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第18話 原因不明の病
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王都から戻ってから、俺の体調は悪くなる一方だった。
はじめは、単なる疲れだろうと思っていた。だが、別宅に引っ越して以来、減少気味だった食欲はますますなくなり、ついには水分以外は受け付けられなくなってしまった。
「叔父様、どうか一口だけでも召し上がってください。近くの森で摘んできた野いちごです」
テオドールが心配そうな顔で、色鮮やかな野いちごがあふれんばかりに乗った盆を差し出してくる。
寝台に半身を起こした俺は、それを受け取ると一つ口に含む。
甘酸っぱい味が、口いっぱいに広がった。
「おいしいよ、ありがとう、テオドール」
「叔父様、俺っ、叔父様がよくなるためならなんだってします! だから……っ」
俺の手を握るテオドールの手は、傷だらけだった。おそらく朝早くから森で、俺のために野いちごを探してくれたのだろう。森の野いちごが群生している近くには、トゲを持った草がたくさん生えていたはずだ。
「ごめんね、テオドール、心配かけてしまって」
「なにかほかに欲しいものはありませんか?」
「うん、だいじょうぶっ、うぅっ……」
突然、胸が締め付けられるように苦しくなり、胃の中のものがせりあがってくる。
「叔父様っ!」
テオドールが慌てて俺の背中をさする。
「うっ、ぐっ、げほっ……」
差し出された白い布巾にさっき食べた野いちごをすべて吐き出すと、俺はうなだれた。
「ごめん、テオドール、せっかく俺のために摘んでくれたのに……」
「俺のことなんて、どうだっていいんですっ、叔父様っ、やっぱりもっと医療の進んだ国外の医者に診てもらったほうが……!」
「いや、モロー先生は立派な先生だよ。先生でも治せないんなら、もう、おそらく……」
ダンデス家の主治医であるモロー先生は、俺の症状について原因不明と診断を下した。このまま自然に快癒するはずとのことだったが……、俺の体調はもうすでに限界まできていた。
目の前のテオドールを見て、俺は絶望的な気持ちになる。
せっかく俺がテオドールをひきとって立派に育てあげようとしていたのに、俺がもしここで死んでしまうようなことがあれば、テオドールはこの先どうやって生きていけばいいんだ!?
ーー俺は、テオドールを絶対に幸せにするって決めたんだ!!
だから……、俺は絶対にここで死ぬわけにはいかない!
「少し、眠るよ。テオドール」
情けないことに、身体がだるく、起きあがったままではいられない。
「叔父様……っ」
今にも泣きだしそうなテオドールの頭を俺は撫でた。
「大丈夫。君の為にも絶対に元気になる! 約束するよ」
「叔父様っ、……大好きですっ!」
テオドールは俺に被い被さるように抱きしめてくる。
俺はそれに応えるように、テオドールの熱い身体に両手を回す。
「俺も、大好きだよ、テオドール」
「叔父様っ、俺っ……」
テオドールの漆黒の瞳が至近距離で俺を見つめてくる。
その熱量の強さに、俺の心臓は早鐘を打つ。
「テオドール……」
「叔父様……、好きです……」
テオドールの吐息が俺の唇にかかる。
「テオドール、あの……」
「叔父様っ……!」
近づきすぎたテオドールのその端正な美貌が、二重にぶれる。
思わず目を閉じたそのとき、
「ジュールっ、ジュールっ、大丈夫なのっ!? 生きてるのっ!?」
ーーお姉様っ!?
俺の部屋の扉が、破壊されるのではないかと思うほど激しくたたかれた。
はじめは、単なる疲れだろうと思っていた。だが、別宅に引っ越して以来、減少気味だった食欲はますますなくなり、ついには水分以外は受け付けられなくなってしまった。
「叔父様、どうか一口だけでも召し上がってください。近くの森で摘んできた野いちごです」
テオドールが心配そうな顔で、色鮮やかな野いちごがあふれんばかりに乗った盆を差し出してくる。
寝台に半身を起こした俺は、それを受け取ると一つ口に含む。
甘酸っぱい味が、口いっぱいに広がった。
「おいしいよ、ありがとう、テオドール」
「叔父様、俺っ、叔父様がよくなるためならなんだってします! だから……っ」
俺の手を握るテオドールの手は、傷だらけだった。おそらく朝早くから森で、俺のために野いちごを探してくれたのだろう。森の野いちごが群生している近くには、トゲを持った草がたくさん生えていたはずだ。
「ごめんね、テオドール、心配かけてしまって」
「なにかほかに欲しいものはありませんか?」
「うん、だいじょうぶっ、うぅっ……」
突然、胸が締め付けられるように苦しくなり、胃の中のものがせりあがってくる。
「叔父様っ!」
テオドールが慌てて俺の背中をさする。
「うっ、ぐっ、げほっ……」
差し出された白い布巾にさっき食べた野いちごをすべて吐き出すと、俺はうなだれた。
「ごめん、テオドール、せっかく俺のために摘んでくれたのに……」
「俺のことなんて、どうだっていいんですっ、叔父様っ、やっぱりもっと医療の進んだ国外の医者に診てもらったほうが……!」
「いや、モロー先生は立派な先生だよ。先生でも治せないんなら、もう、おそらく……」
ダンデス家の主治医であるモロー先生は、俺の症状について原因不明と診断を下した。このまま自然に快癒するはずとのことだったが……、俺の体調はもうすでに限界まできていた。
目の前のテオドールを見て、俺は絶望的な気持ちになる。
せっかく俺がテオドールをひきとって立派に育てあげようとしていたのに、俺がもしここで死んでしまうようなことがあれば、テオドールはこの先どうやって生きていけばいいんだ!?
ーー俺は、テオドールを絶対に幸せにするって決めたんだ!!
だから……、俺は絶対にここで死ぬわけにはいかない!
「少し、眠るよ。テオドール」
情けないことに、身体がだるく、起きあがったままではいられない。
「叔父様……っ」
今にも泣きだしそうなテオドールの頭を俺は撫でた。
「大丈夫。君の為にも絶対に元気になる! 約束するよ」
「叔父様っ、……大好きですっ!」
テオドールは俺に被い被さるように抱きしめてくる。
俺はそれに応えるように、テオドールの熱い身体に両手を回す。
「俺も、大好きだよ、テオドール」
「叔父様っ、俺っ……」
テオドールの漆黒の瞳が至近距離で俺を見つめてくる。
その熱量の強さに、俺の心臓は早鐘を打つ。
「テオドール……」
「叔父様……、好きです……」
テオドールの吐息が俺の唇にかかる。
「テオドール、あの……」
「叔父様っ……!」
近づきすぎたテオドールのその端正な美貌が、二重にぶれる。
思わず目を閉じたそのとき、
「ジュールっ、ジュールっ、大丈夫なのっ!? 生きてるのっ!?」
ーーお姉様っ!?
俺の部屋の扉が、破壊されるのではないかと思うほど激しくたたかれた。
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