26 / 74
第26話
しおりを挟む
「ククリ様、わかったでしょう?
貴方は一刻も早く、アスランと離婚したほうがいい。
アスランは、とても危険な男です」
ルカがその美しい色合いの瞳で、俺を見る。
「でも、こんなの……、だって、決定的なことは、何も……」
だが、ここまで明白なものを見せられたというのに、俺はまだアスランのことを信じたいという気持ちが強かった。
「ククリ様! そんな悠長なことを言っている場合ですか?
これを読んで、まだわからないのですか!?
アスランは、貴方を、傷つけようとしているのですよ!
アナスタシアという女と、共謀して!!」
「傷、つける……?」
あの二人が、俺を……?
「その様子では、貴方が20歳を迎えたらどんなことが起こるのか、まだ何もご存知がないようですね?」
ルカは、ふうっと息を吐いた。
「20歳の誕生日……?」
ーーたしかお母様も言っていた。20歳の誕生日までに、俺はアスランと離婚するべきだって……!!
「王命が下っているのですよ! アスランはもちろん貴方に告げてなどいないのでしょうね!
もともと我が国には、国王の直系の孫娘と婚姻した騎士には、その孫娘が20歳の誕生日を迎えたその日に、新たな騎士団を発足させる権利と、新たな領地が与えられる事になっていました。陛下は、騎士であるアスランと結婚されたククリ様にも、その法を適応されることを発表されたのです。
つまりは……」
ルカの瞳がキラリと光る。
「こういうことですよ、ククリ様!
ククリ様が20歳の誕生日を迎えたその時、アスランは自らを団長とする新たな騎士団を作り、また己が自治する新たな領地を得る。
その後、ククリ様を誰にも知られず亡き者にするか、監禁するかして、ククリ様を完全に世間から隠し、
もう誰にも干渉されない富と権力を得たアスラン自身は、そのアナスタシアという女と新たな生活を始める!
ーーこれが、この日記から読み解けるアスランの計画です!!」
「……!!!!」
俺は、ショックのあまり、しばらく口がきけなかった。
ーーアスランは、そんな恐ろしいことを考えていたのか!?
「これでわかったでしょう、ククリ様!
さ、ご自身のためにも、すぐにでもアスランと離縁の手続きをっ!!」
「……なければ……」
「はい?」
ルカが心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺はぐっと両の拳を握りしめた。
「俺が話をつけなければっ、今すぐっ、あの、アナスタシアとっ!!!!」
「は!!??」
ルカが一瞬脱力した表情になる。
「俺がアナと話し合う! 何よりそれが先だっ!!」
「ク、ククリ様っ、早まってはいけません! そんなことをしたら、ククリ様が一体どんな危険な目に遭うか!
どうか、私にお任せください、もし必要とあらば、全て私が……」
「大丈夫だっ、ルカ!」
慌てた様子のルカの背中を、俺はバシっと叩いた。
「アナのことは、俺が一番よくわかっている。なに、俺たちは、過去にちょっとした行き違いがあっただけなんだ。
それに、もし本当に二人が愛し合ってるっていうんなら、俺はきっぱり身を引いて、二人を応援するつもりだよ!」
そうすれば、俺も監禁されたり、殺されたりなんて目にも遭わなくてすむ……ハズだ!!
ーーまあ、今更ちょっと無理かもしれないけど。
とにかくこの事実を知ってしまった今、このまま家でのんびりと待っているなんて、俺にはできない!
「無謀すぎます! ククリ様、あなたはアスランの恐ろしさをまるでわかっていない!
あの男は、蛇のように陰湿で狡猾で、抜け目のない男ですよ!」
ルカの言葉に、俺は首を振る。
「俺はアスランのことは何もわかっていなかったかもしれないけど、アナのことは違う!
あいつは俺の元・親友だ! 誰よりも侠気あふれるやつなんだ。
だからっ……!」
「それなら、私も、一緒に……っ」
俺の手を取ったルカ。
だが、その手を俺はやんわりと外した。
「心配するな、ルカ! これでも俺は、一時はお前のボスだった男だぞ。
それにアナスタシアも、俺だけのほうが本当のことを言ってくれると思う!」
俺は、大きく深呼吸した。
ーーついに、このときが来たのだ……。
アナスタシア・ウィッテと俺との、因縁の決着をつける日が……!!
