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第103話 苦悩
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「ぐっ……」
さすがに衝撃が強かったのだろう。テオドールは俺から離れた。
俺はその隙に、素早く起き上がり、ベッドから逃げようとした。
だが……、
「ああ、叔父様……。駄目ですよ」
俺は一瞬で、ベッドの上にうつ伏せで押さえつけられてしまった。
「くっ、はなせっ!」
テオドールは俺の裸の肩をシーツに押し付けるようにすると、耳元に唇を寄せてきた。
「叔父様、恥ずかしがらないでください。大丈夫です。俺は全部知っていますから」
「……っ!!」
「何もかも、シャンタル様から聞きました。何も心配はいりません。俺は、叔父様のすべてを受け入れます」
俺はその時、頭を何かで殴られたような強い衝撃を受けていた。
「テオ……、っ……、知ってるって、知ってるって、何を……」
俺の声は、震えていた。凍えたときみたいに、奥歯がガチガチと鳴った。
「シャンタル様は、一時期、叔父様はもうここには戻らないとすっかり諦められていました。その時、俺にすべてを話してくれてたんです。叔父様の、過去……、マリユス・ロルジュが叔父様にした狼藉、その後の叔父様の苦悩も、すべて!」
「……っ!!!!」
俺の頭のなかは真っ白になる。
――テオドールは知っていた? 俺とマリユスのことも、淫紋のことも、すべて!?
「俺は、叔父様のすべてを愛し、受け入れたいのです。だから、叔父様もどうか俺に身をゆだねてください。
これからは、俺が叔父様のことをすべて引き受けます」
テオドールは言うと、俺の背筋をゆっくりと舐め上げていった。
「ひっ、あ、やだ……っ!」
「さきほどは怖がらせてしまってすみません。ちゃんとわかっていたんです。叔父様はあの男に好きで抱かれていたわけではないんですよね? 生きていくために、仕方なく身体をあの男にあずけていただけですよね?
ごめんなさい。ちゃんと、わかっていたのに、いざ直面してみると、あの男のもとでほほ笑む叔父様を目の当たりにして、俺はどうしても我慢できなくて……、叔父様を……」
背中にも、粘性の液体を塗りこまれていく。テオドールが触れたところが、どんどん熱くなっていく。
「あっ、テオ……、だって、テオには、シャルロット王女が!」
「殿下は俺が師と仰ぐ方です。心から尊敬しております。殿下も俺と叔父様のことをすべて受け入れてくださり……」
そこまで聞いて、俺はヒュウっと喉を鳴らした。
「ちょっと待て……、シャルロット殿下も……、知ってるのか……」
俺が振り向くと、テオドールはばつの悪そうな顔をした。
「申し訳ありません。到底俺一人では受け止めきれない事実で……。あの時は……、どうしても、誰かに聞いてもらいたくて……。でも殿下のおかげで俺は……」
「聞きたくないっ!!」
俺の大声に、テオドールの手が止まった。
――テオドールはシャルロット王女を心から尊敬し、なんでも相談し、二人はすべてを共有している。
そして、その上で、俺を抱こうとしている。
「叔父様、俺は心から叔父様を愛しています」
テオドールは真剣な瞳を俺に向ける。
「嘘だ……、そんなの……、だって……」
俺はうつ伏せのまま、テオドールからなおも逃げようとする。
――オーバンの言っていたことは、事実だ。
テオドールとシャルロット王女は、いまや互いに強い絆で結ばれている。
だが、テオドールはまだそのことをきちんと自覚せず、俺への憐れみを愛と勘違いして……。
「叔父様、なぜ俺から逃げようとするのですか?」
テオドールは強い力で這いずる俺を引き戻すと、そのままぐるんと俺をあおむけにした。
「……っ!!」
テオドールの漆黒の瞳が情欲の焔で揺れていた。
――俺は、俺への同情から、テオドールに抱かれるのか!?
俺の心に冷たいものが走り、震えが足元から全身に広がっていった。
テオドールは俺がこれ以上逃げないように、俺の身体の上に乗った。
「俺が一番何に腹を立てているかわかりますか? 俺自身にです。俺は、叔父様とずっと暮らしながらも、叔父様の苦悩にも気づかず、ただ、その庇護のもとぬくぬくと暮らしていた。一方で叔父様は、淫紋のせいで、たくさんの男に自らの身体を弄ばれ、日々苦しまれていた……っ」
テオドールは俺の鎖骨をゆっくりと撫でていく。その指は胸から脇腹におり、そしてついに俺の下穿きにかかった。
「でも、安心してください。叔父様。これからは、俺がずっとそばにいます。もう、誰にも決して触れさせたりしない。
――俺だけがあなたを抱きます」
「テオ……」
俺は息を吸い込み、テオドールの首に片手を回した。
それを了承ととらえたテオドールは、目を閉じ、俺に唇を寄せた。
「叔父様……、愛しています……」
――テオ、ごめん!!
