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第69話 ファーストキス
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「叔父様、あの、俺はどうすれば……」
明らかに戸惑っているテオドール。
こんなときは、年長者の俺がしっかりしなくてはっ!
「テオ、あの、俺……」
でも言えないっ!! 俺の可愛いテオドールに、キスしよう、だなんて! 叔父である俺が!!
「おーい、ジュール、テオドール、なにをもったいぶってんだよ?
キスくらい別にどうってことないだろ? 事故でぶつかったとでもおもって、さっさとブチュっとやっちまえよ!」
公爵令息と思えぬオーバンのぶっちゃけ発言!
「はあぁ……、いったいどちらがリードされるのかしらっ、……ああ身悶えるっ!!
はっ、私としたことが! 急いで皆様をお呼びしなければっ!!」
もうなにがなんやらわけがわからないシャルロット殿下。
「叔父様、あの……、俺とキスするのはお嫌ですか?」
目の前のテオドールの探るような視線に、俺は凍りついた。
「い、いやっ、もちろん、嫌じゃない、よ、テオ!」
動揺のあまり声がひっくり返る俺。
もちろん嫌じゃない、嫌じゃないけど、……駄目だろう、世間的にもいろいろと!!
「で、でもさ、テオこそ、嫌だろう? 俺と、キ、キ、キスだなんてっ!」
挙動不審な俺に、テオドールは頬を赤らめた。
「叔父様、俺……、叔父様とキスしたい、です」
「へ……、あ、そ、そう、なの……?」
もしかしてテオドールは俺に気を使ってくれているのか?
俺はぎゅっと唇を引き結んだ。
ーーいや、もうこうなっては腹をくくるしかない。どのみち、この部屋を出るにはテオドールとキスするしかないのだ!
テオドールにとって、最も心に傷を残さないやり方で、さっさと終わらせてしまうしかない!
「じゃ、じゃあテオ、ベッドに座って目を閉じてくれる?」
――ここは年長者の俺が、率先して乗り越えるしかないのだ!
「はい、叔父様……」
俺に言われた通りベッドに腰掛けたテオドールは、赤くうるんだ瞳で俺を見上げた。
「……くっ、テ、テオ、あのさ、目を閉じてくれるかな?」
――俺が慌てふためいてどうする!? 平常心平常心……。
念仏のように唱えながら、手をテオドールの肩に置き、顔を近づけた。
もう一気にやってしまうしかない! とりあえず唇と唇がくっつきさえすれば!!
だが……。
「……あ、あのさ、テオ……」
「はい?」
すぐ目の前に、テオドールの漆黒の瞳がある。
「目、閉じてくれるかな?」
いつまでたっても俺の顔を凝視しているテオドール。
「も、申し訳ありません。あの、あまりに目を閉じるのがもったいなくて…‥、つい」
――きっとテオドールも焦っているのだ。
たしかに目の前で何をされるのかわからない危機があるというのに、のんきに目を閉じている場合ではないだろう。
俺はテオドールの肩に置いたのとは反対の手で、さっとテオドールの目を覆った。
「……っ」
そして、素早くかすめるように、唇を触れ合わせた。
――テオドールの唇は、温かくて、すごく柔らかかった……。
俺は反射的にテオドールから離れた。
心臓がバクバクいっている。
テオドールは放心したように、ぼんやりと空を見つめたまま動かなかった。
――どうしよう、やっぱり嫌だった? テオドールを傷つけてしまった?
だが、ここはとにかく部屋を出ることが先決!
俺は素早く扉の前に立ち、ドアノブを回す……が、
「あれ、なんで……?」
ドアは開かなかった。
「オーバン君そこにいるの?」
俺はドンドンと扉をたたいた。
「あ? まだキスしてないのか? 早くしろよ!」
「したよ! したのに、開かないんだ?」
――きゃーーっ! キスしたんですって!!
扉の向こうから聞こえてくる少女たちの黄色い悲鳴。
「なんだって? おい、シャルロット、魔法失敗したのか? お前ともあろうものが……、
おいっ、さっきから何をにやにやしてるんだ」
「あらあら、ジュール卿、きちんと壁の文字はお読みになって?」
王女の言葉に、俺はもう一度緋文字が浮かび上がっている壁に近づいた。
「……叔父様」
「ひゃっ、あ、テオ……」
耳に息がかかるくらいすぐ後ろにテオドールがいた。
「叔父様、ここに小さく文字が書いてあります。ほら、キスの少し上の部分です」
テオドールがその場所を指し示す。
「あ、ほんとだ……」
しかし、その文字を読んだ俺は、一瞬で血の気が引いていくのを感じた。
「深い、キス……、叔父様、深いキスって何ですか!?」
――そう、この部屋は『深いキスをしないと出られない部屋』だったのだあああ!!
