上 下
18 / 29

第18話 罰と許し

しおりを挟む
「やめろアムルっ! 俺のことはいいから、早くここを出ろっ!」

 アミードが、繋がれた鎖を鳴らしてアムルを戒める。

「駄目だ、アミード。私が一体何に一番怒っているかわかるか?
お前たち双子二人して、私を裏切ったことだ」

 マーリクがアムルの手をひねり上げる。

「痛……っ!」

「マーリクっ、アムルに酷くするなっ!」

「アミード、お前は一体何をしたのかわかってるのか?
私の将来の側室と姦通したのだぞ? しかも、双子の弟でありながら……」

「うるさいマーリクっ! アムルの運命の番は、俺だっ!」

「運命の番、だと? 笑わせてくれる……」

 マーリクはアムルを自分の方に向かせると、冷たく告げた。


「脱げ、アムル」

「……っ」

 マーリクの瞳はまっすぐにアムルを見据えていた。

「マーリク、僕が君の言う通りにしたら、アミードを見逃してくれるのか?」

 震える唇で、アムルが問う。

「ここまで事態が大きくなってしまったんだ。残念ながら、何もなかったことにすることは出来ない。
だが、罪を軽くすることはいくらでもできる。
すべては……、お前の頑張り次第だがな」

 ーーマーリクはこんな残忍な表情もすることができるのだ……。


「……わかった。マーリク」

 アムルはズボンのボタンに手をかけた。

「やめろ! アムルっ!!」

 アミードの悲痛な叫びに、アムルはアミードに顔を向けた。

「アミード、もし……、もし僕が湖に行かなかったら、マーリクをどうするつもりだったんだ?」

 アムルの言葉に、アミードの瞳に暗い陰がかかる。

「もちろん……、殺すつもりだったさ。事故に見せかけて、湖の底にしずめてやるつもりだった」

 アミードの告白に、アムルは覚悟を決めた。


「マーリク、お願い、アミードを助けて……」

 下着と一緒にズボンを床に落とすと、アムルは全裸となった。


「それでいい……、アムル。
アミード、今からここで起こることをよく見ておけ。
そして……、自分の犯した罪の大きさを思い知るがいい」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「んっ、ぐっ、っく……」

 張り詰めたマーリクの陰茎を、アムルは喉奥で咥えていた。

「はあっ、いいぞ、アムルっ、ほら、もっときつく吸うんだ」

 マーリクが跪いたアムルの水色の髪を掴む。

「んっ……、あ、ぐ……っ」

「やめろっ、アムルにそんなことさせるなっ! こんな汚らわしい場所でアムルを犯すなっ!!」

「うるさいぞ、アミードっ、くっ、お前は、アムルにはこれをしてもらわなかったのか?
……っ、それは可哀想なことだな。
この細いアムルの喉で締め付けられると、すぐにでも果ててしまいそうだぞっ…‥!」

「死ね、死ね、死ねっ! 絶対に許さない、マーリクっ!!」

「それはこちらのセリフだ。アムルの純潔を奪っておいて、どの口が言う!
……ほら、アムル。もういいぞ」

「んっ、ゲホッ……」

 咳き込むアムルの頬には涙が伝っていた。


 マーリクはアムルの口から陰茎を引き抜くと、アムルを立たせた。

「壁に手をついて後ろを向くんだ」

「……っ!」

「やめろマーリクっ! 手酷く犯すなっ!!」

「アミード、そこからよく見ていろ」

「マーリク、お願いだからっ、ここでは嫌だ……っ、アミードの前では……っ」

 アムルの水色の瞳が哀願する。

「アムル、何でも言うこと聞くんだろう? これはお前たちへの罰だ。
愚かな弟を助けたくないのか!? さあ、早く後ろを向けっ」

「くっ……」

 マーリク壁に押さえつけられる形になり、アムルは顔をしかめる。

「マーリク、絶対に許さないっ!!」

 アミードが絶叫する。

「許さないのはこっちの方だ、……どれ、さすがにいきなりは入らないか……」

 無遠慮に指を入れられたアムルは、肩を震わせる。

「あ、ああっ!」

「痛いか? だがここにはすでに、アミードを迎え入れたんだろう?」

 ぐちゅぐちゅと指でかき回され、アムルは息を荒げる。

「あ、あ、あ……っ!」

「濡れてきたぞ……、やはりオメガだな。
いい匂いもする……」

 にやりと笑うと、マーリクはアムルの無防備なうなじを舐めた。

「ひゃあ、あ、あ……、マーリクっ、だめっ……!」

「もういいだろう? さあ、アムル……、もっと尻を突き出すんだ!
思う存分啼かせてやろう」

 マーリクがたぎった陰茎を、アムルの後孔に押し当てた。

「うわっ、あ、ああああああっ!!」

 まだ十分ほぐれていないその場所は、マーリクの男根によって無理やり押し広げられていく。

「アミード、そこからよく見えるだろう。私とアムルが繋がっているところが!
よく覚えておけ! アムルは私のものだ。これまでも、そしてこれからもっ!」

「マーリク、絶対に、絶対にお前を呪い殺してやる! 俺がたとえ死んでも、絶対に許さないっ!!!」

「あ、あああっ、だめっ、見ないでアミードっ! 見ないでっ!!
あ、あ、あああっ!!」

「ほらっ、アムルっ! もっとアミードに見てもらえっ、私に奥まで突かれてよがるお前をっ!
ああ、締め付けてくるぞっ! もっともっととうねって、お前の身体がねだっているぞ!」

