたは誰かに抱かれなきゃいけないのよ! その相手が、どうしてテオドールじゃ駄目なの? ええ、わかってる、お姉さまはわかってるわ。向こうの国の男はすごく情熱的だって聞くわ。そりゃ、あっちの方のテクニックもすごかったんでしょう! 忘れられないっていうジュールの気持ちも十分理解できる。しかも、テオドールに無理やり別れさせられたんですってね。つらかったでしょう。その男をひどく恋しく思うあなたの気持ちもわかるわ。失恋ってつらいわよね。私も経験があるわ……って、そんなことじゃなく!!
そう、ジュール、テオドールはこれからなのよっ! ああいうことは回数を重ねればきっと上手になるわ! それに、そっちの拙さは、若さと体力で十分カバーできるわ! だからっ……」
「全然違うんですお姉さまっ!!!!」
俺は隣に座るシャンタルの手を握りしめた。
「ジュール!?」
「お姉さま、俺はっ!! テオドールに幻滅されたくないんですっ!」
言ったそばから、ポロリと涙が頬を伝った。
「ジュールっ!?」
「お姉ざま゛ぁ゛!! 俺はァ! 俺だってぇ! 本当はぁ! テオに抱かれたかったんですっ!
でもぉ! うっ、ぐすっ、もし、テオがっ、俺をっ、抱いたらぁ、絶対に、幻滅されて、嫌われ、るぅっ!!
うっく、う゛、う゛、うえぇぇんっ!!!!」
「まああああっ、なんてこと!!!!」
シャンタルは俺の背中に手を回し、よしよしと抱きしめてくれた。
「う゛ぅ゛っ、テオはっ、立派な聖騎士なのに、俺はっ、仕事もしなくて引きこもってて、しかもっ、淫紋まであって、とっかえひっかえ男とヤりまくってて……、そんなの、そんなのテオにとって、最悪な物件じゃないですかあっ!
せっかくシャルロット殿下と結婚できそうなのに、俺なんか相手にしてたら、テオは絶対、幸せになれないっ! うわああああんっ!」
「まあ、ジュールったら、そんな事を考えていたの?」
シャンタルが、俺の髪を優しく梳いた。
「グスッ、だって、テオドールは俺にとっての唯一の聖域なんですっ! 決して汚してはいけない神聖な場所なんですっ!
ひっ……ひっく……、でも、俺なんかを抱いたら、テオドールは穢れてしまうんですっ!
だからっ、俺はっ、グスッ、絶対っ、ひっ……ひっく……、テオとは、セックスしてはいけないんですっ!!」
「まあ、まあ、あら、あら……」
シャンタルはとんとんと俺の背中をたたくと、ふぅっと息を吐いた。
「驚いたわ。こんなことになっていたなんて……。でもよくわかったわ」
お姉様は優しい声で言うと、俺の耳元に顔を寄せた。
「ジュール、あなた……、テオドールを愛してるのね……」
そのときのシャンタルお姉様の言葉は、ストンと俺の心に落ちてきた。
「俺が……、テオドールを……」
ーーそうか、やっとわかった。
俺はテオドールを愛していたんだ。
もうずっと、前から。
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