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第25話 マリユスからの伝言
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「仕方ないわね……、追加料金は支払わないわよ!」
「もちろん、料金の範囲内です」
「俺は、嫌ですっ!」
何かの書類にサインしようとしているお姉さまのペンを、俺はひったくった。
「そ、そんな、入れ替わり、立ち替わり、たくさんの人と、俺は……、俺は、定期的に……しなきゃいけないってことですか!? そんなの、そんなの……っ!」
「ああ、ジュール様、そんな顔をなさらないで……。また第二のマリユスを作らないための苦肉の策なのです」
「そうよ、ジュール。ここの人たちは、みんな素敵な人達ばかりだし、素性も確かだから後腐れなくて安心なのよ。それとも、ジュールは自分でそういう相手を探せるの? どこの馬の骨ともわからない変態爺とそういうことができるのっ!?」
「……」
シャンタルお姉様の言葉に、俺はぐぅの音も出ない。
それにしてもお姉様、なんでそんなにアンドレの組織について詳しいの!?
「ジュール様、きちんとうちのキャストが対応できているか確認するためにも、私も何回かに一度は、お相手させていただきます。だからご心配なく。ご不満があれば遠慮なく、私におっしゃってください」
「アンドレ……」
アンドレとのさきほどの熱に浮かされたようなひと時を思い出し、俺は赤面する。俺はまたアンドレと、ああいうことができるのだろうか。それだったら……。
「ちょっと、アンドレ、あなた、もう現場には出ていないっていうのは、嘘だったの?」
「いえ、ジュール様は特例中の特例ですから……」
「まさかあなたまでジュールに執着する、なんてことはないでしょうね!?」
シャンタルが疑いの視線を向ける。
「私はこれで身を立てている男です。そのようなことがあれば信用問題にかかわりますから」
相変わらず人を食ったような笑顔のアンドレ。
「まあ、いいわ。で、淫紋についてはどんな感じなの」
「やはり解呪は、マリユス本人にしか不可能ですね。魔力が強すぎて、歯が立ちませんでした。もしくは、何十年後か、ジュール様に性欲がなくなる頃には自然に消えるかもしれません」
――ちょっと、待て!
「マリユスが消えた今、どうすることもできないのね。ああ、ジュール一人がなんでこんな目に!!」
――ちょっと、待て!
「一ヶ月ごとでは、もしもの時に不安が残ります。ジュール様の体調も考えて、三週間おき、ということでいかがでしょう?」
「本当に商売上手ね。いいわ。ジュールが怖がらないように、優しくてルックスのとびきりいい相手を選んでちょうだい」
「もちろんです」
「ちょっと、待って!!!!」
割って入った俺に、二人は目を見合わせた。
「さっきから、なんで俺抜きで勝手に話がすすんでるんですかっ!? あと、マリユスが消えたって、どういうことですかっ!?」
お姉さまはため息をつくと、俺に一通の封書を差し出した。
「今朝方届いたのよ。それで慌ててこっちに来たの」
差出人は書かれていない。俺は封筒のなかから、便箋を取り出した。
『親愛なるシャンタル
いろいろと迷惑をかけたね。国外追放も悪くないかと思っていたんだが、行き先を聞いて気が変わったよ。君にはさらに迷惑をかけることになるが、ほとぼりが冷めるまでしばらく姿をくらますことにした。
ひとつだけ、君に伝えておかなければいけないことがある。つい出来心でジュールに淫紋を刻んでしまったんだ。男に定期的に抱かれないと一ヶ月で衰弱死してしまうように設定してあるから、君のお友達にでも頼んで、ジュールに精気を補充してやってくれ。くれぐれも、ジュールに本気になるような奴はやめてくれよ。
まあ、どちらにせよ、そのうちジュールのことは俺が迎えにいくつもりでいるから、よろしく伝えておいてくれ。しばらく逢えなくて寂しいけど、ちゃんと俺のことをいい子で待っているようにって。じゃ、またそのうち会おう! マリユス』
「もちろん、料金の範囲内です」
「俺は、嫌ですっ!」
何かの書類にサインしようとしているお姉さまのペンを、俺はひったくった。
「そ、そんな、入れ替わり、立ち替わり、たくさんの人と、俺は……、俺は、定期的に……しなきゃいけないってことですか!? そんなの、そんなの……っ!」
「ああ、ジュール様、そんな顔をなさらないで……。また第二のマリユスを作らないための苦肉の策なのです」
「そうよ、ジュール。ここの人たちは、みんな素敵な人達ばかりだし、素性も確かだから後腐れなくて安心なのよ。それとも、ジュールは自分でそういう相手を探せるの? どこの馬の骨ともわからない変態爺とそういうことができるのっ!?」
「……」
シャンタルお姉様の言葉に、俺はぐぅの音も出ない。
それにしてもお姉様、なんでそんなにアンドレの組織について詳しいの!?