 マーリクがアムルに激しく腰を打ち付ける。

「いや、いやっ、やだ、お願いっ、許してマーリク、許して……っ!」

 涙がアムルの頬を伝い、床に落ちる。

「アムルっ、アムルっ、俺の、俺のアムルっ!」

 泣き叫ぶアミードに、マーリクは軽蔑の眼差しを向ける。

「うるさいぞ、アミードっ、アムルはもう私の手の中にある……、っく、ほら、もっと腰を振れっ……、
いいぞ、アムル……、アムルっ……、ああ、すごくいいっ!」

 パンパンと肉と肉がぶつかる音が地下牢に響く。

「嫌っ、嫌、嫌だっ、許してっ、お願いもう許して、マーリク、マーリクっ!」

 



 ーーこの日以降、アミードは王太子のマーリクに魅了を使った罰として国外追放となり、すべての魔力を封じられ生涯軟禁されることとなった。

 王太子マーリクは、婚姻前にアムルを犯した謝罪として、サマラス家に多大な慰謝料を払うとともに、二人の婚姻の日取りを大幅に早めた。このことにより、王室は正妃より先に側室が後宮に入るという異例の事態となった。

 ーーそして、アムルはマーリクの手に堕ちた……。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

ヘタレな師団長様は麗しの花をひっそり愛でる

野犬 猫兄
BL
本編完結しました。 お読みくださりありがとうございます! 番外編は本編よりも文字数が多くなっていたため、取り下げ中です。 番外編へ戻すか別の話でたてるか検討中。こちらで、また改めてご連絡いたします。 第9回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございました_(._.)_ 【本編】 ある男を麗しの花と呼び、ひっそりと想いを育てていた。ある時は愛しいあまり心の中で悶え、ある時は不甲斐なさに葛藤したり、愛しい男の姿を見ては明日も頑張ろうと思う、ヘタレ男の牛のような歩み寄りと天然を炸裂させる男に相手も満更でもない様子で進むほのぼの?コメディ話。 ヘタレ真面目タイプの師団長×ツンデレタイプの師団長 2022.10.28ご連絡:2022.10.30に番外編を修正するため下げさせていただきますm(_ _;)m 2022.10.30ご連絡:番外編を引き下げました。 【取り下げ中】 【番外編】は、視点が基本ルーゼウスになります。ジーク×ルーゼ ルーゼウス・バロル7歳。剣と魔法のある世界、アンシェント王国という小さな国に住んでいた。しかし、ある時召喚という形で、日本の大学生をしていた頃の記憶を思い出してしまう。精霊の愛し子というチートな恩恵も隠していたのに『精霊司令局』という機械音声や、残念なイケメンたちに囲まれながら、アンシェント王国や、隣国のゼネラ帝国も巻き込んで一大騒動に発展していくコメディ?なお話。 ※誤字脱字は気づいたらちょこちょこ修正してます。“(. .*)

束縛系の騎士団長は、部下の僕を束縛する

天災
BL
 イケメン騎士団長の束縛…

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

悪役なので大人しく断罪を受け入れたら何故か主人公に公開プロポーズされた。

柴傘
BL
侯爵令息であるシエル・クリステアは第二王子の婚約者。然し彼は、前世の記憶を持つ転生者だった。 シエルは王立学園の卒業パーティーで自身が断罪される事を知っていた。今生きるこの世界は、前世でプレイしていたBLゲームの世界と瓜二つだったから。 幼い頃からシナリオに足掻き続けていたものの、大した成果は得られない。 然しある日、婚約者である第二王子が主人公へ告白している現場を見てしまった。 その日からシナリオに背く事をやめ、屋敷へと引き篭もる。もうどうにでもなれ、やり投げになりながら。 「シエル・クリステア、貴様との婚約を破棄する!」 そう高らかに告げた第二王子に、シエルは恭しく礼をして婚約破棄を受け入れた。 「じゃあ、俺がシエル様を貰ってもいいですよね」 そう言いだしたのは、この物語の主人公であるノヴァ・サスティア侯爵令息で…。 主人公×悪役令息、腹黒溺愛攻め×無気力不憫受け。 誰でも妊娠できる世界。頭よわよわハピエン。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

処理中です...