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第43話
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耳を疑った。
男二人が、ハンターの腕を取る。
「やめろーっ!」
僕は必死でハンターに抱きついた。
「ハンターは、関係ないっ! 僕が、勝手に逃げた僕が悪かったんだ。折るなら僕の腕を折ればいいだろ!」
オスカーはあきれたように、小さく息をついた。
「美しい愛情ですね。とても感動しました。ですが、ルイ様の腕を折るわけにはいきません。これは、いわば罰なのですよ。このワード君と、あなたへの……」
「キース、俺なら大丈夫だ。腕や脚の一本や二本、折られたくらいで痛くもかゆくもないぜ」
ハンターが僕に小さく笑ってみせる。
「駄目だっ、絶対に駄目だっ。そんなのっ、剣が握れなくなるっ」
自分のせいで、ハンターの身体に傷をつけるのは我慢ならない。
騎士を目指しているハンターの夢を、絶対に奪いたくない。
「ルイ様……、駄々をこねるのはおやめください。元はといえば、ワード君のことをいつまでも忘れられなかったあなたが招いた結果なのですよ」
オスカーはかがみ込むと、僕の頬を撫でた。
「駄目だ……、絶対……、ハンターを傷つけるなんて、許さない」
僕はさせまいと、ハンターの身体をしっかりと抱き寄せる。
「困りましたね。でも、このままだと示しがつきません。それに、ここで許してしまうと、あなたはまた、ワード君に会いにこようとするでしょう?」
「もう、会わない!! 絶対、約束する、約束するからっ!」
「困りました……。私も、ルイ様にはつい甘くなってしまう」
オスカーの言葉に、ほっとしたのもつかの間、次のせりふに、僕は凍り付いた。
「それでは、ルイ様自ら証明していただきましょう。もう、ワード君には何の未練もないということを……」
「え……」
「こいつを縛り付けたら、お前達は表に出ていろ」
「はい」
オスカーが指示を出すと、男二人はハンターを柱に縛り付け、部屋から出て行った。
「お前……、何をするつもりだ……」
黒い上着を脱いだオスカーに、ハンターが問いかける。
「簡単なことですよ。さあ、ルイ様。ベッドへ上がってください。
いつも私たちがしていることを、ワード君に見せてあげましょう。
あなたが、誰のものかということを、彼にわからせてあげるのです」
――こんなことが、あっていいのか。
「さあ、どうしますか? 嫌なら、ワード君の手足を折るまでのことです。どちらがお好みか、ルイ様が選んでください。
私は、……どちらでも構いませんよ?」
僕がどちらを選ぶかをわかっていて、それをあざ笑うかのような問い。
その美しい顔には、残酷な微笑みを浮かべている。
逃げられないことをわかっていて、わざとじっくりとなぶり殺していく。
オスカーは、――悪魔だ。
「やめろーっ!」
ハンターの叫び声。
でも、僕にはほかに選ぶ道がない。
僕はオスカーの前に立った。
「自分で、脱いでください……」
熱を帯びた表情に変わったオスカーが、僕を抱き寄せ、耳元で言う。
ガウンの帯に手をかけると、涙が頬を伝った。
「なぜ、泣くんです? あなたが選んだことでしょう?
大丈夫、いつもよりずっと、優しく抱いてあげます」
「うっ、ううっ……」
「やめろっ、キースっ、そんなことするな、やめろーっ!」
「ごめんね……、ハンター……」
僕のせいで、巻き込んでしまった。
責任をとらなければいけないのは……、僕だ。
ガウンが床に落ちる。
「あなたは、本当に美しい……」
僕の身体を見て、オスカーは満足げに微笑んだ。
男二人が、ハンターの腕を取る。
「やめろーっ!」
僕は必死でハンターに抱きついた。
「ハンターは、関係ないっ! 僕が、勝手に逃げた僕が悪かったんだ。折るなら僕の腕を折ればいいだろ!」
オスカーはあきれたように、小さく息をついた。
「美しい愛情ですね。とても感動しました。ですが、ルイ様の腕を折るわけにはいきません。これは、いわば罰なのですよ。このワード君と、あなたへの……」
「キース、俺なら大丈夫だ。腕や脚の一本や二本、折られたくらいで痛くもかゆくもないぜ」
ハンターが僕に小さく笑ってみせる。
「駄目だっ、絶対に駄目だっ。そんなのっ、剣が握れなくなるっ」
自分のせいで、ハンターの身体に傷をつけるのは我慢ならない。
騎士を目指しているハンターの夢を、絶対に奪いたくない。
「ルイ様……、駄々をこねるのはおやめください。元はといえば、ワード君のことをいつまでも忘れられなかったあなたが招いた結果なのですよ」
オスカーはかがみ込むと、僕の頬を撫でた。
「駄目だ……、絶対……、ハンターを傷つけるなんて、許さない」
僕はさせまいと、ハンターの身体をしっかりと抱き寄せる。
「困りましたね。でも、このままだと示しがつきません。それに、ここで許してしまうと、あなたはまた、ワード君に会いにこようとするでしょう?」
「もう、会わない!! 絶対、約束する、約束するからっ!」
「困りました……。私も、ルイ様にはつい甘くなってしまう」
オスカーの言葉に、ほっとしたのもつかの間、次のせりふに、僕は凍り付いた。
「それでは、ルイ様自ら証明していただきましょう。もう、ワード君には何の未練もないということを……」
「え……」
「こいつを縛り付けたら、お前達は表に出ていろ」
「はい」
オスカーが指示を出すと、男二人はハンターを柱に縛り付け、部屋から出て行った。
「お前……、何をするつもりだ……」
黒い上着を脱いだオスカーに、ハンターが問いかける。
「簡単なことですよ。さあ、ルイ様。ベッドへ上がってください。
いつも私たちがしていることを、ワード君に見せてあげましょう。
あなたが、誰のものかということを、彼にわからせてあげるのです」
――こんなことが、あっていいのか。
「さあ、どうしますか? 嫌なら、ワード君の手足を折るまでのことです。どちらがお好みか、ルイ様が選んでください。
私は、……どちらでも構いませんよ?」
僕がどちらを選ぶかをわかっていて、それをあざ笑うかのような問い。
その美しい顔には、残酷な微笑みを浮かべている。
逃げられないことをわかっていて、わざとじっくりとなぶり殺していく。
オスカーは、――悪魔だ。
「やめろーっ!」
ハンターの叫び声。
でも、僕にはほかに選ぶ道がない。
僕はオスカーの前に立った。
「自分で、脱いでください……」
熱を帯びた表情に変わったオスカーが、僕を抱き寄せ、耳元で言う。
ガウンの帯に手をかけると、涙が頬を伝った。
「なぜ、泣くんです? あなたが選んだことでしょう?
大丈夫、いつもよりずっと、優しく抱いてあげます」
「うっ、ううっ……」
「やめろっ、キースっ、そんなことするな、やめろーっ!」
「ごめんね……、ハンター……」
僕のせいで、巻き込んでしまった。
責任をとらなければいけないのは……、僕だ。
ガウンが床に落ちる。
「あなたは、本当に美しい……」
僕の身体を見て、オスカーは満足げに微笑んだ。
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