明らかに戸惑っているテオドール。
こんなときは、年長者の俺がしっかりしなくてはっ!
「テオ、あの、俺……」
でも言えないっ!! 俺の可愛いテオドールに、キスしよう、だなんて! 叔父である俺が!!
「おーい、ジュール、テオドール、なにをもったいぶってんだよ?
キスくらい別にどうってことないだろ? 事故でぶつかったとでもおもって、さっさとブチュっとやっちまえよ!」
公爵令息と思えぬオーバンのぶっちゃけ発言!
「はあぁ……、いったいどちらがリードされるのかしらっ、……ああ身悶えるっ!!
はっ、私としたことが! 急いで皆様をお呼びしなければっ!!」
もうなにがなんやらわけがわからないシャルロット殿下。
「叔父様、あの……、俺とキスするのはお嫌ですか?」
目の前のテオドールの探るような視線に、俺は凍りついた。
「い、いやっ、もちろん、嫌じゃない、よ、テオ!」
動揺のあまり声がひっくり返る俺。
もちろん嫌じゃない、嫌じゃないけど、……駄目だろう、世間的にもいろいろと!!
「で、でもさ、テオこそ、嫌だろう? 俺と、キ、キ、キスだなんてっ!」
挙動不審な俺に、テオドールは頬を赤らめた。
「叔父様、俺……、叔父様とキスしたい、です」
「へ……、あ、そ、そう、なの……?」
もしかしてテオドールは俺に気を使ってくれているのか?
俺はぎゅっと唇を引き結んだ。
ーーいや、もうこうなっては腹をくくるしかない。どのみち、この部屋を出るにはテオドールとキスするしかないのだ!
テオドールにとって、最も心に傷を残さないやり方で、さっさと終わらせてしまうしかない!
「じゃ、じゃあテオ、ベッドに座って目を閉じてくれる?」
――ここは年長者の俺が、率先して乗り越えるしかないのだ!
「はい、叔父様……」
俺に言われた通りベッドに腰掛けたテオドールは、赤くうるんだ瞳で俺を見上げた。
「……くっ、テ、テオ、あのさ、目を閉じてくれるかな?」
――俺が慌てふためいてどうする!? 平常心平常心……。
念仏のように唱えながら、手をテオドールの肩に置き、顔を近づけた。
もう一気にやってしまうしかない! とりあえず唇と唇がくっつきさえすれば!!
だが……。
「……あ、あのさ、テオ……」
「はい?」
すぐ目の前に、テオドールの漆黒の瞳がある。
「目、閉じてくれるかな?」
いつまでたっても俺の顔を凝視しているテオドール。
「も、申し訳ありません。あの、あまりに目を閉じるのがもったいなくて…‥、つい」
――きっとテオドールも焦っているのだ。
たしかに目の前で何をされるのかわからない危機があるというのに、のんきに目を閉じている場合ではないだろう。
俺はテオドールの肩に置いたのとは反対の手で、さっとテオドールの目を覆った。
「……っ」
そして、素早くかすめるように、唇を触れ合わせた。
――テオドールの唇は、温かくて、すごく柔らかかった……。
俺は反射的にテオドールから離れた。
心臓がバクバクいっている。
テオドールは放心したように、ぼんやりと空を見つめたまま動かなかった。
――どうしよう、やっぱり嫌だった? テオドールを傷つけてしまった?
だが、ここはとにかく部屋を出ることが先決!
俺は素早く扉の前に立ち、ドアノブを回す……が、
「あれ、なんで……?」
ドアは開かなかった。
「オーバン君そこにいるの?」
俺はドンドンと扉をたたいた。
「あ? まだキスしてないのか? 早くしろよ!」
「したよ! したのに、開かないんだ?」
――きゃーーっ! キスしたんですって!!
扉の向こうから聞こえてくる少女たちの黄色い悲鳴。
「なんだって? おい、シャルロット、魔法失敗したのか? お前ともあろうものが……、
おいっ、さっきから何をにやにやしてるんだ」
「あらあら、ジュール卿、きちんと壁の文字はお読みになって?」
王女の言葉に、俺はもう一度緋文字が浮かび上がっている壁に近づいた。
「……叔父様」
「ひゃっ、あ、テオ……」
耳に息がかかるくらいすぐ後ろにテオドールがいた。
「叔父様、ここに小さく文字が書いてあります。ほら、キスの少し上の部分です」
テオドールがその場所を指し示す。
「あ、ほんとだ……」
しかし、その文字を読んだ俺は、一瞬で血の気が引いていくのを感じた。
「深い、キス……、叔父様、深いキスって何ですか!?」
――そう、この部屋は『深いキスをしないと出られない部屋』だったのだあああ!!
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