「ジュール様、きちんとうちのキャストが対応できているか確認するためにも、私も何回かに一度は、お相手させていただきます。だからご心配なく。ご不満があれば遠慮なく、私におっしゃってください」
「アンドレ……」
アンドレとのさきほどの熱に浮かされたようなひと時を思い出し、俺は赤面する。俺はまたアンドレと、ああいうことができるのだろうか。それだったら……。
「ちょっと、アンドレ、あなた、もう現場には出ていないっていうのは、嘘だったの?」
「いえ、ジュール様は特例中の特例ですから……」
「まさかあなたまでジュールに執着する、なんてことはないでしょうね!?」
シャンタルが疑いの視線を向ける。
「私はこれで身を立てている男です。そのようなことがあれば信用問題にかかわりますから」
相変わらず人を食ったような笑顔のアンドレ。
「まあ、いいわ。で、淫紋についてはどんな感じなの」
「やはり解呪は、マリユス本人にしか不可能ですね。魔力が強すぎて、歯が立ちませんでした。もしくは、何十年後か、ジュール様に性欲がなくなる頃には自然に消えるかもしれません」
――ちょっと、待て!
「マリユスが消えた今、どうすることもできないのね。ああ、ジュール一人がなんでこんな目に!!」
――ちょっと、待て!
「一ヶ月ごとでは、もしもの時に不安が残ります。ジュール様の体調も考えて、三週間おき、ということでいかがでしょう?」
「本当に商売上手ね。いいわ。ジュールが怖がらないように、優しくてルックスのとびきりいい相手を選んでちょうだい」
「もちろんです」
「ちょっと、待って!!!!」
割って入った俺に、二人は目を見合わせた。
「さっきから、なんで俺抜きで勝手に話がすすんでるんですかっ!? あと、マリユスが消えたって、どういうことですかっ!?」
お姉さまはため息をつくと、俺に一通の封書を差し出した。
「今朝方届いたのよ。それで慌ててこっちに来たの」
差出人は書かれていない。俺は封筒のなかから、便箋を取り出した。
『親愛なるシャンタル
いろいろと迷惑をかけたね。国外追放も悪くないかと思っていたんだが、行き先を聞いて気が変わったよ。君にはさらに迷惑をかけることになるが、ほとぼりが冷めるまでしばらく姿をくらますことにした。
ひとつだけ、君に伝えておかなければいけないことがある。つい出来心でジュールに淫紋を刻んでしまったんだ。男に定期的に抱かれないと一ヶ月で衰弱死してしまうように設定してあるから、君のお友達にでも頼んで、ジュールに精気を補充してやってくれ。くれぐれも、ジュールに本気になるような奴はやめてくれよ。
まあ、どちらにせよ、そのうちジュールのことは俺が迎えにいくつもりでいるから、よろしく伝えておいてくれ。しばらく逢えなくて寂しいけど、ちゃんと俺のことをいい子で待っているようにって。じゃ、またそのうち会おう! マリユス』
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