上 下
24 / 81

第23話

しおりを挟む
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「はあっ、ふっ……」

 汗ばんだ身体。
 人間離れした無機質な印象の彼を、唯一、身近に感じる瞬間。

「もっと……」
 僕が背中に手を回すと、オスカーは耳元で低く笑う。

「どうしました? 今日はびっくりするほど積極的ですね……」

「はやく……、もう待てない」
 背中に爪を立ててやる。

「まだ、充分ほぐれていないでしょう……」
 オスカーの言葉を、自分の唇でふさぐ。

「オスカーっ……、んんっ」

 オスカーはねっとりとした口づけで応えてくれる。


 オスカーとのセックスは、次第に僕の日常に溶け込んでいった。

 多忙を極める父親は、ほとんど屋敷に寄りつかない。ほかに屋敷にいるのは、顔と名前も一致しない使用人たち。
 そんな中で、オスカーは僕の唯一の理解者だった。

 王立学院から戻ると、夕食の後、風呂に入る。その後は、部屋でオスカーに勉強を見てもらう。
 僕が疲れた様子を見せなければ、その後、オスカーは僕をベッドに誘う。習慣になると、オスカーと肌を合わせることに対して、少しずつ抵抗はなくなっていった。

 ハンターとは何度もセックスしていたが、感情の部分で感じていた部分が大きかった。

 だが、オスカーとは違う。
 オスカーとは、感情のやりとりはなにもない。
 だが、オスカーはその繊細な指使いで、あっという間に僕のすべてを解放する。
 セックスという行為自体に、純粋な悦楽があることを、オスカーは僕に教えてくれた。

 ――そして、
 オスカーに抱かれているときは、本当に何もかも忘れることができた。


「んんっ、くうっ……」

 ゆっくりと腰を進めるオスカーを、僕の中に受け入れる。普段は冷静なオスカーも、このときだけは熱を帯びた表情になる。

「締め付けすぎですっ」
 僕の身体をゆるめようと、オスカーの手が、僕自身を優しく愛撫する。
 僕はその手をつかんで止めた。

「オスカーっ、今日は激しくしてっ」
 僕はオスカーにしがみつく。

「ルイ様……?」
「今日は、優しくしないで。酷くしてもいいからっ……」
 オスカーの動きが止まる。

「……いいんですか? 容赦はしませんよ」
 オスカーがその美しい目を細める。

「いいからっ、早く……」
「あとになって、やめて欲しいと泣いて頼んでも、やめませんよ」
 そう言うと、オスカーは強引に僕の中に押し入ってきた。

「あっ、あああっ」
 身体が引き裂かれるような感覚。

 ――目を固くつぶると、思い浮かぶのは、剣を手にしたディランの姿。

 あのがっしりとした腕に、抱きしめられたら……。



「動きますよ……、今日は楽しませてもらいますね」

「あっ、あああっ」
 いつになく激しく、オスカーが腰を動かす。

 身体がぶつかり合う音が、聞こえてくる。
 無理矢理犯されているような感覚に、僕はさらに感じてしまう。

「もっと、もっと……」
 もっと、奥まで感じたかった。僕を犯す、凶暴な雄を。


「ねえ……、後ろから、してよ」
 オスカーの首筋に噛みつき、僕は言った。

「お望みとあらば」
 オスカーは笑うと、つながったまま、僕を後ろ向きに反転させる。

「あっ、くうっ……」
 オスカーが僕の上に覆い被さってくる。引き寄せられると、結合がさらに深くなる。

「感じる……、気持ちいいっ」

「ルイ様……、あなたには男を惑わせる魔性がある……」
 そう言うと、オスカーは僕の背中を舐めあげた。

「あっ、ああああんっ」
 僕はシーツをつかんで快感に耐える。

「……私の顔をわざと見ないで、一体、誰のことを想像して抱かれるんですか?」

 突然の冷たい声に、頭に冷水を浴びせられたような気持ちになった。

「……オスカー?」
「ワード君ですか? それとも……、誰かほかに、抱かれたい男ができましたか?」

「……っ、ああっ」
 答えない僕に、オスカーは後ろから激しく突き上げる。

「あっ、嫌っ、ああっ、オスカーっ」

「わざとらしく私の名前を呼んでも無駄ですよ。……まさか、自分の中にこんな感情があるなんて、思いもしませんでした。
ルイ様……、あなたとこうやってベッドを共にするたび、こうして私は新しい自分を発見することができる。あなたは本当に、――許しがたい悪魔だ」

「ああっ、あああー!!」


 なおも激しく僕を蹂躙するオスカーに、僕はあられもない声をあげ続けていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい

りまり
BL
 僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。  この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。  僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。  本当に僕にはもったいない人なんだ。  どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。  彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。  答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。  後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。

ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話

かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。 「やっと見つけた。」 サクッと読める王道物語です。 (今のところBL未満) よければぜひ! 【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長

全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐
BL
 森の中の小さな領地の弱小貴族の僕は、領主の息子として生まれた。だけど両親は可愛い兄弟たちに夢中で、いつも邪魔者扱いされていた。  なんとか認められたくて、魔法や剣技、領地経営なんかも学んだけど、何が起これば全て僕が悪いと言われて、激しい折檻を受けた。  そんな家族は領地で好き放題に搾取して、領民を襲う魔物は放置。そんなことをしているうちに、悪事がバレそうになって、全ての悪評を僕に押し付けて逃げた。  それどころか、家族を逃す交換条件として領主の代わりになった男たちに、僕は毎日奴隷として働かされる日々……  暗い地下に閉じ込められては鞭で打たれ、拷問され、仕事を押し付けられる毎日を送っていたある日、僕の前に、竜が現れる。それはかつて僕が、悪事を働く竜と間違えて、背後から襲いかかった竜の王子だった。  あの時のことを思い出して、跪いて謝る僕の手を、王子は握って立たせる。そして、僕にずっと会いたかったと言い出した。え…………? なんで? 二話目まで胸糞注意。R18は保険です。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

【完結】疎まれ軍師は敵国の紅の獅子に愛されて死す

べあふら
BL
※後日談投稿中! フェリ・デールは、ムンデ国の軍師だった。 屈強な肉体と、濃い色彩が好まれるムンデ国において、青白い肌も、淡く薄い麦わら色の髪も、不気味に光る黄色い瞳も、全てが忌諱され、長らく暴虐の中にいた。 大国グランカリス帝国との戦において、大敗を喫したムンデ国は、フェリに自国の被害も罪過も転嫁し、戦の首謀者としてグランカリス帝国に差し出した。 フェリを待ち受けていたのは、帝国の覇王と謳われる紅の獅子ジグムント・ヴァン・グランカリス。 自国で虐げられてきたフェリの行いを、最も理解し、認めてくれたのは、皮肉にも敵国の最高権力者だった………。 フェリ自身も知らない己の秘密、覇王ジグムントの想いとは………。 ※僭越ながら、『BL小説大賞』エントリーさせていただきました!応援よろしくお願いします。 ※最後はハッピーエンドです。 ※肌の色や、髪、瞳の色を描写する表現がありますが、特定の色彩を中傷する意図はありません。ご不快になられる方は、お控えください。 ※途中残虐、非人道的な表現あり。苦手な方は自衛してください。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...