俺はテオドールの後ろ首に左腕をかけたまま、思いきり右腕をふるった。
ガンッと強い音がして、俺の拳はテオドールの頬にめり込んだ。
さすがに衝撃が強かったのだろう。テオドールは俺から離れた。
俺はその隙に、素早く起き上がり、ベッドから逃げようとした。
だが……、
「ああ、叔父様……。駄目ですよ」
俺は一瞬で、ベッドの上にうつ伏せで押さえつけられてしまった。
「くっ、はなせっ!」
テオドールは俺の裸の肩をシーツに押し付けるようにすると、耳元に唇を寄せてきた。
「叔父様、恥ずかしがらないでください。大丈夫です。俺は全部知っていますから」
「……っ!!」
「何もかも、シャンタル様から聞きました。何も心配はいりません。俺は、叔父様のすべてを受け入れます」
俺はその時、頭を何かで殴られたような強い衝撃を受けていた。
「テオ……、っ……、知ってるって、知ってるって、何を……」
俺の声は、震えていた。凍えたときみたいに、奥歯がガチガチと鳴った。
「シャンタル様は、一時期、叔父様はもうここには戻らないとすっかり諦められていました。その時、俺にすべてを話してくれてたんです。叔父様の、過去……、マリユス・ロルジュが叔父様にした狼藉、その後の叔父様の苦悩も、すべて!」
「……っ!!!!」
俺の頭のなかは真っ白になる。
――テオドールは知っていた? 俺とマリユスのことも、淫紋のことも、すべて!?
「俺は、叔父様のすべてを愛し、受け入れたいのです。だから、叔父様もどうか俺に身をゆだねてください。
これからは、俺が叔父様のことをすべて引き受けます」
テオドールは言うと、俺の背筋をゆっくりと舐め上げていった。
「ひっ、あ、やだ……っ!」
「さきほどは怖がらせてしまってすみません。ちゃんとわかっていたんです。叔父様はあの男に好きで抱かれていたわけではないんですよね? 生きていくために、仕方なく身体をあの男にあずけていただけですよね?
ごめんなさい。ちゃんと、わかっていたのに、いざ直面してみると、あの男のもとでほほ笑む叔父様を目の当たりにして、俺はどうしても我慢できなくて……、叔父様を……」
背中にも、粘性の液体を塗りこまれていく。テオドールが触れたところが、どんどん熱くなっていく。
「あっ、テオ……、だって、テオには、シャルロット王女が!」
「殿下は俺が師と仰ぐ方です。心から尊敬しております。殿下も俺と叔父様のことをすべて受け入れてくださり……」
そこまで聞いて、俺はヒュウっと喉を鳴らした。
「ちょっと待て……、シャルロット殿下も……、知ってるのか……」
俺が振り向くと、テオドールはばつの悪そうな顔をした。
「申し訳ありません。到底俺一人では受け止めきれない事実で……。あの時は……、どうしても、誰かに聞いてもらいたくて……。でも殿下のおかげで俺は……」
「聞きたくないっ!!」
俺の大声に、テオドールの手が止まった。
――テオドールはシャルロット王女を心から尊敬し、なんでも相談し、二人はすべてを共有している。
そして、その上で、俺を抱こうとしている。
「叔父様、俺は心から叔父様を愛しています」
テオドールは真剣な瞳を俺に向ける。
「嘘だ……、そんなの……、だって……」
俺はうつ伏せのまま、テオドールからなおも逃げようとする。
――オーバンの言っていたことは、事実だ。
テオドールとシャルロット王女は、いまや互いに強い絆で結ばれている。
だが、テオドールはまだそのことをきちんと自覚せず、俺への憐れみを愛と勘違いして……。
「叔父様、なぜ俺から逃げようとするのですか?」
テオドールは強い力で這いずる俺を引き戻すと、そのままぐるんと俺をあおむけにした。
「……っ!!」
テオドールの漆黒の瞳が情欲の焔で揺れていた。
――俺は、俺への同情から、テオドールに抱かれるのか!?
俺の心に冷たいものが走り、震えが足元から全身に広がっていった。
テオドールは俺がこれ以上逃げないように、俺の身体の上に乗った。
「俺が一番何に腹を立てているかわかりますか? 俺自身にです。俺は、叔父様とずっと暮らしながらも、叔父様の苦悩にも気づかず、ただ、その庇護のもとぬくぬくと暮らしていた。一方で叔父様は、淫紋のせいで、たくさんの男に自らの身体を弄ばれ、日々苦しまれていた……っ」
テオドールは俺の鎖骨をゆっくりと撫でていく。その指は胸から脇腹におり、そしてついに俺の下穿きにかかった。
「でも、安心してください。叔父様。これからは、俺がずっとそばにいます。もう、誰にも決して触れさせたりしない。
――俺だけがあなたを抱きます」
「テオ……」
俺は息を吸い込み、テオドールの首に片手を回した。
それを了承ととらえたテオドールは、目を閉じ、俺に唇を寄せた。
「叔父様……、愛しています……」
――テオ、ごめん!!
俺はテオドールの後ろ首に左腕をかけたまま、思いきり右腕をふるった。
ガンッと強い音がして、俺の拳はテオドールの頬にめり込んだ。
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