貴方は一刻も早く、アスランと離婚したほうがいい。
アスランは、とても危険な男です」
ルカがその美しい色合いの瞳で、俺を見る。
「でも、こんなの……、だって、決定的なことは、何も……」
だが、ここまで明白なものを見せられたというのに、俺はまだアスランのことを信じたいという気持ちが強かった。
「ククリ様! そんな悠長なことを言っている場合ですか?
これを読んで、まだわからないのですか!?
アスランは、貴方を、傷つけようとしているのですよ!
アナスタシアという女と、共謀して!!」
「傷、つける……?」
あの二人が、俺を……?
「その様子では、貴方が20歳を迎えたらどんなことが起こるのか、まだ何もご存知がないようですね?」
ルカは、ふうっと息を吐いた。
「20歳の誕生日……?」
ーーたしかお母様も言っていた。20歳の誕生日までに、俺はアスランと離婚するべきだって……!!
「王命が下っているのですよ! アスランはもちろん貴方に告げてなどいないのでしょうね!
もともと我が国には、国王の直系の孫娘と婚姻した騎士には、その孫娘が20歳の誕生日を迎えたその日に、新たな騎士団を発足させる権利と、新たな領地が与えられる事になっていました。陛下は、騎士であるアスランと結婚されたククリ様にも、その法を適応されることを発表されたのです。
つまりは……」
ルカの瞳がキラリと光る。
「こういうことですよ、ククリ様!
ククリ様が20歳の誕生日を迎えたその時、アスランは自らを団長とする新たな騎士団を作り、また己が自治する新たな領地を得る。
その後、ククリ様を誰にも知られず亡き者にするか、監禁するかして、ククリ様を完全に世間から隠し、
もう誰にも干渉されない富と権力を得たアスラン自身は、そのアナスタシアという女と新たな生活を始める!
ーーこれが、この日記から読み解けるアスランの計画です!!」
「……!!!!」
俺は、ショックのあまり、しばらく口がきけなかった。
ーーアスランは、そんな恐ろしいことを考えていたのか!?
「これでわかったでしょう、ククリ様!
さ、ご自身のためにも、すぐにでもアスランと離縁の手続きをっ!!」
「……なければ……」
「はい?」
ルカが心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺はぐっと両の拳を握りしめた。
「俺が話をつけなければっ、今すぐっ、あの、アナスタシアとっ!!!!」
「は!!??」
ルカが一瞬脱力した表情になる。
「俺がアナと話し合う! 何よりそれが先だっ!!」
「ク、ククリ様っ、早まってはいけません! そんなことをしたら、ククリ様が一体どんな危険な目に遭うか!
どうか、私にお任せください、もし必要とあらば、全て私が……」
「大丈夫だっ、ルカ!」
慌てた様子のルカの背中を、俺はバシっと叩いた。
「アナのことは、俺が一番よくわかっている。なに、俺たちは、過去にちょっとした行き違いがあっただけなんだ。
それに、もし本当に二人が愛し合ってるっていうんなら、俺はきっぱり身を引いて、二人を応援するつもりだよ!」
そうすれば、俺も監禁されたり、殺されたりなんて目にも遭わなくてすむ……ハズだ!!
ーーまあ、今更ちょっと無理かもしれないけど。
とにかくこの事実を知ってしまった今、このまま家でのんびりと待っているなんて、俺にはできない!
「無謀すぎます! ククリ様、あなたはアスランの恐ろしさをまるでわかっていない!
あの男は、蛇のように陰湿で狡猾で、抜け目のない男ですよ!」
ルカの言葉に、俺は首を振る。
「俺はアスランのことは何もわかっていなかったかもしれないけど、アナのことは違う!
あいつは俺の元・親友だ! 誰よりも侠気あふれるやつなんだ。
だからっ……!」
「それなら、私も、一緒に……っ」
俺の手を取ったルカ。
だが、その手を俺はやんわりと外した。
「心配するな、ルカ! これでも俺は、一時はお前のボスだった男だぞ。
それにアナスタシアも、俺だけのほうが本当のことを言ってくれると思う!」
俺は、大きく深呼吸した。
ーーついに、このときが来たのだ……。
アナスタシア・ウィッテと俺との、因縁の決着をつける日が……!!
2,908
お気に入りに追加
3,504
あなたにおすすめの小説
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる